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強烈な性能と発熱が同居するCore i9-11900KへのGIGABYTEからの回答はこれだ!「Z590 AORUS MASTER (rev.1.0)」
徹底した安定志向と拡張性はハイエンドゲーマーにオススメ text by 石川 ひさよし
2021年4月19日 00:00
次世代を先取り!10GbEやWi-Fi 6Eを搭載し長期快適を実現するスペック
Rocket Lakeこと第11世代Coreプロセッサーに先んじて出荷がスタートしていたIntel Z590チップセットを搭載したマザーボード。GIGABYTEからは「Z590 AORUS MASTER (rev. 1.0)」が登場している。ゲーミングマザーボード“AORUS”シリーズで“MASTER”と言えば、同社のなかでもハイエンドモデルにあたり、Intelの新ハイエンドCPU、第11世代Core i9-11900Kとの組み合わせるにはベストの製品の一つと言える。
そこで今回は、Z590 AORUS MASTER (rev. 1.0)を中心とする環境でCore i9-11900Kのパフォーマンスがどれだけ引き出せるのか、実際にベンチマークテストを実施して検証してみた。
まずはZ590 AORUS MASTER (rev. 1.0)の細部をチェックしておこう。
GIGABYTEが誇る“AORUS MASTER”の大きな特徴の一つは、冷却性能の高いVRMヒートシンク「Fins-Array IIヒートシンク」の採用だろう。TDPが高いマルチコアのハイエンドCPUを使うユーザーはとくに注目しておきたい。
なお、最近ではFins-Array IIヒートシンクを採用するモデルが増えているのだが、モデルによって搭載箇所が異なる。Z590 AORUS MASTERと、その一つ下のモデルである「Z590 AORUS ULTRA」は、CPUソケットの左側および上側、AORUS ULTRAの下位にあたる「Z590 AORUS PRO AX」では左側にFins-Array IIヒートシンクを採用している。新ブースト機能のAdaptive Boost Technology(ABT)をONにしてCore i9-11900K/KFの性能を引出したいユーザーにとっては、選択肢が広がる朗報と言えそうだ。
製品名 | Z590 AORUS MASTER | Z590 AORUS ULTRA |
対応ソケット | LGA1200 | LGA1200 |
電源フェーズ | 18フェーズ | 16フェーズ |
対応メモリ | DDR4-5400~2133 | DDR4-5400~2133 |
メモリ最大容量 | 32GB×4 | 32GB×4 |
拡張スロット | PCI-E 4.0 x16×2(x16+x8接続)、 PCI-E 3.0 x16(x4接続) | PCI-E 4.0 x16×2(x16+x8接続)、 PCI-E 3.0 x16(x4接続) |
ストレージ | M.2(PCI-E 4.0 x4、CPU接続)×1、 M.2(PCI-E 3.0 x4またはSATA 3.0、 チップセット接続)×2、SATA 3.0×6 | M.2(PCI-E 4.0 x4、CPU接続)×1、 M.2(PCI-E 3.0 x4またはSATA 3.0、 チップセット接続)×2、SATA 3.0×6 |
ネットワーク | 10GbE(Aquantia)、Wi-Fi 6(Intel Wi-Fi 6E AX210) | 2.5GbE(Intel)、Wi-Fi 6(Intel) |
オーディオ回路 | Realtek ALC1220-VC+ESS ES9118 DAC | Realtek ALC4080 |
バックパネル端子 | DisplayPort×1、USB 3.2 Gen2x2 Type-C×1、 USB 3.2 Gen2×5、USB 3.2 Gen1×4 | DisplayPort×1、USB 3.2 Gen2x2 Type-C×1、 USB 3.2 Gen2×4、USB 3.2 Gen1×4 |
内部USBヘッダ | USB 3.2 Gen2 Type-C×1、USB 3.2 Gen1×2、 USB×2、Thunderbolt AIC用×1 | USB 3.2 Gen2 Type-C×1、USB 3.2 Gen1×1、 USB×2、Thunderbolt AIC用×1 |
Z590 AORUS MASTERとZ590 AORUS ULTRAの違いはオンボード機能にも見られる。AORUS MASTERはやはり特別なモデルなだけあって、10GbE対応のLANポートを搭載していたり、バックパネル、内部ヘッダピンともに、USB 3.2 Gen2ポートを多く搭載していたりとリッチな仕様。また、オーディオ回路についても、Z590 AORUS MASTERがRealtek ALC1220-VBであるのに対し、Z590 AORUS ULTRAが同ALC4080とコーデックチップ、と差別化されている。チップ単体としては後発のALC4080も気になるところではあるが、Z590 AORUS MASTERにはESS ES9118 DACチップが搭載されているので、総合的にはZ590 AORUS MASTERのほうが凝った回路設計ということになる。
徹底的に冷却にこだわった設計は必見
電源端子は8ピン×2、VRMは18フェーズで、Core i9-11900KをABT ONで運用することを見越した設計だ。Z590 AORUS MASTERのVRMは負荷分散という設計思想から、デジタルPWMの次段にはフェーズダブラーを置き、そこに二つのMOSFETを接続することでMOSFET間の負荷バランスを取っている。ここからチョーク、CPUへと電力供給されるのだが、さらにその間にタンタルポリマーコンデンサを配置。急速な負荷変動に対してバッファとして機能するため、過渡応答特性と安定性が向上すると言う。
VRMヒートシンクは先のとおりFins-Array II。そしてソケット左、上のヒートシンクは、Direct-Touch Heatpipe IIで結ばれている。ヒートパイプが熱源に接触する構造で、そのパイプは切り口が長方形になるよう整形されており、接触面積を広く取れる長辺方向を熱源側として組み付けることで、放熱効率を高めている。ヒートパイプ自身の接触部は一般的な設計では6mm幅のところ、Direct-Touch Heatpipe IIでは8mm幅と大きい。さらに小径ファンまで搭載されているので万全を期した設計だ。
Fins-Array IIヒートシンクは冷却性能は高いものの、サイズは比較的抑えられているというのがメリット。現在のマザーボードでは、VRMヒートシンクは大型化傾向にある。CPUクーラーと干渉することはさすがにあまりないが、CPUクーラーが装着作業がしづらく感じる。ヒートシンクに干渉してネジが回しづらかったり、ヒートシンクに指が触れて指を切ってしまったようなことはないだろうか。コンパクトなFins-Array IIはこの部分の余裕がより大きい。非常にラクにCPUクーラーが装着でき、指先が触れるとしてもせいぜいチョーク部分だ。
チップセットとM.2用のヒートシンクは、マザー全体とデザインの一体感のあるもの。チップセット部分までひとつながりに見えるが、M.2ヒートシンク部分だけ取り外せばSSDが着脱できる構造で、CPU直結の1番スロット用と、チップセット接続の2番3番スロット用という二つに分割されている。
CPU直結のM.2スロットは、これはほぼIntel Z590マザーボード共通の仕様だが、第11世代Coreでのみサポートされる。第10世代Coreを搭載した場合には使用不可だ。そしてZ590 AORUS MASTERでの使用はあまり考えられないが、第11世代Coreと同時に発売された第10世代CoreベースのCore i3などでも使用不可なので要注意。
なお、M.2スロットは表面のヒートシンク側に加え、裏面マザーボード側にも熱伝導パッドがあり両面から冷却できる。より高速で発熱量の大きいPCI Express 4.0 x4接続側だけでなく、PCI Express 3.0 x4側も両面から冷やせるので、熱対策はより安心感がある。
高耐久をうたう同社製品だけあって、破損防止のための金属カバーはPCI Express x16スロット、メモリスロット、そしてEPS12VやATX24ピンに装着されている。うち、PCI Express x16スロットとメモリスロットは基板裏に貫通するアンカーやハンダ固定が施されており強固だ。そもそもメモリスロットは従来型のスロット両端にラッチのあるものを採用しているのでメモリを挿しづらいということもないのだが、ダブルの備えが2倍の安心感を与えてくれる。
Core i9-11900KやRTX 3080と組み合わせて性能をチェック
それではCore i9-11900Kを使ったベンチマークテストを進めていこう。今回は比較対象として、1世代前のCore i9-10900Kも用意した。Z590 AORUS MASTER (rev. 1.0)の最新BIOSは「F5a」。このバージョンでCore i9-11900KのABTがサポートされており、今回の計測ではABTをONにして実施している。これ以外の項目はいずれもBIOS標準で、メモリはXMPをロードしている。なお、Power Limit設定も性能を引き出す上で重要な設定項目だが、PL1が165W、PL2が251Wという扱いやすい設定になっていた。
CPU | Core i9-11900KおよびCore i9-10900K |
メモリ | Patriot Memory Viper RGB PVR416G320C6K (PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2) |
SSD | Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe SSD [M.2(PCI Express 4.0、1TB] ※Core i9-11900K時。Core i9-10900K時はPCI Express 3.0 x4として動作 |
ビデオカード | GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3080 XTREME 10G (NVIDIA GeForce RTX 3080) |
CPUクーラー | 36cmクラスラジエータ搭載簡易水冷クーラー |
電源 | 1,200W/80PLUS Platinum 電源ユニット |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
Core i9-11900K搭載時のCINEBENCH R23のテスト結果はマルチコアで15,565ポイント。8コアのCore i9-11900Kだがマルチコアのスコアは10コアのCore i9-10900Kをわずかに上回った。Power Limitがマイルドなのでその差は小さいが、それでも前世代より性能は上だ。注目はシングルコア。ターボ時の最大クロックはどちらも5.3GHzだが、IPCが改善されている第11世代Core i9-11900Kが317ポイント上回り1,689ポイントを記録している。
PCMark 10は、Overallはもちろん、三つのシナリオすべてでCore i9-11900Kがより高いスコアをマークした。サブスコアはいずれも10,000ポイントを超えており、あらゆる分野で優れた性能を見せている。
3Dゲームの総合的な性能を示す3DMarkは、DirectX 12ベースのTime Spyのほうが前世代からの伸びがよい傾向。一方、VRMarkはBlue、Cyan Roomは若干第10世代Core i9-10900Kのほうが高いが、もっとも負荷が軽いOrange RoomではCore i9-11900Kが上回った。
ゲームでのベンチマークはアサシンクリード ヴァルハラ(最高画質)とレインボーシックス シージ(Vulcan、最高画質)の2本テストした。前者ではCore i9-10900Kを若干下回ったものの測定誤差程度。後者はフルHD、WQHDでは少々差がついたが、負荷が高くなる4Kでは一気に差が詰まっている。PowerLimit設定が抑えめである影響もありそうだが、これは本機のチューニングの方向性が“安全性・安定性”を重視しているものと考えられる。さらに、前者のようにとくに差が小さいタイトルでは、プラットフォームの最適化がより進んでいけば、差がなくなったり逆転したりすることもあり得る。
第11世代Coreプロセッサーの登場により、いよいよデスクトップ向けのIntel環境でもPCI Express 4.0に対応した。この恩恵はM.2 SSDに大きく現われる。最新SSDを使用し、CrystalDiskMark 8.0.0でリード/ライト性能を計測してみた。SSDの接続位置だが、Core i9-11900Kでは1番目のM.2スロットに、Core i9-10900Kは1番スロットでは利用できないので2番目のスロットを使用して計測している。
結果はご覧のとおり、PCI Express 4.0環境では、WD_Black SN850本来の性能がいかんなく発揮されている。Core i9-10900K時、PCI Express 3.0の天井に阻まれるシーケンシャルリード/ライトだけでなく、ランダムリード/ライト時の速度も低いのは、Intel Z590マザーボードとの組み合わせ時はCPU直結ではなくチップセット側に接続していることの影響と思われる。ストレージ性能は、PCの日常利用の快適さ、とくにアプリやゲームの起動、データのロード時間などの改善につながる。旧世代のIntelプラットフォームでストレージ速度に不満を持っていたなら、第11世代Coreと合わせて最新SSDへの移行も検討してみてはいかがだろうか。
機能豊富でVRMは本当に冷える!ハイエンドゲーマーに最適な1枚
最後にZ590 AORUS MASTERとCore i9-11900Kの組み合わせで、CINEBENCH R23 マルチコアテストとPCMark 10 Standard(開始から10分間)実行中のCPU温度とVRM温度(MOSFET内蔵センサー)を見ておこう。
CINEBENCH R23時のCPU温度はテストがスタートして100%負荷がかかると70℃前後まで上昇した。室温26℃、36cmクラスの簡易水冷CPUクーラーを組み合わせているが、最大温度は73℃に達している。
一方、これだけの負荷がかかっていてもMOSFET温度は最大39℃止まりだ。そもそもVRM回路も高品質のIntersil製チップで構成され、電力変換時のロスも低く抑えられていると見られる。これに放熱効果に優れるFins-Array IIヒートシンクと小径ファンの組み合わせならば、こうしたぬるま湯レベルの低い温度に抑えられるている。ABTの威力をフルに発揮させるにはPowerLimitをもっと盛り盛りに設定する必要があるが(もちろんCPUの冷却も重要)、マザーの電源回路周りの余力はまだまだありそうなのでもうちょっと攻めた設定も可能だろう。
より負荷が低いPCMark 10では、CPUの最大温度が68℃だったがこれは瞬間的なものだった。MOSFET温度はグラフのとおり37℃で見事なフラット。瞬間的に36℃に“下がる”シーンさえあったほどだ。
このように、Z590 AORUS MASTER (rev. 1.0)のVRM設計は高負荷時でも30℃台という低い温度でキープできており、極めて安定感に不満のない仕上がりになっている。今回はCPU定格かつBIOSの設定変更はABT有効化のみで動かしてみたが、ハイエンドゲーマーはより高いパフォーマンスを引き出すために、Power Limitを盛り気味に設定したり、さらにはCPUのOCをしたりといった使い方を望むケースも考えられる。
本機では、強力な電源回路とそれを守る冷却装備を備えている一方で、Power Limitはだいぶ抑えめに設定してきている。これは、マザーの設計思想が「定格では安定志向、性能が欲しいなら自分でもっとチューニングする余地を用意してあるよ」ということではないかと推察できる。そう考えると、確かな設計、潤沢な機能と合わせ、Z590 AORUS MASTERはハイエンドゲーマーのニーズをバッチリ満たすことが可能な製品だと言えるのではないだろうか。
[制作協力:GIGABYTE]