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ゲーマー向けGPU最高峰「GeForce RTX 3080 Ti」は高OCでRTX 3090を超える!?MSIの最新・最強設計カードをテストする
「GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12G」をRTX 3090/3080と比較する text by 芹澤 正芳
2021年6月16日 00:00
重量級ゲームも4Kで遊べるハイパワーGPUが追加
2021年6月1日に発表されたNVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 3080 Ti」。Ampereアーキテクチャを採用し、フラグシップのRTX 3090とハイエンドクラスのRTX 3080の間を埋めるべく投入されたGPUで、CUDAコア10,240基、RTコア80基、Tensorコア320基、ビデオメモリがGDDR6Xの12GBというモンスタースペックだ。
コアとメモリの仕様はシリーズの最上位モデルであるRTX 3090(CUDAコア10,496基、RTコア82基、Tensorコア328基、ビデオメモリがGDDR6Xの24GB)に近く、“RTX 3090のメモリ12GB版”と言ってよい存在だ。RTX 3090は8K解像度でのゲームプレイのみならず、強力な処理能力と大容量メモリを活かしたクリエイティブ用途も強く意識しているが、純粋なゲーマーにとってはやや過剰なスペックでもある。つまり、RTX 3080 Tiは4K解像度+高画質、WQHD解像度+高フレームレートでの快適なプレイを目指すゲーマーにとってはドンピシャなGPUだ。ハッシュレート制限がかけられてはいるが、これはゲーマーにとってデメリットにはならないだろう。
そのRTX 3080 Tiを搭載するカードの中でも、高い冷却力によって最高クラスのブーストクロックを実現しているのがMSIの「GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12G」。定格のRTX 3090を大きく超えるブーストクロックで、どこまでゲームでフレームレートが出るのか、「RTX 3090」と「RTX 3080」を交え、性能を測定していきたい。
オリジナルの冷却システム「TRI FROZR 2S」を採用
MSIのビデオカードのランク付けの中でも最高峰である“SUPRIM”を冠するGeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gは、ブーストクロックは1,830MHzと定格の1,665MHzを大きく上回るファクトリーOCモデルだ。クロックの値だけ見てもRTX 3090の定格ブーストクロック1,695MHzも上回る、非常に高い設定だ。
冷却システムには独自の「TRI FROZR 2S」を採用。ファンブレードを2枚ずつ外輪で連結させることで風をより集中させると言う「TORX FAN 4.0」を3基搭載。GPUの熱はニッケルメッキされた銅製のベースプレートが即座に吸収、コアパイプと呼ばれる四角形に成形されたヒートパイプがその熱を効果的にヒートシンクへと分散させ、波状に湾曲した「Wave-curved 2.0」のフィンが一番冷却が必要とする場所にファンの風を送り出す。
さらに、メモリにも専用のヒートパイプを配置し、バックプレートにもサーマルパッドを備えて冷却効果を高める徹底ぶり。高いブーストクロックのGPUをガッチリ冷やす仕組が導入されている。
その実力は確かなもので、重量級ゲームである「サイバーパンク2077」のプレイ中でも最高77.9度と80度以下を保ち、このときのファンの回転数は1,560rpm前後とそれほど高くはなく、動作音はさほど気にならないレベルだ。今回はベンチ台を使ったバラック組みでテストしているが、PCケースに組み込めばファンの音はほとんど気にならないだろう。また、準ファンレス仕様なので、低負荷時にはファンが完全に停止する。
超ハイエンド仕様と言えるだけに、カードは“でかい”。カード長は33.6cmもあり、厚みも3スロット分ある。さらに、ブラケットから上方向にかなりはみ出している背の高い形状であるため、手持ちのPCケースに組み込めるかはしっかり確認しておきたい。また、重量は1,905gと2kg近くあるため、PCケース組み込み時にビデオカードを支えるサポートステイも同梱している。
補助電源は8ピン×3構成。GeForce RTX 3080 Tiは定格のカード全体の消費電力は350Wだが、GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gは高OCモデルということもあり400Wとかなり大きい。推奨電源は750W以上だ。ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1と現在もっとも多いパターン。また、ファンの間、天板、バックプレートにRGB LEDを搭載し、ユーティリティの「MSI Center」で発光パターンを設定できる。
ベンチマークで実力をチェックする
ここからはベンチマークに移ろう。比較対象として「NVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Edition」と「NVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition」を用意した。すべてResizable BARを有効にしている。GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gの動作モードは、標準のGAMING Modeでテストを実行した。
テスト環境は以下のとおり。
CPU | AMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド) |
マザーボード | MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI (AMD X570) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL (PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)※PC4-25600で動作 |
システムSSD | Kingston KC600 SKC600/1024G (Serial ATA 3.0、1TB) |
データSSD | CFD PG3VND CSSD-M2B1TPG3VND [M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
CPUクーラー | 簡易水冷クーラー(28cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。ほとんどRTX 3090とスコアは変わらない。誤差レベルと言ってよいだろう。RTX 3080に対しては5%~15%程度の向上となった。
次に消費電力をチェックする。ラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用してシステム全体の消費電力を測定。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spyデモモード実行時の最大値を3DMark時とした。
ブーストクロックが高いため、当然とは言えるがGeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gの消費電力がトップとなった。RTX 3090より38Wも大きい。GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gの推奨電源は750Wになっているが、ハイエンドCPUと組み合わせるなら、余裕を持って850W以上、できれば1,000W以上の電源を使ったほうがよいだろう。
カード単体の消費電力もチェックしてみよう。3DMarkのTime Spy Street Testを10分間実行したときのカード単体の消費電力をモニタリングアプリの「HWiNFO64」(GPU Power [W]の値)で測定した。
カード電力はGeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gが400W、NVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Editionが350W、NVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Editionが320Wなので、それがほぼそのまま結果として出ている。設計とおりの動作と言えるだろう。
実ゲームで分かる真の実力
実ゲームでの性能を見ていこう。まずは人気のバトルロイヤルゲームの「フォートナイト」(チャプター2のシーズン6)から。最高画質設定と、それにレイトレーシングとDLSSを有効にした2パターンでテストした。どちらもソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapframeXで測定している。
RTX 3090がわずかにフレームレートが上というだけで、ほぼ拮抗と言ってよいだろう。フルHD解像度なら平均230fpsを超えており、最高画質でもリフレッシュレート240Hzなど超高速のゲーミング液晶の性能を十分活かせる。4Kでも平均100fpsを超えており、余裕でプレイ可能だ。その一方で、フォートナイトのレイトレーシング機能は非常に重く、DLSSをパフォーマンス設定にしても4Kだと平均45fps程度。快適にプレイできるのはWQHDまでになる。
続いて、レイトレーシング非対応だが、動作が重いゲームの「アサシン クリード ヴァルハラ」を試して見たい。ゲーム内のベンチマーク機能を使用してフレームレートを測定している。
GeForceで性能が伸びにくいゲームではあるが、それでもGeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gは4Kで平均64fpsと十分快適にプレイできるフレームレートを出した。そのほかの解像度でもRTX 3090を超えており、高いブーストクロックの威力が発揮された結果だ。
続いて、レイトレーシング対応の重量級ゲームとして「サイバーパンク2077」を試して見たい。マップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapframeXで測定している。レイトレーシングの画質設定はすべて最高、DLSSはパフォーマンスに設定した。
ここでも、4K解像度以外はRTX 3090を上回った。フルHDのフレームレートがそれほど伸びていないのは、DLSSは負荷が軽くなる低解像度では効きが弱くなるため。DLSSを使うのが前提とはいえ、GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gならサイバーパンク2077を4K&レイトレーシング最高画質設定で平均60fps以上をキープできる素晴らしい。
次は、話題の最新ホラーアクション「バイオハザード ヴィレッジ」でのフレームレートを測定してみよう。画質のプリセットで「限界突破」を選んだ上で、レイトレーシングを有効、関連する画質をすべて最高に設定した上で、マップの一定コースを移動した際のフレームレートをCapframeXで測定している。
バイオハザード ヴィレッジはDLSS非対応だが、レイトレーシングを有効にしても劇的には重くならない。そのため、画質をすべて最高に設定しても4K解像度で平均100fpsオーバーと余裕で快適にプレイできるフレームレートを出した。RTX 3090のほうがフレームレートは上だが差はごくわずか。ほぼ同等と言ってよいだろう。
続いてゲームプレイ時のGPUクロックと温度の推移をチェックしていこう。サイバーパンク2077を20分間プレイしたときのGPUクロックと温度をモニタリングアプリの「HWiNFO64」で測定した。
GPUクロックは最初1,950MHzからスタート、GPU温度が上がると1,935MHz前後に落ち、77度を超えた辺りで1,900MHz前後で落ち着いた。1,900MHz前後が続くとGPU温度はゆっくりと下がり、最終的には75度前後まで下がった。GPU温度に合わせてクロックが微調整されるため、これなら長時間のゲームプレイでも安心と言える。
以上、GeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gのテストを各種行なってきたが、「RTX 3080以上を上回り、RTX 3090に迫る」と言われるその実力はまさしく評判どおり。とく高OC仕様の本機は、RTX 3080 Ti搭載カードとして最高峰の実力を持つと言ってよいだろう。高いブーストクロックによって上位GPUのRTX 3090を上回る性能を見せることもあり、ゲームを遊ぶためのビデオカードとしてはまさに文句なしの性能だ。消費電力は大きいが、冷却力も十分確保されており、多くのゲーマーにとって魅力的な1枚であることは間違いない。
急きょ追試!フォートナイト最新パッチでのテスト結果速報!!
……とまとめの文章を書き終え、テスト結果をまとめて担当編集に送付、と最後の仕上げをしていた矢先の6月8日、フォートナイトがチャプター2 シーズン7の配信が開始された。PC版はグラフィックス関連に大きなアップデートが入り、爆発や火、スラープのエフェクトが強化、影の品質なども向上されている。これにより、画質“最高”はより高いスペックが要求されるようになり、画質“高”設定がこれまでの“最高”と同等になった。
これほどの大改修だと、どれほど負荷が変わったのかが気になるところ。そこで、締め切り間際にGeForce RTX 3080 Ti SUPRIM X 12Gで試してみた。同じくソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapframeXで測定しているが、バージョンアップが行なわれると過去のリプレイデータは使えなくなるため、新しく作り直している。筆者は、フォートナイトのリプレイデータを作る際、「建築する」、「オブジェクトを破壊する」、「敵を倒す」、「乗りものを運転する」の動作は必ず入れるようにしているが、負荷の条件は同一ではない、という点は考慮して見てほしい。また、レイトレーシングあり、なしの両方でテストしている。
チャプター2 シーズン6に比べて画質“最高”設定だと、平均13~17fpsほどフレームレートが下がっている。それなりに負荷が増えたと言えるだろう。その一方で、レイトレーシング有効時は逆に若干フレームレートが向上した。フォートナイトのレイトレーシングは非常に重かったので、何かしらの改良が入った可能性がある。この調子でもっとレイトレーシングの動作が軽くなることを期待したい。
[制作協力:MSI]