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4TB SSD×4 + 10GbEで最速NASを構築、実測1.2GB/sでクリエイター用途もゲームも速い!

オールSSDでも4TB SSDなら実用的な容量に text by 坂本はじめ

 2021年10月、CrucialのSATA SSD「MX500」シリーズに最大容量となる4TBモデルが追加された。

 メモリ/ストレージ大手のMicronが擁するCrucialブランドにおいて、MX500シリーズはコストパフォーマンスと信頼性で確かな評価を得ているSSDであり、その新モデルは、かつて超大容量とされていた4TBのSSDをPCユーザーの手にもたらす有力な選択肢のひとつだ。

 そんなMX500の4TBモデル4台使い、今回10GbE対応の高速NASを構築してみた。手の届く存在となった4TB SSDと10GbEを用いたNASのパフォーマンスを確認してみよう。

“SSDの容量は少ない”といった状況を解消する4TB SSDCrucial MX500シリーズの最大容量モデル「CT4000MX500SSD1」

6Gbps SATA SSD「Crucial MX500シリーズ」。

 CrucialのMX500シリーズは、Micron製の3D TLC NANDフラッシュメモリを搭載し、インターフェイスに6Gbps SATAを採用した2.5インチのSATA SSDだ。

 MX500シリーズ最初の製品は2018年の発売だが、リード最大560MB/s、ライト最大510MB/sというパフォーマンスは現在でもSATA SSDの中では最上級であり、最大で1,000TBW(4TB)に達するMicron製3D TLC NANDフラッシュメモリの耐久性も優れたものだ。これらの性能と質を備えながら、コストパフォーマンスと信頼性にも優れたMX500シリーズは、発売から現在に至るまで定番SSDとして不動の評価を獲得している。

 新モデルである4TBモデル「CT4000MX500SSD1」は、他のモデルと同じく7mm厚の2.5インチ筐体を採用している。スペック的には、従来モデルと同等のシーケンシャルアクセス性能を備えている一方、ランダムリード性能のみ僅かに低い数値となっている。

 ベンチマークテスト「CrystalDiskMark」を実行したところ、ほぼスペック通りのパフォーマンスが計測され、4TBモデルもSATA SSD最上級のパフォーマンスを実現していることが確認できた。

Crucial MX500の4TBモデル「CT4000MX500SSD1」。
本体裏面。7mm厚の2.5インチ筐体を採用している。
CrystalDiskMark(データサイズ=1GiB)。
CrystalDiskMark(データサイズ=64GiB)。

4TB SSD×4台 + Ryzen搭載NAS + 10GbEカードでNASを構築今組める最速NASを目指す

4TB SSD×4台で10GbE NASを構築。

 今回は、4TB SSDであるCT4000MX500SSD1を4台使って10GbE NASを構築する。そのために用意したのがQNAPの4ベイNAS「TS-473A」だ。

 QNAP TS-473Aは、4コア8スレッドCPU「AMD Ryzen Embedded V1500B」を搭載した高性能NASで、2.5GbEを2ポート標準搭載する他、M.2スロットやPCIeスロットを備えており、拡張性にも優れている。今回はその拡張性を活用して、QNAPの10GbE拡張カード「QXG-10G2T-X710」を搭載。10GbE NASとして利用する。

QNAPの4ベイNAS「TS-473A」。2.5GbE NASだが拡張性に優れており、10GbE拡張カードやM.2 SSD増設カードなどを追加できる。
2基の10GbEを備えるQNAPの10GbE拡張カード「QXG-10G2T-X710」。バスインターフェイスはPCIe 3.0 x4。

 今回NAS側の接続は10GbE、2.5GbE、1GbEの3パターンでテストを行う。GbEはGigabit Ethernetの略称で、ネットワーク接続の規格名だ。ネットワーク機器の帯域幅(速度)はbpsで表記されることが多く、ストレージなどに使われることが多いMB/s・GB/sといった値で記載されることはあまりない。bpsの値を8で割るとB/sの値になるので、計算すれば変換できる数値だが、今回は早見表としてネットワーク接続規格の最高速度を記載しておく。ベンチマークなどで速度を計測した際、このデータ転送速度の理論値に近い値が出せていれば、その機器は規格の速度をしっかりと引出せているということになる。

RAID 0はもちろん、RAID 5やRAID 10もかなり高速、RAIDレベルごとの速度をチェック

 QNAP TS-473Aでは、搭載した4台のSSDを使ってRAIDボリュームを構築できる。今回は、代表的なRAIDレベルである「RAID 0、5、10」の3種類で、それぞれどの程度のパフォーマンスが得られるのかテストしてみた。

 NASのパフォーマンスを測定するために用意したのはRyzen 7 5800Xを搭載したB550環境で、Intelの10GbE拡張カード「X550-T2」でNASとの10GbE接続を実現している。その他、主なパーツ構成は以下の通り。

 RAID 0では、リード・ライトともに1,200MB/sを超える速度を実現しており、10GbEの仕様上の最大速度である1,250MB/sをほぼほぼ使い切っている。

 RAID 5やRAID 10では、ライト速度が800MB/s台に低下しているものの、リード速度はRAID 0と遜色ない速度が出ており、この速度はCrystalDiskMarkのデータサイズを64GiBまで増やしてもほぼ変化していない。大容量のデータ転送を行う場合でも、4台のSSDによって構築した10GbE NASは素晴らしい転送速度を発揮してくれるだろう。

RAID 0
「RAID 0」でのCrystalDiskMark(データサイズ=1GiB)。
「RAID 0」でのCrystalDiskMark(データサイズ=64GiB)。
RAID 5
「RAID 5」でのCrystalDiskMark(データサイズ=1GiB)。
「RAID 5」でのCrystalDiskMark(データサイズ=64GiB)。
RAID 10
「RAID 10」でのCrystalDiskMark(データサイズ=1GiB)。
「RAID 10」でのCrystalDiskMark(データサイズ=64GiB)。

10GbE NASは実際どれくらい速い?2.5GbE/1GbE接続時と、内蔵SATA HDDと速度を比較

 ここからは、4TB SSD×4台でRAID 0ボリュームを構築した10GbE NASのパフォーマンスを、2.5GbEと1GbEで接続した場合、およびSATA接続のローカルHDDと比較する。

 検証に使うのは先ほどNASのパフォーマンス計測に用いたテスト環境で、2.5GbEと1GbE接続に関しては、PC側の10GbEであるIntel X550-T2のリンク速度を変更することによって実現している。HDDについては、容量8TBのデスクトップ向けHDDを6Gbps SATAでPCに直結している。

 手始めに、CrystalDiskMarkを実行した結果が以下のスクリーンショットだ。2.5GbEは最大300MB/s弱、1GbEは120MB/s弱という規格上限に近い速度が出ている。一方、HDDも200MB/sをシーケンシャル速度を記録しているが、ランダムアクセス性能に関してはSSDで構成されたNASとの間に大きな差がついている。

10GbE接続(NAS)。
2.5GbE接続(NAS)。
1GbE接続(NAS)。
8TB HDD(6Gbps SATA接続)。

動画/写真ファイルの転送で実用的な速度をテストクリエイター用途で高い性能を発揮する10GbEのオールSSD NAS

 まずは、それぞれの条件でファイルコピーを行ったさいのデータ転送速度を比較する。

 用意したデータは、動画ファイルと写真ファイルをそれぞれ50GiBずつ。動画ファイルは1ファイルあたり10GiBと大容量である一方、写真ファイルは1ファイル平均30MB程度となっている。

動画ファイル。1ファイルあたりの容量は約10GiB。
写真ファイル。1ファイルあたりの容量は約30.5MB。

動画データは読み書きともにかなり高速なデータ転送が可能、快適さは圧倒的

合計50GiBの動画データを使い、読み込み書込み両方の速度をテスト。

 動画ファイルの転送時間は、10GbEが読み書きともに50秒を切るタイムを記録して他を圧倒している。10GbEのデータ転送レートは1,000MB/s=1GB/sを超えており、CrystalDiskMarkの結果に近い速度が出ている。

 2.5GbEも理論値(312.5MB/s)に近い300MB/s超えの速度を達成し、6Gbps SATAでPCに直結したHDDを凌ぐパフォーマンスを発揮しているのだが、10GbEの圧倒的な速度の前では霞んでしまっている。

数十MB単位の細かいファイルの連続転送も高速、大量の写真を扱う用途でも高い性能を発揮

合計50GiBの写真データを使い、読み込み書込み両方の速度をテスト。なお、画像のようにサムネイルを表示させるとサムネイル作成にパフォーマンスが奪われる分速度が低下するので、最高速を引出すのであればサムネイルが表示されない状態での転送が望ましい。今回のテスト結果は最高速を引出すセッティングで行ったものだ。

 写真ファイルの転送時間でも、1分5秒前後で転送を完了した10GbEが圧倒的な速度でトップに立っている。

 1ファイルあたりの容量が少ない代わり数が多いこの条件では、10GbEのデータ転送レートは830MB/s前後に低下しているものの、280MB/s前後だった2.5GbEの3倍前後もの速度であり、シーケンシャルアクセス性能が問われるメディアファイルの転送では、10GbE NASとSSDの組み合わせが威力を発揮した格好だ。

高速なNASは何に使っても速い?NASにゲームをインストールして遊んでみた

 ベンチマークだけでなく、動画や写真といったクリエイティブな用途にも高いパフォーマンスを発揮するオールSSD構成の10GbE NASだが、どんな用途に使用しても高速なのだろうか。

 実験として、NASにゲームをインストールし、ゲーム中のロード時間を比較してみた。今回テストに用いるゲームは「モンスターハンターライズ DEMO」と「バイオハザード ヴィレッジ」。NASは10GbE接続時、2.5GbE接続時、1GbE接続時の3パターンで計測し、SATA接続のHDDにインストールした際と比べてどのような違いが出るのかを調べてみた。

 もちろん、快適なゲーム環境を求めるのであれば、ゲームはNVMe SSDにインストールするのが良いが、帯域幅はともかく、LANで接続するNASがHDDとはいえPCに直結しているSATA HDDを上回れるのかにも注目してもらいたい。

 ちなみに、SteamではNASをゲームのインストールフォルダとして利用することが可能で、実際にゲームを起動することもできる。

Steamではネットワークドライブにも「ライブラリフォルダー」を追加できる。
実用的かどうかは別な話になるが、NASをゲームのインストール先として利用することが可能だったりと柔軟性は高い。

シーケンシャルアクセスの速度も重要な「モンスターハンターライズ DEMO」

モンスターハンターライズ DEMO。

 モンスターハンターライズ DEMOでは、クエスト開始時のロード時間を測定してみた。テスト時の画面解像度は4K(3,840×2,160ドット)で、グラフィック設定は「高」。

 もっともロード時間が短かったのは「5.0秒」を記録した10GbEで、以下2.5GbE(5.9秒)、HDD(7.1秒)、1GbE(8.3秒)の順だった。やはり10GbEが高速であることを確認できた一方で、SSDを用いたNASであっても、1GbE接続ではHDDを下回ってしまうこともあるというのは興味深い結果だ。

データ量が多いゲームほど10GbE NASの性能が活きる?「バイオハザード ヴィレッジ」で計測

バイオハザード ヴィレッジ。

 バイオハザード ヴィレッジでは、セーブデータを選択してからロードが完了するまでの時間を測定した。テスト時の画面解像度は4K(3,840×2,160ドット)で、グラフィックは自動設定で「画面品質重視」を選択した。

 ここでも最速は10GbEの「8.2秒」で、以下2.5GbE(9.9秒)、1GbE(14.5秒)、HDD(16.5秒)の順だった。

 1GbEはHDDを上回る速度を実現しているが、2.5GbEや10GbEとの差は大きい。ゲームでのロード時間比較ではランダムアクセス性能に優れたストレージが優秀な結果を残すことが多いが、最大でも125MB/s程度しかでない1GbEでは流石にシーケンシャルアクセス性能がボトルネックとなっているようだ。

ローカルHDDを凌駕する容量と速度が実現可能となった「4TB SSD × 10GbE NAS」オールSSD NASの弱点であった容量の少なさも、大容量SSDの登場でカバーされつつある状況に

 今回使用したCrucial MX500の4TBモデル「CT4000MX500SSD1」は、税込み4.5万円前後で購入することができる。1GBあたりの価格は約11円となっており、実売価格的にも容量単価的にもPCユーザーの手が届くSSDだ。

 今回のように10GbE NASに組み込めば、10TBを超える大容量とローカルHDDを圧倒する速度を実現することも可能だ。特に、速度面については単にベンチマーク上の数値や大容量ファイルの転送時だけでなく、ゲームのインストール先としても使い物になるレベルであり、SATAでPCに直結したストレージに勝るとも劣らぬ快適性を得られる。

 大容量SSDの登場と販売価格の低下は、大容量と速度の両立という困難を解消しつつある。当然、2TBや1TBというテラバイト級の容量を実現する下位モデルについても、以前より入手しやすい価格になっている。PCやNASの強化を検討しているのであれば、Crucial MX500シリーズの容量と価格はぜひともチェックしておきたい。

[制作協力:Crucial]