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Mini-ITXで空冷ハイエンドなら「Torrent Nano」、Fractal Designの冷える小型ケース
ハイエンドビデオカードの熱も籠らないMini-ITXケース text by 坂本はじめ
2022年2月18日 00:00
Fractal Designの新作ケース「Torrent Nano」は、同社がエアフローを追求して設計されたフルタワーケース「Torrent」の特徴を継承しつつ、小型化したMini-ITX専用ケースだ。Torrent譲りの通気性の高いシャーシに、180mmの大口径ファンを標準搭載したTorrent Nanoは、高性能であると同時に高発熱でもあるハイエンド構成への高い適正が期待できる。
今回はTorrent Nanoの特徴を写真で紹介しつつ、実際にGeForce RTX 3090を組み込んだ際のパフォーマンスや動作温度をテストした。コンパクトなハイエンドマシンの構築を狙うユーザー注目の新作ケース「Torrent Nano」の実力をチェックしてみよう。
4種類のバリエーションが展開されるTorrent Nano今回は黒で統一された「Torrent Nano Black TG Dark Tint」をテスト
Fractal DesignのTorrent Nanoは、エアフロー特化ケース「Torrent」のデザインを継承したMini-ITX専用のキューブ型ケースだ。筐体サイズは222×374×417mm(幅×高さ×奥行)。
Torrent Nanoには4種類のバリエーションモデルが用意されており、本体カラーやサイドパネルのスモーク具合、搭載ケースファンのRGB LEDイルミネーション対応の有無が異なる。今回テストするのは、カラーリングを黒で統一した「Torrent Nano Black TG Dark Tint」だ。
Torrent Nano Black TG Dark Tintは、外装から内装まで黒一色で統一されたシャーシの両サイドに、ダークスモーク仕様の強化ガラスパネルを採用。Torrent譲りの通気性に優れた設計のフロントグリルの奥には、180mm角の大口径ファンが標準搭載されており、前面から吸気した空気が背面へと抜けるエアフローを実現している。
エアフローを重視したTorrent Nanoの内装をチェックハイエンドビデオカードを収容可能なスペースを確保
ここからは、サイドパネルなどを取り外してTorrent Nanoの内装をチェックしていこう。
フルタワーケースのTorrentがそうであったように、主要パーツを搭載する左側面からストレージベイなどエアフローの妨げになる要素は排除されており、前面から背面へとスムーズに風が抜けるようデザインされている。ケース背面部の拡張スロットは3スロットで、最長335mmまでの拡張カードを搭載できる。
右側面は配線スペースとなっており、各所にケーブルマネージメント用のストラップが配置されている。シャーシと側面パネルの間には29mmの空間が設けられており、24ピン電源ケーブルやPCIe電源ケーブルを配線するのに十分なスペースが確保されている。
また、マザーボード用のメンテナンスホール部分には、着脱可能な2.5インチSSD用ストレージベイが配置されており、2台のSSDを搭載できる。
天板を取り外すと、電源ユニットを搭載するためのスペースにアクセスできる。Torrent Nanoには最大で200mmの電源ユニットを搭載できるスペースが用意されているが、プラグイン方式の電源ユニットを用いる場合や、配線スペースまで考慮するのであれば、180mm程度にとどめるのが良さそうだ。
また、電源ユニット搭載スペースのケース左側面側にはLEDライティングバーが配置されている。このライティングバーにはアドレッサブルRGB LEDが組み込まれており、3ピンコネクタでマザーボードなどと接続することによってLEDイルミネーションを楽しむことができる。
天板部分には着脱可能なストレージベイも用意されており、「3.5インチHDD+2.5インチSSD」または「2.5インチSSD×2台」を搭載できる。
このストレージベイは取り付け位置が2か所用意されており、背面寄りに取り付けると3.5インチHDDを搭載できるようになる一方、電源ユニットのスペースは最大175mmに短くなり、ケーブルの取り回しまで考えると、プラグイン電源は150mm程度が限度となる。前面寄りに配置すると3.5インチHDDは搭載不可となる代わりに電源ユニットの搭載スペースは200mmとなるが、こちらもプラグイン電源を用いるのであれば電源長には25mm程の余裕を見た方が良いだろう。
Torrent Nanoには、ビデオカード用のサポートステイが同梱されている。シャーシに取り付ければ、ビデオカードの自重による変形を抑制することができる。
180mmファン1基でシンプルかつスムーズなエアフローを実現底面や背面へのファン追加や、フロントファンの交換も可能
Torrent Nanoが標準で搭載するケースファンはフロントの180mmファンのみで、RGB LED対応モデルは「Prisma AL-18 ARGB PWM」、今回のモデルを含めそれ以外のバリエーションでは「Dynamic X2 GP-18 PWM」が搭載されている。いずれもPWM制御に対応しており、ファンスピードは300~1,200rpm。
Torrent Nanoは、この180mmファンでフロントからリアへと抜ける、シンプルでスムーズなエアフローを構築しているのだが、このファン構成はユーザーがカスタマイズできる。フロントファンは140mmまたは120mmファンに交換可能で、底面に2基の140mmまたは120mmファン、背面に120mmファンを1基追加できる。
底面に関しては、25mm厚ファンを搭載すると拡張スロットの一つが使えなくなるため、ビデオカードを搭載する場合は利用に制限が生じることもあるが、各所のファンステイには冷却ファンだけでなく、水冷ラジエーターを設置することもできる。
Torrent NanoはOC版GeForce RTX 3090の発熱を処理できるのかハイエンド級ゲーミングPCを構築して冷却性能をテスト
ここからは、実際にTorrent Nanoを使って組み立てた実験PCを使って、その換気能力がハイエンドパーツの発熱に耐えられるものであるのかを確認する。
今回、Torrent Nanoに組み込んだのは、Alder Lake-Sベースの10コア16スレッドCPU「Core i5-12600K」と、ウルトラハイエンドGPUであるGeForce RTX 3090をオーバークロックして搭載したビデオカード「MSI GeForce RTX 3090 GAMING X TRIO 24G」。
ケースファンの追加は行っていないので、標準構成である180mmファン1基のみで作り出すエアフローだけで、このような高発熱パーツから生じる熱をしっかり処理できるのかに注目しよう。
CPUベンチマーク「CINEBENCH R23」でCPU性能と動作温度をチェック
CPUの3DCGレンダリング性能を計測するベンチマークソフト「CINEBENCH R23」を使って、CPUであるCore i5-12600Kがその実力を発揮できるのか確認してみた。
まず、標準の最低実行時間=10分で実行したベンチマークスコアは、Multi Coreが「17,033」で、Single Coreは「1,825」。このベンチマークテストにおけるCore i5-12600Kとしては、フル性能を発揮していると言える数値であり、Torrent NanoとCPUクーラー「Noctua NH-U9S chromax.black」の組み合わせは、Core i5-12600Kの発熱をしっかり処理できているようだ。
実際にどの程度CPUを冷やせているのかを確かめるべく、最低実行時間を30分に延長したMulti Coreテストを実施。テスト実行中のモニタリングデータから、CPUの温度や動作クロック、冷却ファンの動作状況をグラフ化してみた。
CINEBENCH R23 Multi Coreテスト実行中のCPU温度は平均79.4℃、最高83.0℃だった。Pコアは約4.5GHz、Eコアは約3.4GHzで動作しており、それぞれ全コアがアクティブな状況における最大ブーストクロックであり、CPUが常にフルパワーで動作していたことを示している。
このさい、ケースファンは平均376rpm、CPUファンは平均1,820rpmで動作している。ケースファンはかなりの低速で動作しているが、推移グラフ上でもCPU温度の上昇がしっかり抑えられていることから、スムーズな換気によってケース内温度の上昇をしっかり抑えられていることが伺える。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでスコアと動作状況をチェック
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを4K解像度(3,840×2,160ドット)かつ最高品質設定で実行した際の結果が次のスクリーンショットだ。スコアは「16,975」で、最高評価の「非常に快適」を獲得している。
つづいて、先ほどと同条件でベンチマークテストを約30分間ループ実行し、その際のモニタリングデータから各種グラフを作成した。なお、テスト時はフレームレート上限を解放しているので、スコア計測時と同様の動作となっている。
テスト実行中のCPU温度は平均55.1℃、最高66.0℃。GPU温度は平均81.1℃、最高83.0℃だった。最大温度が100℃であるCPUが温度によって動作を制限されていないのは明らかで、GPUに関しては平均1,793MHzで動作しており、これはスペック上のブーストクロック1,785MHzを上回っていることから、かなりの好条件でブースト動作を維持できていることが伺える。
このさい、ファンスピードは平均836rpmで動作している。ケースファンの最大スピードは1,200rpmなので更なる換気能力の上昇も可能だが、それなりの静粛性を維持できるこの速度でも、TGPが370Wに達するオーバークロック版GeForce RTX 3090性能を引き出せるのは優秀な結果であると言えよう。
超高負荷が続くBattlefield 2042でも熱ダレせず常時ブーストクロックで動作
バトルフィールドシリーズの「Battlefield 2042」をプレイして、フレームレートや動作温度などを確認してみた。テスト時の画面解像度は4Kで、グラフィックプリセットは「最高」にしている。
フレームレートは多くの場面で90fps前後を記録しており、今回の実験用PCはBattlefield 2042を十分快適にプレイできるだけのパフォーマンスを発揮している。
プレイ中のCPU温度は60~70℃程度で、GPU温度は80℃前後。GPUクロックについては1,800~1,900MHz程度で動作しており、ブーストクロックの1,785MHzを超える高クロック動作を維持できていた。実際のゲームでもハイエンドパーツを安定して冷やしながら運用できていることが分かる。
最新レースゲームのForza Horizon 5もGPUは冷却十分で常時ブースト動作
オープンワールドレーシングの最新作「Forza Horizon 5」では、画面解像度を4K、グラフィックプリセットを「エクストリーム」に設定して、ベンチマークモードを複数回連続実行したときや、実際のプレイ中にGPUの温度やクロックを確認してみた。なお、同条件でベンチマークモードを実行した際の平均フレームレートは86fpsだった。
プレイ中の動作温度は、CPUが60℃前後、GPUは80℃前後だった。GPU使用率はほぼほぼ100%に張り付いており、GPUクロックは1,900MHz前後を記録している。これだけの高クロック動作を維持できているのは、GPUが十分に冷却されているからに他ならない。
ハイエンドパーツにも対応可能な冷却能力を備えたMini-ITXケースコンパクトで高性能なゲーミングPCを自作できるTorrent Nano
エアフロー特化ケースであるTorrentのデザインを継承したTorrent Nanoは、180mmファンのスムーズなエアフローによって、高発熱なウルトラハイエンドGPUの性能をしっかり発揮することができた。コンパクトなゲーミングPCの自作を狙うユーザーにとって、この換気能力は魅力的なものだ。
小型ケースの宿命として、底面ファンと3段目の拡張スロットや、電源ユニットとストレージベイのように、一部の機能には同時使用が不可能であったり制限が生じる場合もあるが、小型ケースの中では比較的組み立てやすく設計されてもいる。タワー型ケースよりも省スペースなPCの自作に挑戦してみたいユーザーにもおすすめだ。
[制作協力:Fractal Design]