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ロープロ/1スロットのRadeon RX 6400は古いPCのアップグレードに最適?Skylake世代のスリムPCに搭載してみた
ライバルのGeForce GTX 1650と10本のゲームで全面対決 text by 芹澤正芳
2022年5月2日 00:01
4月22日よりAMDのエントリークラスGPU「Radeon RX 6400」搭載のビデオカードが発売開始となった。
Radeon RX 6000シリーズで一番下のグレードと性能面の注目度は低いが、その真価は、“補助電源不要”“LowProfile対応”“1スロット占有”“ショート基板”と4つのポイントを満たすモデルが存在している点で、拡張性が限られているスリム型のデスクトップPCに組み込める貴重な製品であることだ。
そこで、今回は古いスリム型のビジネス向けデスクトップPCを実際に用意し、Radeon RX 6400を組み込むことで、どこまでゲームが遊べるのかを試してみた。
なお、今回のレビューは動画でも公開しているので、古いPCのアップグレードを検討しているユーザーは本稿と合わせ動画も是非確認してもらいたい。
補助電源不要の最新エントリークラスGPU「Radeon RX 6400」貴重なLowProfile/1スロットのカードもラインナップ
まずは、Radeon RX 6400のスペックに触れておこう。AMDのエントリークラスGPUの「Radeon RX 6500 XT」から、補助電源不要の電力で動くようにコンピュートユニット数や動作クロックを絞ったという印象だ。
Radeon RX 6500 XTと同じく、インターフェイスはPCI Express 4.0 x4接続(多くのビデオカードはx16接続)、ハードウェアビデオエンコーダーを備えていないので配信しながらのプレイには向かない、出力はDisplayPortとHDMIの2系統のみとかなり割り切った仕様である点は覚えておきたい。
また、原稿執筆時点での価格はRadeon RX 6500 XTは26,000円前後から、Radeon RX 6400は23,000円前後からとスペック差から考えると価格差は小さい。為替の影響もあって仕方のない部分もあるが、Radeon RX 6400は発売されている搭載製品のほとんどがショート基板やLowProfile対応と圧倒的な組み込みやすさを持っている。
とくに注目はLowProfile対応だ。Radeon RX 6400登場までは、LowProfile対応でゲームがそれなりに遊べるビデオカードは“GeForce GTX 1650”一強という状況が長く続いていただけに、スリム型PCに搭載できるビデオカードの新たな選択肢として期待されている。
今回使用するRadeon RX 6400搭載ビデオカードは玄人志向の「RD-RX6400-E4GB/LP」。補助電源不要、LowProfile対応、1スロット占有、そしてカード長はわずか15.2cmという小ささ。GeForce GTX 1650はLowProfile対応でも2スロット厚が基本で、カード長も16cm以上が多い。組み込めるPCの幅広さでは、RD-RX6400-E4GB/LPはビデオカードの中でもかなり優秀と言えるだろう。
x4レーン接続カードを古いPCに使う場合の注意点PCIe 4.0/3.0接続時の性能差を確認してみた
今回の本題は古いビジネス向けPCにRadeon RX 6400を組み込むことだが、当然ながら古いPCはビデオカードの接続がPCI Express 3.0になることが多い。
そこで、実際に古いPCに組み込む前に、最新のAlder Lake環境を使いPCI Express 4.0 x4接続とPCI Express 3.0 x4接続でRadeon RX 6400の性能がどう変わるのかチェックしてみた。あまりにも大きく性能が変わってしまうのであれば、Radeon RX 6400は古いPCのアップグレードには適さないということになる。
検証に使用したのは以下の環境だ。比較対象としてASUSのGDDR5版GeForce GTX 1650搭載カード「GTX1650-O4G-LP-BRK」を加えている。同じLowProfile対応のビデオカードとして性能差があるのかにも注目したい。
【検証環境】 | |
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CPU | Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド) |
メモリ | Corsair DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5200C38(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※DDR5-4800で動作) |
マザーボード | MSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690) |
ストレージ | Western Digital WD_BLACK SN850 WDS200T1X0E(PCI Express 4.0 x4、2TB) |
CPUクーラー | Corsair iCUE H115i RGB PRO XT(280mm水冷クーラー) |
電源 | Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro |
定番ベンチマークの3DMarkで検証、PCIe 4.0/3.0どちらで接続しても性能差は小さい?
まずは定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。以下がPCI Express 4.0/3.0で接続を変えた際のRadeon RX 6400の性能と、比較に使用したGeForce GTX 1650の性能だ。
DirectX 11ベースのFire Strike、DirectX 12ベースのTime SpyともにPCI Express 3.0 x4接続になるとスコアが微減。それでもGeForce GTX 1650を上回っているという結果だ。
これだけだと、Radeon RX 6400は優秀に見え、PCI Expressの世代に関わらず性能は出ているようにも見える。
実ゲームではPCIe 3.0接続でもRadeon RX 6400はGeForce GTX 1650と互角の勝負
3DMarkではPCI Express 4.0/3.0接続で性能差があまりでなかったRadeon RX 6400だが、実際のゲームではどうだろうか。
ここでは、5本のゲームを用意した。「レインボーシックス シージ」、「Forza Horizon 5」、「サイバーパンク2077」はゲーム内のベンチマーク機能で測定。「Apex Legends」はトレーニングモードの一定コースを、「エルデンリング」はリムグレイブの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定している。
レインボーシックス シージは最高画質になるとメモリバス幅が64bitと狭いのが影響してフレームレートはGeForce GTX 1650よりも下回る。PCI Express 3.0 x4接続ではさらにインターフェースの帯域も狭くなるため、フレームレートの落ち込みが目立つ。その一方で、中画質設定ではインターフェースの影響は小さく、GeForce GTX 1650を上回った。得手不得手がハッキリ見えた結果だ。
Apex Legendsでは、インターフェースの影響は小さかったが、どちらの画質設定でもGeForce GTX 1650を下回った。ただ、差はそれぞれ数フレームといったところなので、性能差はかなり小さい。
Forza Horizon 5は、描画負荷が高いためか最高のエクトリーム画質、中画質のどちらもPCI Express 3.0接続だとフレームレートが落ちこんだ。それでも中画質ならGeForce GTX 1650を上回っているのがポイントだ。
重量級ゲームのサイバーパンク2077では、画質に関係なくPCI Express 3.0接続だとフレームレートが落ち込んでいる。PCI Express 4.0接続ならばウルトラ画質以外はGeForce GTX 1650を上回るが、PCI Express 3.0接続ではすべての画質設定で負けてしまった。重量級ゲームでは、インターフェースの影響が出やすいと見られる。
エルデンリングもRadeon RX 6400だけ見るとサイバーパンク2077と同じ傾向だが、PCI Express 3.0接続でもGeForce GTX 1650のフレームレートを上回った。Radeon RX 6400が得意とするゲームと言ってよいだろう。
全体的に見ると、Radeon RX 6400はPCI Express 3.0接続になるとおもに高画質設定や重量級ゲームで10%~20%程度のフレームレートの低下が起きた。それでもGeForce GTX 1650とは勝ったり負けたりとよい勝負。しかも、LowProfile対応のGeForce GTX 1650よりもRadeon RX 6400のほうが安いのもポイント。スリム型PCのゲーミング化に十分使える存在と言えるのではないだろうか。
なお、Radeon RX 6400をPCI Express 4.0とPCI Express 3.0で接続した際の性能差は動画にもまとめているので、そちらも確認してもらいたい。
古いビジネス用スリム型PCにRadeon RX 6400を搭載してゲーミングPCへSkylake世代環境の延命に使える?
前置きが長くなったが、本題の“Radeon RX 6400を古いビジネス向けPCに増設してゲーミング化すると、どこまでゲームが遊べるのか”に移ろう。
今回の企画のために編集部が用意したのが、中古品の「HP EliteDesk 800 G2 SFF」だ。Skylake世代のスリム型デスクトップPCで、CPUは4コア4スレッドのCore i5-6500、DDR4-2133 8GB×2(合計16GB)のメモリ、240GBのSSD(Serial ATA接続)、DVDスーパーマルチドライブというスペック。OSはWindows 10 Proだ。
発売当時のスペックではなく、OSやストレージを交換したいわゆるリフレッシュPCと言える。Skylakeは2015年発売だが、前世代にあたるHaswell/BroadwellからCPUの性能が大きく向上したこともあり、いまでも現役で使っている人はいるだろう。
増設の手順も簡単に紹介しておくが、「HP EliteDesk 800 G2 SFF」はメンテナンス性が高いので増設の作業自体はかなり容易に行えるので困ることはないだろう。
気を付けたいのは優先されるグラフィックデバイスの設定。デフォルトではCPU内蔵GPUが最優先デバイスになっているので、設定を変更する必要がある。
ビデオカード増設後は、電源投入時に「ECS」キーを押してUEFIメニューを起動し、「BIOSセットアップ」→「詳細設定」→「内蔵デバイスオプション」と辿って、プライマリグラフィックスデバイスを「Solt 1:ATI Graphics Controller」に切り換えること。これをやらないとRadeon RX 6400から映像が出力されなかった。
ちなみに、今回はGeForce GTX 1650との比較も行うが、使用したASUSの「GTX1650-O4G-LP-BRK」は2スロット厚でカードも長めなので、フロントのUSBポートを使えるようにするためのケーブルが干渉してしまった。
2スロット占有カードや、カード長が長いモデルを取り付ける際には、こうしたケーブルを外して装着しなければならない場合もあり、フロントのUSBポートなどが使用不能になるケースもあることには注意しよう。
ゲーム10本勝負、Radeon RX 6400とGeForce GTX 1650でガチンコ対決古いスリム型PCのアップグレードに良いのはどっちだ!
ここからは古いビジネス向けPCに搭載した際の性能をベンチマークでチェックしていこう。
4コア4スレッドのCore i5-5600とPCI Express 3.0 x4接続の環境でどこまで性能を出せるのか、前節で紹介したCore i9-12900K環境とのスコアの違いも合わせて注目してほしい。まずは、3DMarkを実行しよう。
Fire Strike、Time SpyともGeForce GTX 1650を上回った。Core i9-12900K環境に対してスコアが落ちるのは、3DMarkはCPU性能が関わるテストが含まれているので仕方のないところ。
次は実際のゲーム。10本を用意した。「レインボーシックス シージ」、「レインボーシックス エクストラクション」、「Forza Horizon 5」、「アサシンクリード ヴァルハラ」、「ファークライ6」、「サイバーパンク2077」はゲーム内のベンチマーク機能で測定。「Apex Legends」はトレーニングモードの一定コースを、「フォートナイト」はソロプレイのリプレイデータを再生した際を、「Ghostwire:Tokyo」はマップ内の一定コースを、「エルデンリング」はリムグレイブの一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定している。
レインボーシックス シージ/エクストラクションは画質設定で勝敗が入れ変わるかたちに
レインボーシックス シージとレインボーシックス エクストラクションは同じ傾向だ。最高画質ではGeForce GTX 1650に負けるが、中画質ではフレームレートが上回る。メモリバス幅やインターフェースの狭さが影響しにくい状況ではGeForce GTX 1650よりもよいパフォーマンスが出るようだ。
Apex LegendsとフォートナイトはGeForce GTX 1650が優位、最適化の差?
Apex Legendsとフォートナイトでは事情が異なってくる。画質設定に関係なくGeForce GTX 1650のフレームレートが上回っている。ゲームによって相性が異なるということだろうが、この人気ゲーム2本でRadeon RX 6400のよさが出ないのはちょっと寂しいところ。
Forza Horizon 5はGeForce GTX 1650に軍配
Forza Horizon 5は最高画質のエクトリームや中画質ではGeForce GTX 1650に追いつけず、低画質でようやく同フレームレートに。しかし、中画質で平均60fps以上を出してプレイできるのはうれしいところだ。
アサシンクリード ヴァルハラとファークライ6は画質設定次第
アサシンクリード ヴァルハラとファークライ6はレインボーシックス シージやエクストラクションと同じ傾向。高画質ではGeForce GTX 1650に負けるが、中~低画質では勝利する。この4本はすべてUbisoftのタイトル。同社のゲームエンジンがこの傾向になりやすいと考えられる。
Ghostwire:TokyoはRadeon RX 6400が優位
Ghostwire:Tokyoは2種類の画質設定ともRadeon RX 6400のフレームレートが上回った。ここでもゲームによって得手不得手があることが分かる。
サイバーパンク2077はGeForce GTX 1650が優位、重量級ゲームはバス幅の影響を受けやすい
サイバーパンク2077は最重量級ゲームと言えるだけに、低画質設定かつアップスケーラーのFSRを使うことでようやく平均60fps以上を出せる。なお、GeForce GTX 1650に対してはどの画質設定でも負けている。描画負荷の高いゲームでは、PCI Express 3.0 x4接続の影響が出やすい。
エルデンリングはRadeon RX 6400が優勢
最後はエルデンリング。このゲームでは2種類の画質設定ともRadeon RX 6400が上回った。ただ、中画質でも平均40.6fps。60fpsまでしか出ないゲームではあるが、快適に遊ぶにはもう少し画質設定を下げたほうがよいだろう。
10本試した結果、Radeon RX 6400がどの画質でもフレームレートがGeForce GTX 1650より上回ったのは2本、高画質設定ではGeForce GTX 1650が強く、中~低画質設定ではRadeon RX 6400が勝つのが4本、GeForce GTX 1650がどの画質でも上回るのが4本と、得手不得手が出たよい勝負になった。GeForce GTX 1650のほうがやや優勢ではあるが、Radeon RX 6400のほうが低価格で小型と考えると善戦していると言ってよいだろう。
消費電力はRadeon RX 6400がわずかに高いものの、冷却面ではRadeon RX 6400が優勢に
今回のHP EliteDesk 800 G2 SFFは電源が200WとゲーミングPCとして使うには少々心許ない。そこで、OS起動10分後をアイドル時、3DMark Time Spy実行時の最大をラトックシステムのREX-BTWATTCH1で測定してみた。
Radeon RX 6400とGeForce GTX 1650は消費電力でみるとほとんど同じ。Radeon RX 6400は高負荷の3DMark実行時でも最大128Wと200W電源で十分動作できる消費電力だ。
スリム型PCに組み込むということで、冷却面も気になるので、サイバーパンク2077を20分間プレイしたときのGPUの温度と動作クロックをHWiNFO64 Proで追ってみた。
意外にもデュアルファンで2スロット占有のGeForce GTX 1650よりもシングルファンで1スロット厚のRadeon RX 6400のほうが冷えている。Radeon RX 6400は最大81℃、GeForce GTX 1650は最大83.6℃だった。
GPUクロックはRadeon RX 6400が2,300MHz前後で動作。GeForce GTX 1650は1,830MHz前後だった。Radeon RX 6400は定格のブーストクロックが2,321MHzなので、ほぼスペック通りの動作と言える。
スリム型PCアップグレードの新たな選択肢に1スロ/ロープロのRadeon RX 6400は価値のある1枚
LowProfile対応でゲームがそれなりにプレイできるビデオカードが非常に少ない中、GeForce GTX 1650とよい勝負ができるRadeon RX 6400の登場は素晴らしいの一言。しかも、今回使用した玄人志向のRD-RX6400-E4GB/LPは1スロット厚でカードも短いので、組み込めるPCの幅が非常に広い。
Skylake世代のビジネス向け中古PCは3万円程度で数多く出回っており、その価格でOSが含まれているのが大きな強み。2.5万円で購入できるRadeon RX 6400と組み合わせれば、5.5万円でゲーミングPCが手に入るとコスパも悪くない。PC強化の選択肢が増えたことは、非常に喜ばしい限りだ。