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「HP ProBook 430 G6」を1TB NVMe SSDに換装、速度/容量ともに大幅向上

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 石川ひさよし

 今回SSD換装の事例として紹介するのは日本HPのビジネスモバイルノート「HP ProBook 430 G6」。

 2019年冬~2020年夏に発売されたモデルで、登場からは3~4年といったところ。13.3型ディスプレイを採用し携帯性も良い。今回用意したのはCore i5/8GBメモリ/NVMe SSD 256GB仕様のモデルで、このSSDを現行世代で容量1TBのNVMe SSDへ換装し、大容量化と高速化を狙った。

 換装の手順と合わせ、換装の前後でどれだけの変化があるのかを紹介しよう。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

ビジネスモバイル「HP ProBook 430 G6」のSSDをアップグレード

 今回使用するHP ProBook 430 G6は第8世代Core(Kaby Lake)を搭載し、重量は約1.49kg。モバイルノートPCの中ではやや重めだが、モバイルにおいて軽さと双璧をなすニーズの堅牢性を高めている。また、狭額縁ベゼルを採用しており、とくに横幅については最新モデルと遜色ないサイズ感を実現している。

 型番は5JC14AV。CPUに4コア8スレッドのCore i5-8265U(ベース1.6GHz/ブースト時3.9GHz)、メモリにDDR4-2400 8GB、ストレージにNVMe SSD 256GBを備えるモデルだ。ディスプレイは13.3インチ/1,366×768ドット。

 そのほか、指紋認証センサー、Wi-Fi 5無線LAN、1000BASE-T有線LAN、USB 3.1 Gen1ポートなどを搭載している。OSはWindows 10 Pro 64bit。

HP ProBook 430 G6(5JC14AV)
CPUCore i5-8265U(4コア/1.6GHz/ブースト時3.9GHz)
メモリDDR4-2400 SO-DIMM 8GB(空きスロット1)
ストレージNVMe SSD 256GB
GPUIntel UHD Graphics for 8th Generation Intel Processors
ディスプレイ13.3インチ/1,366×768ドット
OSWindows 10 Pro

搭載されていたのはNVMe接続の256GB M.2 SSD「SK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」

 HP ProBook 430 G6に搭載されていたSSDは、SK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BAが装着されていた。メーカーによる仕様は見つからず、おそらくは組み込み専用モデルだと思われる。接続インターフェースはPCI Express 3.0 x2(16Gbps)でNVMeに対応している。容量は256GB。

PCに搭載されていたSK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BA
CrystalDiskInfoによるステータス。PCI Express 3.0 x2接続

換装に使うのは1TB/NVMeのSamsung SSD 980

 今回換装に使用するのはSamsung SSD 980の1TBモデル「MZ-V8V1T0B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,000MB/s。接続インターフェースはPCI Express 3.0 x4レーンでNVMeに対応している。

Samsung SSD 980 1TB(MZ-V8V1T0B/IT)
CrystalDiskInfoによるステータス。PCI Express 3.0 x4接続

 Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

●注意点その1

 ノートPC側のM.2スロットはモデルによりPCI Expressの接続レーン数や世代が異なり、モデルによってはSSDの公称値通りの性能が出ないケースもある。これは故障では無いので覚えておこう。

古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一連の流れを紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 NVMe SSD用の外付けケースは3~4千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

●ドライブを暗号化するBitLockerに注意!

 多くのビジネスノートPCはWindows HomeではなくWindows Proが利用される。Proで利用できるBitLockerは情報漏えい対策としてデータを暗号化する機能だが、これをONにしている場合はデータのクローン作業の前に暗号化の解除が必要だ。

「デバイスの暗号化」からBitLockerの状態を確認できる。
BitLockerオンの状態であれば、オフにするボタンが表示される。
BitLockerオンの状態ではOSドライブのデータクローンが行えないので解除しよう。

 BitLockerによる暗号化がされているかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」から確認できる。ONになっている場合は、「オフにする」のオプションが表示されているはずだ。OFFにする際にはこのボタンを押して解除を行なう。暗号化されたままではデータのクローンが正しく行なえない。暗号化を解除すれば、Samsung Data Migrationで正常にクローンを完了できる。

 なお、原因などは不明だが、表示上はBitLockerがオフになっているが、実際はBitLockerオンの状態にPCがなっていることもある。この場合は一旦BitLockerをオンにして、その後オフにすればBitLockerは解除される。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用しているSSD外付けケースは玄人志向のGWM.2NVST-U3G2CCA。NVMe/SATA両タイプのM.2 SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、USBコントローラはRealtek RTL9210Bを採用している。

●1 SSD外付けケース「GWM.2NVST-U3G2CCA」と換装するSSDを準備
●2 付属のドライバーを使いSSD外付けケースのネジを外す
●3 中の基板を取り出す
●4 SSDを基板のM.2スロットに装着する
●5 SSDを固定するための金具を装着する
●6 基板の裏からネジで固定する
●7 基板を戻してカバーを閉じる。クローン作製のための一時的な利用であれば熱伝導パッドは不使用でも大丈夫だろう
●8 PCに接続すれば準備完了
●注意点その2

M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。リンクからは常に最新版がダウンロード可能だ
●2 Samsung Data Migrationをセットアップ
●3 Samsung Data Migrationを起動する
●4 上のドライブ選択は現在のシステムドライブを、下のターゲットドライブは移行先のSSD(今回はSamsung SSD 980 1TB)を選択しよう
●5 移行先ドライブを選択するとドライブの状態とともに開始ボタンが表示される
●6 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行を行うため、他のアプリケーションを起動するのはやめたほうがよい。また、プログレスバーの進捗を確認しながら行なおう
●7 進行状況はプログレスバーで表示される。ちなみに、一時ファイルなどを除いたSamsung Data Migration上の移行前SSD使用容量は約32GBだったが、データのコピーは5分10秒ほどで終了した
●8 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる
●注意点その3

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、先述のBitLockerの使用の有無に加え、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。

 Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認してもらいたい。

分解工具にはプラスドライバーとオープニングツールを用意

 ここからはHP ProBook 430 G6の分解になる。工具としてはプラスドライバー(0番と1番)のほかにオープニングツール(ミニヘラ)を用意したい。底面のカバーはバスタブの本体側にあるツメによっても固定されている。隙間もほとんどない。オープニングツール使用時に筐体に傷を付けたくない人は、必要に応じて養生をほどこすとよい。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。それではHP ProBook 430 G6の分解作業に入ろう。

●1 底面パネル。取り外すネジは表面に見えている7本で、隠しネジはない
●2 ネジを外していく
●3 フロント寄り左右の2本は短いネジ
●4 そのほか5本は長いネジ。紛失に注意するとともに、どのネジがどこで用いられていたのかしっかりと覚えておこう
●5 パネルを外した状態
●6 パームレスト側から見て右手を置く部分の裏にM.2スロットと2.5インチシャドーベイが配置されている。M.2スロットの右上の銀ホイルの内には2基のSODIMMスロットがある。SSDと合わせてメモリも増設すればより快適になるだろう

 とくに初めて分解する際はツメの部分が固いので、力任せにはがさないよう加減したい。自動車の内張り剥がしと同じ感覚だ。まずヒンジ近くからフタを浮かせ、その浮いた部分にオープニングツールを挿し入れていく。ツメが外れたら、ツールをスライドさせて次のツメを外していく塩梅だ。本体中央部分のツメはとくに固かった。左右から手を挿し入れ、左右から中央を浮かせるイメージで外していく。フロント寄りを最後に外すとよいだろう。

 パネルを開ければM.2スロットにアクセスできる。M.2 SSDはネジ1本で固定されているので精密ドライバー(0番 プラスドライバー)でこれを外す。するとM.2 SSDの片側が浮くので、スロットから引き抜き交換しよう。交換用のSSDを装着では、SSDを斜めにスロットの奥まで押し込んだことを確認してからそれを倒しこむ。最後に固定ネジを締めて完了だ。

●7 固定ネジを外してSSDを取り外す
●8 SSDの片側が浮くので、ムリな力をかけずにそのまま引き抜く
●9 データをコピーした換装用SSDに挿し換える
●10 固定用ネジを取り付ける
●11 装着が済んだら底面パネルを元に戻す。ツメの位置を合わせ、適度な力加減でツメをはめていく
●12 各部のネジを戻して作業完了だ

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 とはいえストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりも、SSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。また、今回のようにメンテナンスが容易なモデルであれば換装そのものも容易なので試してみる価値はあるだろう。

大容量SSDへの換装で空き容量は約4倍、転送速度も最大3倍に日々のファイル管理も快適なノートPCへリフレッシュ

 実際にSSD換装を行い得られたメリットも紹介しておこう。今回は容量と速度の2点を紹介する。

1TB SSDで空き容量は4.3倍と一気に拡大OSバージョンアップ時も心配の無い容量に

 まずは容量の面だが、HP ProBook 430 G6は256GBのSSDを搭載しており、回復領域などを除いたシステム上から見た容量は約238GBだ。

 空き容量は207GB。余裕があるように思えてもあくまで購入直後(回復直後)の状態であり、ここに普段利用するアプリケーションを導入したりデータを保存したりすると心もとない。SSDのパフォーマンスを引き出すためには空き容量が必要であることに加え、Windowsの大型アップデートでは、まずそれをダウンロードするための空き容量も必要だ。空き容量確保のために、こまめにファイル管理が必要になるかもしれない。

 1TB SSDに換装すると空き容量は900GBへと、約4.3倍に拡大する。バージョン管理しているような場合、空き容量が足りなければ一定以上の古いデータをほかのドライブに退避させなければならないこともあっただろう。十分な空き容量があれば、より古いデータも手元にとどめておくことができる。必要な時に必要なデータにすぐアクセスできるというのは、PCをより快適に使うために重要なポイントだ。

 また、Windowsの大型アップデート、Windows 11へのアップグレードする際にも、空き容量に困らない。

換装前の256GB SSD「SK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」。
換装前の空き容量は207GB。アプリケーションの導入や大型アップデートなどでも、常に空き容量に気を配る必要があるくらいに心もとない
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 980 1TB(MZ-V8V1T0B/IT)」
換装後の空き容量は900GB。

SSD換装で速度は全般的に向上、シーケンシャルアクセスは2~3倍ほど高速に

 NVMe対応M.2 SSD同士の換装だが、接続インターフェースはPCI Express 3.0 x2からx4へと、理論的には2倍に高速化する。CrystalDiskMarkの実行結果を見ると、シーケンシャルリードは1.63GB/sから3.14GB/sへ、2倍に近い向上が確かに確認できる。

 また、シーケンシャルライトについても810MB/sから2,700MB/s(2.7GB/s)へと3倍以上の高速化が見られる。そのほかのテストもすべて、換装前に対して高速化されていることは、PC作業全般で高速化が期待できる。

換装前の256GB SSD「SK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」。
換装前のSSD「SK Hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」でのCrystalDiskMark 8.0.4計測結果
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 980 1TB(MZ-V8V1T0B/IT)」
今回換装を行なった「Samsung SSD 980 1TB(MZ-V8V1T0B/IT)」でのCrystalDiskMark 8.0.4計測結果

Windows 11への対応もOK

 今回使用しているHP ProBook 430 G6のWindows 11アップグレードに対するメーカーサポート状況は確認できなかったが、「PC 正常性チェックアプリ」を実行したところ、要件を満たしていることが確認できた。

HP ProBook 430 G6でPC 正常性チェックアプリを実行した。Windows 11の要件を満たしており、大容量・高速SSDに換装後なら余裕を持ってアップグレードできる

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。

 今回換装を行なったHP ProBook 430 G6、そのCPUはCore i5-8265Uは4コア8スレッドと、モバイルノートPCとしては十分なコア/スレッド数だ。発売早々に購入したとしてもまだ3年。もう少しの間、使い続けたいと願う人も多いだろう。

 PCを使い続ける中で、最初にパフォーマンス不足を感じ始めるのがストレージだ。データは日々増えていくものなので、空き容量も減っていく。SSDは容量を使い込むほど転送速度が低下しはじめ、書き換え回数によって寿命が縮まっていく。ノートPCを延命するなら、SSDの換装を検討してみてはいかがだろうか。

[制作協力:Samsung]