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240mm水冷最強クラス?Core i9-12900Kも良く冷える「Phanteks GLACIER ONE 240 T30」
高性能ファン搭載で静音でも使える水冷CPUクーラー text by 坂本はじめ
2022年6月29日 00:00
Phanteks GLACIER ONE 240 T30は、120mmファンを2基搭載する240mm級のオールインワン水冷クーラー。Phanteksによれば、強化液晶ポリマー素材を用いた高性能ファンと38mm厚のラジエーターを組み合わせたこの水冷クーラーは、360mm水冷級の冷却性能を実現するとされている。
今回は、冷却性能が強みのGLACIER ONE 240 T30で、電力リミットを開放したCore i9-12900Kの冷却にチャレンジする。フルブースト動作中のCore i9-12900Kは非常に発熱が大きいことで知られるが、しっかり冷却できるのかに注目だ。
240mmラジエーターでも「360mm級の冷却性能」なハイエンド水冷クーラー厚いラジエーターとファンで性能強化したPhanteksの高性能モデル
Phanteks GLACIER ONE 240 T30は、240mmサイズのラジエーターを採用したオールインワン水冷クーラーで、対応CPUソケットはIntelのLGA1200/115x/2066/2011(v3)と、AMDのSocket AM4/sTRX4/TR4。なお、今回テストするものを含め、新たに出荷された製品にはLGA1700対応リテンションが同梱されている。
Asetekの第7世代ポンプを採用する水冷ユニット本体は、一般的なものよりも厚い38mm厚の240mmラジエーターを搭載するほか、水冷ヘッドにはマグネット着脱式の「インフィニティミラーキャップ」を装備。アルミニウム製プレートにアドレッサブルRGB LEDとインフィニティミラーを組み合わせたイルミネーション機能を備えている。
インフィニティミラーキャップには、LED制御用としてPhanteks独自のD-RGBコネクタが用意されているほか、同梱の変換ケーブルを用いることで、マザーボードなどに搭載されているアドレッサブルRGBピンヘッダー(3ピン)に接続して制御することも可能だ。
30mm厚でガラス繊維強化液晶ポリマー素材採用の「PH-F120T30」台湾のファンメーカーと共同開発したプレミアムファン
GLACIER ONE 240 T30は、標準で2基の120mmファンを搭載しているのだが、このファンはPhanteksが台湾のファンメーカー「SUNON」と共同開発した高性能ファン「PH-F120T30」だ。サイズは120×120×30mmで、一般的な120mmファン(25mm厚)よりも厚みがある。
ファン単体でも販売されているので、性能が気になったユーザーにはチェックしてもらいたいモデルだ。
フレームとファンブレードにはガラス繊維強化液晶ポリマー素材が採用されており、独特の質感と灰色系のカラーリングとなっている。SUNONの磁気浮上ベアリング(Dual VAPO)の採用や、出荷前にロードバランシングを行うことで、ファンブレード先端とフレームのギャップを0.5mmまで詰められるほどブレの無い高精度な回転を実現している。
ファンブレードの形状はヒートシンクやラジエーターとの組み合わせに適した静圧重視で設計されており、本体には電源やPWM信号を受けるための短いケーブル(4ピンPWM)と、デイジーチェーン用の4ピンPWMコネクタを備えている。
PH-F120T30の裏面側には動作モードを切り替えるスイッチが設けられており、最大回転数1,200rpmでPWM信号が50%以下の時に回転を停止する「HYBRID」、標準のモードで最大回転数2,000rpmの「PERFORMANCE」、最大回転数3,000rpmの「ADVANCED」を選択できる。
位置の関係でラジエーターやケースに取り付けた後にモードを変更するのは困難なので、搭載時点でファンのモードを選択する必要はあるが、無音から超高速までのワイドレンジをカバーした静圧重視の高性能ファンであるPH-F120T30は、厚みのあるラジエーターを採用するGLACIER ONE 240 T30に好適な冷却ファンである。
「360mm級の冷却性能」は伊達じゃない高性能240mm水冷クーラー電力リミット開放のCore i9-12900Kが余裕で冷やせる想像以上の性能
ここからは、240mmサイズでありながら360mm級の冷却性能を実現したというGLACIER ONE 240 T30の実力を確認していく。
テストに用いるのは、第12世代Coreのハイエンドモデル「Core i9-12900K」を搭載したIntel Z690環境。マザーボードであるASUS ROG STRIX Z690-F GAMING WIFIの標準設定に従って、電力リミットを開放(PL1=PL2=Unlimited)した状態でCINEBENCH R23のMulti Coreテストを実行し、CPU温度やベンチマークスコアを確認する。
テスト時のGLACIER ONE 240 T30の動作については、冷却ファンがサポートする3つの動作モードにおいて、それぞれファンスピードとポンプスピードを最大に設定した。ポンプスピードは全モード共通だが、ファンスピードに関しては、HYBRIDモードが約1,200rpm、PERFORMANCEモードが約2,000rpm、ADVANCEDモードは約3,000rpmとなっている。
計測結果をまとめてみたところ、ベンチマーク実行中のCPU温度は、HYBRIDが平均80.1℃の最大85℃、PERFORMANCEは平均77.9℃の最大81℃、PERFORMANCEは平均76.8℃の最大80℃となっており、冷却ファンが1,200rpmで動作するHYBRIDですら、サーマルスロットリング作動温度の100℃から15℃もの余裕を確保できている。
サーマルスロットリングが作動していないので、CINEBENCH R23のスコアは27,200前後で同等となっており、Core i9-12900K自体も約200Wの電力を消費しながら、Pコア=4,900MHz、Eコア=3,700MHzという最大限のブースト動作を維持している。
もっとも静粛性の高い最大1,200rpmの動作モードですらCore i9-12900Kを余裕で冷やして見せたGLACIER ONE 240 T30の冷却性能は、確かに240mmサイズのオールインワン水冷というイメージを超えるものであり、「360mm級の冷却性能」という謳い文句も大げさなものでは無いようだ。
動作クロックや消費電力の面で見ても、最大1,200rpmの動作モードでしっかりCore i9-12900Kの性能が引き出されており、高性能水冷クーラーを探しているユーザーはチェックすべき性能を持ったモデルと言えるだろう。
GLACIER ONE 240 T30の静音性能だが、これも想像を超える良好なものだった。冷却ファンとポンプからそれぞれ約50cmずつ離れた位置で騒音値を計測した結果が以下のグラフだ。
テスト機材の電源をオフにした状態が32.7dBAであったのに対し、ファンスピードが約1,200rpmのHYBRIDモードは34.5dBA、約2,000rpmのPERFORMANCEモードは43.2dBA、約3,000rpmのADVANCEDモードは55.3dBAだった。
実際に聴いてみた印象では、約1,200rpmの動作音はほとんど気にならないほど静かなものであり、これほどの静粛性を実現しながら200W級のCPUを冷却できるのには驚かされた。約2,000rpmでは流石に風切り音が聴こえるようになり、約3,000rpmともなれば相当な騒音が生じていた。ただ、いずれも回転数の割には控えめな動作音といった印象であり、高精度に作られた冷却ファンの性能の高さを感じることができた。
サイズあたりの冷却性能に優れた240mm水冷「GLACIER ONE 240 T30」ハイエンドCPUも良く冷える高性能モデル
PhanteksのGLACIER ONE 240 T30は、360mm級の冷却性能を実現したといううたい文句に違わない冷却性能を備えたCPUクーラーであり、約200Wで動作するCore i9-12900Kを余裕で冷却することができた。
この「サイズあたりの冷却性能」の高さはGLACIER ONE 240 T30の大きな魅力だ。より大型の280mm級や360mm級のオールインワン水冷は、搭載できるケースも必然的に大型のものに限られてしまうが、GLACIER ONE 240 T30なら大型ラジエーターを搭載できないPCケースでも、優れた冷却性能を実現することができる。
ただし、240mmサイズとは言え、厚みは一般的なオールインワン水冷クーラーより10~20mmほど厚い点には注意が必要だ。この厚さが許容できる環境であれば、240mm水冷最高クラスの性能を活用できる。
GLACIER ONE 240 T30の価格は3万円前後と手軽とはいかないが、高い精度で作られた高性能ファンであるPH-F120T30を標準で搭載していることを考えれば割高という訳でもはない。性能や品質を重視してオールインワン水冷を探しているのであれば、240mmサイズで最上級の完成度を誇るGLACIER ONE 240 T30は、ぜひとも検討すべき製品のひとつである。
[制作協力:Phanteks]