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これからM1 Macを買っても後悔しない?今だからこそM1搭載Macbook Air買ってきた
コスパ重視ならメモリ増量のM1搭載Macは狙い目 text by じぇん子
2022年7月12日 00:05
Appleのイベント「WWDC2022」にてM2チップ搭載の新型MacBook Pro/Airが発表され、購入を検討している方もいるのではないでしょうか。
M2チップはM1チップ比で最大1.4倍高速化されましたが、円安の影響も大きく、従来のM1チップ搭載モデルと比較して大幅に値上げ。MacBook Airであれば最小構成で164,800円からとなっています。従来のM1チップ搭載モデルも価格改定が入り値上がりしましたが、それでも最小構成時で134,800円からと、新型とは値差があります。
こうなるとコストを取るか、新型の性能や新機能を取るか悩むところですが、今回筆者は悩んだ末に敢えてこのタイミングでM1搭載のMacbook Airを購入しました。今から買うのにM1チップ搭載モデルで良いのか、今使うのにM1チップ搭載モデルで困らないのか、使用感と合わせてご紹介します。
■じぇん子
秋葉原で自作PCショップの店員として働く傍らでゲーム実況やPC関係のお役立ち情報を発信し、PC/配信関連の相談やトラブル解決を引き受けたりもしているVTuber。立場を活かし、一般ユーザーと店員の双方の視点から見た情報を発信しています。
コスパを考えるとM1チップ搭載Macが優位旧価格のままの在庫品などがあれば即買い推奨
筆者は秋葉原のPCショップの店員として働いていますが、普段関わるのはWindows向けのPCパーツや周辺機器、PC本体などがほとんど。
Macに関してはこれまであまり接点がなかったのですが、最近になり接客していてMacに関しての問い合わせがままあったり、Macを使って動画配信をしたりVTuberとして活動してみたいといった相談を受けることもあったりと、Macをそろそろ1台購入して知識を身に着けておいた方が良いかもと漠然と考えていました。
そうしたタイミングでWWDC2022が開催され、M2チップ搭載のMacbook Airの発表、新型は価格が上がること、既存モデルも円相場などを反映した価格になることなども告知。値上がりするなら必要に迫られるまでは保留で良いかと発表直後は考えていました。
しかし、店頭の様子を一応見ておくかと、WWDC2022の翌日にヨドバシカメラ マルチメディアAkibaのApple Shopを覗いてみると、カスタム済みのCTOモデルなど、一部の在庫品は旧価格のまま販売されているではありませんか。保留のつもりでいましたが、この価格で買えることはおそらくもう二度と無いと悩み、取り置きをお願いして閉店時間ギリギリまで引っ張った末に購入して帰ってきました。
なぜ据え置き価格だったのか聞いてみたところ、新規注文であれば新価格での販売になるものの、WWDC2022開催前に入荷済みだったCTOモデルなどは、価格改定適用外となる個体もあったそうです。店舗によっては稀にこうした在庫品が残っている可能性もあるので、Mac取扱店に寄ることがあれば価格をチェックしてみると良いかもしれません。
旧価格で購入できるのがもちろん一番お得とはなりますが、新価格でもM1チップ搭載MacBook Airが最小構成時134,800円から、M2チップ搭載MacBook Airが最小構成時164,800円からと3万円の値差があり、10万円台の製品ではかなり大きな差となります。性能はベストな条件が重なった場合でも最大1.4倍で、全ての利用シーンで性能が1.4倍になるわけではありません。M2チップの性能がAppleの発表通りであるなら、価格差を考えるとM1チップ搭載MacBook Airはコストパフォーマンスが良いモデルと言えます。
M1チップ版MacBook Airのスペックを再確認購入したのはメモリ16GB/ストレージ512GBのCTOモデル
筆者が今回購入したMacbook Airは、型番「A2337」をベースにメモリとストレージがカスタマイズ済みとなっているCTOモデル。
13.3インチ/JISキーボード搭載でカラーはシルバー。初期搭載OSは「macOS Monterey バージョン12.2」、SoCは8コアCPU/8コアGPUのM1チップ、メモリは16GB、ストレージは512GB。本体サイズは304.1×212.4×4.1~16.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.29kg。
接続インターフェイスはUSB Type-C×2(Thunderbolt/USB両対応)、3.5mm4極ヘッドフォンジャックを備え、通信機能はWi-Fi 6とBluetooth 5.0に対応。ディスプレイ上部のベゼル部分に720pのFaceTime HDカメラを内蔵し、マイク(3マイクアレイ)、キーボードの左右にスピーカーを備えています。
キーボードはシザー式でバックライトと右上にTouch IDを搭載する「Magic Keyboard」を装備。なお、CTOではJIS配列の他にUS配列やUK配列など海外仕様のキーボードも選べます。
画像加工や動画編集はかなり快適、VTuberモデルを動かしながらの配信はちょっと辛い?ワットパフォーマンスに驚かされるM1 MacBook Airの使い勝手
ここからは実際にM1チップ搭載Macbook Airを使った際の使用感を紹介します。筆者はVTuber活動も行っているので、その際によく使うアプリケーションを利用して、M1チップ搭載モデルが快適に動作するのか確認してみました。
本体にどの程度の負荷がかかっているのかは、動作温度やCPU使用率を見ることができるシステムモニターアプリ「MenuMeters」を用意して確認しています。
画像加工は快適かつワットパフォーマンスも良好、動画投稿用のサムネイルを制作
それではM1チップ搭載Macbook Airで良かった用途から順に紹介していきます。まずはYoutubeで動画を投稿する際に必須ともいえるサムネイル画像の制作から。
動画のサムネイルの出来の良し悪しは再生数の大きくかかわるため、YouTuberやVTuberには必須作業ともいえます。筆者は普段iPadでClip Studio Paintを使って作成していますが、今回はM1チップへの最適化がうたわれているAffinity Photoを利用してみました。
サムネイル画像完成までざっと20分ほどでしたが、その間のCPU使用率は1桁台となっていることがほとんどで、オブジェクトを移動したりしてる時に20%前後になるといった感じでした。バッテリー駆動で使ってみましたが、20分間の使用で消費されたバッテリーは2%ほどと、期待していたよりも高いワットパフォーマンスを発揮してくれました。
DaVinci Resolveでの動画編集/エンコードは快適
画像加工は快適でしたが、動画の編集はどうでしょうか。普段Windows機でも使っているDaVinci Resolveで使用感を試してみました。これもサムネイル制作の時に用いたAffinity Photoと同じくM1に最適化されたソフトの一つです。
今回は手持ちの素材を使い、1080p/30fps/約30分の動画に編集してエンコードまで行いました。負荷テストのためジャンプカットやモザイク編集なども適当に散りばめています。
編集中のメモリ使用率は12GBほど。M1チップ搭載Macbook Airの初期状態はメモリ8GBなので、動画編集をすることがあるなら、メモリだけは16GBにカスタムしてから購入することをお薦めします。動画編集中はブラウザを立ち上げたり、素材作成に別のアプリも同時に立ち上げながら使用することになるので、メモリはなるべく多い方が良いです。
エンコード時のM1チップの負荷は30%前後、温度は40℃前後をキープ。1080p/30fps/約30分の動画のエンコードにかかった時間は6分弱。ノートPCとしてはエンコード時間も驚異的ですし、作業に対する消費電力量の少なさにも驚かされます。
「OBS」の動作は問題なし、配信のみを行うなら余裕の性能
ここからはVtuberとしては絶対に外せないアプリケーションでのパフォーマンスを見て行きます。まずは配信時のベースとなるOBSから。
今回はフリーの配信用オーバーレイ(画面枠)を使用し、映像ソースにキャプチャーボード、NDI(ネットワークデバイスインターフェイス)といった外部入力を用意、コメント表示用のChat v2.0 Style Generatorなども配置して実際に配信して負荷を見てみました。
CPU使用率は20%超程度、動作温度は大体46℃未満を推移。ゲームをしながら配信したり、クリエイターアプリを利用しながら配信をしなければ、問題なく動画配信は行える性能を持っています。ちなみに、バッテリー駆動時の残量の推移は、8分で1%程度の減少だったので、外での配信などに使用してもかなり長時間使えそうな印象です。
VTuber必須の「VTube Studio」、M1チップの性能は問題ないものの発熱面がネックに
VTuberたる者、これがなくては始まらない「VTube Studio」。Live2Dを用いる2Dアバターを利用しているVTuberにほぼ必須と言っていいソフトの一つです。
なお、「VTube Studio」はmacOSへの対応は実質ベータ版状態で、起動時には実験的な対応である旨が警告として表示されます。Windowsでしか利用できない機能があったり、原因不明のクラッシュが多数報告されていたり(フェイストラッキング関連は特に顕著)、ある意味覚悟して使用する必要があります。
こうした状況なので、M1チップ搭載のMacへの最適化が行われてないので、現状のパフォーマンスや負荷に関しては参考値にしかならず、今後大幅に改善されて状況が全く変わる可能性があります。この点は留意してください。
パフォーマンスの方ですが、カメラ設定は720p/60fpsの設定でテストしてみました。これ以上の設定を選ぶと正常に動作しなかったので、今のところのM1チップ搭載MacBook Airの上限値なのかもしれません。
この状態で、デフォルトのアバターを使って「VTube Studio」を動作させたところ、CPU使用率はおおよそ50%前後を推移。しばらく動作させていると温度は75℃前後にまで上昇しました。この動作温度でも処理落ちなどはしませんでしたが、長時間の使用ではサーマルスロットリングが働く可能性が高そうなので、VTube Studioを使用する際はノートPCクーラーの併用を推奨します。
M1 MacBook AirでVtuberは配信できるのか、「OBS」+「VTube Studio」で配信テスト
「OBS」と「VTube Studio」、それぞれ単体で動作させた際はM1チップ搭載MacBook Airでも問題ないことが確認できましたが、Vtuberが配信を行う際は両方同時に使用する必要があります。
「VTube Studio」の映像をOBSにソースと取り込む場合、Windows版OBSでは入力ソースから「ゲームキャプチャー」を選びますが、macOS版ではほぼ同じ機能の「サイフォンクライアント」という項目選びます。以前は問題なく使用できていましたが、macOS Mojave 10.14以降の環境では動作しなくなっており、デフォルトの状態ではmacOS版OBSはVTube Studioの画面を取り込むことはできません。
一応回避策が存在し、mac版OBSの場合はNDIのプラグインを入れ、VTubeStudio側もNDIでの出力に対応した設定に変えることで使用することができます(設定が複雑なものの、以前に筆者が以前noteにまとめて公開しているので興味のある人は見てみてください)。
今回の検証ではこのNDIプラグインを利用してOBS+VTube Studio環境で動画配信をしてみたところ、CPU負荷は90%オーバーながらも動作温度は75℃前後に収まり、動作自体は確認できました。
ただ、動作自体はしたものの、配信の映像がカクカクした状態になり、快適な動作とはいきませんでした。画質を落として負荷を軽減してもあまり改善しないため、VTube StudioがmacOSに正式対応してない点や、OBS側もmacOS版はゲーム配信向けになっていないと思われる部分がある点、動作温度は75℃程度なもののサーマルスロットリングが働いている可能性など、様々な要素が複合的に絡んで問題が発生している可能性はあります。
OSやアプリが今後アップデートされたり、ボトルネックになっている原因を究明して設定を詰めて行けば改善しそうな気もしますが、記事執筆時点ではM1 Macbook Airを用いてVTube Studioを使って配信を行うことはあまりお勧めできないといえる状況でした。
■M1搭載Macで動かないと言われていたキャプチャデバイスがなぜか動いた
これはおまけとなりますが、M1チップ搭載のMacはキャプチャデバイスとの相性がかなり厳しいことが知られています。
AVerMediaは公式にmacOS側の仕様の関係で対応が難しいことや、一部機能が使えないなどの告知を出しており、M1チップ搭載Macでゲームプレイ配信を行うのはなかなか面倒だったりします。
筆者手持ちのAVerMedia Live Gamer Portable AVT-C878もM1チップ搭載かつmacOS 12以降は非対応とされており、正常動作しないはずなのですが……、だめもとで今回の環境で使用してみると普通に使えました。
もしかすると、OSのマイナーバージョンアップで状況が少し変わったのかもしれません。またバージョンアップが入った際に使えなくなる可能性も高いのですが……。今後対応機器が増えていくことにも期待したいところです。
普通の動画配信やクリエイター用途にはM1 MacBook Airは良さげな手応え使用ソフトの対応状況を調べてからコスパ重視でM1搭載Macを買うのはアリ!
Vtuberの配信用にはまだ環境が整っていないので、M1 MacBookの導入は時期尚早な結果となりましたが、クリエイター用途や普通の動画配信などであれば十分使えるパフォーマンスがあることはわかりました。性能面でも特に足りないと感じる部分は無かったので、コスト重視でM1搭載モデルを選ぶはありです。
ただ、メモリの容量だけは8GBでは足りないシーンがおそらく多いはずで、Chromeで複数タブを開きながらがら動画編集や画像編集を行うと、メモリの使用率は10~12GBあたりを超えてくることははざら。M1かM2かよりもメモリが16GB以上かどうかといった部分を最優先した方が良さそうです。
ワットパフォーマンスの異常な良さや本体の軽さを考慮すると、外で動画配信を行ったり作業を行う人にもかなりおすすめできるので、屋内外での使用を問わずストリーマーを目指す人は是非チェックしてもらいたいPCの1台です。