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最新ゲームにテレワーク、さらにはクリエイティブワークまでこなせる重箱サイズのパワフルPCの実力を試す

ノートPC用コンポーネントが高性能と使い勝手の両立を実現「ZOTAC ZBOX Eシリーズ MAGNUS」 text by 竹内 亮介

 “最新ゲームも動く新しいPCが欲しい”というとき、スペース的にタワー型の大型PCは置けないし、ゲーミングノートPCでは拡張性、ディスプレイやキーボード/マウスの選択の自由度が犠牲になるのがちょっと……と感じる人も少なくないだろう。

 こんなよくばりなユーザーにお勧めしたいのが、今回紹介するZOTACの「ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN173070C(以下MAGNUS EN173070C)」だ。いわゆる「ミニPC」と呼ばれるコンパクトな筐体を採用するデスクトップPCながら、強力なCPUやGPUを備えており、最新のPCゲームも問題なくプレイできる。また基本性能が高いため、書類作成や情報収集など日常的に行なう軽作業はもちろん、さらにはCPU/GPUのパワーも必要とするクリエイティブワークなどへの適性もかなり高く、マルチに活躍できるポテンシャルを秘めたマシンなのだ。

デスクトップPCとノートPCのいいところ取り

コンパクトな筐体を採用しながらも、圧倒的な基本性能を誇るMAGNUS EN173070C

 ZOTACの「ZBOX」は、ミドルタワーケースを採用する一般的なデスクトップPCと比べるとかなりコンパクトなPCだ。

 今回紹介するMAGNUS EN173070Cは、高性能なCPUやGPUを搭載する「ZBOX Eシリーズ」に属するモデルで、第11世代CoreシリーズやノートPC向けのGeForce RTXシリーズを採用する。CPUやGPUの違いで3モデル用意しており、その中でもMAGNUS EN173070Cは上から2番目のグレードにあたる。具体的なスペックは以下の表にまとめたとおりだ。

【ZOTAC ZBOX Eシリーズ MAGNUS EN173070Cの仕様】
CPU(コア数/スレッド数)Core i7-11800H(8コア16スレッド)
搭載メモリ16GB DDR4 SO-DIMM(空き×1、最大64GB)
ストレージ512GB M.2 SSD
ストレージ用インターフェース2.5インチシャドー×1、M.2×2(空き×1)
通信機能Wi-Fi 6、Bluetooth v5
主なインターフェース1000BASE-T×1、2.5GBASE-T×1、DisplayPort×2、HDMI×2、Thunderbolt 4×1、USB 3.2 Gen1×5
本体サイズ(W×D×H)203×210×62.2mm
重量1.71kg
直販価格246,400円

ゲーミング級のハイスペックパーツを内蔵しながらも筐体サイズは非常にコンパクト

 PCゲームのプレイに適したゲーミングPCと言うと、ミニ~ミドルタワーケースを採用するデスクトップPCが主流だ。発熱の大きな高性能CPUやビデオカードを組み込まなければならないことを考えれば仕方のないことではあるが、やはりある程度の設置場所を確保しなければならないのは事実である。

 しかしMAGNUS EN173070Cは、そうしたデスクトップPCと比べると圧倒的に小さい。幅は20.3cm、奥行きは21cmで、厚みは6.22cmと、外付けHDDを一回り大きくした程度のサイズだ。手のひらサイズとまではいかないものの、置き場所を選ばず利用できるのがうれしい。

左からATXケース、Mini-ITXケース、本製品の並び。圧倒的なコンパクトさがよく分かる

 搭載するCPUは、第11世代Coreシリーズの「Core i7-11800H」。最新の第12世代Coreシリーズではないが、8コア16スレッドに対応する強力なモデルとなる。GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 3070 Laptop」を搭載する。

 いずれもノートPC向けのコンポーネントであり、デスクトップPC向けのCPUやGPUと比べると性能は抑えられているものの、その分発熱はぐっと小さい。MAGNUS EN173070Cのようにコンパクトな筐体を採用するPCでは、大型の冷却機構は組み込みにくい。そのため、発熱が小さいノートPC向けのコンポーネントを利用してバランスを取っているわけだ。

 ノートPC向けとはいえ、CPU内蔵GPUを利用するタイプのノートPCや格安デスクトップPCと比べれば、3D描画性能は圧倒的に優れている。最新PCゲームの精細な映像を楽しみたいなら、やはりこうした外部GPUを搭載したPCのほうがオススメだ。

 「ノートPC向けのコンポーネントを使ったPCなら、普通にノートPCでいいのでは?」という考え方もある。事実、外部GPUを搭載したゲーミングノートPCは人気にもなっている。ただ、そうしたゲーミングノートPCが搭載する液晶ディスプレイは、最大でも17型といったところだ。最新PCの迫力のある映像を楽しむなら、サイズ的には少々もの足りない。もちろん外付けの大画面液晶ディスプレイを追加してもよいが、そこまでするなら底面積がより小さいMAGNUS EN173070Cを利用するほうが実は「省スペース」だ。お気に入りのキーボードやマウスを利用したいという場合でも、同じことが言える。

 性能面でも優位性がある。最近は、ゲーミングノートPCでも厚さ1.5~2.5cmという薄型モデルが増えている。ただスタイリッシュではあるが、その分冷却効果の高い冷却機構を搭載しにくい。そのため同じようなグレードのCPUやGPUを搭載していたとしても、動作クロックは低めに設定(=CPUやGPUの消費電力を抑え、発熱を抑える)される傾向がある。

 しかしMAGNUS EN173070Cは薄型ボディとはいえ、ノートPCほど薄いわけではない。薄型ノートPCよりもサイズ的にも有利な冷却機構を搭載できるため、最近の「冷却性能が高ければ高いほど高い性能を発揮しやすい」CPUやGPUにとっては、より高い性能を発揮しやすい環境にある。超小型デスクトップPCと高性能ノートPCのいいとこ取りをするなら、実に優秀なコンポーネントの選択と言っていいだろう。

 また、本稿で実施したベンチマークテストで負荷をかけたとき、薄型のゲーミングノートではかなり強めのファンの風切音が聞こえ、キーボードを含む本体から熱を感じるほどになった。一方の本機では、高負荷時にはやはり風切音はするもののゲーム中であれば気にならなくなるレベル。本体からの発熱もあるが、ノートPCのように手元に本体を置いて操作する必要がないので、多少の発熱は直接体感することはない。本体を遠ざけられるので騒音も軽減できる。ノートPCとデスクトップPCというスタイルの違いそのものが、騒音や発熱へのユーザーの体感の差となっているのだ。

軽作業時はおもいのほか静かに利用可能!

 さて、まずはMAGNUS EN173070Cの外観からチェックしていこう。高性能なCPUやGPUを搭載していることもあり、天板や側面に冷却性能に優れたメッシュ構造を採用する。動作中は無数の空気穴が設けられた天板から外気を取り込み、側面から排気するというエアフローになっているようだ。ベンチマーク中などに側面に手を当てると、風が流れてくる感触がある。

 こうしたパンチ穴の多いメッシュ構造を採用した外装と、つや消しブラックを基調としたカラーリングにより、ゲーミングPCらしい非常に精悍な印象を受けるデザインとなっている。コンパクトでしかも安っぽさを感じさせないため、さまざまな場所に設置しても違和感はない。居間の大画面テレビと組み合わせて、コンテンツを楽しむのもよいだろう。

天板・側板はメッシュ構造で高性能モデルらしくエアフローが重視されている

 パワフルなだけに動作音は覚悟していたのだが、意外なことに動作音はかなり静かだった。起動時だけはちょっとだけファンの回転数が上がるが、デスクトップが表示されるとすぐにファンの音は低くなる。ExcelやWord、Webブラウザなどの利用、音楽再生や動画配信サイトの利用と言った軽作業であれば、ほぼ無音状態で利用できた。

 アイドル時のCPU温度は35~38℃、GPU温度は34~35℃といったところで、システム全体の消費電力は31~32W。上記の軽作業時でも温度で数度、消費電力は10W前後上がるくらいで、動作音にはほぼ影響はない。

 最近はテレワークが増加しつつあり、オンライン授業を積極的に取り入れる学校も増えている。MAGNUS EN173070CはゲーミングPCとしての側面が強いPCではあるが、ゲームができるほどの高い性能を持っているのだから、当然一般的な軽作業やビデオ会議も快適に行なえる。そしてそうした作業時にここまで静かなMAGNUS EN173070Cは、テレワークにも向いたPCと言ってよいだろう。

 前面にはUSB 3.2 Gen 1とThunderbolt 4を1基ずつ装備。背面にはUSB 3.2 Gen 1が4基、2.5GBASE-Tと1000BASE-Tのイーサネットポートを1基ずつ、そしてHDMIとDisplayPortを2基ずつ装備する。かなり充実した構成であり、一般的なデスクトップPCと比べても遜色はない。

 ディスプレイ出力端子は、そのすべてが4K解像度とリフレッシュレート60Hzの出力に対応しており、複数台の4K対応液晶ディスプレイでマルチディスプレイ環境を構築するのも容易だ。高速な有線LAN端子を搭載していることもあり、オンラインゲームを快適にプレイできるのはもちろん、オンライン会議でも画像や音声をスムーズに再生できる。

前面にはUSB 3.2 Gen 1端子のほかThunderbolt 4、SDメモリカードスロットが用意されている。背面に2.5GBASE-T/1000BASE-Tと2基のLAN端子があるのも特徴
無線LAN用のロッドアンテナは背面に装着する

 またMAGNUS EN173070Cは、メモリやSSDを簡単に拡張できる。背面で底面を固定している2本の手回しネジを外し、底面部分を前面側にちょっとずらすだけで底面が外れ、内部にアクセスできる。メモリスロットは1基分空いているほか、ストレージの追加や換装も可能だ。

 最近のノートPCでは、ツメやフックなどで底面ががっちりとロックされているものがほとんどであり、内部にアクセスしてメモリやストレージを交換・追加するのが難しい製品も少なくない。高性能なPCなのだから長く利用したい、というユーザーにとっても、こうした拡張のしやすさはありがたいはずだ。

内部には手回しネジ2本を外し、底板をスライドさせるだけで簡単にアクセスできる
内部にはM.2 SSDのほか2.5インチドライブも搭載可能

 ゲーミングノートPCではノートPCというスタイルを採用することもあって、どうしてもUSBポートや映像出力端子の数が少なめになる。超小型のミニPCという形状なのでPCI Express拡張カードこそ使えないものの、ポート/端子の数は一般的なデスクトップPCと比べても遜色はなく、ノートPCを上回る。こうした部分も、MAGNUS EN173070Cを選ぶメリットと言ってよいのではないだろうか。

同じGPUでもゲーミングノートPCより優れた結果に

 次に、いくつかの代表的なベンチマークテストの結果を紹介しよう。参考までにCPUにCore i7-10870H、GPUにGeForce RTX 3070 Laptopを搭載するゲーミングノートPCのテスト結果も比較対象として掲載する。CPUの世代は1世代古いもののGPUは同じものを搭載しているので、搭載できる冷却機構の違いによる性能差も検証できる。

 「PCMark 10」は、よく利用されるアプリの使用感をScoreで示すテストだ。CPU内蔵GPUを利用する一般的なホームユース向けノートPCのScoreはおおむね4,000前後といったところなので、一般的なアプリを利用する場合でも非常に快適に利用できることが分かる。ゲーミングノートPCとの比較でも全項目にわたって優れた結果を収めた。

PCMark 10の結果ではゲーミングノートPCのスコアを全体的に上回る

 「3DMark」は、3D描画性能を計測できるベンチマークテストである。今回はDirectX 12対応ゲームへの適応度を測れる「Time Spy」、そしてDirectX 11対応ゲームへの適応度を測れる「Fire Strike」を比較したところ、どちらのテストでもMAGNUS EN173070Cのほうが優れているという結果になった。

GPU自体はゲーミングノートと同じだが、こちらでも本製品がスコアを上回った

 CPUの世代が異なるとはいえ同じGPUを搭載しているのだから、テスト前にはScoreの差がもっと小さい可能性も考えていた。しかしGPU性能の違いを反映しやすい3DMarkでこうした結果になったことを踏まえると、やはりサイズ面で冷却性能的に有利なMAGNUS EN173070Cのほうが、GPU性能を引き出しやすいということなのだろう。

 こうした状況を確認するため、3DMarkのTimeSpy実行時に「GPU-Z」を開き、「sensors」タブで「GPU chip Power Draw」の状況を確認したところ、ゲーミングノートPCでは最大88.8Wと表示された。

 一方でMAGNUS EN173070Cでは、同じ状況で99.0W。GPUが消費する電力は10.2W高く、より電力を使って高クロックで動作させているということが分かる。ノートPCよりもGPUの冷却に余裕が持てるからこそ、より高いGPUの消費電力と動作クロックで描画性能を引き出せるわけであり、今回の3DMarkの結果を裏付ける数値と言ってよいだろう。

本製品に付属するACアダプタ。RTX 3070を動作させるため出力約330Wとかなり大型

 実際にPCゲームでも検証してみた。ベンチマークモードを備えるユービーアイソフトの「ファークライ6」では、グラフィックス設定を最高にした状態でも最低fpsは71、平均fpsは88、最大fpsは113となった。スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、やはりグラフィックス設定を「最高品質」にしてもScoreは18,777で、評価は「非常に快適」だった。

ファークライ6のベンチマークテストの結果だ。テスト中の表示は非常にスムーズだった
描画負荷をもっとも高いレベルにしても、「非常に快適」

 どちらのゲームでもテスト中の描画がカク付いたり、コマ落ちするような場面はまったく見受けられない。今回はフルHDディスプレイでテストを行なったが、MAGNUS EN173070Cなら最新のPCゲームでも快適にプレイできるのは間違いなさそうだ。

 そしてGeForce RTX 3070 Laptopのような高性能なGPUは、PCゲームだけに有効なわけではない。重い動画エンコードをGPUで高速に行なう「NVENC」機能は有名だし、高精細なCGのレンダリングなどをGPU側で行なう「GPGPU」の性能の高さにも期待できる。

 今回は高精細な3DCGアニメーション映像をレンダリングして出力できる「Blender」というアプリで、ベンチマークテストを実行した。このテストでは、Scoreが高ければ高いほど、多くのオブジェクトを高速に処理できる。CPUによるレンダリングとGPUによるレンダリングの両方を実行できるので比較してみると、GPUのレンダリングScoreはCPUに比べて19~22倍にもなった。

内蔵のGeForce RTX 3070 Laptopで実行した際にはCPUの約20倍の性能向上が見られた

 動画エンコードや3DCGのレンダリングといった高度なクリエイティブワーク、あるいはGPGPUを活かしたAI分野での活用などにもPCを利用したいという場合も、MAGNUS EN173070Cのように強力な外部GPUを搭載した製品を選択することで作業時間を大きく減らすことができる。ゲーミングのイメージが強い製品だが、実際の活躍の場はもっとずっと広いと考えるべきだろう。

さまざまな要素を高いレベルで兼ね備える唯一無二の存在

 このサイズのボディだけを見れば、Core i7-11800HやGeForce RTX 3070 Laptopのような高性能パーツが組み込まれているとは思いも付かないだろう。正直、話を聞いたときには筆者もそう思ったし、正直半信半疑な部分や検証時にはかなりの発熱、かなりの騒音になる可能性も想定していた。

 しかし実際に検証を初めて見ると、そうした懸念は無用の長物だった。軽作業時はほぼ無音状態だし、ベンチマークテストなど負荷の高い状況になってもCPUやGPUの温度が上がり過ぎることはなく、性能が低下する状況もない。テストが終わればCPU温度やGPU温度はすぐに低下した。

 デスクトップPCとして考えると、ちょっと高いと感じるユーザーもいるかもしれない。ただこのサイズ感とこの性能、そしてさまざまな用途に対応できる汎用性、そして搭載するインターフェースの多彩さと拡張性の高さは、まさしく唯一無二と言ってよい。

 本来のターゲット層であるPCゲームユーザーへの訴求力は非常に高い。またそれだけではなく、テレワークやビデオ会議、オンライン授業などの軽めの作業から、重めのクリエイティブワークやAIなどの高度な演算能力を必要とする業務まで、快適にこなせる。そしてご覧のとおりのコンパクトサイズなので、作業デスク回りに置いたときのスタイリッシュさも秀逸。当初抱いていたイメージよりも広いユーザーにマッチする優れたデスクトップPCと言ってよいだろう。

[制作協力:ZOTAC]