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想像を超える性能と省電力性に驚愕。RTX 4090をさらに加速したMSI「GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24G」の実力

さっそく登場したRTX 4090のファクトリーOCモデルの圧倒的パワー!! text by 芹澤 正芳

MSIのGeForce RTX 4090搭載カード「GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24G」

 2022年10月12日ついに発売がスタートしたNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 4090」。新アーキテクチャの「Ada Lovelace」を採用、レイトレーシング用のRTコアは第3世代に、深層学習に特化したTensorコアは第4世代へと刷新。製造プロセスも前世代のSamsung 8NからTSMC 4Nに変更され、CUDAコアの数は16,384基に到達。“CUDAコアモンスター”とも呼ばれた前世代最上位のGeForce RTX 3090 Tiでも10,752基だったので、それを遙かに超えるハイパーモンスターの誕生である。

 まさに世代最強のスペックを求めるエンスージアスト(熱狂的支持者)向けのGPUだが、そのモンスターGPUを搭載するだけではなく、定格よりもブーストクロックを大きくアップさせた超ハイエンドカードをMSIがさっそく投入してきた。それがここで紹介する「GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24G」だ。前世代からどこまで性能が伸びているのか。そして、消費電力や冷却力はどうなのか。合わせて検証していきたい。

ぱっと見は従来のSUPRIMに似たデザインだが、圧倒的な性能を誇るRTX 4090を支えるべく、一段と大型になったクーラーを搭載。カード全体で3.75スロット厚相当(4スロット占有)にも達するほどだ

ブーストクロック2,625MHzの攻めた仕様

 GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24Gは、ブーストクロックは2,625MHzと定格の2,520MHzを大きく上回るファクトリーOCモデルだ。RTX 3090 Tiの定格ブーストクロックは1.86GHzなので、RTX 4090ではただでさえ前世代から大きくクロックが向上しているわけだが、本機はそれをさらにOCによって高めているのだから、なかなか攻めた仕様と言える。

GPU-Zでの表示。ブーストクロックは2,625MHzと定格の2,520MHzからオーバークロックされている
【歴代RTXとの主なスペックの比較】
MSI GeForce
RTX 4090
SUPRIM X 24G
RTX 4090 FERTX 3090 Ti FERTX 3080 Ti FERTX 2080 Ti FE
CUDA Core数16,38416,38410,75210,2404,352
RT Core数(世代)128(Gen3)128(Gen3)84(Gen2)80(Gen2)68(Gen2)
Tensor Core数(世代)512(Gen4)512(Gen4)336(Gen3)320(Gen3)544(Gen3)
ブーストクロック2.625GHz※2.52MHz1.86MHz1.67MHz1.635MHz
ビデオメモリGDDR6X 24GBGDDR6X 24GBGDDR6X 24GBGDDR6X 12GBGDDR6 8GB
メモリバス幅384bit384bit384bit384bit352bit
メモリデータレート21Gbps21Gbps21Gbps19Gbps14Gbps
PCI Express4.0 x164.0 x164.0 x164.0 x163.0 x16
カード電力非公開450W450W350W260W
システム電力850W850W850W750W650W

※GAMING Mode時の設定値。FE=Founders Edtion

 冷却システムにはMSI独自の「Tri Frozr 3S」を採用。ファンブレードを3枚ずつ外輪を結合することでヒートシンクに風を集中させる「TORX FAN 5.0」を3基搭載。さらに、最新設計の大型ヒートシンクは、銅よりも熱伝導能力の高い素材で作られた「ベイパーチャンバー」でGPUおよびビデオメモリを覆い、その熱を10本の「コアパイプ」と呼ばれる四角形に成形されたヒートパイプで即座に高密度フィンに伝導。ファンの配置的に風量が少なくなる部分の効率を上げるフィンデザイン「Wave-curved 3.0」やV字型の切り込みを入れたフィンを配置する「Air Antegrade Fin」により、エアフローを向上させている。

 さらに、バックプレートにもサーマルパッドを備えるなど万全の熱対策が施されるなど、非常に高い冷却力を実現している。また、準ファンレス仕様なので、低負荷時にはファンが完全に停止。ゲームプレイなど高負荷時以外は静かに使えるのもうれしいところだ。

冷却ファンには前モデルに比べて風量を23%向上させた「TORX FAN 5.0」を採用
たわみを防ぐバックプレート。シルバーを基調としたハデすぎないデザインも○
カードの後方には排気口があり、熱を背面から逃がす構造になっている。GeForce RTX 3000シリーズからおなじみの作りだ
巨大なヒートシンクと10本のヒートパイプで高い冷却力を実現する

 超ハイエンド仕様なだけに、カードは大きく、重量もある。カード長は33.6cm、厚みは3.75スロット相当(実質4スロット厚)に達している。さらに、ブラケットから上方向にかなりはみ出している背の高い形状であるため、手持ちのPCケースに組み込めるかはしっかり確認が必要だ。筆者の実測でブラケットの一番下からカードの最上部まで15.2cmだった。重量は2,413gとかなりの重さになるので、PCケース組み込み時にビデオカードを支えるサポートステイも同梱している。

 RTX 4090の消費電力はカード全体で定格450Wだが、本機はファクトリーOCモデルということもあり、480Wに設定されている。推奨電源は850Wだ。補助電源は新規格である12VHPWRの1基構成。従来のPCI Express 8ピン×4に変換するケーブルも付属しており、12VHPWRの対応電源が必須ではない。

 PCI Express 8ピンは1本のケーブルに2個付いている(二股に分かれている)のが一般的だが、本機付属のドキュメントでは、「片方だけ」の接続を推奨している。つまり、PCI Express 8ピンを4系統持った電源を使用すべし、ということになるので、電源を選ぶカードであることは変わりない。このあたりは注意しておきたい。

GPU-Zを見るとカード全体の消費電力は480Wで最大520W設定されているのが分かる
補助電源は12VHPWRと呼ばれる最新の規格が採用されている
12VHPWR×1を従来のPCI Express 8ピン×4に変換するケーブルも付属
8ピン×4はそれぞれ1本ずつの接続が推奨されている。つまりPCI Express 8ピンが4系統ある電源が必要となる。なかなか高いハードルだ
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1a×1。この位置からだと厚みと高さがよく分かる
ビデオカードを支えるためのサポートステイが付属
補助電源近くにはパフォーマンス重視のGAMING Modeと静音性重視のSILENT Modeの切り換えスイッチがある

4K+高画質+レイトレーシングでも余裕の時代が到来

 ここからはベンチマークに移ろう。比較対象として定格から60MHzアップ(Gaming Mode)のOCカードで本機のまさに前世代モデルとなるMSI「GeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24G」と、旧世代製品の参考として「NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」を用意した。3世代の最上位モデルを使って、世代間の性能差を見ようと思う。Resizable BARは対応モデルに関しては有効にしている。GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24GとGeForce RTX 3090 Ti SUPRIM X 24Gの動作モードは、GAMING Modeに設定した。ドライバはRTX 4090のレビュワー向けに配布されたGame Ready 521.90を使用している、

 テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリDDR5-4800 32GB(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
データSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(32cmクラス)
電源1,200W(80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(21H2)

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。

3DMarkの計測結果

 まず強烈なのが、DirectX 11ベースのテストであるFire Strikeで5万を大きく超える異次元のスコアを出していることだ。比較対象のRTX 3090 Tiも高OCモデルにもかかわらず、1万以上の差を付けている。この時点でとんでもないモンスターと言ってよいだろう。レイトレーシング性能を測るPort RoyalもRTX 3090 Tiに対して約73%も向上。レイトレーシング用のRTコア刷新による効果が出ている。

 それでは実ゲームの結果を順にご紹介する。まずは人気FPSの「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

レインボーシックス シージの計測結果
Apex Legendsの計測結果

 レインボーシックス シージは青天井に高性能なGPUほどフレームレートが伸びる印象だったが、RTX 4090ではついに、WQHDとフルHDでフレームレートがあまり変わらず、という限界が見えてしまった。恐らくフルHDではGPU性能が高すぎてCPU側の処理が追いつかないのだろう。

 Apex Legendsはフレームレート上限を解除コマンドを使っても最大300fpsのゲームだ。フルHDとWQHDはほぼ平均300fpsに到達、4Kでも平均286fpsと天井が見えるところまで来ている。4KはRTX 3090 Tiよりも約63%もフレームレートが向上とかなりの伸び率だ。

 お次は重量級ゲーム「サイバーパンク2077」。RTXシリーズはNVIDIA独自の画質を保ったまま描画負荷を軽減できるアップスケーラー「DLSS」を使えるのが強みだが、RTX 40シリーズは最新の「DLSS 3」に対応する。従来のアップスケール技術に加えてAIによるフレーム生成技術が追加され、さらにフレームレートを高められるようになった。この新機能は第4世代のTensorコアを持つRTX 40シリーズだけが使えるもので、ゲーマーにとっては最大の注目点と言えるだろう。ここではDLSS 3に対応するベータ版のサイバーパンク2077を使って、DLSS 3でどこまで性能が伸びるかも合わせてチェックしていく。

DLSS 3対応のベータ版サイバーパンク2077には、DLSSの設定にフレーム生成の「DLSS Flame Generation」という項目が追加される

 テストは最高画質設定の「レイトレーシング:ウルトラ」をベースに、レイトレーシングライティング設定をもっとも高い「サイコ」にし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

サイバーパンク2077の計測結果

 DLSSを使っていないフレームレートを見ても世代間の性能差は明らかだが、DLSS 3の威力に注目だ。RTX 4090は4Kで平均38fpsから平均142fpsまで向上。約3.7倍もフレームレートが伸びており、最重量級ゲームを最高画質+レイトレーシングでも4K/144Hz液晶でヌルヌル描画で遊べる。「ついにここまで来たか」と素直に感じ入るテスト結果である。

 DLSS 3に対応するゲームとしてもう一つ、「F1 22」のベータ版も試してみた。画質、レイトレーシングとも最高設定の「超高」とし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

F1 22の計測結果

 このゲームは平均200fps前後で頭打ちになってしまうようなので、4Kでのフレームレートに注目してほしい。RTX 4090はDLSSを使えば、頭打ちの平均200fpsに近くなっており、サイバーパンク2077と合わせて、4K+高画質+レイトレーシングでも余裕で高フレームレートで遊べるGPUが登場したことが改めて分かる結果と言えるだろう。

動画エンコードするならデュアルNVENCに注目

 クリエイティブ系の処理も軽くテストしてみた。今のところAdobeのアプリはRTX 40シリーズへの対応が完了していないのでここでの結果はあくまで参考といったところだが、写真編集アプリのPhotoshopとLightroom Classicを実際に動かしてさまざな処理を行なう「UL Procyon Photo Editing Benchmark」を試してみた。一部処理にGPUパワーを活用しているのでスコアに差が出るはずだ。

UL Procyon Photo Editing Benchmarkの計測結果

 GPU世代が進むごとにわずかにスコアがアップしているのが分かる。RTX 4090は発売されたばかりなので、この先さらに最適化が進むことを期待したいところだ。

 テスト時間とアプリの対応状況を鑑みて、今回はUL Procyon Video Editing Benchmarkの実施は見送ったが、すでに対応が進んでいるビデオ系アプリを試してみよう。RTX 40シリーズのスペックでの大きな注目ポイント、ハードウェアエンコーダーのNVENCが第8世代に強化された点だ。RTX 4090(と4080)はこれを2基備えており、その2基を同時に使ったデュアルエンコードにも対応。NVENCを使った動画エンコードの処理時間は大幅に短縮できるわけだ。また、高い圧縮率でH.265よりも高画質だというAV1コーデックのエンコードにも新たにサポートしている。

 ここではデュアルエンコードに対応するテスト版のDaVinci Resolve 18を使って、Apple ProResの4Kと8K素材を使ったプロジェクトをそれぞれH.265とAV1に変換する速度を測定した。品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:速度優先の設定でエンコードを実行している。

DaVinci Resolve 18によるエンコード時間の計測結果

 デュアルエンコードの威力は明らかだ。H.265のエンコードはRTX 3090 TiやRTX 2080 Tiの半分以下になっている。そして、RTX 4090以外はAV1のハードウェアエンコードに対応できない。動画エンコードをバリバリ使っている人なら、これだけでも買う価値があると言ってもよいだろう。

なんと消費電力はRTX 3090 Ti以下に

 これだけの性能を発揮するRTX 4090。気になるシステム全体の消費電力を測定してみよう。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spy実行時の最大値とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。

システム全体の消費電力の計測結果

 意外なことを、RTX 3090 TiよりもTime Spy時で101W、サイバーパンク2077時で79Wも低くなった。それでTime SpyのスコアはRTX 4090のほうが約47%も上。ワットパフォーマンスはかなり高いと言ってよいだろう。新アーキテクチャの実力が分かる部分と言える。

 GPU温度と動作クロック、カード単体の電力推移もチェックしておこう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の推移をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追っている。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」、電力は「GPU Power」の値だ。なお、今回のすべてのテストはバラック状態で実施している。

GPU温度と動作クロックの推移

 動作クロックはほぼ2,760MHzで推移。GPU-Zで表示されたブーストクロックの2,625MHzよりもちょっと高いクロックで動作していた。温度は63℃前後と、ハイエンドカードとしては十分過ぎるほど冷えている。冷却システムの「Tri Frozr 3S」は非常の優秀だ。

 動作音もファンの真横から15cm離れた位置で測定したところアイドル時で35.7dB、サイバーパンク2077時でも44.8dBだった。正直、サイバーパンク2077時は簡易水冷ファンの音で動作音が大きくなっているて言ってよいほど。ただ、さすがにカードの周囲に熱は感じるので、ケースに収納する場合は放熱を捌ききるためのエアフロー確保が重要だろう。大型ケースと複数のケースファンで万全の体制を整えたい。

カード単体の消費電力の推移

 カード電力は480Wに設定されているが、HWiNFO Proで測定する限りは370W前後で動作していた。システム全体の消費電力から考えても妥当なところだ。アーキテクチャの刷新、製造プロセスの微細化などで、電力効率は上がっているのは間違いないだろう。

超特大ボディは伊達ではない。圧倒的パワーで新時代への扉を開け!

 GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24Gは文句なしの超ハイエンドカードだ。たたでさえモンスターのRTX 4090をオーバークロックしてさらに高い性能を叩き出しつつ、その強力なクーラーで冷却力を確保することで、RTX 4090の実力を十分に発揮させている。消費電力の面でもRTX 3090 Tiを下回り、ワットパフォーマンスの面でも圧倒的だ。

 ゲームでの性能はご覧の通り圧倒的。クリエイティブ用途はこれからのアプリ最適化の進行でメリットがさらに出てくると思われるが、現状でもデュアルエンコードによる動画エンコード時間の大幅な短縮を実現済みと今後に期待が持てる。“現在最強のビデオカード”がほしい人にとっては、これ以上ない存在と言ってよいだろう。

 なおMSIは、特別エディションの「GeForce RTX 4090 GAMING TRIO 24G」を発売する。販売場所はツクモなんば店の“ツクモ×MSIコンセプトストア”限定で、販売価格は298,000円(税込)。発売日は2022年10月15日。

限定販売される「GeForce RTX 4090 GAMING TRIO 24G」

[制作協力:MSI]