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Ryzen搭載ノート「ASUS ZenBook 14 UM431DA」を1TB NVMe SSDへ換装、読み書きともに2倍以上高速化
SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 浅倉 吉行
2022年10月28日 00:00
今回SSD換装の事例として紹介するのは、2019年に発売されたASUSのRyzen搭載ノートPC「ASUS ZenBook 14 UM431DA」。
14インチで持ち運びに適した薄型設計ながら、フルHD(1,920x1,080)解像度に対応したディスプレイや、GPUにRadeon Vega 8を備える高性能なノートPCだ。
用意したのは、Ryzen 5 3500U(4コア/8スレッド)と8GBのメモリ、256GBのNVMe M.2 SSDを搭載した型番「UM431DA-AM001T」のモデル。換装用には1TBのNVMe M.2 SSDを用意し、高速化と大容量化を図ってみた。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
ASUS ZenBook 14 UM431DAの256GB SSDを1TBのNVMe SSDへ換装
今回の「ASUS ZenBook 14 UM431DA (UM431DA-AM001T)」はモバイル向けのRyzenを搭載した14インチビジネスノートPC。厚さ15.9mmで重量1.39kgと持ち運んでも使えるモデルとなっている。
新品ではないので構成などが若干変更されている可能性もあるが、今回の個体の大まかなスペックは、CPUが Ryzen 5 3500U(4コア/ベース2.1GHz/最大ブースト3.7GHz)、CPU内蔵GPUがRadeon Vega 8、メモリがDDR4-2400 8GB、ストレージが256GBのM.2 NVMe SSD。ディスプレイは14インチ/1,920x1,080ドットで、OSはWindows 10 Home 64bit。
搭載インターフェイスはメーカーサイトによると、USB 3.2 Gen1 Type-C×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×1、USB 2.0×1、オーディオコンボジャック。SDXC対応カードリーダー、HDMI出力×1などを備える。無線LANはIEEE802.11a/b/g/n/ac対応で、Bluetooth 4.2も利用可能だ。
今回の個体はタッチパッドと液晶に若干の難があり、延命か買い替えか悩む面もあったが、本体の性能的には今でも十分に使えるので、SSDの大容量化/高速化で延命を図ってみたい。
ASUS ZenBook 14 UM431DA(UM431DA-AM001T) | |
---|---|
CPU | Ryzen 5 3500U(4コア/2.1GHz/最大ブースト時3.7GHz) |
メモリ | DDR4-2400 8GB |
ストレージ | M.2 NVMe SSD 256GB(PCI Express 3.0 x2接続) |
GPU | Radeon Vega 8 |
ディスプレイ | 14インチ/1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Home |
換装に使うのは1TBのNVMe SSD「Samsung SSD 980」
今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 980の1TBモデル(MZ-V8V1T0B/IT)。最大速度はリード3,500MB/s、ライト3,000MB/s。NVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0×4レーン。
Samsung SSD 980は250GB~1TBまでの3製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。
古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介
ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。
M.2型のNVMe SSD向け外付けケースは2,500~4,000円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。
今回使用している外付けケースはORICOの「ORICO-M2PAC3-G20」。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2x2接続のケースで、SSDの装着も比較的容易にできるタイプだ。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単
今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。
Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。
USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そういった状況の場合は外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。
Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認しよう。
今回の換装では不要であったが、Windows Updateの過程でCドライブ領域がBitLockerにより暗号化されている場合がある。そういった場合にはクローン作業の前に暗号化の解除が必要だ。
パーティションが暗号化されているのかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。暗号化されたままではデータのクローンは行えなず、途中で止まったりと正常に作業が完了しない。
また、表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意が必要だ。その際は「Bitlockerを有効にする」を選択し、その後無効化すれば解除される。
暗号化を解除すれば、Samsung Data Migrationで正常にクローンを完了できる。
ZenBook 14 UM431DAの分解はトルクスドライバーが必要、背面パネルが外せればSSD換装は簡単
ここからは「ZenBook 14 UM431DA」の分解になるが、一般的なプラスのドライバーではなく、T5のトルクスドライバーが必要になるので注意。精密ドライバーセットなどによくある星型のもので、入手も難しくないので事前に用意しておこう。
また、SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けてほしい。分解作業は背面パネルさえ外せれば簡単で、SSDへもアクセスしやすい構造になっている。
背面パネルさえ外せればあとは簡単で、M.2スロットへもアクセスしやすい構造となっている。パネルを外したら、次は安全にSSDを換装するためにバッテリーの接続を外そう。バッテリーも外し方さえわかってしまえば作業自体は簡単だ。
ZenBook 14 UM431DAのM.2スロットはSSDを水平に抜き差しするタイプになっている。固定されているネジを外したら斜めに持ち上げたりせずそのまま外そう。サーマルパッドなどが装着されているので、それらを外して換装用のSSDに同じように装着し、M.2スロットに装着し直せば作業は完了だ。
冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。
とはいえ、ストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買換えるよりもSSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。
大容量SSDへの換装で空き容量は約5倍にアップ、NVMe SSD化することで体感的な速度も向上
実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。
空き容量は4倍以上に増加、普段使いのファイルも置けてOSの大型アップデートも安心な容量に
まずは容量の面で見ると、換装前の空き容量は205GB。ここにソフトウェアやデータを保存するとなると流石に厳しい。クラウドにデータを逃がすなどの工夫が必要になってくることだろう。
換装後の空き容量は、897GBと大幅アップ。これにより、アプリケーションもよほど大容量の物でなければいろいろとインストール可能になる。ビジネス用途などであれば、資料などをPCに大量に保管してもあまり困ることはない容量と言えるだろう。
また、Windows 11へアップグレードする場合や、大型アップデートを適用する際などは、数十GB単位で空き容量が要求されることもある。PCを長く使うのであれば、大容量SSDを搭載し、空き容量には余裕を持っておくことが大切だ。
読み出し速度は最大で約2倍ほど、書き込み速度は約3倍に
換装前後の速度をCrystalDiskMarkで確認してみたが、リード/ライト共に大幅に向上している。
換装後のSamsung SSD 980 1TBは接続もPCIe 3.0 ×4レーンとなっており、「ZenBook 14 UM431DA」はPCIe 3.0×4レーン接続のSSDの速度をしっかり引き出せていると言える。
ベンチマークでは見えてこない実際に使った時の速度、換装後はデータの取り込みがより快適に
今回2点興味深い現象が確認できたので紹介しておこう。
1点目はノートPC側の仕様で、ZenBook 14 UM431DAの製品サイトの情報には「USB3.1 (Type-C/Gen1)」と記載があるので本来5Gbpsまでのはずだが、実際は10Gbpsでの転送が可能なようだ。アップデートなどで発売後に機能が解放された可能性もあるが、USB 3.2 Gen2相当でのデータ転送が行えたのは嬉しい誤算だった。
もう一つは実際に大きなデータを転送した際の挙動だ。1GB/s前後が最高速となる外付けSSDからデータを取り込む場合、外付けSSD側の速度がネックとなり、内蔵SSDの換装前後でデータの取り込み速度に違いが出ないことも多い。
今回であれば、換装前の「SK hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」はベンチマークでは書き込み速度が800GB/s出ているので、高速なSSDに換装しても外付けSSDからのデータ転送速度は200MB/s程度しか上積みできず、理屈の上では換装後に劇的にデータ転送が高速化されるようなことはない。
ただし、現在のSSDは内部のキャッシュを活用して速度を引出しているので、容量やコントローラの性能などにより、ベンチマークでは見えない部分で速度に差が出る場合もある。
以下は50GBのデータを「Samsung Portable SSD T7 Shield(1TBモデル)」からPC本体側に転送した際の様子だが、「SK hynix HFM256GDJTNG-8310A BA」は、出だしで600MB/sを超えるような速度が出たものの、最終的に370MB/s前後となり、転送が完了するまでは2分19秒かかった。
換装後のSamsung SSD 980(MZ-V8V1T0B/IT)」では、途中若干速度が落ち込む場面はあったものの、概ね600MB/s以上で転送できており、50GBのファイルが転送完了するまでの時間は1分24秒となり、実使用の場面でもSSD換装の恩恵が受けられる事例となった。
Windwos 11への対応もOK、SSD換装でまだまだ使えるPCに
ちなみに、今回使用している「ZenBook 14 UM431DA」はメーカーサポートでWindows 11動作検証済みのため、将来的にWindows 11にアップグレードすることも可能だ。SSDへのアップグレードを行っているので、Windows 11へOSをアップグレードした際も快適に使えるだろう。
PCメーカーがWindows 11への対応状況を公開していない場合などは、Windows 11の公式サイトで公開されている「PC 正常性チェック アプリ」から確認しよう。使用しているPCがWindows 11へ対応しているのか、逆に対応していない部分はどの部分なのかを確認できる。
ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。
今回とりあげた「ZenBook 14 UM431DA」は、14インチ/フルHDのディスプレイを備え、4コアCPUのRyzenにGPUはRadeon Vega 8を備えるなかなか高スペックなモデルだ。本体は薄型で重量1.39kgと持ち運びも考慮されており、使えるならなるべく長く使いたいといったモデルだろう。SSDを換装することで空き容量も大幅に増加し、Windows 11へのアップグレードする際などにもゆとりができたので、性能に不満が出てくるまで長く使えるようになったのではないだろうか。
PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてもらいたい。
[制作協力:Samsung]