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うちのケースにもRTX 4080が入るかも? GAINWARD「GeForce RTX 4080 Phantom」はチョイ短くて性能良好!

標準+20WのPower Limitと強力クーラーが生むベストバランス text by 芹澤 正芳

 新アーキテクチャ「Ada Lovelace」を採用し、強烈な性能によって大きな話題を集めているNVIDIAの最新GPU、GeForce RTX 40シリーズ。第2弾として登場したGeForce RTX 4080はレイトレーシングをごりごりに効かせても快適な4Kゲーミングが可能な3D性能に加え、前世代よりも大きく向上したワットパフォーマンスが大きな特徴だ。

 そのRTX 4080を搭載するビデオカードが各社から続々登場しているが、今回はGAINWARDの「GeForce RTX 4080 Phantom」を紹介しよう。RTX 4080のカードとしては短め、ブーストクロックは定格仕様だが、カード電力の工夫で高クロックの維持を実現するなど、メーカー独自の味付けが光る製品だ。旧世代のGeForce RTX 3080搭載ビデオカード(定格モデル)と比較し、DLSS 3対応タイトルを中心にベンチマークを行なっていこう。

巨大3連クーラー搭載のフラグシップモデル

GAINWARDのGeForce RTX 4080搭載カード「GeForce RTX 4080 Phantom」。実売価格は240,000円前後

 「GeForce RTX 4080 Phantom」は、GPUにRTX 4080を搭載するハイエンドビデオカードだ。同社はPhoenix、Ghost、Pegasusといったシリーズを展開しているが、「Phantom」はフラグシップモデルに属する。とはいえ、同社のRTX 40シリーズは現在Phantomシリーズのみ展開。OCモデルには末尾に“GS”の文字が付く。今回紹介するの無印なので、ブーストクロックは定格だ。

 まずは、RTX 4080のスペックをおさらいしておこう。ブーストクロックの定格は2,505MHz、CUDAコアは9,728基、ビデオメモリはGDDR6Xの16GB、カード電力は320Wだ。前世代のRTX 3080はブーストクロックが1,710MHz、CUDAコアが8,704基、ビデオメモリはGDDR6Xの10GB、カード電力は320Wとなっている。カード電力はそのままにクロックとCUDAコア数を大幅に向上させているのが最大のポイントと言えるだろう。

 GeForce RTX 4080 Phantomで特徴的なのは、Power Limitつまりカード電力が340Wに設定されていること。定格の320Wから20Wだけアップさせている。最近のビデオカードは定格、OCどちらのモデルでもゲームの実行中は設定されているブーストクロック以上で動作するのが当たり前だ。つまり、カード電力と冷却に余裕があれば、定格モデルであっても高いブーストクロックを維持できる目算になる。テストでは、そこにも注目したい。

GPU-Zでの表示。ブーストクロックは定格の2,505MHzなのが分かる
その一方でPower Limit(カード電力)は定格の320Wから340Wにアップされている

 冷却には、9cm径で独自の「Cycloneファン」を3基搭載。外周部に船底のような形状のウィングチップを設けることによって空気の流れを集約し、エアフローを高めているのが特徴だ。このほか、ヒートシンクは空気とフィンの接触面積を増やすという角型の「Diffuserフィン」を採用、GPUとビデオメモリには熱を効果的に吸収する銅ベースの大型プレートを備え、ニッケルメッキを施した寸法の異なる2種類のヒートパイプによって放熱性を高めるなど、高性能なRTX 4080を確実に冷やすさまざまな工夫が凝らされている。また、GPUの温度が60℃以下ではファンが停止する準ファンレス仕様だ。

外周部にウィングチップを備える独自のCycloneファンを3基搭載
剛性を高めるバックプレート。後部にはスリットがあり、背面から熱を逃がす構造だ。これはRTX 30シリーズから多くのメーカーが採用している仕組
3.5スロット厚の巨大なヒートシンクでRTX 4080を冷やす
後部から見ると太さの違うヒートパイプを組み合わせているのが分かる

 カード長は32.94cmで厚みは3.5スロットなので実質4スロット分のスペースが必要だ。32.94cmはビデオカード全体では大きいが、RTX 4080カードは35cmを超えるものも珍しくないだけにかなり短いほう。取り付け可能なビデオカードが34~35cmまでのPCケースもそれなりに多いだけに、RTX 4080がケースに収まるか心配という人は、それだけでこの本機をチェックする価値はあると言えるだろう。

 重量は公開されていないが、筆者の実測で1,989gと2kg近い重さだ。そのため、ビデオカードを支えるためのサポートステイも付属している。PCケースに組み込むときは、ぜひとも合わせて取り付けたい。

長さ調整が可能なサポートステイが付属。2台目のビデオカードを支える補助プレートもあり、デュアルカード環境にも対応
サポートステイはカード後部のネジ穴に固定する
アドレサブルRGBの発光パターンをビデオカードとほかの機器で同期できるケーブルも付属。上部のロゴにLEDが内蔵されている
ユーティリティの「ExperTool」を使えばファン回転数の手動調整や、LED発光パターンの変更が可能
補助電源は12VHPWR×1を採用している
12VHPWR×1を従来のPCI Express 8ピン×3に変換するケーブルも付属
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1a×1とスタンダードな構成

3DMark Fire Strikeでスコア5万超えを叩き出す!

 ここからはベンチマークに移ろう。比較対象として、定格モデルのGeForce RTX 3080を用意した。世代間の性能差を見るのによいだろう。Resizable BARは有効にし、ドライバは原稿執筆時点で最新のGame Ready 526.98を使用した。

 また、GPUがRTX 40シリーズの最上位ではなく上から2番目のモデルであることに合わせて、CPUもIntel第13世代Coreの最上位から一つ下になるCore i7-13700Kを選択している。最強CPUに組み合わせるGPUとしてはRTX 4090もRTX 4080も文句なしだが、13900KとRTX 4090の組み合わせだと軽く40万円超になるが、13700KとRTX 4080だと30万円くらい。現実的にはこの10万円の差はやはり大きい。また、13900Kよりも御しやすいという点でも13700Kは悪くない選択肢だ。

テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUIntel Core i7-13700K(16コア24スレッド)
マザーボードIntel Z790搭載マザーボード
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源ATX 1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。DirectX 11ベースのFire Strikeで5万オーバーのスコアを出しているのに注目したい。Fire Strike程度ではRTX 4080には負荷不足、というところはあるものの、このスコア自体は高OCのRTX 4080と変わらないスコアで、ブーストクロックは定格設定ながらポテンシャルが高さがうかがえる。DirectX 12ベースのTime Spy、レイトレーシングのPort Royal、DirectX 12 UltimateベースのSpeed Wayいずれも好スコアだ。RTX 3080に対しては、約1.3~1.6倍ものスコアになっており、アーキテクチャ刷新によって性能が大きく向上したのがよく分かる。

3DMarkの計測結果

 続いて、人気FPSの「レインボーシックス シージ」と「オーバーウォッチ 2」を試そう。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、オーバーウォッチ 2はマップ「Eichenwalde」でBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

レインボーシックス シージの計測結果
オーバーウォッチ 2の計測結果

 レインボーシックス シージはフルHDとWQHDでフレームレートが近く、RTX 4080としてはフレームレートが控えめなのは、CPUの性能不足と考えられる。GPU性能が十分な状況では、CPUパワーがフレームレートに影響しやすい。高リフレッシュレートのゲーミング液晶も十分活かせる平均500fps以上が出ているのでプレイする上で何も問題ないが、ゲームによってはCore i7-13700KでもRTX 4080を活かし切れないケースがあるということだ。

 逆にオーバーウォッチ 2はCPUパワー不足に陥ることはなく、RTX 4080として優秀なフレームレートを出している。4K/144Hzのゲーミング液晶を活かし切れる平均147fpsに到達しているのは素晴らしいところだ。ちなみに、オーバーウォッチ 2は最大600fpsまでのゲームだ。なかなか、そこまでは到達しないが。

 次に、RTX 40シリーズの大きな強みである「DLSS 3」対応のタイトルを試して見よう。RTXシリーズはNVIDIA独自の高画質アップスケーラー「DLSS」を利用できるのが特徴の一つだが、RTX 40シリーズでは刷新されたTensorコアを利用し、従来の機能に加えてAIによるフレーム生成技術を追加した「DLSS 3」に対応。描画負荷の高いゲームやCPUパワーが不足している状況でも高いフレームレートを出しやすくなった。ちなみに、DLSS 3を使えるのはRTX 40シリーズのみ。それ以外はフレーム生成できず、DLSS 2までの対応となる。

 まずは、PC版が2022年11月19日に発売されたばかりの「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」を試そう。発売時からDLSS 3に対応しているタイトルだ。レイトレーシングにも対応する重量級ゲームでもある。

 テストは画質プリセットを最高の「非常に高い」をベースに、レイトレーシング関連の設定もすべて有効に、そのほかもすべて最高画質にし、マップ内の一定コースを60秒ダッシュした際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

Marvel's Spider-Man: Miles MoralesはDLSS 3に対応し、グラフィック設定にフレーム生成の項目がある
Marvel’s Spider-Man: Miles Moralesの計測結果

 DLSSを有効にしていない状態では、RTX 4080でも4Kだと平均42fpsしか出ていない。RTX 3080ではさらに半分の平均21fpsだ。その一方でDLSSをパフォーマンスに設定、フレーム生成も有効にすると4Kは平均126fpsまで上昇。実に3倍もフレームレートがアップ。RTX 3080はフレーム生成に対応できないので、平均38fps止まり。RTX 4080のほうが約3.3倍ものフレームレートを出している。DLSS 3の威力がよく分かる結果だ。

 続いて、人気レーシングゲームの「F1 22」を実行しよう。アップデートにてDLSS 3に対応したタイトルだ。画質、レイトレーシングとも最高設定の「超高」とし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

F1 22の計測結果

 同じくDLSS 3の威力は絶大だ。4KではDLSSを有効にすることで約2.5倍もフレームレートが向上(72fps→183fps)。ただ、Marvel's Spider-Man: Miles Moralesほどは重くなくRTX 3080でもDLSSを使うことでフレーム生成は使えないが、それでも平均112fpsを出している。

 同じく、40周年記念の大型アップデートにてDLSS 3に対応した「Microsoft Flight Simulator」もテストしてみよう。アクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレートを「FrameView」で測定している。

Microsoft Flight Simulatorの計測結果

 Microsoft Flight SimulatorはCPU負荷が非常に高く、DLSSを有効にしていない場合ではRTX 4080もRTX 3080もWQHDまではCPUパワー不足でフレームレートが伸びていない。その一方で、DLSS 3はCPUに負荷をかけずGPU側でフレーム生成できるので有効にするとCPUパワー不足の状態でもフレームレートを向上できる。その効果がよく分かる結果だ。RTX 4080はどの解像度でもフレームレートが2倍以上アップした。一方のRTX 3080はフレーム生成に対応できないので、CPUパワー不足が影響してDLSSを有効にしてもあまりフレームレートが伸びていない。

 最後に、最重量級ゲームのサイバーパンク2077でテストしたい。DLSS 3に対応するベータ版を使用している。テストは最高画質設定の「レイトレーシング:ウルトラ」をベースに、レイトレーシングライティング設定をもっとも高い「サイコ」にし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

DLSS 3対応のベータ版サイバーパンク2077には、DLSSの設定にフレーム生成の「DLSS Flame Generation」という項目が追加される
サイバーパンク2077の計測結果

 発売して2年近く経過しても描画負荷の高さは健在で、DLSSなしではRTX 4080でも4KとWQHDは快適なゲームプレイの目安である平均60fpsに届かない。RTX 3080は4Kだとわずか平均8fpsだ。DLSSを有効にすると、RTX 4080の4Kは平均27fpsから平均111fpsと約4.1倍もフレームレートが向上。フレーム生成の威力が分かる。RTX 3080も8fps→48fpsと6倍も伸びているとは言え、平均60fpsに届いていない。RTX 4080なら4Kかつレイトレーシングを最大に効かせても滑らかな描画が楽しめるのは素晴らしい限りだ。

消費電力はRTX 3080以下に! ワットパフォーマンスは良好

 次はシステム全体の消費電力を測定してみよう。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spy実行時の最大値とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。サイバーパンク2077は画質をレイトレーシング:ウルトラで解像度は4Kとした。

システム全体の消費電力

 Time Spyは瞬間的に消費電力が上がる場合あるので、たまたまRTX 3080のほうが高くなった可能性がある。本命はサイバーパンク2077だろう。定格では両方ともカード電力は320Wだが、本機は前述したように340W設定。その差がゲームプレイ中の消費電力に出ていると見てよいだろう。

 最後に、GPU温度と動作クロック、カード単体の電力推移をチェックしておこう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の推移をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追っている。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」、電力は「GPU Power」の値だ。バラック状態で動作させている。電力に関してはRTX 3080も比較に加えた。

GPU温度と動作クロックの推移
カード単体電力の推移

 ブーストクロックは2,775MHz前後で推移し、瞬間的には2,820MHzに到達する。これはRTX 4080のカードとして高い部類で、OCモデルでもこれより低いクロックでサイバーパンク2077が動作するものもある。カード電力の340W設定が効いているのではないだろうか。高クロック動作だが、温度は最大65.4℃とハイエンドカードとして十分なほど低い。

 カード単体としては315W前後で推移。RTX 4080搭載カードの中にはサイバーパンク2077が300W以下で動作するものもあるため、ちょっと大きめ。ブーストクロック高く出る分、当然ながら消費電力も大きくなっている。RTX 3080は定格動作なのもあって270W前後と、こちらはRTX 3080のカードとしては消費電力は小さめだ。とは言え、ゲームによってはRTX 4080は3倍以上のフレームレートを出せる。ワットパフォーマンスで考えれば、RTX 3080を圧倒的に上回る。

一見地味な定格モデルだが、ひと伸び&持続力で一風変わった仕上がりを見せる1枚

 ブーストクロックが定格仕様と地味に見せかけて、カード電力を340Wにすることで高クロック動作の維持を可能にし、各種ベンチマークのスコアは良好で、カタログスペック以上の好印象を受けた。カード長もRTX 4080としては短めで組み込めるケースが多いという実力派。RTX 4080の導入を考えているなら、ぜひともチェックして欲しい1枚だ。

[制作協力:GAINWARD/株式会社ニューエックス]