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GeForce RTX 40の目玉技術「DLSS 3」はフレームレート向上爆上げワットパフォーマンス向上にも貢献!? その挙動を徹底調査!!
“AMP Extreme AIRO”のシビれる新LEDライティングの動画チェックも! text by 芹澤 正芳
2022年12月16日 00:00
大幅なパフォーマンスアップを遂げたNVIDIA GeForce RTX 40シリーズ。素の性能向上自体も大きいが、DLSSによるフレームレートの向上はとくに大きく、効果的だ。なかでも、RTX 40シリーズのみで利用できる「DLSS 3」は、対応タイトルで圧倒的な効果を見せる。今回は、DLSS 3の効果を中心に、RTX 40のパフォーマンスについて、さらに詳しく見てみよう。テストにはZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIROを使用する。
まずは、RTX 4080の基本スペックおよびZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIROの特徴について触れておこう。RTX 4080はブーストクロックが2,505MHz、CUDAコアが9,728基、ビデオメモリがGDDR6Xの16GB、カード電力は320Wだ。前世代のRTX 3080(12GB版)はブーストクロックが1,710MHz、CUDAコアが8,960基、ビデオメモリはGDDR6Xの12GB、カード電力は350W。CUDAコア数とブーストクロックを大幅に向上させながらも消費電力はむしろ少なくなり、強烈なワットパフォーマンスを実現しているのが大きな特徴だ。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIROは、GPUにRTX 4080を採用し、ブーストクロックを2,565MHzに向上させたファクトリーOCモデル。3.5スロット厚相当になる独自の冷却システム「IceStorm 2.0」によって高い冷却力を備えている。カード長は35.55cmなのでPCケースに収まるかは事前に確認しておきたい。重量は筆者の実測で1,949gだった。パッケージにはサポートスタンドが付属するので、たわみ防止のために必要に応じて使うようにしよう。
人気FPSを4Kでも高フレームレートを余裕で出せるハイパワー
DLSS 3の前に基本性能も測っておこう。比較対象として定格から60MHzアップのOCカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 AMP Holo」を用意した。Resizable BARは有効にしている。テスト環境は以下のとおりだ。
CPU | Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690) |
メモリ | DDR5-4800 32GB(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
SSD | M.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)×2(システム用、データ用) |
CPUクーラー | 簡易水冷クーラー(36cmクラス) |
電源 | ATX 1,000W(80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(21H2) |
定番3Dベンチマークの「3DMark」、「レインボーシックス シージ」、「オーバーウォッチ 2」を実行する。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、オーバーウォッチ 2はマップ「Eichenwalde」でBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定した。
3DMarkはRTX 3080に対して順当な性能アップと言える。とくにレイトレーシングがテストに含まれるPort RoyalとSpeed Wayでは大きくスコアを伸ばした。レイトレーシング用のRTコアが刷新されているのが効いている。
オーバーウォッチ 2はレイトレーシングにもDLSSにも対応しないゲーム。素の性能差を見るのにピッタリだ。RTX 3080に対して約1.4倍のフレームレートを出しており、基本性能も大きく底上げされているのが分かる。その一方で、レインボーシックス シージはRTX 4080がフルHDとWQHDでフレームレートの差が小さい。これはGPUの性能が高過ぎて、CPUがボトルネックになっていると考えられる。Core i9-12900Kでも追い付けない性能を持っているのはおそるべし。
DLSS 3は“フレームレートアップ”&“消費電力ダウン”でいいところばかり!?
さて、ここからが本題。NVIDIAではRTXシリーズに搭載されている深層学習向けのTensorコアを活用し、低解像度でレンダリングしたゲーム画面を高い画質でアップスケールする「DLSS(Deep Learning Super Sampling、ディープラーニング スーパー サンプリング)」という技術を展開している。高性能な描画負荷軽減技術として高い評価を得ているDLSSだが、RTX 40シリーズの登場とともに、AIによってフレームを生成する技術、“オプティカルマルチフレーム生成”を追加した「DLSS 3」へと進化した。
DLSS 3はRTX 40シリーズだけで使える技術で、アップスケール&フレーム生成で従来よりも高いフレームレートを出せるのが最大の強み。GPUのみで処理するので、CPUがボトルネックになるようなシーンでもフレームレートを伸ばせるのも特徴となっている。
そこで、今回はDLSS 3に対応するゲームを使って、DLSSを使わない、従来のDLSSのみを使用、DLSS 3のフレーム生成だけを使用、DLSSとフレーム生成の両方を使用という4パターンでフレームレートや消費電力がどう変化するのか試していく。用意したゲームは「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」、「A Plague Tale: Requiem」、「Microsoft Flight Simulator」の3本だ。比較対象には同じく、ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 AMP Holoを使用。RTX 3080はフレーム生成には対応できないので、DLSSを使わないネイティブ設定とDLSSを使った2パターンの測定となる。
Marvel's Spider-Man: Miles Moralesは、画質プリセットを最高の「非常に高い」をベースに、レイトレーシング関連の設定もすべて有効に、そのほかもすべて最高画質にし、マップ内の一定コースを60秒ダッシュした際のフレームレートを「FrameView」で測定。A Plague Tale: Requiemは、Chapter 2の街中を移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定。Microsoft Flight Simulatorはアクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレートを「FrameView」で測定している。
まずは、Marvel's Spider-Man: Miles Morales結果から見ていこう。4K解像度に注目すると、DLSSとフレーム生成を両方有効にするとネイティブの状態よりも3倍近くフレームレートが上昇しており、DLSS 3の威力がよく分かる結果だ。4Kで高画質&レイトレーシングを最大に効かせてもなめらかな描画が楽しめるのは素晴らしい限り。
フレーム生成の意義がよく分かるのはフルHD解像度で、ネイティブとDLSSでほとんどフレームレートに差がない。CPUがボトルネックになっていることが原因と思われ、GPU性能が十分かつCPUがボトルネックになっている場合はDLSSを有効にしてもフレームレートは伸びないのだ(GPU側がボトルネックになるWQHD/4KではDLSSで大きくフレームレートが伸びる)。その点、フレーム生成はGPUだけで行なうため、CPUパワーが足りない状況でもフレームレートを伸ばせる、というわけである。
そしておもしろいのが、FrameViewの「GPU NV Power」の項目でチェックしたカード単体の消費電力だ。ここではRTX 4080の結果だけ掲載する。「画質“非常に高い”」や「画質“非常に高い”、フレーム生成“オン”」は、レンダリング解像度が4Kなら4Kとそのままなので描画負荷が高く、消費電力も高くなる。その点、DLSSの“パフォーマンス”設定ではレンダリング解像度が4KならフルHDと4分の1まで下がる。描画負荷が激減するため消費電力も一気に小さくなるというわけだ。ワットパフォーマンスの面でもDLSSとフレーム生成の組み合わせは有効的と言えるだろう。
また、4K解像度のフレームレートは平均60fpsあれば十分という人は、DLSSだけ使うのもよいだろう。
A Plague Tale: Requiemもほぼ同じ傾向だ。ネイティブの4Kは平均64fpsだが、DLSSとフレーム生成を有効にすると平均159fpsとこちらも4K/144Hzのゲーミング液晶を活かし切れるだけのフレームレートまで高められる。このゲームもCPU負荷が大きく、フルHDとWQHDではCPUがボトルネックになってDLSSを有効にしてもフレームレートが伸びていない。ハイエンドCPUでも追い付けないRTX 4080のような強烈過ぎるGPUを活かすためにもフレーム生成は必要ということだろう。
Marvel's Spider-Man: Miles Moralesよりも描画負荷が高いのか、消費電力はA Plague Tale: Requiemのほうが全体的に上だ。消費電力はゲームによって、これぐらいは変わるということだろう。
Microsoft Flight Simulatorも同様だ。フルHDとWQHDはCPUがボトルネックになってDLSSを有効にしてもフレームレートが伸びていない。そのため、フレーム生成が効くのがよく分かる。消費電力も同じ傾向で、DLSSだけを使った場合は激減する。このゲームは、DLSSだけを有効にしても平均フレームレートは伸ばせないが、省エネ化するという点では非常に有効だ。
ゲームプレイにおいて、それほどCPUパワーが不足するのか? と思うところだ。実際にMicrosoft Flight SimulatorをフルHDでプレイしたときのCPU使用率をFrameViewで追ってみた。
実はゲームプレイ中はCPU全体の使用率で見ると15%前後と、とてもCPUパワーが不足しているように思えない。しかし、グラフ化したコア別の使用率を見ると二つのコアだけに強烈に負荷がかかってるのが分かる。各コアへの負荷分散がうまくできないため、CPUがボトルネックになっているのではないだろうか。ゲームのマルチスレッド対応が進めば、少しは解消される気はする。
最後に、レイトレーシングやDLSS 3などNVIDIAの最新技術を取り入れ、Portalの無料DLCとして12月9日に公開された「Portal with RTX」のベンチマーク結果も掲載する。チャプター4をプレイしたときのフレームレートを「FrameView」で測定した。
すべてのフレームにレイトレーシングを適用する「フルレイトレーシング」と言える作りで、描画負荷はかなり重い。4K解像度ではRTX 3080でも平均33fpsしか出ない。その一方で、DLSS 3に対応するRTX 4080なら平均88fpsに到達が可能。美しいグラフィックスでリメイクされた名作パズルのPortalを4K&なめらかな描画でプレイできるのはさすがだ。
アドレサブルRGBデバイスと連係できるLED機能にも注目
テストに使用したZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIRO、上位モデルのZOTAC GAMING GeForce RTX 4090 AMP Extreme AIROは、従来モデルからアップグレードされたLED機能も備えている。発売直後のレビューでは、発光のデモンストレーションなどはお見せできなかったので、改めて様子をレポートする。実際の発光の動きが分かるムービーを用意したのでそちらもご覧いただきたい。
RTX 40世代のAMP Extreme AIROは、ファンフレームの周囲、天面、裏面のロゴ、バックプレートの上部、背面の後部の5カ所にLEDを内蔵。さらに付属のアドレサブルRGBケーブルを本体の制御端子に付けることで、アドレサブルRGB対応のデバイスの発光を“ビデオカードから”コントロールできるようになる。ビデオカードの発光はPC内部のパーツの中でも結構目立つ部類なので、ここを起点にアドレサブルRGB対応デバイスの発光色や発光パターンを同期できるのはドレスアップ好きとしてうれしいポイントだろう。
また、設定自体にはFireStormが必要だが、設定内容はWindowsやPC本体側ではなくビデオカード上に保存され、設定完了後のLED制御はビデオカード自身が行なう。つまり、一度設定してしまえば、LED発光に関してはFireStormは不要で、OSが起動していない状態でも設定したとおりに光らせることが可能となる。最小限の構成でLED制御ができ、常駐ツールの動作状況や安定性を気にする必要がまったくなくなるというのは、地味に効いてくる特徴と言える。
発光パターンは指定した色で光り続ける“STATIC”、ゆっくりと点滅する“BREATHE”などの基本的な発光パターンから、左または右から流れるように光っていく“SLIDE”、2色が切り替わってゆく“DUET”などのようにアドレサブルRGB LEDを活かした動きのあるパターンのものまで、豊富に用意されている。静止画でも動画でも“映える”発光スタイルを作れるのが楽しいところだ。
4K&レイトレも余裕のパワーと映えるデザイン&LED
GeForce RTX 40シリーズは、新アーキテクチャによって基本性能を底上げしているだけではなく、DLSS 3への対応によって4Kかつレイトレーシングをゴリゴリに効かせた描画負荷が強烈に高いゲームでも高フレームレートが出しやすくなり、「真の4Kゲーミング時代」がやってきたと感じさせる。DLSS 3は消費電力を下げることにも貢献しており、ワットパフォーマンスの高さも見逃せないポイントだ。
ZOTACの歴代AMP/AMP Extremeラインは、強力なGPUをがっちりサポートする基板の仕上げとクーラーのクオリティで知られている。もちろん、RTX 40世代のAMP Extreme AIROもそのあたりは抜かりなしだ。さらに今回の新モデルではライティングも一新。性能と見栄え、両方とも求める人にピッタリのカードとなっている。使いごたえ、いじりがいのある製品と言ってよいだろう。
[制作協力:ゾタック日本]