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4TB M.2 SSDをデータ倉庫にすると最高すぎる!ゲームもデータ転送も超高速

Crucial P3 Plusの4TBでPCがより快適に text by 久保勇

 M.2型のNVMe SSDにも4TBや8TBといった大容量モデルの選択肢も増えてきました。まだ手軽な価格帯とはいえませんが、こだわるユーザーであれば4TBは手が出せる価格帯になりつつあります。行く行くはデータ倉庫用のドライブもSSDにと考えている人も多いのではないでしょうか。

 今回のレビューでは、一足先にデータ倉庫用に4TBのM.2 NVMe SSDを使い、データ保管用にSSDを選ぶ際はどのようなところを意識した方が良いのか、実際に快適になるのかなどを、Crucial P3 Plusの4TBモデルを使って紹介したいと思います。

PCIe 4.0対応で5GB/sクラスのM.2 NVMe SSD「Crucial P3 Plus」4TBモデルをデータ倉庫用ドライブとしてテスト

 今回使用するSSDのCrucial P3 Plusですが、4TBモデルの「CT4000P3PSSD8JP」使用しています。PCI Express 4.0×4レーン接続で、4TBモデルの公称値はリード4,800MB/s・ライト4,100MB/s。搭載NANDはQLCとされています。

 容量ラインナップは500GB、1TB、2TB、4TB。4TBモデルの記事執筆時時点の安値店の価格は5万円前後、2TBが2万5千円前後となっており、予算やデータ量に合わせて適切なものを選ぶことをお勧めします。

 P3 Plusの4TBモデルをフォーマットした後の空き容量は約3.63TB。SSDは全領域を埋めるとパフォーマンスや寿命面であまりよくないといわれることもあるので、若干ゆとりのある容量を選ぶことをおすすめします。また、容量が大きいモデルの方がSLCキャッシュの容量も多くなる分、書き込み速度がTLC NANDよりも遅いQLC NANDのデメリットを軽減しつつ、快適に使えるメリットもあります。

 なお、HDDの容量をカウントする際は、1,000B=1KB、1,000KB=1GB、1,000GB=1TBといった感じに1,000毎に綺麗に単位が上がっていきますが、実際に使用するときは「1,024B=1KiB」と、1,024単位で区切られるKiB(キビバイト)でフォーマットされるので、実際に4TB SSDで使用できる領域は1割前後減った値になります。

データ倉庫にSSDを使うなら耐久性はどれくらい必要?QLC NANDでも十分な書き込み寿命がある今時のSSD

 SSDの書き込み寿命の指標としてTBWがあります。クリエイター用途などの場合は重要な指標になりますが、データ倉庫用に使用する場合、初めにデータを移す際は書き込み量が多いものの、普段は読み込みが主な用途になるかと思います。

 TBWの値は基本的に数値が大きければ大きいほど良いものの、数値が大きいほど高級品となる面もあるため、データ倉庫用としてはコストとのバランスが良いモデルを選びたいところ。

 実際にどれくらいのTBWのモデルを選ぶと良いのかは難しいところなのですが、Crucialでは指標となるデータをユーザーに提示しており、参考にすることができます。

 Crucialによると、一般的なユーザーが1日でSSDに書き込む量は平均35GB程度としており、これを年間に直すと13TB程度になります。

 Crucial P3 Plusは一番容量が少ない500GBモデルでTBWは110TB、4TBモデルのTBWは800TBとされており、製品保証期間の5年間使い続けても、普通に利用する分にはTBWの寿命に達することはないことになります。

 これはOS用ドライブとして使った場合で、データ倉庫用に使用した場合の平均的な書き込み量はもっと少なくなるので、書き込み寿命的にはかなりのゆとりがあることになります。QLC NANDは寿命の面がネガティブに語られることもありますが、一般的な用途に使った場合はかなりゆとりがある数値になっているので、そこまで神経質になる必要は無さそうです。

 ちなみに、筆者が普段メインに使用しているPCの状態もCrystalDiskInfoで確認してみましたが、2年で20TBほどデータを書き込んでおり、平均するとだいたい1日あたり27GB程度SSDにデータを書き込んでいるようでした。記事に使う写真の編集なども行っているPCなので、そこそこ使っているつもりでしたが、TBWを使い切ることはなかなか無さそうです。

 ただし、TBW的にゆとりがあっても、TLC NANDやMLC NANDを搭載したSSDを選ぶべき用途もあります。常に動画ファイルが書き出されるといった用途や、監視カメラのような常時書込みが行われる用途の場合、メーカーが公表しているTBWよりも早く寿命がくる場合があります。

 クリエイター用途やサーバー用途などではSSDを酷使して壊れたといった話を聞くこともあるので、高負荷な用途には上位モデル、一般な用途にはコスト重視モデルと用途に合わせてSSDは選ぶことをお薦めします。CrucialのM.2 NVMe SSDであれば、クリエイター用途や最高速が求められる用途にはTLC NAND搭載のP5 Plusや、一般用途やコストパフォーマンス重視の用途にはQLC NAND搭載のP3 Plus/P3/P2、などがラインナップされています。

ケーブル不要で複数台搭載してもスッキリ!今からPC用にデータ倉庫用SSDを選ぶならM.2 SSD

 これからPC用にSSDを購入するなら、今後の使いまわしなども考えてM.2型のSSDを選びたいところ。

 以下は3台のSSDをM.2 SSDで統一した場合とSATA SSDで統一した場合で、M.2 SSDで揃えるとどれくらい綺麗にまとめられるのかを分かりやすく比較したものです。

M.2 SSD×3台構成。
SATA SSD×3台構成。

 SATA SSDはデータ通信用のケーブルと電源ケーブルの2本が必要となるため、台数が増えるほどかさばります。1台程度なら問題ありませんが、台数が増えるほどケース内の配線のレイアウトなども手間になるので工夫が必要になったりもします。

 その点M.2 SSDはケーブルレスなので手間の面で大きなアドバンテージがあります。マザーボード上に搭載したい台数分のスロットがあるかどうかといった部分が制約になることもありますが、これからPC用にSSDを買うなら楽に扱えるM.2 SSDを選びたいところです。

世代の新しいマザーボードであれば、M.2スロットは2~4基ほど備えたモデルが多い。
SSD用ヒートシンクを備えたマザーも多く、発熱面での心配も少なくなりつつある。

 なお、現行世代のマザーボードであればM.2スロットは2~4基ほど備えたモデルが多く、ハイエンドマザーボードでは7基のM.2スロットを備えるモデルも存在します。以前に比べてより多くのM.2 SSDが搭載できる環境が増えているので、積極的に選んでいけます。

 また、高速なM.2 NVMe SSDは発熱が問題になることもありますが、多くのマザーボードがSSD冷却用のヒートシンクを備えており、こうした面からもM.2 SSDが扱いやすい環境になりつつあります。

ゲーム用途ではQLC NANDの大容量モデルがお得?ゲームによっては上位SSDと遜色ない性能

 ここからは実際に使用した際のパフォーマンスを見て行きます。まずは利用したい人が多いと思われるゲームの速度から。

 テストPCの環境は、CPUがCore i3-12100F、メモリがCrucialのDDR4-3200 16GB×2枚、マザーボードがCOLORFUL CVN Z690 GAMING FROZEN V21、ビデオカードがGeForce RTX 3060。OS起動用SSDにはCrucial P5 Plus 1TBを使用しています。

 テスト時はWindows 11でファイル転送時に速度が低下するバグが解消されていない状況だったので(※今後解消へ)、OSはWindows 10 Proを使用しています。

 以下はP3 Plusの4TBとCurucialのSSDでは現在最速モデルとなっているP5 Plusの2TBのロード時間を比較したもの。エルデンリングではセーブデータ選択から実際にゲームのフィールドには入れるまでを計測しましたが、P3 PlusとP5 Plusで差は1.1秒ほど。コストを考えると十分許容できる範囲の差ではないでしょうか。

エルデンリング
セーブデータ選択からフィールドに入るまでのロード時間を計測。

 こちらはモンスターハンターライズ:サンブレイクでクエストを選択し、実際にフィールドに入るまでのロード時間で、P3 PlusとP5 Plusで差がない結果となりました。

 おそらくロード時のデータサイズが小さい場合などはSSD以外の要因の方に時間がかかり、ストレージの差が出にくいのではないかと思われます。

モンスターハンターライズ:サンブレイク
クエスト選択からフィールドに入るまでにロード時間を計測。

 QLC NAND搭載のP3 Plusでもゲームのロード時間はかなり高性能なことがわかります。ゲームによっては上位モデルと遜色ないケースもあるので、同じコストであればより容量の大きいQLC NANDのSSDを選ぶのはかなりアリです。

データ倉庫用にSSDを買うなら書き込み速度2GB/s以上のモデルを外付けSSDからのデータ取り込みも超速いM.2 NVMe SSD

 データ倉庫用にはSATA SSDを使用しても快適なのですが、NVMe SSDが有利な点の一つとして外付けSSDからのデータ転送の速度を紹介します。

 P3 Plusとの比較にはSATA SSDとしてCurucialのMX500の4TBを、SATA HDDも4TBものを用意して比較しています。外付けSSDはCrucial P5 1TBとエアリアのケースSD-M2U32x2を使い、USB 3.2 Gen2x2接続で2GB/s出る外付けSSDを用意してテストを行いました。

20GBps接続の外付けSSDからのデータ転送時間を比較。
Crucial P5 1TBとエアリアのケースSD-M2U32x2を組み合わせて使用。
リード2GB/sでのデータ転送が可能。

 以下はUSB 3.2 Gen2x2接続の外付けSSDから、それぞれのストレージにデータを転送した際の時間です。データの容量は50GBで、写真と動画ファイルで構成しています。

 NVMe SSD(P3 Plus)がやはり一番速く、SATA SSD(MX500)にも大きな差をつけています。体感でも速い!といった感じなので、かなり快適です。USB4やUSB 3.2 Gen2x2の普及で2GB/sが出る外付けSSDは増えていくと思われるので、受け側になる内蔵ドライブも書き込み速度2GB/s以上は欲しいところです。

 SATA HDDはSATA SSD(MX500)と比べてもかなり時間がかかっており、外部からのデータ取り込みが多い人はSSDに変えるだけで大幅なパフォーマンスアップが期待できます。

 以下はエクスプローラーで実際にデータを転送した際の様子で、NVMe SSD(P3 Plus)は1.3GB/s前後で安定、SATA SSD(MX500)は出だし部分がOSのキャッシュで1GB/s近く出ているものものの、420MB/s前後で安定。SATA HDDはOSのキャッシュが使われている部分は速度が上がっていますが、120MB/s前後で安定している感じでした。

NVMe SSD(P3 Plus)へデータ転送した際の速度。
SATA SSD(MX500)へデータ転送した際の速度。
SATA HDDへデータ転送した際の速度。

SSDだけの環境はOSの起動時間も高速!PCはなるべくフルSSDにしたい

 NVMe SSD + NVMe SSD(P3 Plus)、NVMe SSD + SATA SSD(MX500)、NVMe SSD + SATA HDDの3環境でWindows 10がどれくらいの時間で起動するのかもチェックしてみました。以下のグラフがその時間です。

Windowsが起動するまでの時間を3環境で比較

 ストレージは起動時にイニシャライズが行われ、その時間の分ウエイトが入ります。SSDは基本的に一瞬で終わりますが、HDDはディスクのスピンアップ時間が加算されるのでその分遅くなります。

 ちょっと気になるのが、SATA SSDのMX500を使った時よりもNVMe SSDのP3 Plusを使った時の方がOS起動に時間がかかっている点で、複数回試してもP3 Plusの方が遅くなったので、SATA SSDのMX500の方がイニシャライズの時間は短いのかもしれません。ただ、差は1秒以内なので、マザーボードのBIOSの作り込みなどの影響もあるかもしれません。

ファイルを開いてからの反応もサムネイルの表示もSSD化で高速にデータ倉庫用とでもレスポンスはHDDから大きく向上するSSD

 NVMe SSD、SATA SSD、SATA HDDでレスポンスの面での差があるのかも比較してみました。

 以下のGIFアニメーションは、jpegとRAWファイルが混在する画像が大量に入ったフォルダを開いた際の挙動です。左上がNVMe SSD(P3 Plus)、左下がSATA SSD(MX500)、右下がSATA HDDです。

 細かく見ると、フォルダを開いてファイルアイコンが表示されるまではNVMe SSDとSATA SSDで同じ、ほんのわずかHDDが遅い感じで、SSDは引っ掛かりが無い感じです。

 サムネイルの作成スピードはSSDはどちらもほぼ同じで、HDDは結構時間がかかっていることがわかります。データ倉庫用であればファイル数が多くなるので、この辺りのレスポンスの差は体感に大きく影響してきます。

 また、ちょっと面白いところでは、出だしのサムネイル作成はSATA SSDが速いものの、途中でNVMe SSDに抜かれます。これはSATA SSDのMX500がDRAMキャッシュ搭載、NVMe SSDのP3 PlusがDRAMキャッシュ非搭載なので、この辺りが影響しているのかもしれません。扱うファイル数が多いほどNVMe SSDが優位になっていくと思われるので、価格差が小さいのであればNVMe SSDを選んでおきたいところです。

 なお、サムネイルの作成はキャッシュが一度出来上がってヒットすればHDDでも一瞬で表示されますが、キャッシュが無くても高速なSSDの快適さは別格です。

データ倉庫用にNVMe SSDは贅沢だけど凄くアリ、様々な面でメリットだらけ

 大容量のM.2 NVMe SSDをデータ倉庫用に使うと様々な面で快適になります。搭載も簡単、データの取り込みも高速、PC内の配線もスッキリとメリットは大きいです。以前にSATA SSDのCrucial MX500の4TBをデータ倉庫用に使用したレビューをお届けしましたが、そこから一段階便利になったと感じさせられました。

 今回使用しているCrucial P3 Plusはデータ倉庫用としてはオーバースペックといえる速度を持っており、書き込み寿命の面でもゆとりがあります。DRAMレスでQLC NAND搭載のエントリー向け仕様のモデルではありますが、使っている感じは癖などもなく扱いやすい印象でした。あとは価格がこなれてくればといったところ。

 SSDの大容量化が進むにつれて、PCに搭載するのはSSD、バックアップやNAS用はHDDと住み分けが進んでいくと思いますが、データ倉庫用にSSDを使うとかなり快適になるので、予算が許す人は是非データ倉庫用にNVMe SSDを導入してもらいたいところです。

[制作協力:Crucial]