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高OCでのゲーム中でも50℃台で静かだと!? MSIの空冷最高峰モデル「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」の脅威!!

最大規模のクーラーを搭載し高OC設定でも万全の状態に by 芹澤 正芳

 MSIはビデオカードのブランドを複数擁しており、LEDなど装飾のない質実剛健な「VENTUS」、高機能でLEDによる演出もある「GAMING」、そして最上位に君臨する「SUPRIM」などが代表的だ。中でもSUPRIMはファクトリーOCによる高い性能、それを支える強力な冷却システム、メタルカバーによる精悍なデザインを採用とパワーも見た目も最上位にふさわしい仕様になっている。

 そのSUPRIMのラインに、GeForce RTX 4080を搭載する「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」が加わった。今回は、最近レイトレ&DLSS対応化パッチがリリースされた名作タイトルのベンチも交えて、実機レポートをお届けする。

ファクトリーOCによる発熱を巨大クーラーで冷却

MSIの「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」は、GPUにRTX 4080を搭載するハイエンドのビデオカードだ。まずはRTX 4080のスペックを軽く紹介しておこう。ブーストクロックの定格は2,505MHz、CUDAコアは9,728基、ビデオメモリはGDDR6Xの16GB、カード電力は320Wだ。前世代のRTX 3080はブーストクロックが1,710MHz、CUDAコアが8,704基、ビデオメモリはGDDR6Xの10GB、カード電力は320Wだったので、カード電力は同じながら、前世代よりも大幅にスペックアップとなっている。

 つまり、RTX 40シリーズは、新アーキテクチャ「Ada Lovelace」によって性能を底上げしているだけではなく、消費電力自体は高いものの、優れたワットパフォーマンスを実現しているのが大きな特徴なのだ。

MSIのGeForce RTX 4080搭載カード「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」。実売価格は23万円前後

 「GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM X」は、ブーストクロックが2,625MHzと定格よりも120MHzアップさせた、いわゆるファクトリーOCモデル。さらにMSIの総合管理アプリ「MSI Center」を使って“Extreme Performance”モードに設定することで、ブーストクロックを2,640MHzまで高められるのが大きな特徴だ。

 また、デュアルBIOS仕様となっており、カード上部のスイッチによってパフォーマンス重視の“GAMING”と静音性重視の“SILENT”の二つの動作モードの切り換えを行なえる。テストではモードごとの挙動にも注目したい。

GPU-Zでの表示。GAMINGモードでのブーストクロックは2,625MHz
Power Limit(カード電力)は定格の320Wに設定されていた
MSI CenterアプリのUser ScenarioでExtreme Performanceを選ぶことで2,640MHzまで高められる
GPU-Zでの表示でも2,640MHzに変わっているのが確認可能だ
カード上部のスイッチで「GAMING」と「SILENT」のモード切り換えが行なえる。ちなみにどちらのモードでもブーストクロックは2,625MHzだ

 高OC動作を支える独自の冷却システム「TRI FROZR 3S」も強力だ。3連ファンは、従来よりも23%風量をアップさせたTORX FAN 5.0を採用。ブレードを3枚ごとに外周部で結合さえた独特の形状によってヒートシンクへの気流を集中させ、低回転でも高圧のエアフローを維持できるのが特徴。GPUとビデオメモリを覆う熱伝導に優れる巨大なベイパーチャンバーは、接触面を最大限確保できるように四角形に加工されたCORE PIPEと呼ばれるヒートパイプへと効率よく熱を伝え、CORE PIPEはその熱をヒートシンク全体に拡散させる。RTX 4080の熱をいかに素早く外へと伝えるかを追求した構造だ。

 ヒートシンクも高密度のフィンで構成されているが、ファンモーターの下など風量の少ない場所は密度を変える、気流の通り道にはV字型の切り込みを入れたフィンを配置するといった工夫でエアフローの効率を向上させている。背面には剛性を高める金属製のバックプレートが装着されているが、そこにもサーマルパッドを挟むことでさらに冷却効果を高めるという徹底ぶりだ。GPUの温度が一定以下ではファンが停止する準ファンレス仕様である点もポイントと言える。

剛性を高めるバックプレート。その下にはサーマルパッドが挟み込まれており、冷却力をさらに高めている
約4スロット厚の巨大な冷却システムでファクトリーOCされたRTX 4080を確実に冷やす

カード長は33.6cmで厚みは14.2cmもあり、4スロット分のスペースが必要だ。カード長はRTX 4080カードとしてはさほど長くない一方で、重量は2,364gとこちらは最大級と言ってよい。いかにズッシリとした強烈な冷却システムを搭載しているのか分かる重さだ。それだけにビデオカードを支えるサポートステイが同梱されているので、PCケースへの装着時は活用したい。

補助電源は12VHPWR×1を採用している
12VHPWR×1を従来のPCI Express 8ピン×3に変換するケーブルも付属
MSIの電源ユニット「MEG Ai1300P PCIE5」のように、ATX 3.0/12VHPWER対応の電源ユニットを使えば、電源ユニットとビデオカードの接続はケーブルは1本でOK
ディスプレイ出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1a×1とGeForceでは一般的な構成
巨大なカードだけに重量も公称2,364gと非常にデカい。広く高さ調整が可能なサポートステイが標準で付属するのでぜひ利用していただきたい
ファンの周囲と天面、およびバックプレートのSUPRIMロゴにRGB LEDが内蔵されている

RTX 3080の2倍以上のフレームレートを実現

 ここからはベンチマークに移ろう。世代間の性能差を見るため比較対象として、ブーストクロックが定格のGeForce RTX 3080を用意した。Resizable BARは有効にし、ドライバは原稿執筆時点で最新のGame Ready 527.56を使用した。MSI GeForce RTX 4080 16GB SUPRIM XはExtreme Performanceモードに設定している。

 テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボードMSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源ATX 1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 まずは定番3Dベンチマークの「3DMark」から見ていこう。このテストだけは、比較対象にブーストクロックが定格のGeForce RTX 3090も加えている。価格的には同クラスのRTX 3090のスコアを大幅に上回っているのは素晴らしいところ。

 また、すべてのテストのスコアはRTX 4080カードとして優秀で、さすがファクトリーOCモデルというところだ。とくにレイトレーシングのPort Royal、DirectX 12 UltimateベースのSpeed Wayのスコアは前世代に比べて大きくアップしており、新アーキテクチャの威力がよく分けるポイントと言える。

3DMarkの計測結果

 続いて、人気FPSの「レインボーシックス シージ」と「オーバーウォッチ 2」を試そう。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、オーバーウォッチ 2はマップ「Eichenwalde」でBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

レインボーシックス シージの計測結果
オーバーウォッチ 2の計測結果

 レインボーシックス シージはフルHDとWQHDでフレームレートが近く、フルHDがRTX 3080と大きな差になっていないのは、GPU性能が高すぎて、フレームレートが頭打ちになっているため。軽めのゲームをフルHDでプレイするにはかなりオーバースペックだと言える。

 オーバーウォッチ 2は解像度ごとにフレームレートが順当に変わっている。注目は4Kで平均148fpsに到達していること。4K/144Hzのゲーミング液晶を活かし切れるフレームレートを出している。なお、どの解像度でもRTX 3080に対して約1.5倍のフレームレートだ。

 次に、RTX 40シリーズ最大の特徴と言ってもよい「DLSS 3」対応のタイトルを試して見よう。DLSS 3は、RTX 40シリーズでは刷新されたTensorコアを利用して、従来のアップスケール機能に加えてAIによるフレーム生成技術を追加してさらに高いフレームレートを出せるようにしたもの。GPU側でフレーム生成を行うため、CPUパワーが不足している状況でもフレームレートを向上させやすいのが強みだ。

 なお、DLSS 3を利用できるのはRTX 40シリーズのみ。それ以外はAIフレーム生成には対応せず、従来のDLSS 2までの対応となる。フレームレートの伸び方に大きな差がある点に注目だ。

 まずは、発売時からDLSS 4に対応している「Marvel's Spider-Man: Miles Morales」を試そう。レイトレーシングにも対応する重量級ゲームだ。テストは画質プリセットを最高の「非常に高い」をベースに、レイトレーシング関連の設定もすべて有効に、そのほかもすべて最高画質にし、マップ内の一定コースを60秒ダッシュした際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

Marvel's Spider-Man: Miles MoralesはDLSS 3に対応し、グラフィック設定にフレーム生成の項目がある
Marvel's Spider-Man: Miles Moralesの計測結果

 DLSSを有効にしていない状態では、ファクトリーOCの本機を持ってしても4Kで平均43fpsしか出ない。しかし、DLSSをパフォーマンス設定にすると平均132fpsまで一気に上昇。3倍以上もフレームレートが伸びている。さすがDLSS 3といったところだ。RTX 3080ではDLSSを有効にしても約2倍の伸びに留まっている。

 続いて、定番レーシングゲームの最新作「F1 22」でテストしてみよう。アップデートでDLSS 3に対応した。画質、レイトレーシングとも最高設定の「超高」とし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

F1 22の計測結果

 Marvel's Spider-Man: Miles Moralesと同じ傾向だ。DLSSをパフォーマンス設定にすることで、4Kは平均72fpsから平均184fpsと約2.5倍もフレームレートが向上した。RTX 3080の4Kに対しても約1.6倍ものフレームレートになっている。

 40周年記念の大型アップデートでDLSS 3に対応した「Microsoft Flight Simulator」もテストしてみよう。アクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレートを「FrameView」で測定している。

Microsoft Flight Simulatorの計測結果

 「GPU側でフレーム生成する」ことの威力がよく分かる典型例だ。Microsoft Flight SimulatorはCPU負荷が高く、DLSSを有効にしていない場合ではGPU性能に対してCPUパワーが不足してフルHDとWQHDではフレームレートが伸びなくなっている。しかし、DLSS 3はCPUに負荷をかけずにフレーム生成できるのでフレームレートを2倍以上もアップが可能。CPUパワー不足でDLSSを有効にしてもフレームレートが伸びないRTX 3080とは対照的だ。

 続いて、2023年になってもなお最重量級ゲームの座に君臨する「サイバーパンク2077」でテストしたい。DLSS 3に対応するベータ版を使用している。テストは最高画質設定の「レイトレーシング:ウルトラ」をベースに、レイトレーシングライティング設定をもっとも高い「サイコ」にし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

DLSS 3対応のベータ版サイバーパンク2077には、DLSSの設定にフレーム生成の「DLSS Flame Generation」という項目が追加される
サイバーパンク2077の計測結果

 本機でも4Kでは平均27fpsしか出ていないが、DLSSをパフォーマンス設定にすれば約4.1倍もフレームレートが向上して平均111fpsに到達できる。RTX 3080に対して約2.3倍のフレームレートだ。また、RTX 3080はDLSSを有効にしても4Kは平均48fpsと快適なプレイの目安である60fpsに届かない。DLSS 3の強さ、世代間の性能差がハッキリと見える結果だ。

 最後に2022年12月14日、突如発表された大型アップデートでレイトレーシングとDLSS 3に対応した名作RPG「ウィッチャー3 ワイルドハント」を試したい。実写ドラマの第3シーズンが2023年夏公開、さらにシーズン4からの展開も発表されるなど、注目度が上がる中発表された今回のアップデート。今でもファンの多い超名作だけに、どの程度フレームレートが出るのか気になる人もいるだろう。ホワイト・オーチャード周辺を60秒移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。

ウィッチャー3 ワイルドハントの計測結果

 さすがゴリゴリにレイトレーシングを追加しただけに、本機でも4Kだと平均36fpsとかなりの重さだ。しかし、DLSSをパフォーマンス設定にすれば4Kで平均112fpsまで向上と余裕で快適にプレイできるフレームレートになる。しかし、RTX 3080ではDLSSを有効にしても4Kでは平均49fpsと平均60fpsには届かない。大型アップデートによる美しいグラフィックを4Kで存分に楽しむには、RTX 4080クラスが必要と言ってよさそうだ。

消費電力はRTX 3080以下に! ワットパフォーマンスは良好

 次はシステム全体の消費電力を測定しよう。OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spy実行時の最大値とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。サイバーパンク2077は画質をレイトレーシング:ウルトラで解像度は4Kとした。

システム全体の消費電力

 RTX 4080、RTX 3080ともカード電力は同じ320Wだが、比較対象のRTX 3080は定格仕様モデルであるためブーストクロックがOCモデルほどには上がらず消費電力も大きくなりにくい、一方の本機はファクトリーOCモデルということもあって消費電力は3DMark、サイバーパンク2077とも上回る、という結果に。これは順当と言ってよいものだ。

 最後に、Extreme Performance、GAMING、SILENTと選べる3モードのGPUクロック、GPU温度、ファンの回転数の挙動をチェックしてみよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の推移をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追っている。GPUクロックは「GPU Clock」、GPU温度は「GPU Temperature」、ファンの回転数は「GPU Fan1」の値だ。バラック状態で動作させている。

動作モード別のGPUクロックの推移
動作モード別のGPU温度の推移
動作モード別のファン回転数の推移

 ブーストクロックはExtreme Performanceモード時に2,865Hzに到達、2,850Hz以上に数回達するのも確認できた。GAMING、SILENTはブーストクロックの設定が同じだけに、2,750Hz前後で推移とほぼ変わらない挙動だった。

 そして、温度の推移はどのモードでもほぼ変わらず誤差範囲と言ってよい。素晴らしいのは最大で59.9℃とRTX 4080カードでもトップクラスに冷えてること。これまでに数製品RTX 4080カードをチェックしてきたが、60度以上で動作するのが当たり前。この冷えっぷりは冬に測定している(室温は空調で23℃前後に調整)という点を差し引いても超優秀だ。Extreme Performanceモードで多少ブーストクロックがアップしたところで、冷却力が十分以上に足りているので熱による影響はほとんどなし!と言ってよいだろう。

 ファンの回転数もモードごとにあまり差を見いだせなかった。SILENTモードが7分過ぎから一番高くなっていると言っても、ほかのモードと回転数は40rpmとわずかな差しかなく誤差の範疇だろう。そして、ファンの動作音はどのモードでも非常に静かだ。水冷CPUクーラーのファンの動作音のほうがよほど耳に付くレベル。さすが巨大で重いヒートシンクを搭載しているだけあって、静かで冷えるを超ハイレベルで実現している。

 モード別のフレームレートも測定してみた。サイバーパンク2077でベンチマークの設定や方法は上記と同じだ。

動作モード別のサイバーパンク2077の計測結果

 ブーストクロックがわずかに高くなるExtreme Performanceモードが最小、平均とも1fpsだけ上回っているが、これも正直誤差の範囲だ。冷却システムが強力すぎて、どのモードで使ってもよし! という結論に達してしまった。

圧倒的な冷却性能でRTX 4080の性能を絞り出せる、最強クラスの1枚

 ファクトリーOCによってRTX 4080カードとして優秀なベンチマーク結果を見せながら、ハイレベルな冷却システムによってGPU温度も低く、さらに動作音も小さいとさすが最上位の「SUPRIM」と言える。温度的にはまだ余裕があるので手動でOC設定を追い込む余地もありそうだ。

 カードサイズは大きいが、本機は見た目もスタイリッシュでインパクトは抜群。性能も所有欲も満足させてくれる1枚だ。

[制作協力:MSI]