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ミドルレンジGPUの本命にOC&高冷却モデルが早速登場!MSI「GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」

優秀なワットパフォーマンスにDLSS 3で扱いやすさは抜群!! text by 芹澤 正芳

 2023年4月13日22時から発売がスタートしたNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 4070」。圧倒的なワットパフォーマンスを誇る“ミドルレンジGPUの本命”と言える存在だ。そんな期待度の高いGPUをいち早く採用したビデオカードがMSIの「GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」だ。ファクトリーOCかつ3連ファンの大型仕様で、描画性能、そして冷却力が大いに気になるところ。早速レビューをお届けしよう。

基板の2倍近い大型ヒートシンク搭載のOCモデル

MSIのGeForce RTX 4080搭載カード「GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」。価格(税込)は119,800円

 まずは、RTX 4070のスペックを紹介しておこう。ブーストクロックの定格は2,475MHz、CUDAコアは5,888基、メモリはGDDR6X 12GB、メモリバス幅は192bit、カード電力は200Wだ。一つ上位のRTX 4070 Tiはブーストクロック2,610MHz、CUDAコア7,680基、メモリGDDR6X 12GB、メモリバス幅192bit、カード電力285Wとなっている。RTX 4070 Tiに対してメモリ容量とバス幅をキープしつつ、CUDAコア数が減った分、消費電力も下がり、より扱いやすいGPUになっているのが最大のポイントと言える。

 今回紹介するMSIの「GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12G」は、高い性能とLEDによる演出を備える「GAMING TRIO」シリーズの製品で、ブーストクロックが2,610MHzと定格よりも135MHzアップさせた、いわゆるファクトリーOCモデルだ。

NVIDIA Control Panelでの表示。ブーストクロックはOC設定の2,610MHzなのが分かる
GPU-Zでチェックすると、Power Limit(カード電力)は定格よりもちょっと高い215Wに設定されていた

 冷却システムには同社おなじみの「TRI FROZR 3」を採用する。3基備えるファンは、ブレードを3枚ごとに外周部で結合させた独特の形状によってヒートシンクへの気流を集中させる「TORX FAN 5.0」。圧巻なのはヒートシンクだ。基板は実測で約17cmなのに対して、ヒートシンクは実測で約32cmと2倍近い。それだけにカード長は実測で約33.5cmに達しているため、PCケースに収まるか事前に確認しておきたい。厚みは実質3スロット分だ。大型サイズだけにカードを支えるサポートステイも標準付属している。

ブレードを3枚ごとに結合させたTORX FAN 5.0を3基搭載する
剛性を高めるバックプレートも搭載。後部は大きくカットされており、熱を裏面側から逃がしやすくしている
基板の2倍近い大型のヒートシンクを採用し、高い冷却力を確保している
カードを支えるサポートステイも付属。拡張スロットに固定するタイプだ
補助電源は12VHPWR×1を採用。奥まった位置にあり、電源ケーブルはやや挿しにくい
ディスプレイ出力はGeForceでは標準的DisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1a×1
中央ファンの上下と天板にRGB LEDを内蔵。MSI CenterアプリのMystic Lightでコントロール可能だ

性能はRTX 3080と同等で消費電力はRTX 3070 Ti以下

 ここからはベンチマークに移ろう。比較対象として、前世代のハイエンドモデルからGeForce RTX 3080(高OCモデル)、アッパーミドルからRTX 3070 Ti(定格モデル)を用意した。Resizable BARは有効にし、ドライバはレビュワー向けに配布されたGame Ready 531.42を使用している。また今回は、NVIDIAのビデオカード単体の消費電力を正確に測定するキット「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)も導入、RTX 4070搭載カードのワットパフォーマンスの高さもあわせて検証する。

 テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボードMSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z790)
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
システムSSDM.2 SSD 2TB(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー簡易水冷(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 定番3Dベンチマークの「3DMark」からチェックしよう。OCモデルだけに、定格動作となるNVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Editionに比べて若干上というスコアだ、高OCモデルのRTX 3080とほとんど同等であり、。RTX 3070 Tiに対してはすべてのテストで大きく上回った。とくにRTX 4070が採用するAda Lovelaceアーキテクチャは、レイトレーシングへの最適化が進んでいることもあって、それらテストを含むPort RoyalとSpeed Wayのスコアが高くなっている。

3DMarkの計測結果

 続いて、人気FPSの「レインボーシックス シージ」と「Apex Legends」を試す。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。

レインボーシックス シージの計測結果
レインボーシックス シージ/カード単体の消費電力
Apex Legendsの計測結果
Apex Legends/カード単体の消費電力

 RTX 3080と同等程度でRTX 3070 Tiを上回っており、3DMarkと同じ傾向だ。描画負荷が軽~中量級のゲームならなら4Kでも快適にプレイできるだけの性能があると言ってよいだろう。Apex Legendsで「スポットシャドウディテール」の設定を最大の「極」にすると、描画負荷はかなり重くなるが、それでも4Kで平均132fpsに到達できている。

 注目はPCATで測定したカード単体の消費電力だ。レインボーシックス シージのフルHDで見ると、RTX 4070はRTX 3080の半分以下、RTX 4070 Tiよりも100W以上も少ない。RTX 3080と同程度、RTX 3070 Tiよりも高いフレームレートを叩き出しつつ消費電力は大幅に少ない、つまり、RX 30シリーズに比べて圧倒的に高いワットパフォーマンスを実現している、ということがよく分かる結果だ。Apex Legendsでも同傾向だ。

 続いて、レイトレーシング性能はどうだろうか。2023年3月23日のアップデートでレイトレーシングへの対応が追加された「エルデンリング」で試してみたい。リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。

エルデンリングの計測結果
エルデンリング/カード単体の消費電力

 このゲームは最大60fpsまでしか出ないため、平均59fpsならほぼ最高フレームレートで動いていると言ってよい。RTX 4070はフルHDで平均59fps、WQHDで平均57fpsとほぼ快適にプレイできるフレームレートを出した。4Kだとちょっとカクつきが目立つが(DLSS非対応なのが残念)、レイトレーシングを含めた最高画質のエルデンリングをWQHDまでならスムーズにプレイできるのはうれしいところだ。また、エルデンリングはフレームレート上限が60fpsなのもあって、ほかのゲームよりも消費電力は低めだった。

RTX 40シリーズの真骨頂、DLSS 3の効果を試す

 ここからは、RTX 40シリーズ最大の強みである「DLSS 3」対応のゲームでテストしてみよう。RTXシリーズで利用できる「DLSS 2」までの描画負荷軽減技術は、低解像度でレンダリングした画面を実際の解像度までアップスケールする「DLSS Super Resolution」だけだったが、そこにAIによるフレーム生成技術の「DLSS Frame Generation」を追加し、さらにフレームレートを向上できるようにしたのが「DLSS 3」だ。フレーム生成はGPU側で行なうため、CPUがボトルネックになった状況でもフレームレートを向上できるのが特徴と言える。

 「ホグワーツ・レガシー」と「Microsoft Flight Simulator」の2タイトルでのテスト結果を見てみよう。ホグワーツ・レガシーは寮内の一定コースを移動した際のフレームレートを、Microsoft Flight Simulatorはアクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している

ホグワーツ・レガシーの計測結果
ホグワーツ・レガシー/カード単体の消費電力
Microsoft Flight Simulatorの計測結果
Microsoft Flight Simulator/カード単体の消費電力

 ホグワーツ・レガシーは画質とレイトレーシングとも最高設定にすると非常に重くなるゲームだ。それでも、RTX 4070はDLSSをパフォーマンス設定にすることで4Kでも平均88fpsに到達。十分快適にプレイできるフレームレートに到達できている。この値はDLSS無効時の約3.4倍にも達するもので、DLSS 3の威力がよく分かる。なお、RTX 3080のフルHDがDLSSの有無でフレームレートがほとんど変わらないのはCPUがボトルネックになっているため。CPUパワーが不足するとDLSSの効果が弱くなる典型例だ。

 Microsoft Flight SimulatorはそのCPUボトルネックがより顕著なゲームだ。RTX 3080/3070 TiはフルHD、WQHDともCPUがボトルネックになってDLSSを有効にしてもフレームレートがほとんど変わらない。その点、DLSS 3が使えるRTX 4070はどの解像度でもきっちりフレームレートを伸ばしている。RTX 40シリーズの強みがよく出るゲームだ。

 そして注目はカード単体の消費電力。DLSSは描画負荷を軽減する技術、つまりGPU負荷が下がって消費電力も低くなる。RTX 4070はただでさえワットパフォーマンスが高いが、DLSS 3を活用することで、よりそれを高められるということだ。

 続いて、2023年4月11日のアップデートですべての光源を正確にシミュレーションする「パストレーシング」に対応した「Overdrive Mode」が追加され、さらに描画負荷が高まった「サイバーパンク2077」を試したい。DLSS 3にも対応しているので、その効果も確かめる。テストは最高画質設定の「レイトレーシング:オーバードライブ」にし、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。

4月11日のアップデートでパストレーシング対応。現状は技術プレビューという扱いだ
サイバーパンク2077の計測結果
サイバーパンク2077/カード単体の消費電力

 パストレーシングはこれまでのレイトレーシングを超える強烈な描画負荷だ。DLSSを使わないとフルHDでもスムーズにプレイするのは厳しいフレームレートしか出ない。RTX 4070はDLSSを有効にすることで、WQHDまでは普通にプレイできるフレームレートに到達。DLSS 3を使うことが前提のモードと言ってよいだろう。RTX 3080/3070 TiはDLSSを有効にしても平均60fps以上になるのはフルHDだけだ。今後パストレーシング対応のゲームが増えれば、DLSS 3の存在はますます重要になるのではないだろうか。

 カード単体の消費電力を見るとDLSSを有効にしてもあまり変わらない。それほど描画負荷が高いということだろう。RTX 3080/3070 Tiの4Kの消費電力が低いのは、性能不足でまともに描画できないのが原因と見られる。

ブーストクロック以上で安定動作&高冷却

 最後にシステム全体の消費電力と温度の推移を確認する。

 システム全体の消費電力については、電力計にラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用し、OS起動10分後をアイドル時、3DMark-Time Spy実行時の最大値、サイバーパンク2077実行時の最大値をそれぞれ測定した。

Excelの消費電力シート参照

 RTX 4070のカード電力は200Wが定格だが、GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12GはOCモデルで215W設定。RTX 3080はカード電力320W、RTX 3070 Tiは290Wだ。それがおおむねシステム全体の消費電力にも現われている。順当な結果と言えるだろう。

 最後に、GPUクロック、GPU温度の推移を見よう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の推移をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追っている。GPUクロックは「GPU Clock」、GPU温度は「GPU Temperature」の値だ。バラック状態で動作させている。室温は22℃だ。

Excelの温度とクロックシート参照

 ブーストクロックは2,745MHz前後で推移しており、設定されているブーストクロック以上で動作していた。温度は最大62.8℃、平均で59℃と十分過ぎるほど冷えている。さすがは3連ファン&大型ヒートシンクの組み合わせだ。

優秀なワットパフォーマンスと冷却力で高い完成度を誇る

 GeForce RTX 4070 GAMING X TRIO 12Gは、RTX 4070搭載カードとしては大型な部類と言えるが、高クロック動作でしっかり冷えるという、ゲーマーの要求を満たしている点は何よりも魅力だ。RTX 3080に匹敵する基本性能を持ちながらぐっと抑えられた消費電力、大幅にフレームレート引き上げられるDLSS 3という大きなメリットを持ち、さらにMSIならではの高い冷却力も備える本機の完成度は、まさにハードにゲームを遊びたい人にうってつけと言える。非常に満足度の高い1枚だ。

 なおMSIからは本機のほかにも、よりコストパフォーマンスを重視した“VENTUS”シリーズのRTX 4070搭載モデルも発売される。TORX FAN 4.0採用のデュアルファン仕様でカード長を24.2cmに抑えた「GeForce RTX 4070 VENTUS 2X 12G OC」と、トリプルファン仕様でカード長30.8cmの冷却重視タイプ「GeForce RTX 4070 VENTUS 3X 12G OC」の2製品で、いずれもファクトリーOCモデル。なお、GeForce RTX 4070 VENTUS 3X 12G OCについては、Amazonおよびツクモ各店での数量限定発売とのことだ。

さらにコスパ重視モデルである「GeForce RTX 4070 VENTUS 2X 12G OC」(写真左、デュアルファンモデル)および「GeForce RTX 4070 VENTUS 3X 12G OC」(同右、トリプルファンモデル)も4月13日より発売される。価格(税込)はデュアルファンモデルが99,800円、トリプルファンモデルは104,800円

[制作協力:MSI]