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4KゲームはハイエンドGPU+ミドルレンジCPUが高コスパ?MSIのGeForce RTX 4080とCore i5-13600KでPCを組んでテスト

今時のゲームが要求するGPU性能とCPU性能から4Kゲーミング構成を考える text by 坂本はじめ

 グラフィックの美しさを重視するゲーマーにとって、より高精細で精緻なグラフィックが楽しめる4K解像度(3,840×2,160ドット)でのゲームプレイ環境は理想の一つだろう。

 今回はGeForce RTX 40シリーズと第13世代Intel Coreなど今時のPCパーツを使い、4Kゲーミング環境の構築にチャレンジしてみた。4Kゲーミングを実現するためのパーツ選びのポイントから、実際に構築したゲーミングPCがどこまで快適にプレイできるのかまで紹介しているので、グラフィック品質を重視するゲーマーにぜひチェックしてもらいたい。

最初に知っておきたい4Kゲーミングの要求性能GPU性能やVRAM容量が特に重要、CPUはハイエンドでなくても大丈夫?

 4KゲーミングPCに用いるパーツを紹介する前に、前提知識として4K解像度でのゲームが要求するPC性能について確認しておこう。

 ゲームにおいて高いパフォーマンスを得るためには、優れた性能を備えるGPUと、その性能をしっかり引き出せるCPUが必要とされる。それぞれに求められる性能はゲームタイトルによっても異なるが、グラフィック品質を優先する場合はGPU、フレームレートを優先する場合はCPUに、それぞれ要求される性能が高まる傾向がある。

 実例を紹介すると、ゲーム自体もフレームレート優先でGPU負荷の低いFPS「VALORANT」をフルHD解像度(1,920×1,080)ドットかつ最低品質設定で動かした場合、ゲーム実行中のGPU使用率は低い値になりがちだ。これは、CPUをはじめとする他のパーツがボトルネックとなってフレームレートが頭打ちとなり、GPUが全力を発揮できない状況になるため。

 下記のスクリーンショットはGeForce RTX 4080 + Core i5-13600K環境でテストしたものだが、GPU使用率は38%で性能の半分も使用できていない。これ以上フレームレートを上げたい場合は、GPUを上位モデルに替えても効果は薄く、CPUなどボトルネックになっている部分を強化する方が良いだろう。

 もっとも、今回の構成で445fpsという過剰なほどのフレームレートが得られているので、GPUが全力を発揮できないこと自体に問題がある訳では無い点に注意したい。

GeForce RTX 4080 + Core i5-13600K環境で、フルHD/最低品質で実行したVALORANT。GPU使用率は38%と非常に低く、フレームレートを上げたいならボトルネックになっているCPU性能をあげるのが効果的な状況だ。

 一方、グラフィック重視の重量級ゲーム「サイバーパンク2077」などを4K解像度かつ最高品質設定で動かした場合、GPU使用率はほぼ100%に達するケースが多い。こうしたゲームはGPUに要求される性能が高く、CPUなどの性能が限界に達する前にGPU側がボトルネックになる場合が多い。

 以下のスクリーンショットはGeForce RTX 4080 + Core i5-13600K環境でテストしたものだが、GPUが全力で稼働している状態でフレームレートは84fps。GPU使用率が100%に近い場合はそのほかのパーツの性能は十分足りており、CPUは余力を残しているケースが多い。こうした環境でこれ以上フレームレートを上げたい場合は、ボトルネックとなっているGPU側を強化するのが効果的だ。

 また、このスクリーンショットで注目しておきたいのがGPU専用メモリであるVRAM(GPU Mem)の使用量で、ここでは11GB前後のVRAMを使用していることが確認できる。このように4Kかつ高品質なグラフィックでゲームには大容量のVRAMが必要で、もし不足するとスタッターのような描画の破綻が生じることになる。4K解像度でゲームを遊ぶ際はVRAMの容量も意識しておきたい。

GeForce RTX 4080 + Core i5-13600K環境で4K/最高品質で実行したサイバーパンク2077。GPU使用率は99%とほぼ全開動作となっている。こうした環境ではCPUは余力を残すケースが多く、フレームレートを上げたい場合はGPUを強化したい。

 このように、フレームレートとグラフィック品質のどちらを優先するかによって、GPU性能とCPU性能の重要度は変化する。GPUの使用率を見れば、GPUとCPUのどちら側の性能を重視した方が良いか傾向を掴めるだろう。今回目標とする4Kゲーミングは極端なグラフィック品質重視であるため、PCの構成パーツを選定するにあたっては、できるだけ予算をGPUに割り振るのが望ましい。

GeForce RTX 4080とCore i5-13600Kで構築するゲーミングPC

 それでは、今回の4KゲーミングPCを構築するために用意したパーツを紹介していこう。

 まず、CPUに関してはIntelの14コア/20スレッドCPU「Core i5-13600K」を選択した。ゲームでの性能向上に有効とされるL2キャッシュ容量をCore i5以下のCPUでは唯一増量したCPUで、コア数が同じCore i5-13600の11.5MBの倍近い20MBのL2キャッシュを備えている。

 GPU負荷偏重の4Kゲーミングだけでなく、高フレームレート環境でも高いパフォーマンスが期待できる製品であり、4万円台から入手できるコストパフォーマンスにも優れた選択肢だ。

第13世代Coreの14コア(6P+8E)/20スレッドCPU「Core i5-13600K」。
L2キャッシュを合計20MB(Pコア=12MB、Eコア=8MB)搭載しており、L3キャッシュも24MB搭載している。

 Core i5-13600Kと組み合わせるマザーボードには、Intel B760チップセットを搭載する「MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFI」を用意した。

 チップセットにミドルレンジのB760を採用することでコストを抑えつつ、強力な12+1+1フェーズのVRMと大型のVRMヒートシンクを搭載した堅牢な作りのマザーボード。最新のDDR5規格に対応したメモリスロットや、PCIe 4.0 x4接続に対応するヒートシンク付きM.2スロットを3本備えるなど拡張性も充実しており、無線機能はIntelのWi-Fi 6E + Bluetooth 5.3とされている。

 大電力を供給可能で放熱性にも優れたVRMの設計は、長時間にわたって負荷が継続しがちなゲーミングシーンにおいて、安定した性能を維持するのに役立つものだ。ゲーミングPCに相応しい確かな品質と機能を備えながら、上位チップセット搭載マザーより安価に入手できる点がこのマザーボードの魅力だ。

Intel B760チップセット搭載マザーボード「MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFI」。
VRMには12+1+1フェーズのDuet Rail Power Systemを採用。大型のヒートシンクも搭載している。
最新規格であるDDR5に対応したメモリスロット。最大192GB(48GB×4)まで搭載可能。
PCIe 4.0 x4接続対応のM.2スロットを3本搭載。いずれにもSSD用ヒートシンクが付属している。
ビデオカード搭載用のPCIe x16スロット。重量級ビデオカードを想定した金属補強が施されており、PCIe 5.0 x16接続にも対応している。

 4Kゲーミングにおける最重要パーツとなるビデオカードには、GeForce RTX 4080を搭載する「MSI GeForce RTX 4080 16GB GAMING X TRIO」を用意。

 NVIDIA最新のハイエンドGPUであるGeForce RTX 4080は、設計と製造プロセスを刷新した強力なGPUコアに加え、16GBの大容量VRAMを搭載し、AIベースのグラフィックス技術である「DLSS 3」にフル対応することで、4Kゲーミングを実現可能な性能を備えている。CPUやマザーボードの予算を抑えてでも導入したいGPUだ。

「MSI GeForce RTX 4080 16GB GAMING X TRIO」。
大型のGPUクーラーを搭載しており、冷却性や静粛性にも優れたハイエンドビデオカードだ。
電源コネクタは12VHPWR×1。

 その他の構成パーツは以下の通り。今回は、マザーボードとビデオカードのブランドと揃える形で、MSI製品を中心に選択している。

850Wの電源ユニット「MSI MPG A850G PCIE5」。最新のATX 3.0規格とPCIe 5.0に対応しており、850Wの電源容量でありながらも600W対応の12VHPWRコネクタとケーブルを備えている。
CPUクーラー「MSI MAG CORELIQUID 360R V2」。比較的安価に入手できる360mmオールインワン水冷クーラーだ。
PCケース「MSI MPG VELOX 100P AIRFLOW」。優れたエアフローを実現するミドルタワーケースで、各部にRGB LEDを搭載している。
DDR5メモリ「Crucial CT2K16G56C46U5」。JEDECのDDR5-5600規格に対応した16GBメモリ2枚組。
システムSSD「Seagate FireCuda 530 1TB」。最大7.3GB/sを実現するPCIe 4.0 x4対応SSD。

 以上のパーツで実際に組み立てたゲーミングPCが以下の写真だ。

 MSI製のパーツを中心に構築しただけあって、各パーツのデザインに統一感がある。また、RGB LED搭載製品は全てMSIのLEDユーティリティ「Mystic Light」に対応しているため、LEDイルミネーションも同期させることができるので、ビジュアル面でも満足度の高いPCに組みあがった。

ハイエンドGPU+ミドルレンジCPUの組み合わせでしっかり性能はでるのか?4Kゲームプレイ時のGPU負荷率とフレームレートから確認

 それでは実際に組みあがったPCで、4Kゲーミングに挑戦してみよう。

 今回テストするゲームは、「ホグワーツ・レガシー」、「サイバーパンク2077」、「エルデンリング」、「Wo Long: Fallen Dynasty」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」という、2023年春の最新タイトルと人気タイトルを5本用意した。

 フレームレートがでているのかが一番重要だが、CPU性能が足りていればしっかりGPU使用率が高い状態になるので、今回の構成が4Kゲームに向いている構成なのか、GPU使用率も見て行こう。

ホグワーツ・レガシー

 2023年発売のオープンワールド・アクションRPGである「ホグワーツ・レガシー」は、AIベースのグラフィックス技術であるDLSS 3にフル対応しており、今回のPCでGPUに採用したGeForce RTX 4080との親和性が高いタイトルのひとつだ。

ホグワーツ・レガシー
4Kゲーミング時のフレームレートは90~100fps程度。
GPU使用率は90~100%ほどで、12~13GBのVRAMを使用している。

 4K解像度でグラフィックス設定やレイトレーシング設定を「最高」に設定したうえで、DLSS超解像を「クオリティ」設定、フレーム生成を「オン」にそれぞれ設定したところ、90~100fps前後という十分快適にプレイ可能なフレームレートを記録した。

 この時、GPU使用率は90~100%程度で、VRAM使用量は12~13GB前後。GeForce RTX 4080のGPUコア性能をしっかり引き出せていることが分かる結果だ。

サイバーパンク2077

 今年4月のアップデートでパストレーシング技術に対応した「サイバーパンク2077」では、最新技術を活用する最高品質設定「レイトレーシング:オーバードライブ」で、4Kゲーミングに挑戦してみた。

サイバーパンク2077
最新技術を活用する「レイトレーシング:オーバードライブ」設定を4K解像度で適用。
相当に高負荷な設定だが、DLSS 3の効果もあって60fps以上のフレームレートを実現できた。

 レイトレーシング:オーバードライブ設定と4K解像度の組み合わせは極めて高負荷だが、DLSS 3による超解像とフレーム生成が利用できるGeForce RTX 4080であれば、ゲーム中でも60fpsを超えるフレームレートを実現することが可能で、ベンチマークモードでは平均72.66fpsを記録した。

 ゲーム実行中のGPU使用率はほぼ100%に張り付いており、VRAM使用量も11GB前後に達していた。

エルデンリング

 今年に入ってDLCの開発が発表されたオープンワールド・アクションRPG「エルデンリング」では、レイトレーシングに対応した最新バージョンで4Kゲーミングに挑戦した。

エルデンリング
レイトレーシング「最高」設定。GPU負荷が極めて高く、複雑な影が生じるシーンでは40fps台まで落ち込むことがある。
レイトレーシング無効時。GPU使用率は70~80%程度に低下しており、上限フレームレートである60fpsを余裕で維持できていることが分かる。

 DLSS 3非対応のエルデンリングでは、ネイティブ解像度で全てのフレームをGPUがレンダリングする必要があるため、描画品質とレイトレーシング品質をともに「最高」にしたさいのGPU負荷は極めて高い。今回のPCでも負荷の軽いシーンでは上限の60fpsで動作するものの、複雑な影が発生するシーンでは40fps台にまで低下した。

 最高品質のレイトレーシング設定でもプレイすること自体は可能だが、描画品質「最高」のままでレイトレーシングを無効にすれば、常に60fpsを維持できるようになる。実際にプレイしてみて快適に感じる方を選択すると良いだろう。

Wo Long: Fallen Dynasty

 コーエーテクモゲームスの新作である「Wo Long: Fallen Dynasty」は、三国志が舞台のダークファンタジー・アクションRPGだ。

Wo Long: Fallen Dynasty
最高画質かつ上限60fps設定。フレームレートは上限に達しながら、GPU使用率は80%前後となっており、まだ余力があることが伺える。
仮想4K120Hzディスプレイと接続した120fps設定。フレームレートは100fps前後で、かなり滑らかな描画を楽しめる。

 このゲームは最大で120fpsに対応しているのだが、テスト時のゲームバージョン(1.06)ではリフレッシュレートが60Hzのディスプレイでは上限120fpsを選択できない。今回のテストに用いたディスプレイは4K60Hzであったため上限60fps設定でしかテストできなかったが、最高品質設定でも常時60fpsの維持が可能だった。

 なお、WQHD解像度のゲーミングモニターとNVIDIAの仮想超解像度技術DSRを組み合わせて、仮想的に4K120Hzディスプレイとして認識させた場合、100fps前後のフレームレートで動作することが確認できた。Wo Long: Fallen Dynastyはスピーディーでタイミングが重要なアクションゲームなので、4K120Hz以上のディスプレイと組み合わせれば、上限60fps設定よりも快適にプレイできるだろう。

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 先日、タイトルアップデート第5弾が配信開始となったばかりの「モンスターハンターライズ:サンブレイク」では、もっとも高品質なグラフィックプリセット「高」を適用して、4K解像度でゲームをプレイしてみた。

モンスターハンターライズ:サンブレイク
4K解像度かつグラフィックプリセット「高」設定。プレイ中は安定して120fpsを超えるフレームレートを実現。
GPU使用率はほぼ100%となっており、CPUがGPU性能をしっかり引き出せていることが分かる。

 ゲームプレイ中のフレームレートは安定して120fpsを上回っており、120Hz以上のリフレッシュレートを実現する4Kゲーミングモニターと組み合わせることで、高フレームレートかつ高精細という極上のグラフィックでプレイできる。

 今回テストしたゲームの中では、比較的GPU負荷の軽いゲームであるモンスターハンターライズ:サンブレイクだが、プレイ中のGPU使用率はほぼ100%で推移していた。これは4Kの負荷が大きいことを意味すると同時に、CPUのCore i5-13600Kがしっかりその性能を引き出せていることを示す結果でもある。

長時間のゲームでも安定動作を実現するマザーボード水冷構成でもVRM温度は低温をキープ

 ゲーミングPCを構築するさいに見落としがちなのが、マザーボードのVRMだ。VRMのスペックが貧弱なマザーボードは電力供給能力の低さによってCPUの性能が制限される場合があるだけでなく、電力効率の低さや不十分な放熱性によって過熱し、VRM保護のためのサーマルスロットリングが発動してパフォーマンス低下を招く場合がある。

 特に、今回のようにCPUクーラーに水冷クーラーを用いる場合はVRM冷却に注意が必要なのだが、12+1+1フェーズの電源回路に大型ヒートシンクを備えるMSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIであれば、長時間に渡ってゲームをプレイし続けても低いVRM温度をキープできる。

アイドル時のVRM温度は33℃前後。
サイバーパンク2077を30分間以上プレイしている時のVRM温度は46度弱。ケースのエアフローだけで十分に放熱できていることが伺える。

 室温24℃の環境下で撮影したサーモグラフィ画像から確認してみたが、アイドル時のVRMヒートシンクや周辺基板温度が33℃前後であったのに対し、サイバーパンク2077を30分間以上プレイし続けても温度は46℃弱までしか上昇していなかった。

 今回はCore i5-13600Kでの結果だが、ここまで低い温度をキープできているのであればMSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIのVRMなら、より上位のCPUであっても安心して運用できるだろう。

4Kゲーミングでは“ハイエンドGPU + ミドルレンジのCPU/マザー”の組み合わせが有効

 ハイエンドGPUのGeForce RTX 4080と、ミドルレンジCPUのCore i5-13600Kという、一見するとアンバランスにも思える構成だが、4KゲーミングではGPUの性能を存分に発揮して最新作や人気作をプレイできるパフォーマンスが得られた。限られた予算を可能な限りGPUに割り振るために、CPUやマザーボードはミドルレンジクラスあたりのモデルを選んでコストをカットするのは有効であることが分かる。

 ただし、最後に紹介したようにマザーボードのVRMには注意が必要だ。いくらコストを削減するためとはいえ、VRMの電力供給能力不足やサーマルスロットリングでCPU性能を制限してしまっては本末転倒なので、MSI MAG B760 TOMAHAWK WIFIのように長時間の高負荷動作でも安定した電力供給が可能なVRMを備えたマザーボードを選びたい。

[制作協力:MSI]