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軽量/薄型で第11世代Core i5搭載の「富士通 LIFEBOOK CH75/E3」を1TB SSDへ換装、256GB環境から一気に快適に
SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 浅倉 吉行
2023年5月8日 00:00
今回SSD換装の事例として紹介するのは、2020年に発売された富士通の薄型軽量ノートPC「LIFEBOOK CH75/E3」。13.3インチ/フルHD(1,920x1,080)解像度に対応したディスプレイや、GPUにCore i5-1135G7を搭載するなど、デスクワークであれば今でも十分快適に使える性能を持った世代のモデルだ。
用意したのは8GBのメモリと256GB SSDを搭載した型番「FMVC75E3GG」のモデルで、CPU性能などは十分なものの、SSDの容量だけ心もとないといった構成。このストレージ部分の不満を解消すべく1TBのM.2 NVMe SSDを用意し、これからも長く使っていけるPCにアップグレードしてみた。
※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。
富士通 LIFEBOOK CH75/E3のSSDを1TB SSDへ換装
今回の「富士通 LIFEBOOK CH75/E3(FMVC75E3GG)」(以下、LIFEBOOK CH75/E3)はCore i5を搭載した13.3インチのビジネスノートPC。厚さ15.8mmで重量は約988g。
新品ではないので構成などが若干変更されている可能性もあるが、今回の個体の大まかなスペックは、CPUがCore i5-1135G7(4コア/8スレッド/最大ブースト4.2GHz)、メモリがLPDDR4-4267 8GB、ストレージが256GBのM.2 NVMe SSD。ディスプレイは13.3インチ/1,920x1,080ドットで、OSはWindows 11 Home 64bit。
搭載インターフェイスは、Thunderbolt 4/USB4(Power Delivery/DisplayPort Alt Mode対応)×2(Type-C)、USB 3.2 Gen1×1(Type-A)、HDMI×1、オーディオコンボジャック×1などを備える。無線LANはWi-Fi 6対応で、Bluetooth 5.0も利用可能。
SSDが256GBと低容量で使い勝手が良くないので、この点を解消するのが今回の主な目的になる。
富士通 LIFEBOOK CH75/E3(FMVC75E3GG) | |
---|---|
CPU | Core i5-1135G7(4コア/8スレッド/最大ブースト時4.2GHz) |
メモリ | LPDDR4X-4267 8GB |
ストレージ | M.2 NVMe SSD 256GB |
GPU | Intel Iris X Graphics |
ディスプレイ | 13.3インチ/1,920×1,080ドット |
OS | Windows 11 Home |
換装に使うのは1TB/NVMeのSamsung SSD 970 EVO Plus
今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 970 EVO Plusの1TBモデル「MZ-V7S1T0B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,300MB/sのNVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。
低容量SSDから大容量SSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一通り紹介
ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。
M.2型のNVMe SSD向け外付けケースは安価なモデルであれば2,500~3,000円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。
換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう
PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。
今回使用している外付けケースはASUSの「ROG STRIX ARION」。M.2 NVMe SSD対応のUSB 3.2 Gen2接続のケースで、比較的大きい金属筐体を採用する放熱性なども考慮したモデルだ。ケースの開閉やSSDの固定に付属のピンを使用するが、ドライバレスで組み立てが行える。
M.2 SSD用の外付ケースは、NVMeのみに対応したモデル、SATAのみに対応したモデル、NVMe/SATA両対応のモデルがある。購入時には使用するSSDに合わせ対応したモデルを購入しよう。
データの移行はSSD付属ソフトで手軽にデータ移行もファームウェア更新もベンチマークも行える「Samsung Magician 7.3.0」
今回データ移行ソフトには「Samsung Magician 7.3.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、SSDのステータス確認からベンチマーク、ファームウェアアップデートなども行える多機能タイプ。なお、従来のSamsung Data Migrationソフトウェアを使用した換装も引き続き可能だ。
Samsungのサポートページからダウンロード可能で、作業は項目を選択していくだけで簡単に終わる。
USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そういった状況の場合は外付けケース側のUSBコントローラとの相性に問題がある可能性が高いので、ケースを替えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。
Samsung Data Migrationであれば、代理店のITGマーケティングがNVMe SSD用の外付けケースの動作確認表を公開しているので、そちらも合わせて確認しよう
Windows Updateの過程でCドライブ領域がBitLockerにより暗号化されている場合がある。そういった場合にはクローン作業の前に暗号化の解除が必要だ。今回使用している「LIFEBOOK CH75/E3」もBitLockerが有効となっていたため解除してから作業を行った。
パーティションが暗号化されているのかどうかは、Windows設定内の「デバイスの暗号化」または「BitLockerの設定」から状態で確認できる。暗号化されている場合はデータをクローンする際に解除してから行おう。暗号化されたままではデータのクローンは行えなず、途中で止まったりと正常に作業が完了しない。
また、表示上はBitLocker無効だが、実際にはデータが暗号化されている場合もあるので注意が必要だ。その際は「Bitlockerを有効にする」を選択し、その後無効化すれば解除される。
暗号化を解除すれば、Samsung Data Migration 7.3.0で正常にクローンを完了できる。
OSの起動を高速化する機能に「Fast Boot」があるが、SSD換装時はこの機能が原因で換装後に起動しなくなる場合がある。そうした場合は「Fast Boot」の機能を無効化して使用しよう。
ざっと見たところLIFEBOOK CH75/E3には設定項目が見当たらなかったが、PCによってはUEFIのメニュー内に「Fast Boot」に関する設定項目があるので、SSDを換装する前に無効化し、その後にSSD換装作業を行うとより万全な体制で進められる。
LIFEBOOK CH75/E3の分解はかなり簡単、工具はドライバ1本のみで行えるメンテナンス性の高さ
ここからはLIFEBOOK CH75/E3の分解になるが、一般的なプラスのドライバーが1本あればSSDの換装作業が行える。メンテナンスを行う前提でデザインされたと思われる優れた設計になっており、作業はかなり簡単といえるだろう。
なお、SSD換装時はPCをシャットダウンした状態で行う必要があるので注意して欲しい。機器の破損や故障を防ぐため、誤って休止などの状態で分解しないように気を付けよう。
バッテリーを外す必要があるのは若干手間だが、ネジの数も少なく、かなりメンテナンスがしやすい設計になっているのがわかる。
バッテリーを外せばあとはSSDを換装するだけだ。
冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。
とはいえ、ストレージ以外の部分に不満が無いのであれば、PCを買い替えるよりもSSD換装はコストパフォーマンスが高いアップグレード方法になる。
大容量SSDへの換装で空き容量は約4.3倍にアップ、実使用時の書き込み速度も大幅上昇
実際にSSD換装を行い、前後でどのように変わったのかも紹介しよう。今回は各ストレージのベンチマークの他、外部ストレージからのデータ転送速度もそれぞれ比較してみた。
空き容量は4.3倍と大幅に増加、ゆとりのある扱いやすい容量に
まずは容量の面で見ると、換装前の空き容量は206GB。極端に少ないわけではないが、アプリケーションを複数インストールしたり、データファイルがたまってくると定期的に整理が必要になる容量だ。
換装後の空き容量は、890GBと大幅アップ。これにより内部ストレージへデータを気兼ねなく置けるようになり、空き容量を気にすることなく使えるはずだ。仕事で扱う資料が多い人などは1TBクラスのSSDがあると快適なはずだ。
シーケンシャルリードは約1.35倍、シーケンシャルライトは3倍以上高速化
換装前後の速度をCrystalDiskMarkで確認してみたが、特にシーケンシャルライトが大きく向上した。
今回は速度面の向上をメインターゲットにした換装ではないが、シーケンシャルリードは約1.35倍、シーケンシャルライトは約3.53倍となった。ランダムアクセスのリードも向上しており、速度面でも全体的に強化された感がある結果となった。
ベンチマークの速度以上に差が大きく出るデータの取り込み速度、USBストレージを使う人は要注意
実際に使った時の体感速度の例として、50GBのデータを「Samsung Portable SSD T7 Shield(1TBモデル)」からPC本体側に転送した際の時間も計測してみたが、「Western Digital PC SN530(SDBPNPZ-256G-1016)」は、一瞬かなりの速度が出たものの、すぐに200MB/s前後となり、転送が完了するまでは約3分50秒かかった。
ファームウェアによってもこのあたりの挙動は変わる部分があるが、低容量のSSDはキャッシュ容量が少ないため、大容量のファイルを書き込む際は速度が落ちやすい面がある。
Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBはDRAMキャッシュも搭載したハイエンド寄りの設計思想もモデルで、1TBと容量的にもゆとりがあるので、50GBのデータを取り込む時間は約1分8秒だった。
USB接続のSSDなどをよく使う人は、こうした部分が快適かどうかといった体感に影響するので、容量選びの際に気にしてもらいたい。
ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。
今回とりあげた「富士通 LIFEBOOK CH75/E3」は、第11世代のIntel Core i5-1135G7を搭載して比較的新しく、13.3インチ/フルHDかつ薄型軽量と使い勝手の面でもかなり優秀な製品だ。SSDを大容量の物に換装するだけでビジネスノートとしてはかなり長く使えるのではないだろうか。
製品保証が無くなるデメリットはあるが、今回のLIFEBOOK CH75/E3のように、速度的な性能面ではPCを買い替えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてもらいたい。
[制作協力:Samsung]