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横出しケーブルで配線スッキリ!?「Corsair Gaming RM1000x SHIFT」【Power Supply Unit診断室】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

ケーブルのチラ見せ厳禁!!「ケブチラ」警察のPSU登場!

 みんな大好き!「鉄板電源」の一つとして人気のCorsair GamingのRMシリーズ。現在、ゲーミング向けの「RMx 2021」シリーズ(550/650/750/1,000W)、エコスパ重視の「RMe」シリーズ(750/850/1,000W)によって、幅広い出力帯、価格帯をカバーしている。

 今回紹介する「RM1000x SHIFT」は、RMxシリーズの新モデル。80PLUS Gold認証の「RMx」の系統ではあるのだが、そこで気になるのは「何がSHIFT」したのかだ。製品写真をよくご覧になれば分かるとおり、通常ならPC前方を向いているはずのプラグインコネクタが“側面”にSHIFTしたのだ。見た目あまりにも違和感があるので思わずツッコミを入れてしまいそうになる外観だ。

 ただし、よく見ていくと実はこれこそが将来スタンダードになるヤツかもしれないという結論に達した! 出力ラインナップは850、1,000、1,200Wと大出力寄りでハイエンドの位置付け。鳴り物入りの電源、RM1000x SHIFTをじっくりと観察していこう。

Corsair Gaming RM1000x SHIFT 実売価格:26,000円前後
規格:ATX、定格出力:1,000W、ファン:14cm角(底面)、80PLUS認証:Gold、ケーブル:フルプラグイン、電源コネクタ:ATX24ピン×1、ATX/EPS12V×2、Serial ATA×16、ペリフェラル×8、12VHPWR×1、PCI Express 6+2ピン×7、サイズ(W×D×H):150×180×86mm

※実売価格は6月上旬時点のもの

Lineup
製品名出力奥行き80PLUS認証実売価格
RM1200x SHIFT1,200W18cmGold31,000円前後
RM1000x SHIFT1,000W18cmGold26,000円前後
RM850x SHIFT850W16cmGold20,000円前後

横出しケーブルで配線スッキリ!?

+12Vに全フリ 君は使いこなせるか! ?
+12Vは83.3A(1,000W)。通常+3.3/5Vは1,000W電源なら25Aくらいで設計したいところ、本製品はおすそ分け程度の20A。ハイエンドビデオカードで組むユーザーのための配分と言えるだろう

 RMx SHIFTは「サイドパネル越しにケーブルが見えるのは悪!」という方向けのパンチラならぬ「ケブチラ」防止電源だ。本製品は電源ファンが底面向きになるよう搭載したときに、プラグインコネクタがケース正面から見て右の裏面配線スペースを向くよう設計されている。たとえ電源カバーのないケースと組み合わせた場合でも、マザーボードやビデオカードなどデバイス側の端子に接続する部分以外、ほぼほぼケーブルが露出することがない。流行りの「中を見せるPC」にバッチリの電源だ。

12VHPWR対応&ミニコネクタで電源まわりがスッキリ
側面に挿すという仕様のためか、コネクタも従来のRM1000x(左)より小さなものを採用。ケーブルの太さは従来同様で、大電力を供給する12VHPWRも安心。12VHPWRケーブルの電源側端子は2口に分かれるタイプ

 ケーブルはすべてフラットタイプなので裏面配線スペースの隙間にも通しやすく、もちろんエアフローにも効果的だ。公式では横幅が21cm以上あるケースなら対応可としているが、心配な方は対応ケース一覧( https://www.corsair-crew.jp/rm_shift/ )が公開されているので参照してほしい。

ケーブルは長めでフラットタイプ
ATX24ピンは61cm、EPS12Vと12VHPWRは65cm、PCI Expressは75cm。Serial ATAは1段目が45cmでその先11cm間隔の4コネクタタイプが4本付属。ペリフェラルは1段目45cmで以降10cm間隔の4コネクタタイプ2本が添付されている
実は内部の回路も刷新されており、省エネ性能もわずかだが強化されている
負荷率50%未満はファンが停止するので暗騒音以下。それ以上の負荷では回転するものの14cm角ファンなので低回転でも十分な風量が稼げる

見た目は変態さんでも、中身はピカピカの最新設計!

1次側は耐熱105℃の日本メーカー製電解コンデンサを2基採用。驚くのは容量で、560μF+470μFの合計1,030μF。「1mF」(ミリファラッド)オーバーなんてなかなか聞かないケタ違いの大容量
プラグインコネクタを移設した副次効果で、熱源とコンデンサをできるだけ離すレイアウトが可能になった。製品寿命を決めるのはコンデンサ付近の温度なので、長寿命が期待できる
プラグインコネクタが側面に移動したので、妙な場所に安定化回路がある。2次側も日ケミ製の耐熱105℃大容量コンデンサ3,300μF×3で平滑、大盛りの固体コンデンサ&チョークでリブルノイズを低減している様子
【藤山の注目ポイント】
本製品は小型化されたコネクタを採用している。各パーツ側のコネクタやケーブルについては従来同様と先に説明したとおりだが、小さくなったコネクタのピンに流せる電流は従来どおりなのか。調べてみると従来のコネクタは1ピンあたり最大13A、本製品の小型のコネクタは最大10.5A。数値上は少なくなっているが、例として12VHPWRを挙げると+ 12Vラインは6ピンで、仮に600Wを供給した場合でも1ピンあたり最大9.2Aなので10.5Aに対して1.3Aのマージンが残る計算だ。ここに不安を覚える必要はない。

PCI Expressがとくに安定 ゲーミング向けの大出力電源

 ATX3.0に準拠した80PLUS Gold認証電源。ラインナップには850、1,000、1,200Wが用意されており850Wは奥行き16cm、1,000W以上は18cm。PCI Express 5.0に対応した12VHPWRケーブル(最大600W)も標準添付されているので、GeForce RTX 40シリーズにも安全・確実に電源を供給できる。

ATX24ピンがやや不安定だが……
基準電圧はATX24ピン、PCI Express、EPS12Vが12.1V近辺とまずまず理想的。ただATX24ピンの電圧降下が大きく最大で0.7Vの振れ幅が見られた。一瞬とはいえ、ATX規格の下限11.4Vギリギリまで降下するのは減点対象。 PCI ExpressとEPS12Vの安定性は高く、ともに高負荷時でも0.2~0.3Vの降下しか見せない。まさにハイエンドビデオカードに特化した電源だ

 またPCI Expressへの安定的な電圧供給もポイント。基準電圧は12.1Vでほぼ理想的な上に、高負荷時のPCI Expressの電圧降下も0.3V弱なのでハイエンドのビデオカードを積んだシステムにオススメ。EPS12Vも降下幅0.2Vできわめて安定。ATX24ピンの降下幅は0.7Vと大きなところが気になるものの、CPUとビデオカードに全振りのPSUという点をかんがみれば、まず問題なしと見てよいだろう。またノイズも非常に少ない。

素晴らしきノイズレス電源
時折20mV程度のノイズが出るものの誤差レベル。超大容量のコンデンサを持つ平滑回路が効いているようでほぼノイズレスな電力を供給している

 プラグインコネクタを側面に移動したことで、内部も革新的になっている。基板を新規に起こしており、電解コンデンサなど熱に弱い部品と発熱するパワートランジスタを可能な限り離したレイアウトも秀逸。しかも熱源は排気口の近くに配置しているので、排熱でコンデンサが熱を持ちにくいなど、エンジニアの細かい設計思想が見られておもしろい。

この直流……華麗なり
長周期で見てもまっ平な直流を供給。交流成分は一切見られない。ちょこちょこ出るリプルも誤差としてよいレベルだ

診断票:今は変態電源かもしれないが将来スタンダードになるかも

 LEDイルミネーションやクリアサイドパネルのPCケースなど、当初はエッ!? と思うようなものがその後トレンドになることもある。本製品も同じかもしれない。今は「使いやすいの!?」と躊躇されるかもしれないが、ケーブルマネジメントのしやすさ、基板レイアウトなどを見ていくと、将来スタンダードになるかもしれないと思った。Corsairよ、新しい気づきをありがとう!

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING PRO CARBON WIF(I AMD X570)
メモリKingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Edition
SSDSolid State Storage Technology Plextor M8Se(G)シリーズ PX-512M8SeG[M.2(PCI Express 3.0 x4)、240GB]
OSWindows 11 Pro
室温20℃
暗騒音34.3dB
アイドル時ベンチマーク終了10分後の値
高負荷時3DMarkを実行中の最大値
動作音測定距離ファンから約15cm
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
電圧計測方法三和電気計器 PC-20を3台使用し、各コネクタの電圧を計測
リプル計測方法Pico Technology PicoScope2204を使用しアイドル時に計測

[TEXT:藤山哲人、検証協力:長畑利博(アイティースリー)]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

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