特集、その他
「TVのためのNAS」登場、
DTCP-IP対応のQNAP「HS-210-D」で録る・残す
スカパーも録画OK、録画対応TVと組み合わせてのメリットも text by 清水理史
(2015/4/20 00:00)
QNAPからAV環境向けのファンレスNAS「HS-210-D」が発売された。
従来モデルとなるHS-210の進化形で、新たにDTCP-IPに対応したのが最大の特徴だ。単にリビングに設置できるNASというだけでなく、スカパー!の番組録画や他の機器で録画した番組のダビング先として利用できるうえ、ハードディスクの交換も容易なHS-210-Dの実力を検証してみた。
「テレビのためののNAS」
見たい番組は多いのに、なかなかテレビを見る機会がない・・・・・・。そう嘆く人も少なくないのではないだろうか?
新年度を迎えるこの時期、野球やサッカー、テニスなどの注目のスポーツ中継も多いうえ、番組改編期で、話題の新ドラマや見たかった映画の放送など、さまざまな番組が盛りだくさんだ。
もちろん、リアルタイムで楽しむ人も少なくないかもしれないが、仕事や学校の用事でなかなか時間が取れないという人も多いだろうし、リアルの世界だけでなく、ネット上にもコミュニケーションの幅が広がるようになった今では、なかなかテレビをリアルタイムに楽しめる機会も少なくなった。
おそらく、後で見ようと録画した番組がまだレコーダーなどに放置されたままで、レコーダーのHDD容量が残りわずかとなっていたり、見たい映画やドラマの放送予定があるのに、レコーダーには定期モノの先約があり、録画先に困っているという人も少なくないのではないだろうか?
そんな録画環境の悩みを解決してくれるのが、QNAPから発売された新型のNAS「HS-210-D」だ。
見た目は、従来から販売されていたAV向けのファンレスNAS「HS-210」と同じで、2ベイ仕様でMarvell 1.6GHzや512MBのメモリを搭載したハードウェア仕様も共通だが、新たにDTCP-IPに対応し、スカパー!チューナーからのデジタル放送録画や、テレビ・レコーダーで録画した番組のムーブなどに対応した。
これにより、新たな録画スペースを確保するために、年末年始に撮りためた番組をムーブしたり、ノーカット長時間の映画やドラマの一挙放送、滅多に放送されないライブなど、スカパー!の番組を普段のレコーダーではなく、NASに録画することが可能になっている。
従来のHS-210は、「AV向け」と言っても、主にオーディオ向けの製品であったが、DTCP-IP対応した今回のHS-210-Dでは、新たにビジュアル方面での用途も広がったことになる。
本体はファンレス仕様ハードディスクは対応品を
それでは、実際にHS-210-Dによるテレビ録画環境を整えていこう。まずは、ハードウェアのセットアップから始めよう。
本製品は、AV向けの製品らしく、スッキリとしたデザインになっており、一見すると、ハードディスクをどこから装着するかがわからないが、フロントパネルを取り外すことで、ホットスワップにも対応したハードディスク用のベイが姿を現す。
カートリッジを取り出し、ハードディスクを装着後、元通り、フロントから装着すればハードウェアのセットアップは完了だ。
このように作業自体は簡単なのだが、1つ注意しなければならないのが装着するハードディスクの選定だ。
本製品は、「音」にこだわるユーザー向けに、ファンレス仕様となっており、アルミ製のパーツの多用により、効率的な放熱ができるように工夫されている。とは言え、ハードディスク本体の発熱が多いと問題が発生する可能性があるため、利用可能なハードディスクが限られる。対応するハードディスクはWestern Digitalの「WD Red」、もしくはSeagateの「NAS HDD」となるため、このどちらかを入手しておこう。
ハードディスクの装着後、電源を入れ、PCからブラウザから「http://start.qnap.com」にアクセスすれば、HS-210-Dの初期設定が実行できる。ここでは詳細な手順は省略するが、基本的に標準設定のままセットアップしておけばいいだろう。
TwonkyMediaDTCPでDTCP-IPを実現
続いて、いよいよ録画環境としてセットアップしていく。
HS-210-DのDTCP-IP関連機能は、QNAPのNAS向けの追加パッケージとして提供される「Twonky MediaDTCP」によって実現される。このパッケージは、標準ではインストールされていないため、別途、ダウンロードしてインストールする必要がある。
ただし、その前に、標準のDLNAサーバー機能を無効にする必要がある。HS-210-Dには標準でDLNAサーバー機能がインストールされているが、これはDTCP-IPに対応していないため無効化しておく、というわけだ。また、HS-210-Dには標準でDTCP-IPに対応していないバージョンのTwonky Media DLNAサーバーがインストールされているが、これが有効になっている場合も、追加したTwonky MediaDTCPが有効にならないので、同画面で確認し、有効になっている場合は無効化しておこう。
【事前の準備】
1.「コントロールパネル」を起動
2.「アプリケーション」をクリック
3.「DLNAメディアサーバー」をクリック
4.「DLNAメディアサーバーを有効にする」のチェックを外す
5.「TwonkyMedia DLNAサーバーを有効にする」のチェックを外す(有効の場合)
ここまで準備ができたら、HS-210-D専用となるDTCP-IP対応のTwonky Serverパッケージをダウンロード後、HS-210の「App Center」からインストールする。
【DTCP-IP対応版Twonky Serverのインストール】
1.「AppCenter」を起動
2.「手動でインストール」をクリック
3.「参照」をクリック
4.ダウンロードしたTwonky MediaDTCPのapkgファイルを指定
5.「インストール」をクリック
これで、Twonky MediaDTCPがDTCP-IP対応のメディアサーバーとして起動し、HS-210-Dを録画環境として利用可能になる。
Twonky MediaDTCPは、標準設定のままで問題なく動作するが、言語が英語になっているので、後述する番組再生の際に表示されるフォルダ名などを日本語で表示したい場合は、設定画面から言語を日本語に変更しておこう。
なお、インストール後、うまくTwonky MediaDTCPが起動しなかったり、設定ページにアクセスしたときにエラーが表示されたときは、AppCenterから一旦機能をOFFにしてから、再びONにしてみるといいだろう。
スカパー!の番組を録画してみよう
実際にHS-210-Dを録画環境として利用してみよう。まずはスカパー!の番組を録画してみる。
今回は、スカパー!光で提供される「HR-250H」を利用して録画する方法を紹介するが、メニューなどの選択項目が若干変わる程度で、他のチューナーでも基本的な手順は同じだ。
【スカパー!番組を録画するための設定】
1.スカパー!のチューナーを起動
2.リモコンの「メニュー」ボタンを押す
3.「端末設定」を選択
4.「スカパー!HD録画 機器登録」を選択
5.「HS-210-D [NASxxxxxx]」を選択(xxxxxxはNASの名前、なお、このサーバ名はTwonkyMediaの設定画面で変更可能)
これでチューナーの録画先としてHS-210-Dが登録されるので、後は録画操作をすればいい。番組表から録画したい番組を録画予約すれば、番組がネットワーク経由でHS-210-Dに録画される。
再生方法も利用するチューナーによって多少の違いはあるが、HR-250Hの場合であれば、以下の方法で再生可能だ。
【録画したスカパー!番組を再生する方法】
1.リモコンの「タイトルリスト」ボタンを押す
2.サーバーリストから「HS-210-D [NASxxxxxx]」を選択
3.「ビデオ」を選択
4.「全てのビデオ」を選択
5.録画した番組を選択
スカパー!では、年末年始に限らず、さまざまな特集が用意されており、オリジナルとリメイク版の映画を見比べたり、人気の映画やドラマの一挙放送などが企画されているが、HS-210-Dがあれば、これらの番組もたっぷりと録画できる。
既存のレコーダーは、いつも見るドラマやバラエティなど、地上波の録画に専念させ、特別な番組はNASに録画するといった使い方をすると便利だろう。
テレビで録画した番組をムーブする
さて、いよいよ既存の録画機器から、録画済みの番組をムーブだ。DTCP-IPでのムーブに対応したテレビやレコーダーなどを利用している場合は、既存の機器で録画した番組をネットワーク経由でHS-210-Dに転送することができる。
たとえば、筆者宅で利用しているREGZA(42ZV500)の場合であれば、録画番組の一覧でダビングを選択し、ダビング先で「HS-210-D [NASxxxxxx]」を選択することで、番組をコピーすることができた。
現在、利用している録画機器の容量が一杯になりそうな場合でも、この方法を利用すれば、残しておきたい番組をHS-210-Dに退避することができるというわけだ。
なお、HS-210-Dにムーブした番組は、コンテンツ保護機能の管理が録画機器からHS-210-Dへと変更されるため、録画した機器以外でも再生可能になる。
たとえば、上記の例であれば、REGZAからHS-210-Dにムーブした番組は、Play Station 3や他社製のDTCP-IP対応テレビなど、ネットワーク上のDTCP-IP対応機器からも再生することができる。
リビングのテレビで録画したものの、テレビが家族に占有され、見たい番組がゆっくり見られないという場合でも、一旦、HS-210-Dへとダビングしておけば、他の部屋のテレビなどで視聴することができる。こういった使い方ができるようになるのも、HS-210-Dを導入するメリットと言えるだろう。
ハードディスクを交換可能
このように、スカパー!の録画先やDTCP-IP対応機器のムーブ先として利用できるHS-210-Dだが、一般的なAV機器と異なるNASらしい特徴も備えている。ハードディスクの交換が容易な点だ。
PC向けの周辺機器から誕生したHS-210-Dは、故障対策や容量増加などの目的でハードディスクを交換可能となっている。このため、たとえば、現在利用しているハードディスクの容量が一杯になってしまった場合でも、新しいハードディスクに交換することで、再びたくさんの番組を録画することが可能となる。
もちろん、取り外した古いハードディスクを保管し、必要に応じて再び本体に装着すれば、交換前に録画した番組をそのまま視聴することができる。既存の録画機器から特定のジャンルの番組だけムーブすれば、映画用ハードディスクやドラマ用ハードディスクなど、ジャンルごとにハードディスクを使い分けることも可能だ。
こういった柔軟な運用ができるのは、AV機器ではなく、あくまでもPC用周辺機器であるNASならではの強みと言えそうだ。
ただし、ハードディスクを交換する際はいくつか注意点がある。まず、標準設定の場合、ハードディスクは2台セットで1つのボリュームを構成するRAID1(ミラーリング)となる。このため、ハードディスクを交換する際は、2台とも同時に交換するのが基本となる。
交換の際も、本体の電源を落として作業することをおすすめする。HS-210-Dはホットスワップに対応しているが、2台ともハードディスクを抜くと、エラーが発生してしまうため、結局、ハードディスク装着後に再起動することになる。
また、ファームウェアのバージョン管理も重要だ。QNAPのNASは、本体のフラッシュメモリとハードディスクの両方にファームウェアを保持する仕様になっている。ハードディスクを取り外して長期間保管するような使い方をする場合、将来的に、このバージョンが異なる場合が考えられる。
通常は、ハードディスク側のファームウェアを優先して起動する仕様になっているが、バージョンが何世代にもわたって異なる場合、動作に問題が発生する可能性がある。このため、多少手間だが、ファームウェアをバージョンアップする際は、ストックしているハードディスクでもバージョンアップする必要がある。
これらの点さえ注意すれば、ハードディスクを大量に用意することで、いくらでも番組を保管することが可能になる。見たい番組が大量にある人には、まさにうってつけの録画環境と言えるだろう。
NASとしても使える万能機器
以上、QNAPから新たに発売されたHS-210-Dを録画環境として活用してみたが、スカパー!を利用している人はもちろんのこと、そうでない場合でも既存の録画機器のムーブ先として、かなり重宝する機器と言えそうだ。
ハードディスクを交換しながら使えるなど、AV機器とは一線を画す柔軟性の高さも備えているのも大きな魅力だ。
また、今回はあまり触れなかったが、もちろんNASとしても利用可能で、PCのデータを保存したり、保存したデータをスマートフォンなどを使って外出先から参照することも手軽にできるようになっている。さまざまな用途に使える万能選手として、1台、手元にあると便利な製品と言えそうだ。