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新年度に買う「全てをすますPC」はコレ!
~ニーズ別「遊べるPCゲームマシン」の作り方~
text by 石川ひさよし
(2015/4/21 12:05)
春と言えばスタートの季節。新生活をはじめる方もそうでない方も、何かをリフレッシュするにはちょうどよい節目だ。PCやスマートフォン、ゲーム機など、様々なものの新調を考えている人が多いだろう。
そうした「コンピュータ」を新調する際、弊誌がオススメしたいのはやはり「自作PC」だ。
「え、面倒じゃない?」「わざわざ自作?」と思う人もいると思うが、ページを閉じるのは待って欲しい。
もちろん弊誌が「自作PCのWebサイトだから」というのもあるのだが(笑、実際問題として、「ブラウザゲームから本格ゲームまで幅広く遊べる」のはPCのメリットだし、マルチディスプレイや良いキーボード・マウスをそろえたPC環境は、書類やレポートを入力・編集する作業としても効率的。動画の視聴環境としてもなかなかいいだろう。
こうした高効率の作業環境やゲームプレイ環境は、メーカー製PCでも実現できるが、自作することで、さらに細かいこだわりを実現でき、さらにPCに関する理解も深まる。購入後「このパーツを交換すればアレができる」を判断できるようになるのもポイントだ。
PCゲームはブラウザゲームから本格ゲーム、最新VRゲームまで多種多様予算は5万円台から、重要なのは拡張性?
また、自作PCの大きなメリットは、下はネット専用シンプルなPCから、上はワークステーション級のPCまで自由にパーツを組み合わせることができること。そしてシンプルなPCを買った後でも、拡張することで最低限のコストで性能アップを図れることだ。
つまり、自作PCは「長い目で見た場合のコスト」は下がる傾向にある。最近は、VRゲームや4Kディスプレイ対応など、高パフォーマンスが必要なゲームも徐々に注目を集めており、「今は不要でも将来欲しくなるかもしれない」という視点を持っておくのもアリだろう。
そこで今回は、「遊べるPCゲームマシンの作り方」と題して、ゲームのタイプ別に代表的なゲームを挙げ、PC構成を検討してみた。
今回のジャンル分けは、【1.ブラウザゲーム】、【2.インディ/同人ゲーム】、【3.MMORPG】、【4.ちょっと軽めの本格ゲーム】、【5.本格ゲーム】、【6.VRゲーム】とおおまかに分けてみた。5の「本格ゲーム」はPCの底力が余すところなく体感できるゲーム、4の「ちょっと軽めの」はMMORPG以外でライトに遊べる本格ゲーム、と考えて欲しい。
なお、PC構成例ごとに大雑把な予算を出してみた。
最近のPCは、CPUやGPUの差はもちろんのこと、チップセットやGPUが同じでも個々の製品の付加価値しだいで価格に差がでるので、そこは予算とコンセプトで調整していってほしい。
また、パーツ選びについては、「まずはわかりやすさ」ということで、マザーボード例とビデオカード例はASUS、ケース例はCooler Masterと限定してみた。それでもこれだけ選択肢があるわけで、自作PCの幅広さと可能性を感じていただければ幸いだ。
その1:ブラウザゲーム(予算:おおむね5~10万円)
ブラウザゲームは、その名のとおり、Webブラウザ上で動作するゲームだ。
本格的な3Dを利用するものよりは、2Dベースの、どちらかと言えばCPU性能のほうが重要となるタイトルが中心で、広いユーザーに気軽に楽しんでもらうという設計コンセプトとして、そこまでハイスペックを要求するものは少ない。
そして、ブラウザゲームであれば、ビデオカードなしでもイケる。
……ということで今回は、統合GPUとしては高性能のAPUを選択してみた。ビデオカードなしの構成のため、極端な例としては拡張スロットのないMini-ITXケースなども視野に含まれるが、後々のステップアップなどを考えると2~4スロット程度の拡張性を持たせておくのがよいだろう。
また、ブラウザゲームではクライアントソフトの導入が不要であることが多い。そのためストレージ容量はそこまで重視しなくてよいだろう。
その2:インディ/同人ゲーム(予算:おおむね10~5万円)
インディ/同人ゲームとしたが、いわゆるソフトハウス以外から登場しているタイトルだ。基本的には作者のハードウェア環境=要求スペックとなるところで、千差万別と言ってよい。
3Dエフェクトを多用した、本格ゲームに迫るクオリティのタイトルも登場してきており、ワクワクするが、開発の規模から、ハードスペックを要求するものは少数だ。先のブラウザゲームよりは若干盛ったスペックで多くの場合は大丈夫だろう。
いちおう、動作検証という観点から検討すると、作者の環境に近い構成やオーソドックスと言われる構成がよいかと思う。インディ/同人ゲームの場合、パーツの組み合わせによる相性問題が生じた場合、ソフトハウスのようなサポート体制があるわけではなく、コミュニティでの解決になることが多いためだ。
構成してみたパーツ構成は以下の通り。
GPUは、1世代古いGeForce GTX 750 Tiだが、基本アーキテクチャは現行と同じMaxwell。STRIX-GTX750TI-OC-2GD5は、GPU温度が上昇した際のみファンを回転させるモデルで、負荷が低い間はファンを停止する。補助電源コネクタも不要の低消費電力GPUであり、カード自体もコンパクト。メモリは様々な状況を考えて、少し余裕を持たせてみた。
なお、最近ではかなり完成度の高いタイトルがリリースされているが、互換性検証などはソフトハウスの製品と比べてどうしても甘くなる。結果として、メモリリークなどが発生しやすい場合もありえるので、念のため、メモリ容量はブラウザゲームより多めにしたほうが安心だろう。
その3:MMORPG(予算:おおむね10~15万円)
MMORPGの場合、おおむね「メインストリーム」なPC環境(多少世代が古いこともある)が開発時のターゲットとなる。
画質設定にもよるが、基本的には30fps程度のフレームレートが出れば快適と言えるため、購入時点でのミドルレンジGPUを選んでおくのが無難だろう。CPUは、デュアルコアがミニマム、クアッドコアが推奨環境となることが多い。
自作例では、まずGPUをミドルレンジからAMD Radeon R7 260Xを選んでみた。
およそフルHDで30fpsを目指した性能だ。CPUはCore i5で、組み合わせるマザーボードはIntel H97チップセット搭載モデルでもスタンダードなATX製品とした。スタンダードではあるが、H97-PLUSはオーディオ回路設計にも力を入れており、オンボードオーディオの中では一つ上のクリアな音響を楽しめる。
その4:ちょっと軽めの本格ゲーム(予算:おおむね10~15万円)
「ちょっと軽めの本格ゲーム」としたが、要はFPSやとくに高負荷なアクションタイトル以外の3Dゲームを想定している。負荷のレベルとしてはMMORPGの少し上ととらえればよいだろう。基本的にはミドルレンジ~アッパーミドルGPUで楽しめる。
構成例では、アッパーミドルGPUで人気のGeForce GTX 960を軸に、クアッドコアCPUを組み合わせた。
STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5は、そもそも優れた静音設計だが、ファンの回転をGPU温度が上昇したときのみに抑えている。ゲーム中も静か、ゲーム以外ではさらに静かなPCが可能になる。H97-PRO GAMERは、エントリークラスのゲーミングマザーボード。スタンダードモデルよりも一つ上のオーディオ回路を採用し、静音性に優れたビデオカードと組み合わせれば、クリアな音響が楽しめる。
その5:本格ゲーム(予算:おおむね15~20万円)
「本格ゲーム」と言っても、最近ではPC版とともにコンシューマ向けにも同時展開されることが多いので、PCゲームとして楽しむ醍醐味は、「コンシューマゲーム機以上のフレームレートや画質、解像度」にある。
構成的にはいわゆるハイエンドPCになり、CPU、ビデオカードともに、その時点の最高性能のものがベスト。また、昨今はインストール容量も増加傾向にある。SSDであれば500GBクラスを、できればデータ用として大容量のHDDを組み合わせるのがよい。
構成ポイントとなるのは、ゲーマー向けマザーボードと、ゲームバンドルビデオカード。
FPSタイトルなどでは忍び寄る敵を音響によって察知するということも多いことから、オーディオ機能が充実したゲーマー向けマザーボードがオススメ。一方、ゲームバンドルビデオカードは、GPUメーカーやビデオカードメーカーが定期的にバンドルキャンペーンを行なっており、現在はNVIDIAの一部GeForce GTXカードで「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」のダウンロードクーポン・バンドルキャンペーンが実施中だ。
その6:もうすぐ来る未来(?)「VRゲーム」(予算:おおむね15~20万円)
今後のGPU技術で注目とされるのは、Oculus RiftのようなVRゴーグルだ。頭部の向きや角度を取得するセンサーを取り付けたヘッドマウントディスプレイ(HMD)で、頭部の位置に合わせて映像が切り換わり、平面パネルディスプレイとは異なる没入感が得られる。
現時点では、Oculus Riftの「開発中モデル」で2世代目にあたるOculus Rift DK2が1,920×1,080ドット(片目960×1080ドット)と、解像度で見れば普通だが、一般的なゲームのフレームレート基準が「60fps」とされているのに対し、Oculus Rift DK2では75fpsが、そして最新世代の「Crescent Bay」(コードネーム)では90fpsが求められる。つまり、単純計算で1.5倍の性能が必要になる。
これは、素早い頭の動きに対し、映像にズレが生じてしまうと「酔って」しまうため。目に近い場所になるVRゴーグルは解像度もより高くする必要があるといわれており、VRゴーグルが発展していくにつれ、こうした課題に対応する必要も出てきそうだ。また、未知の課題が出てくる可能性もあり、できることならば、性能に余裕度のあるハードウェアがあったほうがいいだろう。
さて、現実的な構成だが、現時点でのVRゴーグルの推奨ビデオカードとしては、アッパーミドルGPUを搭載していることが挙げられている。
ただし、「今買って、将来も使える」という構成を想定すると、一つ上のハイエンドGPUを用意しておくのがよいのではないだろうか。一方で、GPUメーカーであるAMDやNVIDIAも、VRゴーグルメーカーと共同で、快適なVRゴーグル実現のためにどのような機能が必要なのかを研究しており、専用のSDKなども発表されている。たとえば、センサーのデータ処理を一部GPUが肩代わりしたり、あるいは左右の映像に対し、個別のGPUを割り当てるVRゴーグルのためのマルチGPU技術などがある。とくに後者を考えると、ATXのように、将来、ビデオカードを追加できるような拡張性のある構成が望ましいだろう。
【VRゲームを主眼にしたPC例】
【CPU】Intel Core i7 【マザーボード】ASUS Z97-PRO(Intel Z97)【ビデオカード】ASUS STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5(GeForce GTX 970)【ストレージ】SSD(500GB以上) 【メモリ】8GB以上【ケース】ATX 【電源】650W以上
では、次回、この六つの構成の中から、一つ実際にPCを組み、パフォーマンスを調べてみよう。
[制作協力:ASUS]