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オーディオ向けに最高?ハイレゾ/DSD再生用PCをファンレス小型キットで組んでみた
ZBOX CI321 nanoで作るオーディオPC text by 織野至
(2015/6/17 11:50)
「ハイレゾオーディオ」というと昨年~今年のホットワードだが、「PCでハイレゾオーディオを試してみよう」という際に気になるのがUSB-DACとPCスペックだ。
USB-DACについては予算や好みが重要として、PCスペックについては「DSDを再生できるパフォーマンスがあるかどうか?」とPCそのものの動作音だろう。特に、PC本体に近い環境で使用するケースが多いヘッドフォンユーザーには、本体が静音であることのメリットは大きい。
ハイパフォーマンスCPUであれば性能面での問題は無くなるが、上位モデルのCPUはファンレスでの運用が難しく、今度は「動作音をどうするか?」がポイントになる。そこで今回は、小型のファンレスPCが「ハイレゾオーディオ向きPC」に適しているのか検証してみた。
利用時のパフォーマンスのほどや、発熱のほどなど、気になるところを確認してほしい。
オーディオ用PCならやはりファンレス、ZBOX CI321 nanoを今回はチョイス
さて、今回用意したのはZOTACのファンレス小型PC自作キットの「ZBOX CI321 nano(ZBOX-CI321NANO-J)」、店頭価格は税込24,980円前後だ。
ZBOX CI321 nanoシリーズは、4GBメモリと64GB SSDを搭載した「ZBOX-CI321NANO-P-J」(予価3万円代後半)、2GBメモリに32GB SSDを搭載し、Windows 8.1がインストールされた「ZBOX-CI321NANO-J-W2A」(予価3万円台半ば)も今後発売が予定されている。
CPUは1.1GHz動作のHaswell(Celeron 2961Y)で、メモリはDDR3L-SODIMMソケット×2本、ストレージベイは2.5インチ×1個が用意されている。そのほかの搭載デバイスは1000Base-T LANやIEEE 802.11ac対応の無線LAN、Bluetooth 4.0、USB 3.0、HDMI/DisplayPort、そして当然サウンド機能(S/PDIF対応)だ。
一方、世間の「ハイレゾ音源」のデータを見てみると、WAVとFLAC、DSDが主流だ。
WAVはおなじみの非圧縮リニアPCMで、一般にサンプリング周波数44.1kHz/16bitより高いものがハイレゾとされる。そしてFLACはその代替として使われる可逆圧縮タイプ。そして、最後のDSDは「アナログに近い表現力」として注目を集める方式で、ファイルサイズはべらぼうに大きくなり、出力にも手間がかかる。
たとえば、「DSD64」の場合はサンプリング周波数2.8224MHz/1bitであり、60分で3GB前後とCDの4倍程度の容量となっている。また、それ相応のCPUパワーが必要になり、専用の出力デバイスも必要だ。
さて、ここで問題になるのが、「今回のZBOX CI321はDSD再生できるだけのCPUパワーがあるかどうか?」だ。
ファンレスでCPU性能がそこそこある、というところまでは問題ないこの製品、DSDの再生が問題ないかどうか、さっそく検証してみよう。
ハイレゾ/DSD再生で負荷をテストCeleron 2961Yクラスがちょうど良い性能
さて、早速負荷テスト……に行く前に、用意したUSB-DACを紹介しておこう。
用意したのは、上海問屋DN-11674。税込19,999円のエントリー向け製品で、DSD 5.6MHzネイティブ再生(及びDoP)や384KHz/32bit PCMまでの再生に対応・PCMとDSDに両対応しているのもポイントだ。
CPU負荷のテストには製品付属の再生ソフト「JRiver Media Center」を使用した。このソフトは製品付属のASIOドライバーでの再生だけでなく、Foobar2000(foo_dsd_asio)での再生にも対応し、音源に合わせてのドライバー変更でFLACとDSDの混在環境にも耐える仕様だ。
さて、その再生時のパフォーマンスは左のとおり。まずはDSD128の再生負荷だ。
このときのCPU使用率は45%前後で、見ての通り、CPUリソースには余裕がある状態。また、メモリ使用率は1.6GBで、オーディオ以外にも使うなら、搭載容量は4GBよりは8GBが無難だろう。
なお、Foobar2000(food_asio)では55%前後のCPU使用率で、動作にも問題なく使用できていたのだが……、ドライバの相性か、再生が途中で停止、Windowsがシャットダウンする、という事態になった。検証期間の都合上、正確な理由は不明だが、何かしらの相性的なものだと思われる。問題が発生するまではFoobar2000でもDSD再生が行えていたが、今回のUSB-DACをDSD再生に使う場合は付属ソフトを利用したほうが無難だろう。
続いてはFLAC(352.8kHz/24bit)再生時の負荷。
CPU使用率は45%前後で、ややアップダウンが激しいが、それでも十分余裕がある。ハイレゾ音源に関してはDSDよりも若干負荷が軽い。
同じくFLAC(352.8kHz/24bit)をFoobar2000で再生した際のCPU負荷。上記のJRiver Media Centerと比較すると、負荷は30%前後にまで落ちた。
DSD再生はJRiver Media Centerの方が処理が若干軽く、PCM音源の再生はFoobar2000の方が軽い傾向があるようだ。
さて、「ファンレス」という仕様ながら意外にDSD再生できることが分かった本製品だが、再生中に冷却不足が露呈することもなかったことを追記しておく。テスト時の動作温度は、室温24度の環境で32~34度あたりだったので、エアフローの良い環境であればさらに負荷が高い状況でも安定して動作するはずだ。
このように、DSDやハイレゾ音源を再生するPCとして見ると、「ZBOX CI321 nano」はほどよい性能であり、またローコストで済むといった感じだ。
オーディオ以外にも使えるZBOX CI321 nano、卓上に寝室、テレビの横にと置き場を選ばず
さて、以上でひとまずの検証は終了だが、せっかくなので「小型PCならでは」のポイントを活かした活用法を紹介してみたい。
とりあえず、色々な場所においてみたが、CDケースと変わらないサイズなので、卓上などに置く場合も邪魔になりにくいのがポイント。TVのHDMI入力を利用して、TV画面でダラダラとブラウザーゲームや動画を見るといった場合にもちょうどいい。
また、VESAマウントも可能で、ハニカム構造+メッシュで放熱性もいいため、液晶ディスプレイの裏にマウントしておくのも……といいたいのだが、筆者環境だと逆にVESAにマウントしているとアクセスしにくいため、環境次第だろう。
まずファンレスであるため、ベッドサイド用PCとして申し分ないのは明瞭だ。
SSDを用意した場合、ハイレゾ音源だけでなく動画を満載とは難しいため、NASや外付けHDDは必須。インターフェイスは豊富なので、その点で苦労することはないハズだ。
「小型PC」というとNUCをはじめとして各社から出そろってきているが、「ファンレス」「インターフェイス多め」というポイントはこの製品独特ともいえる。オーディオPCなど、「この製品ならでは」の可能性を追及してみるのも面白そうだ。
[制作協力:ZOTAC]