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MSI台湾本社で聞いた「ゲーミングマザー = カーボン戦略」
赤の次はカーボンが来る!?MSI X99・Z170カーボンマザー

~Skylakeの"曲がり"を防ぐ「CPU GUARD」もレポート~ text by 石川ひさよし

MSI台湾本社ビルのエントランスではMSI GAMINGエンブレムがお出迎え

 昨年末、台湾のMSI本社にうかがう機会を得た。MSI本社の建物は台北市をぐるりと囲む新北市のなかでも南の中和区にあり、付近には日本でもよく耳にするPC DIY関連メーカーが多く集結している。

 ちょうどCESの直前ということもあり、本社ツアーだけでなく、CES展示予定製品のほか、Skylakeで話題の「CPU GUARD」などのレクチャーなどもあった。

Broadwell-Eを見越したカーボーンヒートシンク版GODLIKE

 ゲーミングマザーと言えばブラック/レッドの配色がトレンドだが、MSIが考えるレッドの次のゲーミングカラーが「カーボン」だ。

 そのハイエンド向けの製品となる「X99A GODLIKE GAMING CARBON Edition」(以下、GODLIKE CARBON)は、現行のX99A GODLIKE GAMING(以下、GODLIKE)をベースとするバリエーションモデルとなる。

レッドに変わるGAMINGカラーとなるカーボン採用モデル、X99A GODLIKE GAMING CARBON Edition

 GODLIKEは、LGA2011-v3と互換性を持ちつつOC向けにピン数を増やした「Turbo Socket」LGA2036、金属製スロットカバーの「Steel Armor」や、高品質オーディオ回路「Audio Boost 3」、巨大なレッドのヒートシンクにLED発光機能「Mystic Light」といった機能と見た目を両立した最上位モデルだった。GODLIKE CARBON自体は、主な機能をGODLIKEと共通としつつ、デザイン面を一新したモデルになる。

 GODLIKEではブラック基板をベースに、レッドの大型ヒートシンクを組み合わせていたが、GODLIKE CARBONではヒートシンク部分にカーボン素材のシートが採用され、引き締まった印象を受ける。MSI GAMINGのドラゴンマークは従来のエンブレムからシンプルなプリントに改められたが、編み目が並ぶカーボンに、シルバーのドラゴンが乗るこちらも自己主張は強い。

ノーマル版X99A GODLIKE GAMINGと並べるとこのような具合にイメージ一新
フルカラーLED発光機能Mystic Lightも搭載

 MSI本社のスタッフによると、GODLIKEではレッド部分の割合が大きすぎるという意見があり、ほかのカラーバリエーションを検討するなかで、自動車レースや航空・宇宙分野のイメージのあるカーボン素材がハイエンドゲーミングのイメージにマッチし採用したとのことだ。

 こうして完成したGODLIKE CARBONは、未通電状態ではかなり落ち着いた雰囲気をみせる。残念ながらMystic Lightのデモンストレーションはなかったためにあくまで想像だが、点灯時はGODLIKEのように色が重なることがなく、よりLEDの発光色が映えるのではないだろうか。

PCI Express x16スロット間に伸びるヒートシンクもカーボン。チップセットヒートシンク部分にはシルバーのドラゴンエンブレム
X99A GODLIKE GAMINGの特徴的な機能はすべて継承。その上でカラーリング面と機能強化、そしてBroadwell-E対応がポイント

 そのほかGODLIKE CARBONでポイントとなるのが、2016年半ばに登場すると噂されるBroadwell-Eへの最適化や、メモリスロットに装着された金属製カバー「DDR4 Steel Armor」だ。

 前者は、具体的にどこを、というのはまだ難しいが、後者は、大型ヒートシンク搭載メモリを利用する際はその支えになるという。また、EMI対策としてもメリットがあるとのことで、OCメモリとの組み合わせ時にその効果を期待できそうだ。

 GODLIKE CARBONは、3月頃の発売予定で、価格は未定だが現行GODLIKEと同じくらいの価格帯になるだろうとされる。

汎用オプションとして、ファン搭載可能な4-way SLIブリッジも登場予定
ビデオカード固定具のGraphics Card Jackも登場予定。伸縮ポールに押さえが付いた構造で、3-wayまで対応できる

普及価格帯のカーボンモデル

 カーボンモデルはハイエンドだけでなくメインストリームにも展開される。それが「Z170A GAMING PRO CARBON Edition」(以下、GAMING PRO CARBON)だ。GAMING PRO CARBONは、メインストリーム向けの製品で価格帯は2万円台前半(インタビュー時点では未発売だったが、23日に発売された)。Intel Z170を搭載するMSIマザーボードのラインナップで比べても決してハイエンドモデルではない。ここにMSIの本気度が感じられる。

普及価格帯のCARBON使用モデル「Z170A GAMING PRO CARBON Edition」 Mystic Lightも引き続き搭載される

 先のGODLIKE CARBONと比較するとヒートシンクの面積も小振りにはなるが、VRM用、チップセット用双方にしっかりとカーボンが用いられている。また、ベースとなった「Z170A GAMING PRO」(以下、GAMING PRO)に搭載されていた「Mystic Light」も継承しており、LED発光によるハデな演出が楽しめる。GAMING PROでのMystic Lightは、「msi NO.1 IN GAMING」とプリントされた部分が発光するデザインだったが、GAMING PRO CARBONは基板パターンのようなラインが仕込まれ、その部分がLED発光するデザインへと改められた。

 なお、ヒートシンク上のMSIロゴなどはGODLIKE CARBON同様にシルバーとなる。

小振りのチップセットヒートシンクとなるが、カーボンシートがアクセントに
CPUソケット周辺。VRM用ヒートシンクは中央にカーボンシートが装着されている

 ハードウェア面ではGAMING PROにあったPCIスロットが無くなり、PCI Express x1スロットへと変更されたほか、垂直に設置されていた内部SATAポートは水平方向へと改められた。また、バックパネルのUBS 3.1 Gen2がType-A×2からType-A+Type-Cの組み合わせに変更されるとともに、内側のUSB 3.0ピンヘッダ(USB 3.1 Gen1)が1基から2基へと増設されている。

バックパネルのUSB 3.1 Gen2端子がType-A/Cの組み合わせに
SATAポートの一部が水平端子へと改められた

MSI 30周年記念モデル「Z170A KRAIT GAMING 3X」

 そしてもう一つ、後日開催された国内説明会で発表されたマザーボードについても紹介しておこう。それが「Z170A KRAIT GAMING 3X」。こちらはホワイトが特徴のKRAIT GAMINGシリーズで、MSIの30周年記念モデルでもある。

ホワイトが鮮やかなZ170A KRAIT GAMING 3X

 現行モデルの「Z170A KRAIT GAMING」(以下、KRAIT GAMING)と比べると、前項のGAMING PRO CARBONと同じようにPCIスロットがPCI Express x1スロットへと置き換えられ、基板上のSATAポートの一部が水平端子へと変更されている。バックパネルのUBS 3.1 Gen2がType-A×2からType-AとType-Cに変更されていたり、内部USB 3.0ピンヘッダが1基から2基へと増設されていたりする点も同様だ。

 KRAITシリーズの特徴となるホワイトの配色は、一部のスロットやヒートシンク、基板上のプリントに加えSATAの水平端子にも施されている。ブラック/ホワイトの配色もゲーミングマザーでは人気なので、こちらも注目。比較的製品が揃っているホワイト系パーツと組み合わせれば、Mystic Light無しでも十分に映えるだろう。発売は2月末くらいを予定しており、販売価格はまだ未定とのこと。

 なお、30周年を記念する3Xモデルは、今後1年に渡ってほかにも展開される予定だ。

向きが改められたSATAポートもホワイト
バックパネル。USB 3.1 Type-Aポートの1基がType-Cへと変更された

ラボツアーで見てきたSkylake用基板破損防止金具「CPU GUARD」

 さて、話を台湾に戻し「CPU GUARD」について聞いてきたことをレポートしよう。

 まず、昨年末にわかに話題となったのがSkylake系CPUの基板破損問題。MSI本社スタッフによると、これはSkylakeがそれ以前のLGA115x系CPUと比べて基板が薄くなっていることに起因すると言う。CPU GUARDはこれを防止するための固定具だ。

従来のLGA115x系CPU(左)とSkylake(右)では基板部分の厚みが異なり、Skylakeはより薄く、それ以前のものと比べると強度も劣る。そのため、重量級CPUクーラーを装着し、かつ激しくPCを動かした際などで強い負荷がかかった場合に、強度が足りなくなることもあり得るという
CPU GUARDは基板破損を防ぐための固定金具だ

 まず、CPU GUARDを装着するには、一度通常のリテンション金具を取り外す必要がある。そのうえで、CPU装着後にCPU GUARDを装着し、通常であればこの状態でリテンション金具を再装着して使用する。基板とリテンションの間にCPU GUARDが挟まれる格好だ。

基板とリテンションの間に挟む形でCPU GUARDを装着。ただし、CPUの取り外しはこの手順の逆を辿るので、一手間かかることになる

 また、リテンション金具を用いず、そのままリテンション用ネジでCPU GURADを固定した状態では、殻割りした状態で用いるのにちょうどよい厚みとなる。

殻割り状態のCPUへの装着例。リテンションなしの状態から液体窒素用ポットを装着して冷却していた

写真で見るMSI本社ラボ

 ここからは本社内ツアーを写真で紹介していこう。

ノートPC部門のデザインスタジオ
プロダクトデザインのフローが飾られていた
何か風のデザイン。CES2016で発表された○のベースデザイン!?
ストリーミング放送もできるというスタジオ
動作音はもちろん温度湿度や電波/電磁波、静電気など、いくつものチャンバーや暗室が備わっている。なお、電波系の暗室は地下駐車場の片隅という少々寂しい場所にあるが、これは環境ノイズが少ないからだとか。
先ほどのCPU GUARDの説明時に訪れたOCラボ。比較的こぢんまりとした空間だが、機材は豊富で、10台以上のシステムが置かれていた
テストの風景と検証机の上を。CPUやメモリはとにかく豊富。こうしてCPU・メモリのサポートリストが作られていくわけだ

石川 ひさよし