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テレワーク/リモート学習のため(を名目に)PCを自作するぞ! 予算10万円で考えた現在のベストバランスはこれだ!

内蔵GPU活用でCPUは6コア、SSDも最新世代でまとめたら実力も将来性も抜群!! text by 竹内 亮介

CPUの内蔵GPUを利用する低価格PCを作ってみた。予算は10万円!

 昨今の情勢もあり、会社に出社せず自宅で仕事を行なうテレワーク、オンラインで授業/講義を受けるリモート学習の実施を求められている人も少なくないだろう。このとき、自宅で使うPCが古いままだったりすると、書類仕事程度なら大丈夫でもビデオ会議やリモート学習にはスペックが足りず、満足な環境にはほど遠いということもありえる。またそうした古いPCでは、ゲームや高解像度動画などのエンターテインメント系のコンテンツを楽しむにも不満を感じるようになっているはずだ。

 これも一つのよいきっかけだ。テレワーク/リモート学習のために(ということを言い訳にして!?)PCを新しく作ってみるのはいかがだろうか。なにしろ「仕事のため」、「勉強のため」なのだから、反対される可能性も低い(誰からとは言わないが……分かりますよね)。今回は、OSなしで10万円以内の予算を想定したスタンダードなPCを作ってみたい。今こそがんばろう、PC自作をしてみたいサラリーマン、学生のみなさん!

Rocket LakeのCore i5-11400をベースにパーツをチョイス

 実際にパーツを選択する上で問題になったのは、最近のPCパーツは一昔前と比べると明らかに上昇傾向にあることだ。こうした傾向がとくに目立つのがビデオカードで、最新世代のミドルレンジ製品であっても何と10万円コースとなってしまう。

 さすがにビデオカードだけにそこまで予算を振り分けるわけにはいかないし、そもそもここまで割高の状況でビデオカードを購入するのは得策ではない。というわけで、今回は「ひとまずはCPU内蔵GPUを利用していずれはビデオカードをゲットする」というプランとした。どうしても今必要ならビデオカードを足すもよし、ガマンできるならもう少しだけ状況が落ち着いてから買い足せばよいのだ。こうした自由度の高さは、自作PCのメリットの一つである。

【パーツ構成……合計金額95,000円】
カテゴリー製品名実売価格
CPUIntel Core i5-11400(6コア12スレッド)25,000円前後
MBASUSTeK PRIME B560M-A(Intel B560)14,000円前後
メモリMicron Crucial CT2K8G4DFS832A
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
11,000円前後
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe
WDS100T1X0E
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
25,000円前後
PCケースCooler Master MasterBox MB400L With Odd
MCB-B400L-KG5N-S00(microATX)
6,500円前後
電源ユニットFSP HEXA 85+ 650W
(650W、80PLUS Bronze)
6,000円前後
CPUクーラーCooler Master Hyper 212 EVO V2
RR-2V2E-18PK-R1(12cm×1、サイドフロー)
5,000円前後
光学ドライブASUSTeK DRW-24D5MT
(DVDスーパーマルチ)
2,500円前後
CPUはIntel「Core i5-11400」。GPUを内蔵するのがポイントだ。実売価格は25,000円前後

 PCの要となるCPUは、Intelの「Core i5-11400」を選んだ。Rocket Lakeアーキテクチャを採用した第11世代CoreシリーズのCPUで、6コア12スレッドに対応して動作クロックは2.6GHz、Turbo Boost時は4.4GHzまでアップする。書類作成や資料の閲覧、ビデオ会議などテレワークでよく行なわれる作業なら、十分以上に対応できる。

 またこの世代のCore i5では内蔵GPUが刷新されており、グラフィックス描画性能が大きく向上している。軽めのゲーム、たとえば描画が軽いアクションや、ターン制のシミュレーションゲーム、リアルタイム操作のない箱庭育成モノ、カードゲームなどのテーブルゲーム系などであれば、解像度やグラフィックスの設定を調整すればプレイ可能なものも多い。

 同じ6コア12スレッドの選択肢としては、AMDの「Ryzen 5 5600X」という選択肢があるが、こちらは内蔵GPUを搭載していないのでビデオカードが必須。価格も41,000円前後と高い。こうしたことを踏まえると、今回のような低価格プランだとIntelのCore i5-11400は非常に強力な選択肢となる。

マザーボードはASUSTeKの普及モデル「PRIME B560M-A」をチョイス。実売価格は14,000円前後

 マザーボードはASUSTeKの「PRIME B560M-A」だ。チップセットにはIntel B560を搭載し、位置付けとしては下位モデルに近い製品だ。しかし消費電力の大きい第11世代Coreシリーズを安定してドライブできる高品質な電源回路や、PCI Express対応のNVMe対応SSDを組み込めるM.2スロットを2基装備する。

 ステンレスのカバーで覆われたPCI Express拡張スロットにも注目したい。高性能だが重くて大きなビデオカードを組み込んでも、カードが歪んだりしないようにしっかりと支えるためのものだ。このほかUSB 3.2 Gen 2x1対応で10Gbpsの帯域に対応するType-Cコネクタを装備するなど、拡張性も充実している。

Western Digitalの「WD_Black SN850 NVMe WDS100T1X0E」。実売価格は25,000円前後

 SSDは、Core i5-11400+B560チップセット搭載マザーボードがPCI Express 4.0に対応したことを受け、ハイレベルな製品を投入。Western Digitalの「WD_Black SN850 NVMe WDS100T1X0E」だ。容量は1TBで、PCI Express 4.0 x4に対応するNVMe対応SSDである。シーケンシャルリードは何と7GB/s、シーケンシャルライトも5.3GB/sに達しており、Windows 10やアプリ、ゲームの使用感アップに貢献してくれる。

 マザーボードのPRIME B560M-Aでは、CPUソケットに近い位置に装備するM.2スロットがPCI Express 4.0 x4に対応しており、このSSDの性能を100%引き出せる。また冷却性能を高めるためのヒートシンクもあるので、SSDが搭載するコントローラの温度が上昇し過ぎてリード/ライト性能が低下する状況にも陥りにくい。

メモリはMicronの「Crucial CT2K8G4DFS832A」。実売価格は11,000円前後
Cooler Masterの「Hyper 212 EVO V2 RR-2V2E-18PK-R1」。実売価格は5,000円前後

 メモリはMicronのPC4-25600対応メモリ「Crucial CT2K8G4DFS832A」。8GBモジュールの2枚組パッケージだ。CPUクーラーはCooler Masterの「Hyper 212 EVO V2 RR-2V2E-18PK-R1」、やや細身のヒートシンクに、12cm角ファンを組み合わせたサイドフロータイプのCPUクーラーだ。

PCケースはマザーに合わせてmicroATXの「MasterBox MB400L With Odd」、電源は将来性も考慮して650Wの「HEXA 85+ 650W」を選択。さらにあらゆるメディアに対応できるよう光学ドライブ「DRW-24D5MT」も追加した

 このほかPCケースはCooler MasterのmicroATX対応モデル「MasterBox MB400L With Odd MCB-B400L-KG5N-S00」、電源ユニットはFPSの650Wモデル「HEXA 85+ 650W」を選択した。ビデオカードなしのPCなら、もっとコンパクトなPCケースにもっと出力の小さい電源でもよいのでは?という意見もあると思うが、将来的なパーツの追加・交換を考慮して、耐用年数が長くなるこれらの2つについては、スペックに余裕があるものを選択した。

また、光学ドライブを組み込めるタイプのPCケースなので、ASUSTeKのDVD Multiドライブ「DRW-24D5MT」も組み込んでいる。一般的にはCDやDVDなどの光学メディアを使う機会は減っているが、セキュリティの都合などでオンラインではなく光学メディアを使って資料をやり取りする機会がゼロになったわけでもない。そうした場合でも、今回の自作PCなら問題なく対応できる。

3基のディスプレイ出力端子は、いずれも4K解像度と60Hzのリフレッシュレートに対応

 microATXプラットフォームをベースにパーツを選択したため、一般的なミドルタワーケースよりもコンパクトで、置き場所に困らない。搭載するディスプレイ出力端子は、DisplayPortが1基、HDMIが2基という構成。

 今回のようにCore i5-11400と組み合わせる場合、いずれの端子も4K解像度でリフレッシュレート60Hzの出力に対応する。机の上にディスプレイが2台というのは大げさに思えるかもしれないが、作業スペースが単純に広がる、ディスプレイごとに作業を振り分ける(こっちは文書作り、こっちは資料閲覧)、などのメリットは非常に大きい。場合によっては、CPUやSSDを強化するよりも作業効率が上がるなんてこともあり得る。スペースが許すならぜひお試しを。

組み立て終わったPCを左側面から見たところ。ケーブル類を裏面に整理しているので、内部はスッキリ。大型ビデオカードを増設する余地もある

CPU内蔵GPUでもテレワーク系の作業は余裕

 実際にWindows 10をインストールし、Webサイトの閲覧や書類作成といった軽作業を行なったところ、画面の切り換えやウィンドウのスクロール、移動などは非常にスムーズでまったく問題はない。またビデオ会議ツールの「Teams」や「ZOOM」を利用中のCPU負荷率はおおむね10~15%。ビデオ会議中の背景を合成する機能を使ってもほとんど影響はなかった。

 より定量的にPCの性能を評価するため、ベンチマークアプリを使って性能を測定してみる。今回試用するのは、日常的によく利用されるアプリの実行性能を計測する「PCMark 10」。PCの基本性能からゲーム性能まで幅広く測定できる「Extended」テストを使用している。

 PCMark 10は、アプリ起動やWebブラウズ、ビデオ会議などPCの基本性能に近い能力を測定する“Essentials”、Microsoft Officeのようなビジネスアプリの性能を図る“Productivity”、写真/映像コンテンツの制作に関する性能を測る“Digital Content Creation(DCC)”、3Dゲーム性能を測定する“Gaming”の4系統のテストで構成される。下記のグラフのうち“Extended”は4系統のテストの結果を評価した総合成績だ。

PCMark 10の計測結果

 総合成績は3,694、以下4系統の結果はそれぞれ上記のとおり。大まかな目安だが、PCMark 10の開発元によると、Essentialsは4,100以上、Productivityは4,500以上、DCCは3,450以上あれば“快適”な使い勝手だという。冒頭に述べた操作感の印象のとおり、テレワーク/リモート学習用途としては十分以上の性能のPCと判断していいだろう。

 さらにもう一方踏み込んで、同じPCMark 10の機能の一つで、実際のMicrosoft OfficeおよびMicrosoft Edgeを利用して性能評価を行なう「PCMark 10 Applications」も試してみた。こちらは比較対象として、“かつて自作PCを作った人が更新せずに長く使っている”かもしれない約10年前の旧世代(テレワークで再利用できるかもと考えた人も少なからずいるのでは?)のスコアも用意した。

PCMark 10 Applicationsの計測結果

 今回作成したPCの総合スコアは12,804。旧世代のPCのスコアを倍以上上回っており、その性能差は歴然だ。アプリ単体で見ると、ExcelやPowerPointの伸びも強烈だが、一見「古いPCで使っても大差ないのでは」と思いがちなWebブラウザ(Edge)でもほぼ倍のスコアになっている。やはり、あまりに古いPCを使い続けるのは、経年劣化による故障リスクもあるうえ、性能面でも現実的ではないのだ。

 また今回は、PCI Express 4.0 x4対応の高速SSDを組み合わせている。CPUやマザーボードの価格からすると、SSDにはずいぶん予算をかけたが、ストレージはWindows 10やアプリの起動、操作性や応答性に強く影響する重要なパーツであり、データを保存するスペースでもある。高速かつある程度の容量を確保することで、使い勝手を最優先したためだ。

CrystalDiskMarkの計測結果

 CrystalDiskMark 8.0.2でリード/ライト性能を計測してみたところ、性能はほぼスペック通りだった。低価格なマザーボードなので若干不安を感じるユーザーもいるかもしれないが、PCI Express 4.0 x4対応のM.2スロットを搭載しているマザーボードなら、こうした高性能なSSDの性能も100%引き出せる。

 自作PCにおいて、パーツの組み合わせの再検討や将来の拡張は醍醐味の一つ。中でもストレージの構成は、予算にも使い勝手にも影響が大きい代表的な検討ポイントだ。ここで少し、別のプランも検討してみよう。

WD_BLACKより2ランク下のWD Blue。1TBで1万円台半ばという価格で大人気

 今回最初に想定したテレワークなど一般的なビジネス用途なら、実は容量は500GBでも十分と言えば十分だ。ただ、たくさんの音楽データや動画データを保存したり、PCゲームを何本もインストールしたいという場合には手狭ではある。

 そのため今回は1TBのSSDをチョイスしたのだが、WD_BLACK SN850はハイエンドモデルなので少々お高めだ。そこで、たとえば同じWestern Digitalでも、PCI Express 3.0 x4対応の「WD Blue SN550 NVMe WDS100T2B0C」なら、リード/ライト性能は落ちるが、実売価格は14,000円前後とぐっとお手頃になる。

2基のM.2スロットを搭載しているため、データ用のドライブとしてもM.2対応SSDを選択できる
HDD版のWD Blue。6TBでも12,000円前後と容量単価はSSDに比べ圧倒的

 また、PRIME B560M-AではM.2スロットを2基装備しているので、OSや主要アプリをインストールするシステムドライブはWD_BLACK SN850の500GBモデルにして、サブのストレージとしてWD Blue SN550を追加し、データ保存やゲームのインストール先として利用するのもよいだろう(予算は29,000円前後とちょっと増だが、総容量は500GB増える)。

 写真や動画をたくさん保管したいということなら、SSDではなく、容量単価がSSDよりもはるかに安いHDDを2台目のドライブとして追加するという方法もある。HDD用のシャドーベイは空いているし、マザーボードにはSerial ATAポートが搭載されているので、増設は容易だ。

先々のパワーアップを見越した初期のパーツ選びで長く自作PCと付き合う

 最後に、エンタメ的用途への対応をちょっと考えてみよう。

 テレワーク用のPCというだけではなく、やはりPCゲームも含めたエンターテイメントをPCで楽しみたいということであれば、ビデオカードの増設はやはり考えるべきところだ。今回使用したCPU、Core i5-11400は新世代の内蔵GPUを搭載しており、これまでの内蔵GPUと比べれば約1.4~1.5倍の描画性能を実現していると言う。しかし、実際に3Dグラフィックスをバリバリ用いたゲームが快適に動くかというと、それはなかなか難しいところ。

PCMark 10の“Gaming”の項目のサブスコア。テスト中のフレームレートを見てみると、GPU性能が影響する“Graphics score”と“Combined score”が低い。逆に、ほぼCPU性能のみが影響する“Physics score”は基準の60fps超え。つまり、GPUさえ強化すれば、本機は充実したゲーム性能をゲットできる、ということが分かる

 PCゲームの“快適さ”はフレームレートが60fps前後で安定していることが重要とされる。しかし、先ほど紹介したベンチマークテスト、PCMark 10 Extendedの“Gaming”の項目の詳細結果を見てみると、テスト中のフレームレートは8~10fps前後と厳しいものだった。実際のゲームでは、解像度を下げる、画質設定を最低限にする、などの調整を行なえばもう少しフレームレートは出る場合もあるが、超美麗映像が話題の大作、などといった作品となると快適に遊ぶのは難しい。そこで検討すべきものがビデオカードとなるのだ。今回のパーツ構成なら、ミドルレンジからアッパーミドルくらいのGPUが追加可能だ。

NVIDIAやAMDが推奨する電源出力に基づくと、GeForce RTX 3070やRadeon RX 6700 XTといったアッパーミドルレンジまでのビデオカードが本機に追加可能

 ビデオカードは消費電力が大きい拡張カードなので、使用する電源ユニットの出力によって使用できる製品がある程度決まってくる。たとえば今回組み込んだ650Wの電源ユニットの場合は、NVIDIAのGeForce RTX 3060/3060 Ti/3070、AMDのRadeon RX 6700 XT/6800を搭載するビデオカードが推奨ラインなので、かなりパフォーマンスの高いカードが使用可能。もちろんこれを見越して電源ユニットを選んでいるかだ。PCケースも内部に余裕があるタイプで、長さ34.4cmまでのビデオカードに対応する。このクラスのGPUを搭載するカードであれば、問題なく組み込める。逆に、初期の段階で電源ユニットなどをケチるとここでつまずくことになるのだ。

 現在ビデオカード市場は、過去にないレベルの品薄と高騰ぶり。予算が限られたPC自作ということであれば、いずれ市場が落ち着きを取り戻したときに改めてビデオカードの検討を行なったほうがいいだろう。ただそうであったとしても、電源ユニットやPCケースは、今の段階で将来的なパーツの増設を考慮したチョイスにしたほうがムダなく、長期間使用できるのでオススメだ。

 ともあれ10万円以内という価格ながらも、テレワークへの備えや各種エンターテインメントコンテンツへの対応も十分で、バランスのよいPCに仕上がったように思う。限られた予算であっても拡張性が高く、長く付き合っていけるPCは作れるので、今回の構成をベースに、パーツを足したり交換したりする“自作PCならではの使い方”も楽しんでいただけるだろう。仕事に余暇に有効活用できる一台になっているので、こちらをベースに自作したり、自分でスペックをカスタマイズしてみたりしていただきたい。

[提供:ASUS JAPAN]