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検証!最強Z690搭載Mini-ITXマザーは強大な消費電力のCore i9-12900Kをどこまで駆動できるのか?
極小サイズに最新トレンドを詰め込んだROG STRIX Z690-I GAMING WIFIを試す text by 石川 ひさよし
- 提供:
- ASUS JAPAN
2021年12月1日 00:00
ここ日本においてコンパクトなPCを求めるニーズは高いのだが、ただ小さいのではなく最新&高性能のコンパクトPCを望む方も多い。そうしたユーザー向けのマザーボードフォームファクター規格がMini-ITXだ。ASUSTeKから登場した「ROG STRIX Z690-I GAMING WIFI」は、最新のIntel 第12世代Coreをサポートしつつ、その性能を引き出すメモリ、ROG STRIXシリーズならではの高品質、最新の高速インターフェースを搭載している。最強コンパクトPCを目指す方にとって注目すべき1枚だろう。
シビアな電力にDDR5メモリ。高品質部品と設計技術、アイディアでクリア
そもそもATXと比べてMini-ITXは小さい。その上で第12世代CoreのMini-ITXマザーボードには三つの課題がのしかかる。一つは従来よりも面積を増したLGA1700ソケットによる面積の圧迫、二つ目は電力要求がさらに高まり電源回路の性能が求められること、三つ目はDDR5やPCI Express 5.0といった高速インターフェースによりノイズ対策も従来以上に求められることだ。
加えて、ROG STRIXシリーズの本製品は、より上位のCPUと組み合わせたいと望む方が多いだろう。ここで触れておきたいのが、ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIは最上位のIntel Core i9-12900Kが問題なく利用可能ということ。これは同製品のCPUサポートリストに記載があるだけでなく、今回実際に検証を行なってみてはっきり分かった。前世代からの部品類の強化、Mini-ITXというサイズとの絶妙なバランス感により、非常に高い完成度に達している。
まずはCPU電源回路から見ていこう。ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIのCPU電源回路は10+1フェーズ。フェーズ数で言えば前世代のROG STRIX Z590-I GAMING WIFIと同じだが、異なるのはそこに採用されている部品だ。PWMコントローラはルネサスの「RAA229131」。20フェーズクラスのモデルにも採用されているチップだ。そしてMOSFETはルネサスの「RAA220105」。105A対応のSmart Power Stageで、前世代モデルが採用していたTexas Instruments製NexFET CSD95410の90Aからサポートする電力の最大値が引き上げられている。このRAA229131とRAA220105の組み合わせはIntel Z690マザーボードで多く見られるもので信頼できるものだ。
ただしCPU電源端子は8ピンのEPS12Vが1基だ。Mini-ITXマザーボードではそもそも端子を置くスペースがないため、これまでの世代のハイエンドモデルでもEPS12V×1基であることが一般的。これが意味するとことは、EPS12V×1基でもCore i9-12900Kの電力供給はまかなえるという点である。常時高OCで使うほどのマージンはほとんど残されていないと思われるが、多くの方が望む定格での安定性、性能については問題ないと考えてよいだろう。
続いてCPU電源回路の冷却について見ていこう。VRMヒートシンクは2ピースのブロックから構成されており、ヒートパイプで結ばれている。CPUソケット左側のヒートシンクはバックパネルに続くカバー部分までアルミブロックでできており、Mini-ITXで搭載できる最大スペースと言えるだろう。裏側にも小さなヒートシンクと小径ファンを配置し、冷却性能を高めている。
チップセットヒートシンクとM.2ヒートシンクも見ておこう。ここにもASUSTeKの工夫が見られるところだ。まずASUSTeKのMini-ITXマザーボードでは以前よりチップセット直上にM.2スロットやオーディオ基板をスタックする独自のレイアウトを採用してきた。これはROG STRIX Z690-I GAMING WIFIにも受け継がれている。ただしCPUソケットがLGA1700になって縦長になったため、この部分もややスリムになっている。また、従来はマザーボード裏面にあった2番目のM.2スロットがこの部分に移動、結果なんと3段構造になっており、高さはVRMヒートシンク部を超えている。
3段構造を詳細に見ていこう。まず最下層はチップセットとそのヒートシンクだ。次の層はM.2(チップセット接続側)とオーディオ、各種端子を載せた基板。マザーボードとはコネクタで結ばれている。これに続く層がCPU接続側のM.2用基板でマザーボードとはライザーケーブルで接続される。M.2スロットは表裏両面にサーマルパッドが用意され、各層にわずかな隙間を設けることで放熱を行なう仕組だ。さらに表層にヒートシンクが載るといった構造だ。
二つのM.2スロットはともにPCI Express 4.0 x4に対応している(チップセット接続側はSerial ATA 3.0にも対応する)。とはいえ各層にはわずかな隙間がある程度なので、発熱の大きい高速M.2 SSDを2枚搭載した際、サーマルスロットリングなしに利用できるかどうかは冷却スキルにかかっている。この形状を考えると、理想的なのはトップフロー型CPUクーラーとの組み合わせだろう。昨今では簡易水冷CPUクーラーにもヘッド・ポンプ部に小径ファンを搭載したものもある。
なお、Serial ATA 3.0ポートについてもROG STRIX Z690-I GAMING WIFIはユニークな実装方法を用いている。Mini-ITXマザーボードにとってはSerial ATA 3.0ポートも比較的大きなスペースを要するパーツだが拡張性を求める方にとってはたくさん搭載していてほしいもの。ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIでは、Serial ATA 3.0ポート×4、フロント端子ヘッダ、スピーカーヘッダ、LEDヘッダをまとめてサブ基板化し、マザーボードに対して垂直にレイアウトする方法でスペース問題を解決している。
そしてメモリと拡張スロットにも触れておこう。PCI Express 5.0 x16スロットは当然として、ハイエンド志向の方は既存のDDR4メモリよりも次世代のDDR5メモリを望むだろう。ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIもDDR5メモリを採用している。PCI Express 5.0 x16スロットとDDR5メモリスロットがSMT(表面実装)で補強付きであるのはほかの製品と同様。
Thunderbolt 4も搭載。拡張性に夢が広がる
バックパネルで注目は2.5GbE LAN端子とWi-Fi 6E用アンテナ端子、そして二つのThunderbolt 4端子だ。前二つは言うまでもなく前世代からミドルレンジ以上では標準となりつつある高速ネットワーク規格だ。
そしてThunderbolt 4はクリエイティブユーザーにとってはなじみのある高速のデータ転送用インターフェースであるとともに、ドックや高速の外付けSSDなどさまざまな外部周辺機器を接続できるものである。Mini-ITXというサイズの不利はあるものの、拡張性の面ではかなりの充実ぶりだ。
なお、基板上にはCypress SemiconductorのUSB Power Deliveryコントローラ「CYPD6227」も搭載されていた。ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIのスペックを見ると、Thunderbolt 4端子が最大5V×3Aの給電をサポートしているとあるので、これに利用されていると思われる。
オーディオチップはRealtek「ALC4080」を採用し、アンプにSavitech「SV3H712」、コンデンサにニチコン製オーディオグレード品といったハードウェア構成。これに加えてソフトウェアでDTS Sound UnboundとSonic Studio IIIを装備している。
Core i9-12900Kでもノープロブレム。存分にハイエンドにチャレンジできる
ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIを実用PCとして組む場合、とくにコンパクトなケースを組み合わせる場合には、CPUやGPU、SSDなどすべてを最上位にするのではなく、サイズ感と冷却などを考慮してバランスを取るほうが自然な流れではあるだろう。とはいえ今回は、本機のマザーボードとしての仕上がりが、最上位CPUやハイエンドGPUを組み合わせて利用するにも遜色がないのか、というところを見ていきたい。
使用機材はROG STRIX Z690-I GAMING WIFIをベースに、第12世代Coreの最上位であるCore i9-12900K、その冷却にASUS ROG Ryujin II 360を組み合わせた。バラック状態だがRyujin II 360には水冷ヘッド部に小径ファンが搭載されており、VRMにはそのエアフローが当たる状態だ。また、システム全体の性能も引き上げるため、ビデオカードにはNVIDIA GeForce RTX 3070 Ti Founders Editionを組み合わせている。なお、メモリはDDR5-4800モジュールを8GB×2枚構成で使用した。
それではベンチマークを見ていこう。まずは定番のPCMark 10やProcyon、CINEBENCH R23から。OSはいずれもWindows 11を使用した。
ここまでのベンチマークで、Core i9-12900Kのブーストに対してもROG STRIX Z690-I GAMING WIFIは問題なくパフォーマンスを引き出せていることが分かるだろう。
なお、PCMark 10もProcyonも比較的長時間のベンチマークだが、CPU負荷率がさらに高いベンチマークの長時間動作はどうだろうか。CINEBENCHH R23のテストを連続実行し、VRM温度やCPUクロックを計測してみた。
ログ機能の間隔はCPUのクロック変動制御ほど短時間ではないため正確性はそれなりでしかないが、Multi CoreテストのCPUクロックはPコアでおおむね4.9GHzを維持できており、落ち込むシーンは見られなかった。一方VRM温度も時間経過とともに上昇するが60℃以下に抑えられていた。Single Core側はベンチマーク中のCPUクロックが4.9GHz~5.1GHzで推移しており、一方VRM温度はベンチマーク中も45~46℃を行き来する程度だ。また、どちらもサーマルスロットリングのフラグは計測中を通じて1回も立たなかった。
GeForce RTX 3070 Tiとの組み合わせでの3DMarkのOverallも見ていこう。Fire Strikeは33916ポイント、Time Spyは14945ポイントだった。GeForce RTX 3070 Tiとの組み合わせならWQHD超の解像度、高画質設定でも十分なフレームレートを得られる快適なゲーミングPCが手に入れられるだろう。
最後に、ストレージベンチマーク時のM.2 SSDの温度と同じ場所のチップセット温度を見てみたい。室温25℃での計測で、用いたベンチマークはPCMark 10のStorage Benchmarkで、Full System Drive Benchmarkとした。
グラフのとおり、M.2 SSDは最大61℃、チップセットは最大64℃と、ATXマザーに比べるとやや高めではあるものの性能に影響が出るレベルではない。トップフローであればM.2タワー部分にもエアフローが届き、危険域までは温度上昇せずといったところだ。ただし今回はバラック状態で計測している。実際に組み込む際はケース内の空気がスムーズに循環できるよう念入りに検討したい。また、速度が必要なシステム用にはPCI Express 4.0のもの、データ保存用には発熱の小さいPCI Express 3.0のものやSerial ATA 3.0のもの、といったようにムリのないストレージの組み合わせも考えたい。
目指せリトル・モンスターPC!ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIはASUSからの挑戦状
ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIは第12世代Core、Intel Z690チップセットで実現可能な最新インターフェースをサポートするとともに、Core i9-12900Kとの組み合わせでもその性能を存分に引き出せており、小さいことが基本的な性能面でのマイナスになっている様子はテストの範囲では見られなかった。Thunderbolt 4のように、ハイエンドユーザー向けでMini-ITXの拡張性を補うインターフェースも搭載しているなど、小さいからと言って妥協もない。
価格について触れておこう。Mini-ITXマザーボード自体がATXの同クラス品と比べて高価だが、Intel Z690では技術的、部品的にも価格が上がっている。本製品はROG STRIXシリーズとして機能も一つ上を実現しているために実売価格は60,000円前後となっている。ただ、そもそもコストパフォーマンスを目指す製品ではなく、自作PCの中でもとくに趣味性の高いモデル。基本装備、基本性能は十分、あとはMini-ITXというサイズ感をいかに活かすか、というプランニングがキモになってくる。小さなPCでどこまで性能を高められるのか、ROG STRIX Z690-I GAMING WIFIは非常に挑戦的なマザーボードと言えるだろう。