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Z690マザーは高過ぎる? だったらリッチ仕様のB660マザーボードで決まり!
Core i5-12600KをASUS ROG STRIX B660-F GAMING WIFIでテスト text by 石川 ひさよし
- 提供:
- ASUS JAPAN
2022年2月10日 00:00
高性能で注目を集めるAlder LakeことIntel 第12世代Coreシリーズ。一方で組み合わせるZ690マザーボードが高い、と嘆く声をよく聞く。とくに4万円前半から購入できるCore i7以下のモデルはコスパの高さが魅力だけに、Z690マザーボードの中心価格帯が4万円~5万円台という状況に躊躇してしまうのは無理もない。最安クラスのZ690マザーならもう少し安いが、機能、デザイン共にシンプルすぎて物足りない、そんなところだろうか。
そこで注目していただきたいのが、1月に登場したZ690の弟分、B660チップセットを採用しながら、リッチな仕様としたマザーボード。価格を抑えつつ、イマドキの自作PCに盛り込みたい重厚な電源回路や最新インターフェースを網羅した“現実解”だ。
今回紹介するのはASUSTeKの「ROG STRIX B660-F GAMING WIFI」。Intel B660だがROG STRIXシリーズの流れを汲むハイグレード仕様で、Core i7やCore i5との組み合わせに適したモデルだ。。
ミドル~エントリー向きチップセット採用ながら、仕様はリッチな“ROG STRIX”
チップセットの位置付けや機能・仕様を考えると、“H/B型番チップセット搭載マザー=価格が第一”と見るのが一般的。ただ、リッチな仕様を誇る製品が多いゲーミングマザーというくくりで見ると、3万円台半ばのROG STRIX B660-F GAMING WIFIでも比較的低コストなモデルと言える。
たとえば、ビデオカード1枚、ほかの拡張カードも少なめのベーシックなゲーミングPCを作るのなら、B660チップセットで必要な機能をほぼカバーできる。また、ROG STRIXの名を冠するゲーミングモデルだけあって電源回路の設計は強力で、Z690チップセット採用のスタンダード~エントリーモデルの仕様を上回る。ROG STRIX B660-F GAMING WIFIは、必要な仕様と機能を絞り込んでコストを抑えつつも足回りの安心感・安定感をしっかり確保したいという実用性重視の人向き、と考えられる。
それではROG STRIX B660-F GAMING WIFIを見てみよう。まずはデザイン。Intel Z690版ROG STRIXのROG STRIX Z690-F GAMING WIFIと比べると、ヒートシンクはややシンプル化されているもののデザインコンセプトは同じだ。PCB基板やヒートシンクはブラックで統一され、角度で色味が変わるROGロゴやマーク、白いレタリングがアクセントになっている。
メモリは4スロット。コスト重視のDDR4ではなく、先進的なDDR5仕様だ。拡張スロットはx16スロットが2基、x1スロットが1基。最上段、金属カバー付きのx16スロットはCPU接続のPCI Express 5.0対応16レーンで、もう1本のx16スロットはチップセット接続のPCI Express 3.0対応で最大4レーン。x1スロットは2本ともにチップセット接続のPCI Express 3.0対応1レーン。ただし2本目のx16スロットで最大4レーンと記載したとおり、チップセット接続側のx16、x1スロットはトータルで最大4レーンという扱いだ。2本目のx16スロットのみ利用すれば4レーン動作だが、1本でもx1スロットを利用すると2レーンに制限される。
ここでIntel Z690とB660の機能の違いを説明しておこう。この2つのチップセットでは、CPUの倍率変更OCの対応可否やPCI Express x16スロットのレーン分割がとくに注目される違いだが、そのほかにCPUとチップセットを接続するバスの帯域幅も異なる。DMI 4.0のレーン数がIntel Z690では8レーン、B660では半分の4レーンといった具合だ。これは、チップセットから先で利用するPCI Expressスロットのレーン数や各インターフェースの数に影響する。
具体的には前述のPCI Expressスロットの使用可能レーン数が最大4レーンという点や、そのほかにもSerial ATA 3.0ポート数が最大4、各種USBもポート数がZ690と比べて少なくなっている。ROG STRIX B660-F GAMING WIFIもSerial ATA 3.0ポートは4基、USBは3.2 Gen2x2 Type-Cが1基、Gen2がType-A×1基、Type-C×1基(ヘッダー)、Gen1がType-A×4基、Type-C×1基、Type-A(ヘッダー)×1基といった具合だ。ただし、よほどストレージを集約したいということでないかぎりSerial ATA 3.0×4ポートで足りるだろうし、USBに関しても十分な数はある。
M.2スロットは3基。CPUに一番近い1番目のスロットがCPU接続で、2、3番はチップセット接続。動作モードは1、2番がPCI Express 4.0 x4で3番はPCI Express 3.0 x4となっている。M.2スロットでのSerial ATA 3.0サポートは言及されていない(Serial ATA 3.0ポートも4基に制限されている)。
そのほか、ネットワークに関しては有線LANが2.5GbEのIntel I225-V、無線LANもWi-Fi 6(Bluetooth v5.2にも対応)を搭載している。無線LAN外部アンテナの台座には磁石が付いてスチールデスクなどに固定しやすいので、設置時の取り回しがよさそうだ。オーディオ機能は同社ROG SupremeFX 7.1。チップ部分はシールドされており見えないが、Realtek「ALC4080」ベースのコーデックとのことだ。加えてSavitech「SV3H712」アンプも搭載している。
普及向けチップセットでも一つ上のグレードの電源回路
ゲーミングモデルとして電源回路に着目していこう。まず電源端子は8+4ピンだ。B660なので倍率変更によるOCはできない。定格駆動を基本としてブースト維持時間を伸ばす方向性で性能をチューニングしてゆくことになる。そして、定格であれば8ピン1基でも十分にまかなえる。4ピンをプラスしているのはピンあたりの負荷を下げる、発熱やその部分での損失を抑えるといった意味合いがある。
Intel B660ということでCPUのPower Limit設定(やデフォルト値)がどのようになっているのか気になる方も多いだろう。今回はチップセットとしてはミドル~エントリークラスのマザーボードということで、テスト用のCPUとしてはハイエンドのCore i9/i7ではなく、Core i5-12600Kを用意したのだが、パフォーマンスにこだわるゲーミングモデルとあってか、Core i5-12600K搭載時のBIOSデフォルトは「4095W(Unlimited)」だった。
しかし、EPS12Vの8ピンのみ接続し、4ピン側を外した状態だと、デフォルト値が202Wに変化。現在のマザーボードでは、このように接続したデバイスやケーブルの種類によってデフォルト値が自動変更されることもあるので、状況によっては注意しておきたい。
電源回路のフェーズ数は16+1。数値だけで見れば、Intel Z690のROG STRIX Z690-F GAMING WIFI(5万円前後)と同じで、Z690搭載の低価格マザーよりも多い。先のとおり定格運用が中心となるため、余裕のあるフェーズ数は負荷分散、発熱の抑制といった方向で恩恵がある。
PWMコントローラは同社Digi+VRMで、刻印は「ASP2100」。MOSFETはCPU用に米Alpha & Omega Semiconductor製のものを用いていた。パートナンバーは「B6N0」だが同社サイト上にはまだ製品情報が掲載されていなかった。ASUSTeKが公開しているスペックによるとローサイドとハイサイドのMOSFETを1パッケージ化したものとのことなので、いわゆるDrMOSと思われる。また、アンコア側の+1フェーズはVishay Siliconixの「SiC643」。Intel Z690で言えばミドルレンジモデルで用いられるグレードの部品といった印象だが、合金チョークや高耐久性コンデンサなどを採用するあたりは、B660採用製品とはいえさすがのROGグレードといったところだ。
VRMの放熱もバッチリ。水冷CPUクーラーならブースト効果も向上
それでは電源を入れ、いくつかベンチマークを実行してみよう。今回用いたのはCINEBENCH R23とPCMark 10、3DMarkだ。CPUは前述のとおりIntel Core i5-12600Kを用いて行なった。メモリはMicronのDDR5-4800メモリ「Crucial 8GB DDR5-4800 UDIMM(CT8G48C40U5)」を2枚(計16GB)、ストレージは同じくMicronの「Crucial P5 Plus 1TB(CT1000P5PSSD8)」、ビデオカードはNVIDIA GeForce RTX 3060 TiのFounders Editionをそれぞれ使用。
なおCPUクーラーは、ミドルレンジCPUとの組み合わせということを考慮し、28cmクラスの簡易水冷CPUクーラーのCorsair「iCUE H115i RGB PRO XT」、空冷ツインタワー型のDeepcool「AK620」を用意したので、冷却能力の差によるパフォーマンスなどの違い、空冷環境での実力なども見てみたい。テストはいずれもバラック状態で行なっており、室温は約23℃台で揃えている。
まずはハードウェア監視ツールを用いてCINEBENCH R23 Multi Core実行中のCPU Package Powerを確認してみた。今回用いたCore i5-12600KではPL1とPL2の値を、Auto(4095W、実質無制限)とした場合でも、150W(CPU定格)とした場合でも、どちらも最大で128W前後を示していた。これは水冷でも空冷でも同様だった。
ただし、Turbo Boostの持続時間はCPUクーラーの冷却性能の高さにより差が出そうだ。その理由が下のグラフ(PLはいずれも無制限)。CINEBENCH R23実行中のログからCPU Package PowerとVRM温度と見られるTEMPIN4の値を抜き出したものだ。一つは28cmクラス簡易水冷クーラー使用時、もう一つは空冷クーラー使用時のもので、見て分かるとおり、CPU Package Power、VRM Temperatureともに簡易水冷使用時のほうが高かった。
CPU Package Powerは序盤で差が大きく徐々に差が小さくなる傾向だが、VRM Temperatureの差は逆に序盤小さく、後半で差が広がっていく。VRM Temperatureは同じ37℃でスタートし、簡易水冷では最大51℃、空冷では最大48℃だった。CPUソケット周辺のエアフローが少ない水冷でもこのVRM温度ということなら、VRM自体は低発熱、VRMヒートシンクも放熱十分と言ってよいだろう。
パフォーマンス面から見た場合、CPU Package Powerの差はCPUクロックの差と見ることができる。水冷時と空冷時のCINEBENCH R23スコアを比較すると、わずかに水冷時のほうがスコアが出ているようだった。
ただしこうした差がついたのはCPU依存の高いCINEBENCH R23のみで、PCMark 10や3DMarkでは、大きな差は見られなかった。計測回数を増やし、平均をとれば空冷よりも水冷、150Wよりも4095Wという結果になる可能性はあるが、かなり条件を揃えてようやく、といったところだろう。
次にPCMark 10と3DMarkの結果をまとめて見てみよう。Core i5-12600K+GeForce RTX 3060 Tiということで、ビジネスからホームユース全般、フルHD~WQHDクラスでのゲームプレイ(タイトルにより要画質調整だが、レイトレも対応)と、幅広く活用できることが分かる。電源周りはしっかりしているので、CPUをCore i9やCore i7に変更することも可能で、そうすればCPU依存の高いテストを中心にスコアが向上するだろう。
ビデオカード価格が高騰している現在、マザーボードでコストを抑え、PCのコスト比率をビデオカードの予算を重視にするのは、以前よりも積極的に考えたいところだろう。その上で、安定性・長寿命というゲームをプレイする上での安心感を得たいなら、ムリをしてIntel Z690を狙わず、ROG STRIX B660-F GAMING WIFIを選択するというプランが見えてくる。
ミドルレンジの枠にとどまらない高いポテンシャルを持つ実力派
おさらいとなるがROG STRIX B660-F GAMING WIFIをベースにPCを組む際のポイントを整理しておこうまずCPUの性能をしっかり引き出すなら、CPU電源端子は8+4ピンの両方を挿したほうが望ましい。この場合、PL設定はデフォルトで無制限となるので、CPUクーラーに合わせて変更しよう。
ゲーミングPCでは冷却も静音性も求められる。Core i5クラス以下のCPUを使うなら空冷CPUクーラーでも十分回せそうだが、Core i5-12600K以上で使うのなら、可能なら簡易水冷以上、空冷ではツインタワークラスのがよいだろう。また、ビデオカード以外の拡張カードは、x1カードであれば3枚まで追加できるが、B660はPCI Expressのレーン数がZ690やH570に比べると少ないので、4Kキャプチャカードのように4レーン動作が求められる場合は1枚のみとなる点には注意。また、USBの数も上位チップセットに比べると少なめだ。
B660チップセット採用ということでROG STRIXの名を持ちつつも価格は抑えめではあるが、その内容は非常に充実した仕上がりだ。“Alder Lakeでちょっとレベル高めの自作PCを、少し予算を抑えめに組んでみたい”という人にもオススメのマザーだが、“目的のはっきりした、スペックの取捨選択がしっかりできる”レベルのハイエンド志向ユーザーでも満足できる、通好みのする1枚とも言える。
もっと価格を抑えた構成にしたい、組み合わせるCPUは下位のCore i5やCore i3を考えているということだと、大規模な電源回路やDDR5対応でコスト高なROG STRIX B660-F GAMING WIFIはちょっとオーバースペック。その場合は、カード類や周辺機器の拡張性を重視するならH670チップセット対応のTUF GAMING H670-PRO WIFI D4(実売価格29,000円前後)やPRIME H670-PLUS D4(同21,000円前後)、B660で十分ならTUF GAMING B660-PLUS WIFI D4(同27,000円前後)やPRIME B660M-A D4(同19,000円前後)も選択肢となるだろう。