トピック

この冬、最新CPU、GPUで高性能マシンを組むなら、SSD強化も忘れるな!

Western Digital WD_BLACK SN850Xで自作PCをパワーアップ! text by 芹澤 正芳

CPUやGPUのパワーアップに目が行きがちだが、ストレージの強化は体感性能への影響がかなり大きい。最強PCを目指すなら強力なSSDの導入は必須の条件と言える

一気にパフォーマンスUP! 2022年の最強PCパーツたち

 2022年の後半は、CPU、GPUとも世代交代が起きた。CPUでは、トップの2陣営がさらなるパフォーマンスアップを実現。とくに、Intelの第13世代Coreでは最上位の「Core i9-13900K」が24コア32スレッドに到達し、メニーコア化が加速した。GPUの分野では、NVIDIAがGeForce RTX 40シリーズを投入し、AMDはRadeon RX 7000シリーズで対抗する構図で火花を散らす。なかでもGeForce RTX 4090のモンスター性能ぶりに衝撃を受けた人も多いだろう。

2022年はハイエンドパーツが驚異の進化を遂げた年となった。IntelのCPUは第13世代Coreになり、マザーボードもZ790が登場、約1年ぶりの刷新となった。NVIDIAのGPUは約2年ぶりにアーキテクチャが更新され、GeForce RTX 40シリーズが新登場。怪物級と言ってよい性能を見せ、話題となっている

 しかし、PCの体感性能やレスポンスに影響の大きいパーツとしては「ストレージ」も忘れてはならない存在だ。いくら最上級のCPUやGPUを揃えてもストレージが足を引っ張ってしまうとしたら実にもったいない。

 OSやアプリ、ゲームのインストール先に利用するメインのストレージには、高速なSSDを選ぶのが常識。最新世代のマザーボードでは、次世代インターフェース規格のPCI Express 5.0 x4に対応したM.2スロットを備えている製品もあるが、対応するSSD製品が登場していない現時点では、PCI Express 4.0 x4接続のM.2 SSDの中から高速な製品をチョイスするのが最適解だ。

 そこで今回は、現役最強の呼び声も高い、Western Digital「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」をピックアップし、その実力や使いこなし方をレポートする。最高クラスのPCパーツを活かせるSSDの性能や正しい運用法をこの機会に確認していただきたい。

Western Digital「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」。読み書きの単純な性能はもちろん、実アプリでの使用感もPCI Express 4.0 x4接続のM.2 SSDとして最速クラス。文句なしに“現役最強”の一つだ
【最強SSDの使いこなし法を動画でチェック!】
性能や使いこなしのポイントを本記事の執筆者芹澤正芳さんが動画で分かりやすく解説!合わせてご覧ください。

最強CPU/GPUには最強SSDで応えたい!

 Western DigitalのSSDのフラグシップモデルであるWD_BLACK SN850X NVMe SSDは、シーケンシャルリードが7,300MB/s、ライトが6,600MB/s(いずれも4TB/2TBモデル時)に到達した、PCI Express 4.0世代のM.2 SSDとして最速クラスの一つだ。

【WD_BLACK SN850Xのラインナップと主な仕様】
型番WDS400T2X0E
-00BCA0
WDS200T2X0E
-00BCA0
WDS100T2X0E
-00BCA0
容量4TB2TB1TB
シーケンシャル
リード
7,300MB/秒
シーケンシャル
ライト
6,600MB/秒6,300MB/秒
ランダムリード1,200K IOPS800K IOPS
ランダムライト1,100K IOPS
TBW2,4001,200600
製品保証5年またはTBW限界(どちらか早いほう)
【WD_BLACK SN850X ヒートシンク付きモデルのラインナップと主な仕様】
型番WDS200T2XHE
-00BCA0
WDS100T2XHE
-00BCA0
容量2TB1TB
シーケンシャル
リード
7,300MB/秒
シーケンシャル
ライト
6,600MB/秒6,300MB/秒
ランダムリード1,200K IOPS800K IOPS
ランダムライト1,100K IOPS
TBW2,4001,200
製品保証5年またはTBW限界(どちらか早いほう)
WD_BLACK SN850Xはヒートシンク付きのモデルも用意。PS5への組み込み要件を満たすサイズで、そのままM.2スロットに増設できる
WD_BLACK SN850X(2TB)のCrystalDiskMark 8.0.4の結果。シーケンシャルはもちろん、ランダム性能においても現役トップクラスだ

 同社では、ゲームプレイ中に頻繁に読み出しが発生してもピークパフォーマンスを維持できるという「ゲーマー向け」の位置付けだが、シーケンシャル性能も実アプリでのレスポンス性能にも優れ、クリエイティブな作業など、あらゆる用途に使える。今回テスト用に用意したCore i9-13900K、Z790のハイエンドマザーボード、GeForce RTX 4090を使った、まさに現役最高クラスの自作PCにふさわしいストレージと言ってよいだろう。

 まずは基本性能をチェックしておこう。比較対象として、PCI Express 3.0世代のエントリーM.2 SSDを用意した。SN850Xはストレージの速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark」では、旧世代に比べてシーケンシャルリードで約2.8倍、ライトで約3.3倍も高速に。ゲームのロードや録画などの処理を行なう「3DMark」のStorage Benchmarkでも約2.2倍もスコア差がある。

CrystalDiskMarkの計測結果(PCI-E 3.0世代のM.2 NVMe SSDとの比較)
3DMark-Storage Benchmarkの計測結果(PCI-E 3.0世代のM.2 NVMe SSDとの比較)
【検証環境】CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 APEX(Intel Z790)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、メモリ:DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro

 SSDは、故障さえなければCPUやマザーを一新した後も流用しやすい。しかし、旧世代のSSDと現役最強の実力差は歴然。CPUやGPUを世代交代する機会に乗り換えれば、PC全体の性能の底上げになるだろう。

システム用SSDの移行はツール活用がオススメ

 さて、SSDを新調する際に手間なのが環境の移行。Western DigitalのSSD製品を導入すると、ストレージのバックアップやクローン作成/環境移行が行なえるアプリ「Acronis True Image WD Edition」が無償で使えるので、これを活用しよう。

 クローン作成では、OSを含めストレージの内容を丸ごと別のストレージに“引っ越し”できる。移行元と移行先を決めてやればあとはほぼ自動で作業を行なってくれる便利なツールだ。旧世代の遅いSSDからの乗り換え、小容量から大容量のSSDに換装するときでも、とくに迷わず作業ができるだろう。

(1)新旧のSSDをPCに接続して、クローン作成を実行すれば、OSやアプリ類を含む「システム丸ごとの新居への引っ越し」が可能。なお、利用にはWestern Digital製SSDの接続が必須
(2)作業はソースディスクに移行元の旧SSDを、ターゲットディスクに移行先の新SSDを指定するだけととてもカンタン。旧SSDよりも新SSDの空き容量のほうが大きい必要がある点には注意

Z790マザーの場合、SN850Xはどこに取り付けるのが正解?

 最近のマザーボードは、M.2 SSDがストレージの主流になったこともあり、複数のM.2スロットを搭載するのが当たり前。ハイエンドマザーでは6基以上備えているものもあるほどだ。

最新マザーボードは多数のM.2スロットを用意しているものも多い。今回テスト用に用意したASUSTeKのROG MAXIMUS Z790 APEXは、かなりとがったチューニングのハイエンド製品なので、マザーボード上のM.2スロットは2基(CPU直結×1、チップセット接続×1)だが、その代わりにM.2スロットが増設できるPCI Expressスロット用拡張カード、ASUSTeK独自の「ROG DIMM.2」拡張カードが付属。いろいろなM.2 NVMe SSDの接続方法を試すにはもってこいの製品
PCI Expressスロット用拡張カード型のM.2増設カード
独自仕様のM.2増設カード

 M.2スロットは、CPU直結のものとチップセット接続のものがあり、対応規格がPCI Express 5.0なのか4.0なのか、という違いもある。さらに、マザーボードによっては、拡張カードで追加のM.2スロットを用意している製品もある。これだけM.2スロットがあると、どのスロットを使えばいいのか迷ってしまう人もいるだろう。実際に違いを試してみた。

CrystalDiskMarkの計測結果(接続先の違いによる性能比較)
3DMark-Storage Benchmarkの計測結果(接続先の違いによる性能比較)
【検証環境】CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 APEX(Intel Z790)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、メモリ:DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro

 CrystalDiskMarkによる計測では、シーケンシャル性能はほとんど変わらなかったが、チップセット経由だとランダム性能が若干落ちるのを確認。チップセットを経由することで遅延が発生していると推測される。その影響か、3DMarkでは大きなスコア差が見られた。SN850Xの性能を最大限引き出すなら、CPU直結のM.2スロットに装着するのがベストだ。

1TBモデルと2TBモデル、今買うならどっち?

 SN850Xは、1TB/2TB/4TBがラインナップされている。4TBはちょっとお高いので、多くのユーザーは1TBか2TBで悩むだろう。性能面では、次のグラフを見て分かるとおり、1TB版は2TB版に比べてシーケンシャルライトが若干遅くなる。しかし、ランダム性能はほとんど変わらないので体感で差はないと言ってよいだろう。

CrystalDiskMarkの計測結果(2TBモデルと1TBモデルの速度比較)
【検証環境】CPU:Intel Core i5-11600K(6コア12スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI(Intel Z590)、メモリ:DDR4-3200 32GB(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro
【WD_BLACK SN850Xの秋葉原最安値】
1TBモデル2TBモデル
10月調査時22,000円前後44,000円前後
11月調査時19,000円前後38,500円前後
12月調査時18,300円前後35,500円前後

 価格面では2TB版は値下がりがとくに進んでおり、12月時点では1GBあたりの単価が1TB版を下回った。コストパフォーマンスで選ぶなら2TB版に分があるが、最終的には予算しだいでジャッジしてもよいだろう。

高速SSDの発熱を再確認しておこう

 M.2 SSDは、小型で超高速データ転送が可能なだけに発熱が大きくなりやすいのはご存じのとおり。そのため、現在のマザーボードにはM.2スロットにSSD冷却用のヒートシンクを搭載していることが多い。

テストに使ったマザーボードのM.2スロットにも大型のヒートシンクが装備されている。高速なM.2 NVMe SSDにはヒートシンクは必須装備と言ってよい

 CPU直結のM.2スロットにヒートシンクあり、なしで連続書き込みしたときの温度と転送速度の変化を見てみよう。ヒートシンクなしの場合、温度が90℃に達すると温度を下げるために転送速度を落とす、という動きが頻繁に繰り返される。一方、ヒートシンクありだと温度は最大でも59℃ほどに抑えられる。速度もほぼ一定であり、パフォーマンスに不安はないと言っていいだろう。

ヒートシンクなしでのSSD温度/速度の推移。温度を抑制するため速度が乱高下
ヒートシンク使用時のSSD温度/速度の推移。温度も低く、速度は安定している
【検証環境】CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 APEX(Intel Z790)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、メモリ:DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro、SSD温度と速度の計測方法:TxBENCHでシーケンシャルライトを10分間実行したときのSSDの温度と速度を「HWiNFO Pro」で計測

 次に、CPU直結とチップセット接続の各M.2スロットで連続書き込みした場合の“チップセット温度”も追った。チップセット接続時はチップセットの負荷が増え、温度も上昇するのでは、と予測はしていたのだが、結果は想定どおりテスト後半ほど若干温度が高め。しかし、チップセット用ヒートシンクの効果もあってか、心配するような差ではなかった。

M.2スロット別のチップセット温度の推移。チップセットに接続したほうが若干高い
【検証環境】CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 APEX(Intel Z790)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、メモリ:DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro、計測方法:TxBENCHでシーケンシャルライトを10分間実行したときのSSDの温度を「HWiNFO Pro」で計測

 また、チップセット接続のM.2スロットはビデオカードの直下になるため熱がこもってしまうかもという不安もあったのだが、今回の環境はPCケース内のエアフローがしっかりしていたため問題になるような違いはなかった。

CPU直結のM.2スロット(写真左)は遮蔽物が少ないのでしっかり冷えるが、ビデオカード直下のM.2スロット(写真右)も、エアフローさえしっかりしていれば問題はなさそうだ(いずれもヒートシンクを取り付けない状態で撮影。テストはヒートシンク付きで実施している)
【検証環境】CPU:Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、マザーボード:ASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 APEX(Intel Z790)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition、メモリ:DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)、OS:Windows 11 Pro、計測方法:TxBENCHでシーケンシャルライトを10分間実行したときのSSDの温度を「HWiNFO Pro」で計測
【取り付け位置による温度の違い】
アイドル時高負荷時最大
M2_1(CPU直結、遮蔽物なし)34℃57℃
M2_2(チップセット接続、
ビデオカード直下)35℃56℃

 ヒートシンクを利用する、吸排気をしっかり行なってエアフローを確保する、の2点を確実にやっておくのが肝要だ。

温度計測に使用したテスト環境。ケース前面から3連ファンで吸気、天板に取り付けた空冷クーラーの3連ファンとケース後面のファンで排気するレイアウトだ。ビデオカードが巨大なのでエアフローへの影響があるかもと考えもしたが、実際にテストしてみると影響は軽微。ゆとりのあるサイズのケースと、計7基のファンが奏功したのだろう

専用ツールを運用・管理に活用する

 以上のことから分かるに、市場トップクラスの高性能SSDのパワーをフルに出し切るには、適切なセットアップと運用が不可欠だ。そのためには、SSDの動作状況を“見守る”必要もある。

無料でダウンロードできる管理アプリの「Dashboard」。Western DigitalのSSDに関するさまざまな情報を表示できる。ゲームモード2.0の有効化もこのツールで行なう

 Western DigitalのSSDは、同社サイトから無料でダウンロードできる管理アプリの「Dashboard」が利用できる便利なツールだ。SSDの健康状態、温度、空き容量や接続先といった情報を確認が可能だ。このほか、ファームウェアのアップデートやデータの読み書き速度や温度のモニタリング、TRIMの実行なども行なえる。便利な機能が揃っているので導入して損はない。SSDの基本的なチェックはこのツールさえ入れておけばOK。

読み出しと書き込み速度、そして温度をリアルタイムにモニタリングする機能も備えている。問題なく性能が出ているか確認したいときに便利だ
ファームウェアの更新もDashboardで実行できる。最新ファームウェアはインターネット経由で自動で取得してくれる

 またSN850Xでは、このDashboard上でゲームプレイ中のディスクアクセスを予測して先読みしたり、読み出し制御を優先するといった機能を備える「ゲームモード2.0」を有効化できる。ゲームプレイ中心にSN850Xを利用するなら「自動」に設定しておくのがよいだろう。