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ゲームに強いRyzen 9 7900X3DとASUSのゲーミングブランド「ROG」で“極上のゲーミングPC”を作ってみた!

PCゲーマーのツボを押さえた各種機能&ギミックを満載 text by 竹内 亮介

 日本でも高額な賞金の大会がしばしば開催されるようになり、卓越したプレイで多くの視聴者を引きつける配信者が増えるなど、PCゲームを取り巻く環境は今までにない盛り上がりを見せている。「自分もPCゲームを快適に楽しめるPCを作りたい」と思うユーザーも多いだろう。

 このようにいわゆる“ゲーミングPC”が盛り上がる中、AMDは「ゲームに強いCPU」である「Ryzen 7000X3D」シリーズを投入。さまざまなベンチマークでゲームでの実力を証明して見せている。そこで今回は、ゲームで高い実力が発揮できるAMDのCPU/GPUの組み合わせによる作例を紹介しよう。使用する各パーツは、ハイレベルなゲーミングPC向け製品群を多数ラインナップするASUSTeK「ROG」ブランドの製品からセレクトした。

「PCゲーマー共和国民」向けにさまざまなパーツをラインナップ

ROGブランドはPCパーツに限らずさまざまな製品がラインナップされている

 まずはROGブランドについて改めて紹介しておこう。ROGとは「Republic of Gamers」の略で、日本語に訳すと「PCゲーマー共和国」、リンカーンの言葉を借りるならば「PCゲーマーによる、PCゲーマーのためのブランド」とでも呼ぶべきだろうか。ASUSTeKの各種ブランドの中でも歴史は非常に古く、何と2006年に発売されたLGA775対応「Core 2 Duo」の時代から、ROGブランドのマザーボードが存在している。

 現在では、非常に多彩なパーツがROGブランドを冠して登場している。マザーボードやビデオカードといった基幹パーツはもとより、電源ユニットやPCケース、CPUクーラーなども用意しているため、「ROGブランドで統一したPC」を作りやすいのだ。

 さらにキーボードやマウス、ヘッドセットなど入出力機器も揃えれば、利用環境そのものをROGブランドで染めることだって可能なのだ。いずれもPCゲーマー向けに統一感のあるデザインやLEDのイルミネーションを採用しており、ブランドで染めるメリットは大きい。

 長年築き上げてきたPCゲーマー向けのブランドということもあり、ROGブランドのパーツではPCゲームをプレイする上で役に立つギミックや機能が充実している。PCゲームを極限まで楽しみたいユーザーにとっては最良の選択肢の一つで、今回のように「極上ゲーミングPC」が目標であれば、非常に分かりやすいブランドと言える。

ROGブランドの製品を中心にパーツを選択

 それでは、今回使用するパーツたちを順に見ていこう。

 まずCPUだが、冒頭にも述べた通り、極上ゲーミングPCを作るべく、AMDの最新CPUである「Ryzen 7000X3D」シリーズから選んだ。憧れとしては文句なしのハイエンドモデルである「Ryzen 9 7950X3D」だが、さすがにちょっと値が張るので、一つグレードを下げて、12コア24スレッド対応の「Ryzen 9 7900X3D」を選択した。

片方のCCDの上に3次キャッシュメモリを増量した「Ryzen 9 7900X3D」。実売価格96,000円前後

 標準モデルの「Ryzen 9 7900X」では64MBの3次キャッシュメモリを搭載するが、このRyzen 9 7900X3Dでは二つ搭載するCCDの片側のみに64MBの「3D V-Cache」を追加し、合計128MBの大容量3次キャッシュメモリを利用できるようにしている。これにより、とくにゲーミングパフォーマンスが大きく向上するとしており、今回のようなPCにはぴったりだ。

 ゲーミングPCで利用される高性能なパーツを安定して運用し、その性能を100%引き出すためには、同じく高性能なマザーボードが必要だ。今回は、ASUSTeKのROGシリーズから「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」を選択した。

AMD X670Eを搭載する「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」。実売価格62,000円前後

 AMD X670Eをチップセットとして搭載するAM5対応マザーボードで、16+2フェーズの強力な電源回路を搭載する。今回のRyzen 9 7900X3Dのような高性能CPUも、問題なくドライブできる。メモリ規格は最新のAMD EXPOに対応する。M.2スロットは最新のPCI Express 5.0対応を2基とPCI Express 4.0対応を2基搭載し、今後登場が予想されるさらに高性能なパーツも利用しやすい。

 大型で凝ったデザインのヒートシンクには、幾何学的な文様が刻まれている。またROGシリーズおなじみのホログラムシールも貼られており、高級感のあるデザインだ。中でもビデオカードのロックレバーをボタン一つで解除できる「Q-RELEASE」機能は、高性能な大型ビデオカードを搭載するゲーミングPCにはぴったりの機能で、まさにROGシリーズらしさを示すポイントだ。

バックパネルには多数のUSBポートを装備する。無線LAN用のアンテナを接続するコネクタもある
人差し指の近くにあるボタンを押すと、PCI Express x16スロットのロックレバーが解除される

 ゲーミングPCの核であるビデオカードは、同じくASUSTeKの「TUF Gaming」シリーズに属する「TUF Gaming Radeon RX 7900 XTX OC Edition 24GB GDDR6」を選んだ。Radeonの最高峰というだけあり価格も20万円近いが、ここに手を抜くわけにはいかない。最新「RDNA3」アーキテクチャを採用する「AMD Radeon RX 7900 XTX」をGPUとして搭載する最新フラグシップだ。

 ASUSTeKのゲーミングブランドの中でも耐久性を重視するTUF Gamingシリーズらしく、105℃の環境でも20,000時間の耐久性を誇るミリタリーグレードの強力なキャパシタを採用して電気的な安定性を高めている。3.6スロット分というかなり大きな容積のGPUクーラーを採用しており、高性能GPUをしっかり冷やしながら長時間のゲームプレイを楽しめる。そのほかにも大型アルミ製バックプレートによりたわみを防止し、開口部を増やした設計で冷却効率を向上させるなど、さまざまなアプローチで耐久性を高めている

大型で3基のファンを搭載するGPUクーラーを備える「TUF Gaming Radeon RX 7900 XTX OC Edition 24GB GDDR6」。実売価格185,000円前後
補助電源コネクタは8ピンケーブルを3本挿す必要がある

大型で組み込みやすい冷却重視のケースや簡易水冷型CPUクーラー

 こうしたメインのPCパーツを組み込むPCケースには、「ROG Hyperion GR701」を選んだ。クロスしたアルミのバーを前面に配した大型のPCケースで、強化ガラス製の両側板は背面のヒンジで大きく左右に開く構造になっている。前面上部や側面のプレートには、ARGB対応のLEDが埋め込まれたROGシリーズのロゴやイメージイラストが入っている。

 前面や天板には風通しのよいメッシュ構造を採用するほか、前面に14cm角ファンを3基、背面にも1基搭載するなどエアフローにも優れる。ゲーミングPCで使われる高性能なパーツを組み込んでも、安心して利用できるのだ。

PCゲーマー向けの無骨なデザインを採用する「ROG Hyperion GR701」。実売価格74,000円前後
両サイドのガラスパネルはヒンジ式で簡単に開く仕組み
前面には14cm角ファンを3基備える
底面近くに、ファン/LEDハブを備える
天板のアルミのバーを持ってPCケースごと移動できる

 冷却面で今回のPCを支えるもう一つのキーパーツは、ASUSTeKの簡易水冷型CPUクーラー「ROG RYUO Ⅲ 360 ARGB」だ。やはりROGシリーズに属するモデルで、36cmクラスの大型ラジエータに3基の12cm角ファンを備え、高性能ではあるが発熱も大きい今回のCPUをしっかりと冷却できる。

 やや背の高い水冷ヘッドには、ドットアニメーションでさまざまな表現が行なえるLEDが組み込まれている。標準ではモーフィングするROGのトレードマークやロゴなどが表示され、なかなか美しかった。このドットアニメーションは、いくつか用意されているパターンに変更できるほか、自分で作成することも可能だ。

36cmクラスのラジエータを装備した簡易水冷型CPUクーラー「ROG RYUO Ⅲ 360 ARGB」。実売価格44,000円前後
水冷ヘッド部分のドットアニメーションは、「AniMe Matrix」から変更できる

 高性能なゲーミングPC向けパーツを安定して動作させるための電源ユニットは、耐久性に優れるTUF Gamingシリーズから「TUF Gaming 1000W Gold」を選択。そのほかメモリはG.Skill Internationalの「F5-5600J3036D16GX2-TZ5NR」だ。AMDのEXPO Technologyを利用し、PC5-44800の高速メモリとして設定した。システム用SSDはWestern Digitalの「WD_Black SN770 NVMe WDS100T3X0E」である。

1,000Wの出力を持ち12VHPWR端子も装備する最新電源「TUF Gaming 1000W Gold」。実売価格28,000円前後

組み込み自体は容易、X3Dシリーズならではの「儀式」に注意

 PCケースのROG Hyperion GR701の側板は、横に開いた状態にすると上に引き抜ける。組み込み時に装着状態のままにしておくと危険なので、あらかじめ外しておこう。また強化ガラス製の側板を外すことで本体がかなり軽くなり、向きを変えたり倒したり起こしたりといった作業がしやすくなる。その意味でも外しておいたほうがよい。

 全長46cmのビデオカードにも対応するかなり大型のPCケースなので、メインパーツを組み込むエリアは非常に広く、パーツ同士が干渉して組み込み作業がしにくくなるようなことはない。大型のビデオカードを支えるためのホルダーも装備しており、分厚い重量級の今回のビデオカードも、反ったりスロットに負担がかかることはなかった。

組み込んだ状況を真横から見ると、ATX対応マザーボードなのにmicroATX対応マザーボードのように見えるくらい内部は広い
裏面配線用のスペースも広く、かなりケーブルが多い今回の作例でも簡単にまとめることが可能
ビデオカードの先端部分を支えるビデオカードホルダー

 天板のカバーとファンマウンタは、簡単に着脱できる構造になっている。マザーボード上辺のケーブル接続や整理は容易だ。また今回は36cmクラスの水冷ラジエータを天板に組み込んでいるのだが、取り付けフレームが外せるのでケース外でラジエータを取り付けてから装着する形になり、狭い場所でめんどうな作業を強いられることがないのは便利だった。

 完成したPCの電源を入れると、前面パネルの上部と下部、そしてマザーボードベースの前面部分に組み込まれたLEDが美しく光る。側板の強化ガラスはスモークが強いタイプで、ROGのトレードマークとブランド名の文字がほのかに透過して光る様子は大変美しい。

ファンマウンタが着脱可能な構造であり、簡易水冷型CPUクーラーの組み込みはラクだった
さまざまな場所に組み込まれているアドレサブルLEDが美しい

 こうした本体のLEDだけではなく、ビデオカード、簡易水冷型CPUクーラーのファン、メモリといったLEDの色や発光パターンは、マザーボードのユーティリティである「Armoury Crate」に含まれる「Aura Sync」から、自由に設定できる。すべてのパーツのLEDをまとめて制御し、統一感のあるイルミネーションにするもよし、自分の好みに合わせて個別に設定しても楽しいだろう。

統一感のある1台に仕上がった

 なお、今回の作例で使うRyzen 9 7900X3Dでは、片方のCCDのみに3次キャッシュを搭載し、動作クロックもそれぞれのCCDで異なるというユニークな構成を採用する。そのため、いつものようにWindows 11やデバイスドライバをインストールするだけでは本来の性能は発揮できない。Windows 11のインストール前後で下記のような作業が必要になるので、忘れずに実行しておこう。

(1)Windows 11のインストール前に、メーカーから提供されているAGESA 1.0.0.5c以降の最新UEFIへのアップデート
(2)Windows 11のインストール後に、最新版AMD製チップセットドライバをインストール
(3)Xbox Game Barアプリを最新版にアップデート
(4)[設定]アプリの[ゲーム]で[ゲームモード]を有効にする
(5)システムのメンテナンスタスクを実行

 (5)になじみのないユーザーもいるかもしれないが、起動後に何もせず、15分ほど放置しておけばよい。アイドル時のバックグラウンドで、こうしたシステムメンテナンスに関する作業が行なわれるということだ。思ったような性能が出ないなと感じる場合は、こうした作業内容を確認しよう。

Windows 11の設定アプリでもゲームモードの設定が必要になる

高いゲーミング性能を発揮しつつ熱の不安も一切ないPCに!

 ゲーム性能に優れたRyzen 9 7900X3Dを使うのだから、グラフィックス性能が気になるユーザーは多いだろう。まずはゲームグラフィックス性能で定番の「3DMark」を試した。利用するDirectXのバージョンや負荷の重さが異なるいくつかのテストが利用でき、Scoreが高いほうが性能が高い。

 この3DMarkでは、僚誌DOS/V POWER REPORTの連載企画「GPU Round-Robin」に掲載されているIntel Core i9-13900K+AMD Radeon RX 7900XTX搭載リファレンスカードを搭載するシステムで計測した計測データとも比較してみた。厳密な比較ではないので参考値として考えてほしい。

 Ryzen 9 7900X3DのほうがScoreが高いのは、DirectX 11ベースの「Fire Strike」だった。DirectX 12ベースの「Time Spy」とDirectX 12 Ultimate/レイトレーシングを使用した最新テスト「Speed Way」に関してはほぼ同等という結果だ。テストに使用しているビデオカードがOCモデルと定格モデルという違いがあるため、単純な横並びで語ることはできないが、3Dゲーム分野での実力は高く、13900Kに匹敵する性能が発揮できるシーンも多いと見ていいだろう。

3DMarkのベンチマーク結果。Fire Strikeでは比較対象を上回っている

 実際のPCゲームでも確かめてみた。「サイバーパンク2077」は、比較的描画負荷の高いオープンワールドRPGで、ベンチマークモードを備えている。ベンチマークテストモードでは最低フレームレートと最大フレームレート、平均フレームレートを計測でき、いずれも数値が高いほうが性能が優れている。

 テスト実施時のグラフィックス設定は[レイトレーシング:ウルトラ]で、4K解像度でも遊べることを期待して[AMD FidelityFX Super Resolution 2.1]のみ[自動]にした。なお、比較対象としてはIntel Core i7-13700K+ASUSTeK ROG STRIX Z790-F GAMING WIFIを中心としたPCを用意した(ビデオカードやメモリ、SSDは今回の作例と共通)。

サイバーパンク2077のベンチマーク結果。4K解像度でも平均fpsが60を超えている

 何度かテストしたところ最低FPSや最大FPSでは数値のブレが大きかったため、今回はブレが少ない平均FPSで比較した。フルHD解像度のテストでは約10%、4K解像度でも約8%フレームレートが高い。描画負荷の高いサイバーパンク 2077を4K解像度でプレイしても十分快適に遊べるというのは、なかなか大きい。

 最後に、PCの総合的な性能を評価するベンチマークテスト「PCMark 10」の結果を見てみよう。PCMark 10のスコアは、基本性能を示すEssentialsのスコアが4100以上、オフィスアプリでの作業の性能を示すProductivityのスコアが4500以上、写真や動画などのデジタルコンテンツの制作における性能を示すDigital Content Creationのスコアで3450以上であれば、それぞれの分野において実用上十分な性能を持つものとしている。今回の作例のスコアはいずれもこの基準を大幅にクリアしており、総合スコアで13000超という高い値を示した。ゲーミングPCとは言っても幅広いジャンルに活躍できることを示している。

PCMark10の結果画面。13,000を超える高スコアを叩き出した

 このように非常に性能の高いPCであることは分かったが、温度の状況も気になるところだ。今回は3DMarkに含まれるTime Spyを20回ループする「StressTest」を実行し、CPUとビデオカードの温度の状況もチェックしてみた。

CPU温度は最高でも74℃台、GPU温度は61℃台に収まった

 アイドル時はCPU温度が42℃、GPU温度が36℃だった。室温25℃と高めの環境ではあるが、不安になるような温度ではない。この状態でStressTestを実行し、テスト中の最高温度をチェックして見るとCPU温度は74℃、GPU温度は61℃だった。かなり良好な冷却性能と言えるだろう。

 ケースファンの数が多い風通しのよい構造のPCケースであることにも加え、冷却性能の高いCPUクーラーやGPUクーラーを利用しているため、このように低い温度になったのだろう。排気エアはほんのり暖かく感じたが、ケースのフレームが熱を持つことはなかった。

ROGブランドのPCはさまざまな用途に「効く」

 これまで検証してきた結果を見れば分かるとおり、今回のPCは強力なCPU性能やゲーミングパフォーマンスを実現しながらも安定して動作する。またこうした高負荷の状況でもそれぞれのファンの回転数は800~1,000rpmをキープしており、うるさいと感じる場面は少ない。

 当初の予定とおり緻密なグラフィックスで最新PCゲームを楽しむもよいし、日常的な作業で利用するのもよいだろう。高性能PCとは思えないほど静かに動作するし、AMDのノイズキャンセル機能「AMD Noise Suppression」を活用すれば、ビデオ会議もスムーズにこなせる。

AMDの設定ユーティリティから「AMD Noise Suppression」を設定できる

 12コア24スレッドという圧倒的なマルチコア性能を活かしてクリエイティブ業務で利用してもよい。ゲーム配信でもこうしたマルチコアを活かせる場面は多い。

 PCゲームはPCの総合性能を競うアプリであり、PCゲームを快適にプレイできる適性があるなら、ほかのあらゆる業務にも適性があると考えてよいのだ。こうした高性能なPCを作りたいなら、今回のようにASUSTeKのROGブランドを目印にパーツを探すのが一番の早道だ。