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良作ゲーム連発の今、やっぱりほしい最新GPU!新登場のASRock「Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OC」の実力を探る

“WQHD向け”を掲げるミドル~アッパーミドルの新たな選択肢 by 加藤 勝明

 PCゲーマーにとって2023年夏〜秋は「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」や「Starfield」といった話題作に恵まれた良シーズンとなった。良作が出たとなれば、よりよいビジュアル、より高いフレームレートで遊びたくなるというもの。今年もさまざまなGPUが登場したが、今もっとも注目を集めているのが、AMDのWQHDゲーミング向けのGPUの最新モデル「Radeon RX 7800 XT」だ。

充実した足回りをミドルで採用、WQHDゲーミングでの性能を重視

 RX 7800 XTの技術的な詳細に関しては三門氏のレビュー記事にあるので割愛するが、同じWQHDゲーミング向けとして発売されたRX 7700 XTよりもビデオメモリ搭載量が16GBと多く、さらにメモリバス幅も256bitと太い。1世代前のRX 6800やRX 6800 XTといった4Kターゲットとして出したGPUと同じ足回りをWQHD用として出してきたこという点がRX 7800 XT最大の魅力である。

 9月も半分を回った時点でフレームレート向上技術「FSR 3」は公開されていないため、一部のゲームに関しては、DLSS 3(DLSS Frame Generation)を備えるRTX 4070にパフォーマンスで劣るものの、逆にそれ以外のビデオメモリ搭載量やメモリバス幅といった要素では上回っている。RTX 4070とほぼ同じ価格帯で、ワンランク上のスペックとあれば心躍らないわけはない。

注目の新GPU、RX 7800 XTを採用したASRock製ファクトリーOCモデル「Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OC」。実売価格は88,000円前後

 すでにRX 7800 XT搭載カードは各社から発売済みだが、今回はその中からASRock製のファクトリーOCモデル「Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OC」をピックアップ。実際のパフォーマンスを検証してみた。

 ASRockのRadeon RX 7800 XT搭載製品はこのほか、ホワイトモデルの「Steel Legend」、デュアルファンの「Challender」がラインナップされている。「Phantom Gaming」は同GPU搭載製品の中では最上位だ。

カード全長は328mm。GPU温度が低いときにはファンが停止する「0dBサイレントクーリング」を採用。ファンブレードに“うね”を作ることで冷却効率を上げている

 3連ファン搭載のRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCのカード全長は328mm。補助電源は8ピン×2で、RX 7800 XTリファレンスカードでは254.4W(HWiNFO Proによる値)だった最大PPT(Package Power Tracking)は、ファクトリーOCモデルである本製品では283.2Wに引き上げられている。

ファクトリーOCモデルで最大PPTは283.2Wまで引き上げられているが補助電源は8ピン×2で済んでいる
巨大なクーラーを搭載するが、剛性は十分。大型カードなのでビデオカードを支えるステイの使用をおすすめしたい

 大型カードなので全体の剛性確保は必須。大型カードなので全体の剛性確保は必須。本製品ではスチール製のバックプレートで剛性を確保している。重さは1.26kg(実測値)と大きさの割に軽めだが、長く使いたければビデオカードの負荷を分散するステーは付けておいた方がよいだろう。

 映像出力はHDMIとDisplayPort×3というおなじみの構成。DisplayPortは最新の2.1対応であるため、将来的にDisplayPort 2.1対応の高性能ディスプレイに買い換えても性能をフルに発揮できる(GeForce系は1.4a)というのがRX 7000シリーズの隠れた強みでもある。

映像出力端子の構成はHDMI+DisplayPort×3
通電時はカード上部と中央のファン付近がRGB LEDによってライトアップされる
「GPU-Z」でカードの情報を拾ってみた。ブーストクロックは2565MHzに設定されているが、これはリファレンス仕様(2,430MHz)よりも5%ほど引き上げられている
クロックまわりの情報。ゲームクロックは2,254MHzで、リファレンスより6%上に設定されている
設定ツール「ASRock Tweak 2.0」を利用することでGPU温度などのチェックのほか、OC機能も利用することができる。右下にある「GPU Power Limit」はIntelのCPUなどで言うところのPL2、すなわち長期間維持できるブースト限界を示すGPU PPTの値を示している(前述の283.2Wとは別の設定値)

うたい文句どおりWQHDで優秀な性能を発揮。競合を上回るタイトルも!

 今回の検証環境は以下のとおりだ。比較対象としてリファレンス版のRX 7800 XTのほか、価格的ライバルであるRTX 4070、さらに旧世代のRX 6800 XTを準備した。筆者の経験から、RX 7800 XTのリファレンスカードではRX 6800 XTに性能で負けるシーンがあったが(CU数がRX 6800 XTよりもやや少ないため)、ファクトリーOCモデルである本製品ではどうなのだろうか?

 検証環境構築にあたっては、Secure BootやResizable BAR、メモリ整合性、Windows HD Color(HDR)などは一通り有効化している。また、ゲームのフレームレート検証においては、すべて「CapFrameX」を用いてフレームレートを計測している。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 7800X3D(8コア/16スレッド)
マザーボードAMD X670E 搭載マザーボード
メモリDDR5-5200 32GB(PC5-41600 DDR5 SDRAM16GB×2)
ビデオカードASRock Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16G OC
AMD Radeon RX 7800 XTリファレンスカード
AMD Radeon RX 6800 XTリファレンスカード
NVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Edition
ストレージM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4、システム用)、M.2 NVMe SSD 2TB×3(PCI Express 4.0 x4、ゲーム用)
電源1,000W(80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 手始めに「3DMark」のスコア比較から始めよう。テストが多いのでラスタライズ系(Fire Strike/ Time Spyなど)とレイトレーシング系(Port Royalなど)でグラフを分けている。

3DMark:ラスタライズ系テストのスコア
3DMark:レイトレーシング系テストのスコア

 テストによりRX 7800 XTリファレンスカードとのスコアの違いの度合いが異なるが、Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCのほうがおおむね3〜4%程度高いスコアを示している。一方RX 6800 XT相手だと一部のテストで僅差で負けるものの、レイトレーシング系テストではRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCのほうが10%以上高い。対RTX 4070という観点では、ラスタライズ系テストではRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCが圧倒しているが、逆にレイトレーシング系テストでは一歩およばない。

 ただ実ゲームでは3DMarkのスコアとは違ったパフォーマンスの傾向を示すのはよくあること。続いては実ゲームにおけるパフォーマンスを検証しよう。

Apex Legends

 Apex Legendsではシーズン15より実装されたDirectX 12モードで起動。フレームレート144fps制限も解除している。画質はすべて最高に設定した上で、射撃訓練場における一定の行動をした際のフレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 このクラスのGPUであれば、WQHDはもとより4Kでも十分高いフレームレートが出る。もともと軽いゲームゆえの結果だが、WQHDで144fps以上、平均フレームレートでも240fps以上出ているので、WQHD向けゲーミング液晶のパフォーマンスをきっちり使ってくれるだろう。3DMarkではRX 6800 XTに負けてしまうRX 7800 XTだが、実ゲームではこのとおりフレームレートでしっかり上回っている点に注目。RX 7800 XTリファレンスカードとRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCの差は小さいが、少しでもフレームレートの高い環境が欲しいならRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCはよい選択と言える。

Call of Duty:Modern Warfare II

 Call of Duty:Modern Warfare IIでは、画質を“極限”、アンチエイリアスは“ウルトラ品質”に設定。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 Call of Duty:Modern Warfare IIはもともとRadeonとの相性がよいが、とくにRDNA 3世代のRadeonではフレームレートが伸びやすい。どの解像度設定においても、同価格帯のRTX 4070を完全に置き去りにするフレームレートを出せている。4Kともなるとフレームレートの下振れが少々キツくなるので実戦向きではないが、WQHDまでなら十分戦える。さらにフレームレートが欲しいなら今回の検証では使っていないFSR 2を利用するという手もある。

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

 画質は“最高”とし、フレームレート上限は120fpsに設定。序盤のミッション「テストAC撃破」で一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 ややGeForce系有利なゲームだが、今回の検証ではWQHDまでがRTX 4070が優勢、4Kになると平均フレームレートではRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCがトップになる。ただし最低フレームレート(正確には下位1%以下のフレームの平均値)を見ると、RTX 4070のほうがややカクつきが少ないといった感じだ。RX 7800 XTのターゲットであるWQHDを見た場合、120fpsを微妙に下回っているものの、最高画質設定でも快適にプレイできるだろう。

Starfield

 Starfieldでは画質“ウルトラ”に設定。デフォルトのレンダースケール(RS)設定75%とFSR 2は有効化。プレイヤーが最初に降り立つ都市(ニューアトランティス)のMAST地区を移動する際のフレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 この検証は最初のパフォーマンス改善アップデート後に行なっているが、GeForce系のフレームレートが今一つ伸びきらないのはリリース直後から変わらないようだ。AC6と違いこちらはRadeonが強い傾向にあるが、RX 6800 XTよりもRX 7800 XTのほうがよりフレームレートが伸びており、さらにRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCはOCによってさらに高いフレームレートが出ている。

サイバーパンク2077

 ここから先はレイトレーシングを含めたゲームでの検証となる。サイバーパンク2077では、画質“レイトレーシング:ウルトラ”をベースに、FSR 2“バランス”を追加。RTX 4070も同じAPIを通すという観点からFSR 2を使用して計測しているが、それとは別にDLSS“バランス”+DLSS Frame Generationを効かせた設定も準備している。ゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 レイトレーシングの負荷が非常に高いゲームだが、フルHDかつFSR 2を併用すれば、RX 7800 XTでもレイトレーシング設定を盛ってプレイできる。WQHDになると重めのシーンでは描画がモタつくため、若干レイトレーシング設定を緩めにすることをオススメしたい。RTX 4070は3DMarkの結果でも示されていたようにレイトレーシングでは強いし、さらにDLSS FGを併用すると異次元の強さになるが、サイバーパンク2077はFSR 3対応予定のリストに入っている。将来的にFSR 3が実装されたときに、どうなるかが楽しみだ。

BIOHAZARD RE:4

 BIOHAZARD RE:4は、レイトレーシングを含め画質系はすべて最高に設定。ストランドヘアーも有効、FSR 2も“バランス”に設定。ゲーム序盤で訪れる教会のある村〜次の集落へ続く道を移動した際のレームレートを計測した。

フルHD時の計測結果
WQHD時の計測結果
4K時の計測結果

 こちらもレイトレーシングを使っているが、サイバーパンク2077ほどRTX 4070との差は付いていない。WQHDではほぼ同格、4KにいたってはRTX 4070を完全にフレームレートで上回っている。とくにファクトリーOCモデルであるRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCは、RX 7800 XTのリファレンスカードに比べしっかりとフレームレートで差を付けている点に注目。ビデオメモリ搭載量やメモリバス幅の太さといったRX 7800 XTの特徴が奏功したと言えるが、WQHDゲーミング向けのGPUであるのに、4Kでも十分なフレームレートが出ている点は大いに評価したい。

ゲーム中の温度/クロック推移――大型クーラーでしっかり冷える!

 最後にゲーム(BIOHAZARD RE:4)中のGPU温度やクロックの挙動をチェックしてみよう。ゲームの解像度はWQHD(フルHDよりもTBPが高く、かつRX 7800 XTのターゲット解像度)とし、画質設定は前掲のベンチマーク時の設定に従った。ゲーム状態で10分程度放置し、その間のGPU温度やクロックを「HWiFO Pro」で追跡している。

GPU温度の推移。GPU温度のほかにGPU Hotspot温度も追跡した
クロックの推移。RDNA 3なのでフロントエンドとシェーダークロックそれぞれを追跡している

 あえて3連ファンと大型クーラーを備えるRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCの冷却性能と、2連ファンでサイズを絞り気味に設計されたRX 7800 XTリファレンスカードの冷却性能を同列で語ってしまうが、リファレンスカードに比べRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCの冷却性能は非常に高い。ゲーム開始10分付近の安定値だとGPU温度で8〜9℃、GPU Hotspotでは6〜7℃低い温度を維持している。一方GPUクロックはフロントエンド部分はほぼ同じ2,920MHz前後、シェーダークロックは2,450MHz前後となるが、シェーダークロックではわずかにRadeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCが高い値(差は20MHz程度)を維持している。

FSR 3の登場は待たれるがレイトレ対応ゲームも遊べる新たな選択肢

 原稿執筆時点でまだFSR 3が試せないのが残念だが、FSR 2やネイティブ解像度でのテストでも価格帯的にほぼ同じのRTX 4070と同等の性能を示した。サイバーパンク2077のように重いレイトレーシング処理が入るとFSR 2ではまだ不足だが、BIOHAZARD RE:4のようにレイトレーシングが入っていてもRTX 4070と対等に立ち回れているゲームもあるので、レイトレーシングをしっかり効かせて楽しみたい人にとっても、費用対効果的に悪くない選択と言えるだろう。

 何よりビデオメモリ搭載量が16GBと多いので、もっと画質を盛ったり、さらに画質向上Modを増やしたりする際にも余裕がある。上位GPUであるRX 7900 XTやRX 7900 XTXには手が出ないが、Radeon環境で長く使えるゲーミング環境を揃えたい、ということであれば、Radeon RX 7800 XT Phantom Gaming 16GB OCはぜひともオススメしたい1枚といえる。

RTX 7700 XT搭載の「Radeon RX 7700 XT Phantom Gaming 12GB OC」も発売中。外観はRX 7800 XTモデルとほぼ同様なので、巨大なクーラーの効果でこちらも冷却性能は万全。ミドルレンジGPUながら12GBのビデオメモリを搭載する点も魅力だ