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16コアのRyzen 9 9950Xを冷やしきれる!DeepCool最強の空冷CPUクーラー「ASSASSIN IV VC VISION」

ベイパーチャンバー採用で300W級の冷却性能 text by 坂本はじめ

DeepCoolの最新ハイエンドモデルをRyzen 9 9950Xでテスト。

 DeepCoolの新作ハイエンド空冷CPUクーラー「ASSASSIN IV VC VISION」、日本では13日(金)から販売が開始される。同社のハイエンドCPUクーラーであるASSASSIN IVをベースに、CPUのステータス情報を表示するデジタルスクリーンとベイパーチャンバーを新たに搭載。冷却性能をTDP 300W対応に強化したDeepCool製空冷CPUクーラーの最強モデルだ。

 今回はその「ASSASSIN IV VC VISION」を「Ryzen 9 9950X」に搭載してテストを実施。ベイパーチャンバーの導入で強化された冷却性能で、最新のハイエンドCPUをどこまで冷やすことができるのか確かめてみた。

TDP 300W対応のハイエンド空冷「ASSASSIN IV VC VISION」ベイパーチャンバーをベース面に採用

 「ASSASSIN IV VC VISION」は、DeepCoolのハイエンド空冷CPUクーラーであるASSASSIN IVをベースに、デジタルスクリーンとベイパーチャンバーを追加したバリエーションモデル。冷却性能はオリジナルのTDP 280Wから300Wへと強化されており、対応CPUソケットは「Intel LGA 1851/1700/1200/115x/20xx」および「AMD Socket AM5/AM4」。

「DeepCool ASSASSIN IV VC VISION」
ベイパーチャンバー採用で同社の「ASSASSIN IV」をさらに強化。
ベース面に搭載されたベイパーチャンバーは、CPUから受け取った熱を効率的に拡散する。
冷却ファンは本体中央部と背面に配置されている。
ヒートシンクの大部分がシュラウド(カバー)で覆われている。

 新たに採用されたデジタルスクリーンはCPUのステータス情報を表示するもので、本体の天面に配置されている。もう一つの新機軸であるベイパーチャンバーはベース面に搭載されており、CPUから受け取った熱を効率的に拡散することで冷却性能を高めている。

 ASSASSIN IVのビジュアル面に大きな変化をもたらすデジタルスクリーンは、Windows上で動作するユーティリティソフト「DeepCool Hub」経由でCPUのステータス情報(温度、使用率、消費電力、クロック)をリアルタイムで表示できる。

本体の天面にCPUステータスを表示できる「デジタルスクリーン」を装備。右下のロゴマークも発光する。
デジタルスクリーンはCPUのステータス情報(温度、使用率、消費電力、クロック)をリアルタイムで表示する。
ユーティリティソフトの「DeepCool Hub」を介し、デジタルスクリーンはCPUのステータス情報を取得している。
PCのステータス情報もユーティリティ上から確認できる。

 このデジタルスクリーンはマグネットで固定する着脱式となっており、本体とはケーブルレスで接続できるため容易に着脱できる。「ASSASSIN IV VC VISION」はクーラー本体をマザーボードに取り付ける作業においてデジタルスクリーンの着脱が必須。マグネット式で着脱が容易なため断線の心配がない。

デジタルスクリーンはマグネットでクーラー本体に固定されているため容易に着脱できる。
デジタルスクリーンとクーラー本体の電気的な接続は6ピンの電極によって行われる。

 ベース面に搭載されたベイパーチャンバーとは、中空構造の金属板に作動液を減圧封入した熱伝導部品。ヒートパイプを板状にしたような部材というのが近いかもしれない。「ASSASSIN IV VC VISION」では、CPUから受け取った熱をベイパーチャンバーが平面方向に拡散することで、ベース面に接続されている7本のヒートパイプへの効率的な熱伝導を実現。これにより、オリジナルより20W高い冷却性能を実現したとされている。

 ヒートシンクの基本的な設計はASSASSIN IVを踏襲。シュラウド(カバー)の内部には2つのタワー型ヒートシンクの間に冷却ファンを配置するミッドシップ型の黒いヒートシンクが隠されている。

ベイパーチャンバーを採用したベース面。中央部の31mm四方が周辺よりやや高く、主にCPUと接するコア部分となっている。
Ryzen 9 9950X取り外し後のグリス。Socket AM5のヒートスプレッダとコア部分の面積がだいたい同じであることが分かる。
「ASSASSIN IV VC VISION」のヒートシンク本体。7本のヒートパイプを備えるミッドシップ型の黒いヒートシンクだ。
排気側に近いヒートシンクの方が厚みがある。
ベイパーチャンバーが平面方向に熱を拡散することで、7本のヒートパイプに効率よく熱を移動できる仕組みとなっている。
接合部分などの塗装や作りこみも丁寧な印象だ。
付属品。マニュアルやリテンションキット、サーマルグリス、専用ドライバなどが同梱されている。

14cmファンと12cmファンのハイブリッド構成12cmファンを追加してトリプルファン化も可能

 「ASSASSIN IV VC VISION」には標準で2基の冷却ファンが付属する。ひとつは本体中央部に配置する14cmファンで、もうひとつは本体背面側に配置する12cmファンだ。これらのファンは静粛性と効率に優れるという4極6スロットのモーターを採用している。

「ASSASSIN IV VC VISION」に付属する14cmファン(左)と12cmファン(右)。

 標準搭載のファンはいずれもPWM制御に対応しており、14cmファンは500~1,800rpm(±10%)、12cmファンは500~1,700rpm(±10%)の範囲でファンスピードの調整が可能。また、ファンの動作モードを切り替えるスイッチが実装されており、パフォーマンスモードと静音モードを選択できる。

 パフォーマンスモードでは各ファンの回転数域をフルレンジで利用できる一方、静音モードでは最大速度がそれぞれ300rpmほど低下する。なお、ファンの動作モードを切り替える場合、冷却ファンの電源ケーブルはクーラー本体の分岐ケーブルに接続する必要がある。

本体中央部に搭載されている14cmファン。ファンスピードは500~1,800rpm(±10%)。
本体背面側に搭載されている12cmファン。ファンスピードは500~1,700rpm(±10%)。
ファンの動作モードを切り替えるスイッチ、右がパフォーマンスモードで、左が静音モード。
クーラー本体の分岐ケーブルにファンを接続することで動作モード切り替えスイッチが利用可能。なお、写真内の長いケーブルはデジタルスクリーン用のUSB 2.0ヘッダピン接続ケーブル。

 「ASSASSIN IV VC VISION」には、3基目の冷却ファンを追加するためのアダプタが同梱されており、これを用いることで12cmファンを本体前面側に追加することができる。

 この追加ファンを含め、アダプタに取り付けられている状態の冷却ファンはツールフリーでクーラー本体から着脱可能となっている。また、本体の前面と背面に取り付ける12cmファンに関しては高さの位置調整が可能であり、マザーボードのヒートシンクやメモリモジュールと干渉するような場合にファンの位置をずらすことで干渉を回避できる場合がある。

本体中央部に抜き差しする形で着脱できるな14cmファン
14cmファンはクーラー本体をマザーボードに取り付ける際に取り外す必要がある
本体前面に12cmファンを追加するためのアダプタが付属。
12cmファンを追加した「ASSASSIN IV VC VISION」。
背面と前面の12cmファンは、標準または上にオフセットした位置の2段階で取り付けることが可能。
マザーボードのヒートシンクやメモリとの干渉を回避できるが、ケースの側面パネルとの干渉に注意が必要だ。

メモリとの干渉を回避しやすいASSASSIN IV譲りのデザイン

 「ASSASSIN IV VC VISION」は、本体サイズが147×144×172mmの大型クーラーだ。全高が172mmとかなり高いためケースの収容能力に注意しなければならず、横幅も大きいため拡張スロットとの干渉にも気を配る必要がある。

 一方で、メモリモジュールとの干渉については回避しやすいデザインとなっており、これはハイスペックなメモリを使用したいパワーユーザーにとって嬉しい要素だ。

標準のファン構成ならメモリスロットには干渉しにくい(ASRock X670E Taichi搭載時)。
最上段に拡張スロットがないマザーボードが主流になりつつあるが、大型CPUクーラーなので、最上段に拡張スロットがある場合は拡張カードとの干渉も気を付けたい。

 オプションでファンを追加した場合、LGA1851やSocket AM5などでもメモリスロット上にファンが被る形になるが標準的なメモリモジュールを搭載できるスペースは確保されており、ファンを上にずらせば大型メモリの搭載も可能だ。ただし、もともと高さが172mmもある大型クーラーなので、ファンをずらした分だけ増えるクーラーの全高を受け入れられるケースと組み合わせる必要がある点に注意したい。

追加ファン搭載時。標準的なメモリモジュールとは干渉しないスペースが確保されている。
追加ファンを上にずらせば相当大型のメモリモジュールも搭載できる。ただし、全高の増加に要注意。

TDP 300W対応のお手並み拝見最新ハイエンド「Ryzen 9 9950X」をどこまで冷やせるのか?

 それでは、TDP 300W対応をうたう「ASSASSIN IV VC VISION」の実力を冷却性能テストで確認してみよう。

 冒頭でも紹介した通り、今回「ASSASSIN IV VC VISION」のテストに使うのはAMD最新のハイエンドCPU「Ryzen 9 9950X」。標準で200Wの電力リミットが設定されている16コア/32スレッドCPUをどこまで冷やせるのかを試してみよう。

Zen 5世代の16コア/32スレッドCPU「Ryzen 9 9950X」。TDPは170Wで、電力リミットのPPTは200Wに設定されている。
「Ryzen 9 9950X」のCPU-Zによるステータス。

 今回のテストでは、Cinebench 2024の「CPU (Multi Core)」を最低実行時間10分で実行した際のCPU温度などを計測することで、「ASSASSIN IV VC VISION」の冷却性能を確認する。

 また今回は2つのファン動作モード(パフォーマンスモード/静音モード)と、縦置き対応のオープンフレームPCケースを利用して2つの設置状態(垂直設置/水平設置)を組み合わせた4通りの条件でテストを実行する。その他の条件については以下の表のとおり。

垂直設置。一般的なタワー型ケースの設置状態に近い。
水平設置。検証台などでよく使われる設置状態。

 計測の結果、いずれの条件でもCPU温度は80℃台に抑えられている。Ryzen 9 9950Xの温度リミット(TjMax)は95℃なので、「ASSASSIN IV VC VISION」は約200Wの電力を消費しながら動作している最新のハイエンドCPUを見事に冷やしきることができていると言える結果だ。

 細かく見てみると、パフォーマンスモードでのCPU温度は垂直設置で平均81.0℃(最大83.1℃)、水平設置で平均82.6℃(最大84.2℃)。静音モードは垂直設置で平均82.8℃(最大84.9℃)、水平設置は平均84.4℃(最大86.8℃)となっており、どちらのファン動作モードでも水平設置より垂直設置の方が若干冷えるという結果になっている。

 モニタリングデータをまとめた推移グラフでは、いずれの条件でもサーマルスロットリングが生じていない様子や、CPU消費電力が上限の200Wに張り付いた状態で動作している様子が確認できる。「ASSASSIN IV VC VISION」がRyzen 9 9950Xから限界に近いパワーを引き出せていると言える結果だ。

冷却ファン「パフォーマンスモード」、垂直設置
冷却ファン「パフォーマンスモード」、水平設置
冷却ファン「静音モード」、垂直設置
冷却ファン「静音モード」、水平設置

 クーラー本体から約40cm離れた位置に設置した騒音計で計測した騒音値が以下の通りで、パフォーマンスモードの騒音値が45.1dBAであったのに対し、静音モードの騒音値は38.3dBAだった。

 両モードの動作ノイズの差ははっきりと体感できるものであり、パフォーマンスモードの動作音ははっきり大きな風切り音が発生しているのに対し、静音モードは明らかに静かだった。環境温度やケース内のエアフロー次第な面もあるが、Ryzen 9 9950Xを冷やすのには静音モードでも十分な性能があり、積極的に使っていける印象だ。この部分は「ASSASSIN IV VC VISION」の大きなメリットと言えるだろう。

Ryzen 9 9950Xを余裕で冷やしきれる!DeepCool最強の空冷CPUクーラー「ASSASSIN IV VC VISION」

 ベイパーチャンバーとデジタルスクリーンを新たに装備した「ASSASSIN IV VC VISION」は、AMD最新のハイエンドCPUであるRyzen 9 9950Xを余裕で冷やしきることができる冷却性能を備えていた。

 単に冷却性能だけを考えれば、大型ラジエーターを搭載したオールインワン水冷クーラーという強力な選択肢が存在する。しかし、空冷でハイエンドCPUを使いたいと考えるユーザーにとっては、空冷CPUクーラーで最高クラスの性能を期待できる本機は、間違いなく検討すべき製品の一つだ。

 特に、Ryzen 9000シリーズでの自作を考えているのであれば、Ryzen 9 9950Xを余裕で冷やしきれる「ASSASSIN IV VC VISION」は有力な選択肢となるだろう。