トピック

様々なUSBポートを備える「Lenovo ThinkPad E14 Gen 6」で外付けSSDの速度を計測してみた

USB4~USB 3.2 Gen 1までUSB規格別にポートを備えるPCで動作テスト text by 坂本はじめ

 Lenovoの14型ノート「ThinkPad E14 Gen 6」のIntel Core Ultra搭載モデルは、本体に備える4つのUSBポートが全て異なるUSB規格に対応しているという風変りな仕様を採用しており、USB4(Thunderbolt 4)とUSB 3.2系の3規格(Gen 2x2、Gen 2、Gen 1)が各1ポートずつ実装されている。

 今回はこのThinkPad E14 Gen 6の各USBポートに、様々なUSB規格の外付けストレージを接続。PC側と外付けストレージの規格が一致する場合や、一致しない場合の互換モードでどのような挙動・性能となるのか改めて検証してみた。

 外付けSSDに関しては、以前に様々な検証も行っているので、そちらのレビューも合わせて確認してもらえれば幸いだ。

USB 3.2 Gen 1以上のUSBポートを全種類備えるユニークなノートPCで外付けSSDをテスト

 ベース機材として使用しているノートPCは、「Lenovo ThinkPad E14 Gen 6」シリーズで、Intel Core Ultra 5 125U(12コア)を搭載する型番「21M7CTO1WWJP6」だ。メモリは8GBでSSDは256GBとなっている。

 USBポートは、USB Type-C形状のUSB4 40Gbps(Thunderbolt 4)、USB 3.2 Gen 2x2 (20Gbps)、USB Type-A形状のUSB 3.2 Gen 2 (10Gbps)、USB 3.2 Gen 1 (5Gbps)と、4種類のポートを備えるユニークな仕様のモデルだ。

 このノートPCを使い、USB4、USB 3.2 Gen 2x2、USB 3.2 Gen 2、USB 3.2 Gen 1に対応した外付けストレージを複数用意し、ポート側と外付けSSD側で規格が一致する場合、一致しない場合でどのような挙動になるのか、動作をチェックするというのが今回のテストだ。

Lenovo ThinkPad E14 Gen 6(21M7CTO1WWJP6)
本体左側面。USB Type-C形状のUSB4 (Thunderbolt 4)とUSB 3.2 Gen 2x2、USB Type-A形状のUSB 3.2 Gen 2を搭載
本体右側面のUSB Type-AポートはUSB 3.2 Gen 1に対応している
Meteor Lake世代の12コアCPU「Core Ultra 5 125U」を搭載している
256GBのシステムSSDはPCIe 4.0 x4対応で、実測での最大速度はリード4,874MB/s、ライト2,737MB/s。

USB4~USB 3.2 Gen 1までUSB規格別に6種類の外付けストレージを用意

 接続して性能を計測する外付けストレージとして用意したのは、Samsung製ポータブルSSD4製品と、USB外付けケースを使って自作した2つの外付けストレージ。

 Samsung製ポータブルSSDは、最速モデルであるUSB 3.2 Gen 2x2対応の「T9 (4TB)」、USB 3.2 Gen 2対応の「T7 Shield (2TB)」と「T7 (1TB)」、USB 3.2 Gen 1対応の「T5 EVO (8TB)」の4製品。

USB 3.2 Gen 2x2対応のSamsung T9 (4TB)
USB 3.2 Gen 2対応のSamsung T7 Shield (2TB)
USB 3.2 Gen 2対応のSamsung T7 (1TB)
USB 3.2 Gen 1対応のSamsung T5 EVO (8TB)

 USB外付けケースで自作したのは、USB4 40Gbps対応ケース「OWC Express 1M2」にPCIe 4.0 SSDの「Samsung 990 PRO (4TB)」を組み込んだUSB4対応外付けSSDと、2.5インチHDDとUSB 3.2 Gen 2対応ケースを組み合わせたポータブルHDD。

OWC Express 1M2とSamsung 990 PRO (4TB)を組み合わせたUSB4外付けSSD
2.5インチHDDとUSB 3.2 Gen 2対応ケースを組み合わせたポータブルHDD

 USB4 40GbpsからUSB 3.2 Gen 1までのUSB規格に対応するSSDに、ポータブルHDDを加えた6種類の外付けストレージ。これらがThinkPad E14 Gen 6の各USBポートでどのようなパフォーマンスを発揮するのか確かめてみよう。

各USBポートでの外付けストレージの最大速度をまとめてみた

 外付けストレージ各種をThinkPad E14 Gen 6の各ポートに接続し、CrystalDiskMarkを実行した際に「SEQ1M Q8T1」で記録した最大速度をまとめたものが以下の表。OWC Express 1M2とSamsung 990 PROを組み合わせたUSB4外付けSSDについては「OWC/990 PRO」という略称で表記している。

 青文字がリード速度、緑文字がライト速度を示しており、その下にはUSB接続時のリンク速度を記載した。なお、赤枠で強調しているのは外付けストレージとUSBポートのUSB規格が一致している場合の結果だ。

 USB4外付けSSDやSamsung製ポータブルSSDに関しては、SSD自体の対応USB規格以上のポートに接続することでスペック値に近い速度を発揮し、下位規格のUSBポートに接続した場合はUSBポートの上限に近い速度を発揮するという結果がほとんどだ。

 例外的な挙動となっているのが、USB 3.2 Gen 1接続で正常に動作しなかったOWC/990 PROや、USB 3.2 Gen 2以下のUSBポートでスペック値の460MB/sより明らかに低い速度となっているT5 EVOだ。いずれも原因は不明なのだが、USB 3.2 Gen 2以下のUSBポートで速度が低下するT5 EVOの挙動については、T7 ShieldとT7のライト速度でも同様の傾向が見られることから、USBポート実装方法を含めたThinkPad E14 Gen 6側の仕様による影響と考えられる。

 ポータブルHDDに関しては、USB規格に関係なくリード145MB/s前後、ライト150~160MB/s程度となっている。インターフェイスの上限速度に達する前に、内蔵している2.5インチHDDの限界性能に達したという結果だ。

 なお、USB4/Thunderbolt 4は、規格上はUSB 3.2 Gen 2x2への対応(下位互換)はオプション扱いとなっており、必ずしもサポートしているわけではない。サポートしてない場合、USB 3.2 Gen2x2対応のストレージを接続すると、USB 3.2 Gen 2接続のストレージとして扱われる。ThinkPad E14 Gen 6のUSB4(Thunderbolt 4)ポートは、オプション対応となるUSB 3.2 Gen 2x2にも対応しているため、USB 3.2 Gen 2x2対応ストレージの速度を引き出せているということは留意したい。

外付けストレージ毎のCrystalDiskMark実行結果を確認

 先の一覧表の作成に用いたCrystalDiskMarkの実行結果を外付けストレージ毎にスクリーンショットで紹介する。より詳しく各ストレージの速度を確認したいユーザーは個々の結果を見てもらいたい。

 一覧表ではシーケンシャル性能(SEQ1M Q8T1)のみを紹介したが、これらのスクリーンショットからは接続するUSBポートによってランダムアクセス性能(RND4K Q1T1)なども変化していることが確認できる。

OWC Express 1M2 + Samsung 990 PRO (4TB)・USB4 40Gbps対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (OWC/990 PRO)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (OWC/990 PRO)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (OWC/990 PRO)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (OWC/990 PRO)

Samsung T9 (4TB)・USB 3.2 Gen 2x2対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (T9)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (T9)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (T9)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (T9)

Samsung T7 Shield (2TB)・USB 3.2 Gen 2対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (T7 Shield)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (T7 Shield)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (T7 Shield)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (T7 Shield)

Samsung T7 (1TB)・USB 3.2 Gen 2対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (T7)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (T7)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (T7)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (T7)

Samsung T5 EVO (8TB)・USB 3.2 Gen 1対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (T5 EVO)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (T5 EVO)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (T5 EVO)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (T5 EVO)

ポータブルHDD (1TB)・USB 3.2 Gen 2対応

USB4 (Thunderbolt 4)ポート接続時 (ポータブルHDD)
USB 3.2 Gen 2x2ポート接続時 (ポータブルHDD)
USB 3.2 Gen 2ポート接続時 (ポータブルHDD)
USB 3.2 Gen 1ポート接続時 (ポータブルHDD)

ThinkPad E14 Gen 6の内蔵SSDと外付けストレージ間でのデータ転送速度を計測してみた

 次に紹介するのは、ThinkPad E14 Gen 6が備える内蔵SSDと外付けストレージの間でデータ転送を行った時のパフォーマンスだ。転送するファイルは約20.1GBの動画ファイルで、ファイルのコピー&ペーストにはWindows標準機能(エクスプローラ)を使用する。

 実データ転送は、PCのCPU性能や内蔵するSSDの速度の影響も大きい。今回のケースでは、ベンチマークよりもThinkPad E14 Gen 6の内蔵SSDの速度やCPU性能などの影響が強く出たと思われる部分も多いので、あくまで今回のテスト環境の挙動としてデータは見てもらいたい。

 まず計測したのは、外付けストレージの対応USB規格と同じ規格のUSBポートに接続した場合のデータ転送時間とデータ転送速度。最速はUSB4接続のOWC/990 PROだが、速度的には1,500MB/sあたりで頭打ちになっているようで、読み出し速度に関してはUSB 3.2 Gen 2x2接続のT9に肉薄されている。

 続いて、すべての外付けストレージをThinkPad E14 Gen 6最速のUSBポートであるUSB4 (Thunderbolt 4)に接続した場合のデータ転送時間とデータ転送速度を計測した。

 OWC/990 PROとT9のパフォーマンスは特に変化していないが、CrystalDiskMarkにおいてUSB 3.2 Gen 2以下のUSBポートに接続した際に性能の低下がみられたT5 EVO、T7 Shield、T7については、USB4ポートに接続した時の方がより高速にデータを転送できている。

 前述の通り、これはThinkPad E14 Gen 6の仕様によるものと思われる現象だ。SSDの対応USB規格より上位規格のUSBポートに接続したからと言って転送速度が向上するとは限らないことに注意が必要だが、外付けSSDの速度が想定よりも低いような場合は今回のThinkPad E14 Gen 6と同様の現象が生じている可能性もあるので、別のUSBポートに接続して試してみる価値はあるだろう。

ノートPCも高速なUSBポートを搭載する時代長期的に使うならより高速な外付けSSDを選びたい

 4つの異なる規格のUSBポートを備えるThinkPad E14 Gen 6で外付けストレージをテストしてみた結果、すべてのSSDが最大限に性能を発揮できるとまではいかないものの、やはり上位規格の外付けSSDほど高いパフォーマンスを発揮し、より短時間でファイルの転送を行うこともできていた。

 外付けSSDの性能を十分に発揮できるか否かはPC側のUSBポートや性能に左右されるものではあるが、ノートPCにも高速なUSBポートを備えた製品が増えつつある現状と実際の速度を考えると、これから購入する外付けSSDは少なくともUSB 3.2 Gen 2以上、できればUSB 3.2 Gen 2x2以上に対応したものが欲しくなる。

 外付けストレージはPCが代替わりしても使い続ける可能性の高いデバイスの一つだ。ある程度長く使い続けるつもりなら、将来を見据えてより上位のUSB規格に対応したものを選んでみるのも良いだろう。