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“Arrow Lake”対応のZ890マザーボードがASUSから一挙登場!定番のROG STRIXとTUF GamingでCore Ultra 285Kを速攻テストしてみた

CPUの動作クロックやVRMの温度など挙動を細かくチェック text by 芹澤 正芳

 2024年10月25日、Intelの最新CPU、Arrow Lakeこと「Core Ultra 200S」シリーズと対応チップセットの「Z890」を搭載するマザーボードが発売となる。ASUSは、「ROG」、「ProArt」、「TUF Gaming」、「PRIME」、「AYW」のブランド/シリーズで、計14機種もマザーボード新製品を投入する。

 ここでは、その中から同社の定番モデルと言える「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」と「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」をピックアップ。スペックや機能面の見どころに加えて、Core Ultra 285Kを使って動作クロックや温度もチェックしていく。

ROG STRIX Z890-F GAMING WIFIとTUF GAMING Z890-PRO WIFIの注目ポイントやVRM温度の推移などを紹介していく

「ROG」ブランドの中心的存在「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」

 ASUSのゲーミングブランド「ROG」(Republic of Gamers)。ビデオカード、モニター、マウス、キーボード、ルーターなど幅広いデバイスをラインナップしているが、マザーボードでは、フラグシップでエンスージアスト向けの「ROG MAXIMUS」、ハイエンドゲーマー向けの「ROG STRIX」など、多彩なモデルを展開しており、ユーザーの好みや用途に合わせて選べるラインナップを揃えているのが特徴と言える。

 ここで紹介する「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」は、ROGの定番モデルとして長年展開している“F GAMING”型番の最新モデルだ。電源回路は16+1+2+2フェーズと大規模で、CPU向けの16フェーズは110A SPSを採用。MTP 250WのCore Ultra 9 285Kにも余裕で対応できる仕様だ

「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」
16+1+2+2フェーズの大規模電源回路とヒートパイプ内蔵の大型ヒートシンクが組み合わせており、高負荷が続いても安心の構成だ

 M.2は5スロットあり、CPU直結のGen 5×1基、Gen 4×1基、チップセット経由のGen 4×3基で、すべてにヒートシンクを搭載。PCI ExpressスロットはGen 5対応のx16とGen 4対応のx4(x16形状)が用意されている。

M.2スロットは全部で5基搭載。Gen 5対応×1、Gen 4対応×4という構成だ。すべてにヒートシンクを搭載

 Gen 5のx16スロットは、ビデオカードを手前に傾けるだけでロックが外れる「PCIe Slot Q-Release Slim」仕様。さらに、Gen 5対応のM.2スロットは、留め具をスライドさせて複数サイズのM.2 SSDに対応できる「M.2 Q-Slide」、ヒートシンクをワンタッチで外せる「M.2 Q-Release」を採用しており、よりパーツの着脱が簡単になっているのもポイントだ。

Gen 5対応M.2スロットはとくに分厚いヒートシンクを採用。フックを手前に回すと取り外せるギミックが楽しい
プラスチックの留め具を移動させることで複数サイズのM.2 SSDに対応できる「M.2 Q-Slide」にも対応

 このほか、PCケースのUSBポート用ピンヘッダーとして、USB 3.2 Gen 2x2が1ポート分(Type-C、20Gbps)、USB 3.2 Gen 1が4ポート分(5Gbps)、USB 2.0が4ポート分を用意。メモリスロットは4基あり、DDR5-8600までサポート。最大192GBまで搭載可能でCUDIMMにも対応している。ワイヤレス機能はWi-Fi 7(5.8Gbps)とBluetooth 5.4をサポート。

バックパネルはDisplayPort出力、HDMI出力、Thunderbolt 4×2、USB 3.2 Gen 2 Type-C×2、USB 3.2 Gen 2×4、USB 3.2 Gen 1×4、USB 2.0×2、2.5Gの有線LANなど充実
ワイヤレス機能は大型のアンテナを付属し、安定した通信が期待できる。ワンタッチで着脱できる「Q-Antenna」に対応

高耐久がウリの「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」

 「TUF Gaming」は、手頃な価格ながら耐久性の高い部品を採用し、堅実なパフォーマンスを発揮することから高い人気を獲得しているシリーズだ。ミリタリー調のデザインが基本路線だったが、最新の「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」は大胆にイメージを変更してホワイトカラーを採用。

「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」

 電源回路はよりリッチな構成にパワーアップし、16+2+2+1の計21フェーズの80A DrMOS電源回路を搭載。前世代のTUF GAMING Z790-PLUS WIFIが16+1フェーズの60A DrMOSだったので、かなりの強化となった。なお、以前からのブラック基調の「TUF GAMING Z890-PLUS WIFI」もラインナップしている。

16+2+2+1フェーズの大規模な電源回路に大型のヒートシンクを組み合わせている

 M.2は4スロットあり、CPU直結のGen 5×1基、チップセット経由のGen 4×3基という構成で、すべてにヒートシンクを搭載している。PCI ExpressスロットはGen 5対応のx16が1基、Gen 4対応のx4(x16形状)1基、x4が1基、x1が2基と最近のマザーボードとしては充実している。ビデオキャプチャーなど拡張カードを複数使いたい人にはオススメだ。

 x16スロットは「PCIe Slot Q-Release Slim」仕様なので、ビデオカードを傾けるだけでロックを外すことが可能だ。M.2はGen 5対応が留め具スライドすることで複数サイズのM.2を装着できる「M.2 Q-Slide」、M.2 SSDを押し込むだけで固定できる「M.2 Q-Latch」、ヒートシンクをワンタッチで外せる「M.2 Q-Release」を備えている。

 このほか、PCケースのUSBポート用ピンヘッダーとして、USB 3.2 Gen 2x2が1ポート分(Type-C、20Gbps)、USB 3.2 Gen 1が2ポート分(5Gbps)、USB 2.0が4ポート分を用意。メモリスロットは4基あり、DDR5-9066と言うかなりの高クロックメモリまでサポート。最大192GBまで搭載可能でCUDIMMにも対応する。ワイヤレス機能はWi-Fi 7(2.9Gbps)とBluetooth 5.4をサポート。

M.2スロットは全部で4基搭載。Gen 5対応×1、Gen 4対応×3という構成。すべてにヒートシンクを搭載
Gen 5対応のM.2スロットは厚めのヒートシンクを採用し、ワンタッチで着脱が可能
M.2 SSDを押し込むだけで固定できる「M.2 Q-Latch」にも対応している
バックパネルはDisplayPort出力、HDMI出力、Thunderbolt 4×2、USB 3.2 Gen 2×6、2.5Gの有線LANなどを備えている
アンテナ本体やケーブルまでホワイトカラーとかなりこだわりを感じる

MTP 250WのCore Ultra 9 285Kも安定動作!VRMも熱くならず

 ここからは、「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」と「TUF GAMING Z890-PRO WIFI」の性能をチェックしてみたい。CPUにはCore Ultra 200Sシリーズ最上位のCore Ultra 9 285K(24コア24スレッド)を用意した。CPUの動作はマザーボードのデフォルト設定を採用。その場合は、PL1=250W/PL2=250W/ICCMAX=347A/Tj105℃での動作となった。電力リミットが250Wに達するが、その負荷が続いた場合のVRM温度に注目したい。

今回のテストでは、CPUに最新のCore Ultra 9 285Kを用意

 また、ROG STRIX Z890-F GAMING WIFIに関しては、UEFIで「ASUS Advance OC Profile」を適用した場合の結果も掲載する。このプロファイルを使うと、PL1=4095W/PL2=4095W/ICCMAX=511.75A/Tj105℃となり、リミットがほぼ無制限の状態に切り換わる。検証環境は以下のとおりだ。テストはバラック状態で実行している。

【検証環境】
CPUIntel Core Ultra 9 285K(24コア24スレッド)
メモリDDR5-6400 32GB(PC5-51200 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER搭載カード
システムSSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,000W(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)

 今回のテスト環境に使用するGPUには、NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPERを用意した。2024年秋現在、4K解像度でゲームを快適にプレイしたいハイエンドゲーマーが、最新のハイエンドCPUと組み合わせて使うとしたら、AIフレーム生成や超解像といった最新技術であるDLSS 3.5をフルサポートし、現役最上位クラスの処理能力を持つRTX 4080 SUPERが最適と言える。

 ASUSはマザーボードと同様に、ROG Strix、TUF Gaming、ProArtなどブランド/シリーズから、特徴の味付けや価格の異なるさまざまなビデオカード製品をラインナップしている。最高ランクのROG Strixは、圧倒的な存在感を誇る3連ファンの大型クーラーが特徴。高発熱な上位GPUの高OC設定での駆動をしっかり支える冷却能力の高さが魅力だ。

ビデオカードはハイエンドCPUと組み合わせるにふさわしいバランスを考慮して、NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPERを搭載する製品を使用した。写真はASUS「ROG Strix GeForce RTX 4080 SUPER 16GB GDDR6X OC Edition」

 まずは、Cinebench 2024のMulti CoreとSingle Coreをそれぞれ10分間動作させたときのスコアをチェックしてみよう。Multi Coreは全コアをフル動作させる負荷の高いテストだ。

Cinebench 2024の計測結果

 ASUS Advance OC Profileを適用したROG STRIX Z890-F GAMING WIFIが僅差ながらトップ。どちらのマザーボードでもCore Ultra 9 285Kの性能をしっかり引き出して言ってよいだろう。

 では、CPUクロック、CPU温度、CPUの消費電力、VRM(電源回路)温度の推移はどうなるのか。まずは、Cinebench 2024のMulti Coreを10分間動作させたとき推移から。CPUクロック、温度、消費電力はHWiNFO Pro、VRM温度はArmoury Crateで測定している。

CPUクロックの推移
CPU温度の推移
CPU消費電力の推移
VRM温度の推移

 ROG STRIX Z890-F GAMING WIFIを見ると、ASUS Advance OC Profileを適用してもほとんど差は見られない。電力リミットを無制限にしても、それだけではCore Ultra 9 285Kはあまりムチャな動作はしないようだ(手動で設定を詰めれば違うだろうが)。

 注目したいのは、Cinebench 2024のスコアがわずかに下回ったTUF GAMING Z890-PRO WIFIのほうが、CPU温度、CPU消費電力、VRM温度がわずかに高いこと。どちらもVRMはCPUだけで16フェーズだが、ROG STRIX Z890-F GAMING WIFIは110A SPS、TUF GAMING Z890-PRO WIFIは80A DrMOSという違いがある。アンペアが大きいほうが高効率かつ低温で動作できるということだろう。

 とはいえ、どちらもVRMは最大でも42℃程度。全然熱くなっておらず、Core Ultra 9 285Kの高負荷状態が続いても余裕と言える。

 重量級ゲームではどうか。サイバーパンク2077のフレームレート(フルHD、画質“低”および“レイトレーシング:ウルトラ”)、および10分間動作させたときの推移(フルHD、画質“レイトレーシング:ウルトラ”)を見てみよう。CPUクロック、温度、消費電力はHWiNFO Pro、VRM温度はArmoury Crateで同じく測定している。

サイバーパンク2077のフレームレート計測結果
CPUクロックの推移
CPU温度の推移
CPU消費電力の推移
VRM温度の推移

 こちらも同じ傾向だ。VRM温度はどちらのマザーボードもほとんど変わっていないが、TUF GAMING Z890-PRO WIFIのほうがCPU温度と消費電力が若干高くなっている。どちらもCore Ultra 9 285Kの性能は十分引き出せているが、VRMの違いがこういう細かな部分に出るというわけだ。

 続いて、Gen 5 SSDのCrucial T700に対してTxBENCHを使って5分間連続で書き込みを実行した場合の平均と最大温度をチェックする。SSDはすべてマザーボードのCPUソケットの一番近くにあるGen 5対応M.2スロットに装着している。計測には同じくHWiNFO Proを使用した。室温は25℃だ。

連続書き込み時のSSD温度

 どちらも分厚いヒートシンクを採用しているため、連続書き込みという過酷なテストかつバラック状態のエアフローが弱い環境でも問題のない温度で動作した。高速なSSDも安心して運用できる。

そのほかZ890搭載マザーボードで注目したいモデルはコレ!

ASUSでは14機種もZ890搭載マザーボードを投入。ここまで紹介してきた2製品のほかに注目の製品をピックアップしよう。

豪華仕様のエンスー向けハイエンド「ROG MAXIMUS Z890 HERO」

 まずは、電源もM.2も強烈なハイエンドクラスの「ROG MAXIMUS Z890 HERO」。22(110A)+1(90A)+2(90A)+2(80A)と合計27フェーズという超大規模の電源回路を備え、OC派にもオススメのモデル。M.2スロットは6基もあり、Gen 5×3基、Gen 4×3基と高速で大容量のストレージ環境を求める人にも向く。PCI ExpressスロットもGen 5のx16、Gen 4のx4(x16形状)、x1があり拡張性も高い。

「ROG MAXIMUS Z890 HERO」
22+1+2+2フェーズの大規模電源。それだけにヒートシンクもヒートパイプ内蔵で巨大だ。バックパネルには、Thunderbolt 4×2、5Gと2.5Gの有線LAN、最大5.8GbpsのWi-Fi 7などを備える
【Core Ultra 9 285K+ROG MAXIMUS Z890 HEROの性能を動画で最速チェック!】

クリエイターの使い勝手を最重要視「ProArt Z890-CREATOR WIFI」

 続いて、クリエイター向けの「ProArt Z890-CREATOR WIFI」。Thunderbolt 5を2ポート備えたり、ビデオカードの映像をThunderboltから出力できるようにDisplayPort入力が用意されているなど、高速な外付けストレージや液晶タブレットとの相性がよい。M.2スロットもGen 5×1、Gen 4×4で合計5基と充実。電源回路は16(90A)+1(90A)+2(90A)+2(80A) フェーズだ。

「ProArt Z890-CREATOR WIFI」
M.2スロットは合計5基とストレージの拡張性も充実。バックパネルのクリエイター向けらしいポートが並び、Thunderbolt 5×2、Thunderbolt 4×1、DisplayPort入力、10Gの有線LANなどを装備

トレンドを凝縮したメインストリーム「PRIME Z890-P WIFI-CSM」

 最後は、メインストリーム向けの「PRIME Z890-P WIFI-CSM」。14(80A)+1(80A)+2(80A)+1(80A) で合計18フェーズの電源回路に4基のM.2スロット(ヒートシンク付きは1基だけ)、四つのPCI Expressスロットを持ち、バックパネルにはThunderbolt 4×1、2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 7対応など必要十分な機能をしっかりと網羅している。非常に手堅く仕上げたスタンダードモデルだ。

「PRIME Z890-P WIFI-CSM」
最新トレンドに沿った必要十分な機能、装備を揃える。M.2スロットは合計4基、バックパネルにはThunderbolt 4×1、2.5Gの有線LAN、Wi-Fi 7(2.9Gbps)などが並ぶ

強力な電源回路のROG STRIX、拡張スロット充実のTUF Gaming

 ROG STRIX Z890-F GAMING WIFIは、バックパネル上部にハデなLEDを内蔵するなどゲーミングマザーらしい見た目と高負荷でもド安定の強力な電源回路を備えており、ハイエンドのゲーミング環境構築を目指す人にピッタリだ。

 TUF GAMING Z890-PRO WIFIは、安定&コスパ重視だけではなく、ホワイトカラー採用で白色で統一したい人や拡張カードを複数搭載したい人にも向く。そのためROG STRIX Z890-F GAMING WIFIとは違ったニーズを満たしてくれる1枚に仕上がっている。どちらにもよさがあるだけに、今回のレビューがマザー選びの参考になれば幸いだ。