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新世代ビデオカードを機に見直したい「電源ユニット」、最新規格の12V-2x6の変更点とオススメモデルをチェックする
大出力を安全に使うためにも最新GPUを使うなら最新電源を! text by 石川 ひさよし
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- ASRock / CORSAIR / FSP / MSI / NZXT / SilverStone
2025年3月25日 00:00
電源ユニットはPC内部において重要ではあってもハデさがないパーツではある。しかし、新GPUおよびAAAタイトルのリリースが重なり、新世代のものを中心にビデオカードのニーズが高まる昨今、「ATX 3.x/PCI Express 5.xに対応した電源ユニット」にも注目すべきときだ。
CPUやGPUは値上がり傾向にあるし、節約できるところは節約したい……というマインドから電源ユニットの買い替えを見送る人も少なくなかったもしれないが、ビデオカードの消費電力が増大傾向にあり、NVIDIA系のカードを中心に新しい補助電源ケーブルの採用が進む状況を考慮すると、電源ユニットの新調するちょうどよいタイミングになってきたと言える。
そこで今回は、最新電源ユニットのキーワードである「ATX 3.x」および「PCI Express 5.x」の話題を中心に解説するとともに、PCパーツメーカー各社の最新対応電源ユニットのオススメ製品をご紹介する。
・近年の電源規格をおさらい。ATX 3.1、PCI Express 5.1登場までの経緯
・「大電力を扱うもの」だからこそよい電源を選び、正しく運用しよう
・オススメ最新電源(1) ASRock / Steel Legend SL-1000G
・オススメ最新電源(2) CORSAIR / RM850e 2025
・オススメ最新電源(3) FSP / VITA GM 1000W
・オススメ最新電源(4) MSI / MPG A1000GS PCIE5
・オススメ最新電源(5) NZXT / C1200 Gold ATX 3.1 White
・オススメ最新電源(6) SilverStone / SST-EX850R-PM
近年の電源規格をおさらい。ATX 3.1、PCI Express 5.1登場までの経緯
前述のとおり、2025年の電源選びでは、「ATX 3.1」と「PCI Express 5.1」が重要なキーワードに挙げられる。製品紹介ページ中では、ATX 3.1規格「準拠」、PCI Express 5.1仕様「対応」といった記述が用いられている。
ATX 3.1規格の詳細はIntelのサイトにある。一方のPCI Express 5.1の原文については企画団体である「PCI-SIG」の会員でなければ閲覧できないが、先のIntelのATX 3.1ドキュメントや電源メーカーのコラムなどから、おおよその概要を知ることができる。
PCI Express 8ピンから12VHPWRへ、そしてそこで生じた問題
ハイエンドGPUでは要求電力が増大し、ハイエンド勢では従来使われてきたPCI Express 8ピン(6ピン+2ピン、1口あたり最大供給150W)を2基使うのが当たり前、一部には3基求めるものも登場してきた。さすがにこれはケーブル/コネクター数が多くなり、配線の取り回しや見た目もよろしくない。
そんな状況を鑑みて、新しいATX 3.0規格およびPCI Express 5.0仕様では、1本で600Wを供給できる16ピンの補助電源ケーブル「12VHPWR」という新しい補助電源の規格が策定された。これらの問題は解決する……はずだった。コネクターの融解という新たな問題が発生したのだ。
1本(厳密には複数の線を束ねた1組)の線で最大で600Wもの電力を供給することに対する懸念は当初からあったのだが、いざGeForce RTX 40シリーズで採用が始まると、ごく一部でではあるもののトラブルが発生。おもに運用上の問題で、根本までしっかり挿さっていない、ケーブルの折り曲げで負荷がかかっていた、コネクター内に異物が混入していた、ケーブルの品質に問題があった、などさまざまな原因が取り上げられ、ユーザーの間でも12VHPWRに対する信頼が揺らいだ局面も。
12V-2x6は12VHPWRに安全策を施し置き換えるもの
この問題の解決としてPCI-SIGが新たに策定したのが「12V-2x6」だ。PCI Express 5.1仕様として策定され、ATX 3.1規格にも盛り込まれている。対策への動きは非常に速かった。
12V-2x6は12VHPWRと外観上はほぼ変更はなく、互換性もある(12VHPWRのビデオカードは12V-2x6のケーブルでも基本的には使用でき、その逆も同様)。変更点はいくつかあるが、ユーザーメリットとして特に重要なのが、コネクター内部のピンに関するものだ。
まず電力ピンがわずかに延長され、取り付け時の12Vとアースの接続の確実性を高めている。その一方、信号ピンはわずかに短くなり、12VHPWRよりもしっかりと挿し込まなくてはならなくなった。
従来の規格ではコネクターの差し込みが多少甘くても信号線がつながってしまい、12V/アースの接続が不完全な状態でも動作してしまって、結果として異常発熱や最悪の場合は出火/融解という事故の原因になる可能性があった。12V-2x6では、コネクターの差し込みが甘い場合は信号線がつながらず、その場合電力は供給されない(信号線がつながっていない=電力ピンの接続も甘く不安定)。これにより、危険な電源接続状態のままビデオカードを動作することがないようになったのだ。
「大電力を扱うもの」だからこそよい電源を選び、正しく運用しよう
12V-2x6は12VHPWRを置き換えるものなので、12VHPWRも引き続き利用できるが、これから新規に購入するなら安心の12V-2x6を選びたい。ズバリ12V-2x6という表記があればよし。あるいはATX 3.1準拠やPCI Express 5.1(PCIe 5.1)対応といった表記もキーワードだ。各メーカー、サイト上の目立つところでアピールしているのですぐに見つかるはずだ。
一方、ユーザー側も「安全で確実な電源の利用」のためのセッティングに注意したい。ユーザー側でできる対策は、「確実に根本まで挿す」および「ケーブルを無理に曲げない」の2点。
特に、前者をサポートするメーカーの取り組みとして、「12V-2x6コネクターの色分け」を行なうのが最近のトレンドだ。コネクターの差し込み部分がイエローやブルー、グリーンといった目立つカラーになっており、コネクターを正しく挿せばこのカラー部分が隠れ、逆にまだカラー部分が見えているようなら差し込みが不十分というサインになる。目視確認しやすいので分かりやすいが、電気的に守ってくれる仕組ではないので、いずれにしても「確実に挿す」を心掛けよう。
このほかにも、独自の保護機構で最悪の事態を防ぐ取り組みもある。こうした電源メーカー側からの取り組みはその製品の付加価値であるとともに、ユーザーにも一つ上の安心感を与えてくれる。今後、ほかのメーカーからもこうした動きが見られるようになるだろう。
オススメ最新電源ユニット6製品を一挙紹介!
以上の最新規格の状況を踏まえて、今春オススメする最新電源ユニットを6製品ご紹介する。いずれの製品とも出力の異なる複数製品がラインナップされているが(一部製品ではカラーバリエーションも用意)、PCに搭載するパーツ、特にビデオカードによって必要な電源出力は異なってくるので、製品選びの際には使用するビデオカードの“推奨電源”を併せてチェックしてみてほしい。
電源では新進気鋭、ASRockの高耐久・高スペック「Stell Legend」
同社の電源ラインナップ中ではミドルレンジをカバーする「Steel Legend」。SL-1000Gは定格出力1,000Wで、変換効率が80PLUS Gold認証、CybeneticsのETA Platinum認証のモデルである。マザーボードなどの“Steel Legend”と同様に耐久性を重視しており、105℃耐熱の12V-2x6ケーブル、NTC温度センサーによるケーブルの異常加熱の監視、100%日本メーカー製コンデンサーなどを採用し、10年間保証と長期間。
静かさの認証規格CybeneticsのLAMBDA A認証。12V-2x6コネクターの色分け、柔らかく扱いやすいフラットケーブル、準ファンレス機能「iCool」、複数のUSB機器を接続しても安定した電力が供給可能な+5Vブーストモードなど、最新トレンドを網羅。同シリーズは750/850/1,000Wのラインナップで、850/1,000Wにはホワイトモデルもある。
GeForceもRadeonも万全。対応の幅が広いCORSAIRの定番「RMe」
CORSAIRの電源ユニットのうち、「RM」と言えば中核的存在だ。「RM850e 2025」はETA Gold認証を取得した2025年版の850Wモデルだ。奥行き140mmとコンパクトなことから、さまざまなPCケースで相性の心配なしに搭載でき、フルプラグイン方式なので必要なケーブルだけを接続すればよく内部がスッキリとさせられる。
静音性に優れた12cm角ライフルベアリングファンや準ファンレス機能を採用し、耐熱105℃コンデンサーの採用や安定性&高効率を実現するActive PFC回路も搭載。同シリーズのラインナップには750/850/1,000Wがある。Radeon RXハイエンドビデオカード用として12V-2x6からPCI Express 6+2ピン×2に分岐させるケーブルも付属する。
老舗電源メーカーFSPの「VITA」は高信頼・大出力で高コスパ
FSPは自社で設計を行っている老舗電源メーカーの一社。 最新スペックへの対応はもちろん、内部設計のこだわりも強く、同期整流器を備えた LLC 共振コンバーター トポロジーを採用することでスイッチング損失を削減し、効率を高め、負荷条件下で出力電圧を一定に保つと言う。また、本製品で採用するコンデンサーは日本メーカー製というだけでなく産業用レベルの耐熱105℃品とのことで高信頼、長寿命、高耐久をうたっている。
準ファンレス機能はないが、ファン回転数制御と油圧ベアリング(HYB)ファンによって動作ノイズを抑制。奥行き14cmとコンパクトで、大きなPCケースからコンパクトなPCケースまで幅広く搭載できる。同シリーズラインナップには850Wモデルも用意されている。
EZ DIYを電源にも展開するMSI「MPG GSシリーズ」は12V-2x6を2基搭載
コンシューマー向け電源参入は比較的最近のMSIだが、コネクターの色分けなどは他社に先駆けて取り組んでいる。マザーボードにおける「EZ DIY」機能のように、「誰もが組める」を掲げるメーカーだ。この製品のポイントは12V-2x6×2基に対応するところ。まだ12V-2x6を2本要するビデオカードはないが、マルチGPU、AI学習などのニーズはすでにある。一方でPCI Express 6+2ピンが1基のみなので、まさにGeForce RTX 50シリーズで組みたい方向けと言える。
コンデンサーはすべて耐熱105℃仕様。Infineon CoolMOSやSiC SBDといった最先端部品を採用している。同シリーズのラインナップには1,250W(2025年4月4日発売)、850Wもあるが、850WモデルについてはPCI Express 6+2ピン×3、12V-2x6×1という仕様だ。
【YouTubeで製品紹介】MSI MPG A1000GS PCIE5
→MPG A1250GS PCIE5の製品情報
→MPG A1000GS PCIE5の製品情報
→MPG A850GS PCIE5の製品情報
対象のMSI 電源ユニットを購入・応募していただいた方の中から抽選で50名様にSteam版「モンスターハンターワイルズ」のゲームコードをプレゼント。対象購入期間の残り日数があとわずかなのでお急ぎを!

・対象製品:MPG A1000GS PCIE5
・対象購入期間:2025年2月28日(金)~2025年3月28日(金)
・応募期間:2025年3月14日(金)~2025年4月25日(金)
NZXTのこだわりデザインは細部まで。コネクターまでオールホワイト!
シンプルでシャープなデザインは同社PCケースと共通するコンセプト。ブラックモデルもあるが、今回ピックアップしたのはホワイトモデルだ。電源側コネクターもケーブル側コネクターもすべてがホワイト。究極のホワイトPCを自作したいなら欠かせない。ゲーミングPCケースで人気のNZXTだけに、電源にもこうした見た目、ゲーミングのこだわりが詰まっている。
使用するコンデンサーはすべて日本メーカー製。ほか、ホールドアップ時間とリプルノイズを最小化する設計とのこと。同シリーズのラインナップには1,000W、850Wもある。
→C1200 Gold ATX 3.1 Whiteの製品情報
SFXと言えばSilverStone。高耐久設計で超小型ゲーミングPC自作に
スモールフォームファクターでも高性能ゲーミングPCを組みたい、といったニーズに応えるSFX電源。SFX-LではないSFX規格サイズで定格850Wを実現しているため、さまざまなケースに搭載可能だ。ATX 3.0規格相当のSFX規格「SFX12V 4.0」に準拠し、12VHPWRに対応している。
使用電解コンデンサーはすべて日本メーカー製。冷却のハードルが高い小型PCケースにGeForce RTX 50シリーズビデオカードを搭載しようという方は「50℃動作温度での連続出力」対応にも注目したい。小型電源ながら準ファンレス機能も備えている。