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クリエイティブだってこの組み合わせなら万全。Ryzen 9 9950X3D+Radeon RX 9070 XTはゲームだけじゃない!

映像制作やAI分野で着実に進化

 ゲーミング用途向けCPUとして高い評価を得ているAMD Ryzenの「3D V-Cache」搭載モデル。Zen 5世代の先陣を切ったRyzen 7 9800X3Dも、群を抜く性能で発売以来好評を博している。2025年3月には、ついに最上位モデルの「Ryzen 9 9950X3D」および「Ryzen 9 9900X3D」が発売となった。

 特にゲーム分野で抜群の強さを見せる3D V-Cache搭載モデルだが、物理16コアおよび12コアのハイエンドCPUともなると、ゲーム以外の分野、とりわけ高いCPU性能を求められるクリエイティブ分野での活用にも期待が集まる。一方、同時期にはAMDの新GPU「Radeon RX 9070 XT」を搭載したビデオカードも登場している。今回は、「Ryzen 9 9950X3D」と「Radeon RX 9070 XT」というAMDの最新構成がクリエイティブ作業にどのように効くのかチェックしてみたい。

Zen 5世代の3D V-Cache対応Ryzen 9、RDNA 4世代のRadeonの特徴

 まずは、3月に発売された新Ryzen 9、新Radeonの特徴を確認しよう。

 Zen 5世代の最上位モデルであるRyzen 9は2基のCCD(Core Complex Die)とI/Oダイで構成される。CCDごとのCPUコア数は8コアまたは6コアで、この点は3D V-Cacheモデルでも同様だが、このうち1基のCCDに3D V-Cacheが搭載されている。

 Ryzen 7 9800X3Dは、3D V-Cacheを搭載したCCD×1基の8コアCPUなので、ごく簡単に表現するなら、“ゲーム最強”の呼び声も高いRyzen 7 9800X3Dに、汎用性の高い8コア搭載CCDを追加したのがRyzen 9 9950X3D、と言える。

Zen 5世代Ryzenの主なスペック

 もともと一般用途、ゲーム、クリエイティブと全方位に強くポテンシャルの高いRyzen 9 9950Xの完全上位互換モデルであり、3D V-Cache搭載という付加価値と、Ryzen 7 9800X3Dよりも高いブーストクロックを得て、より隙のない仕様に仕上がっている。

 次に新GPUのRadeon RX 9070 XT/9070を見てみよう。今回から命名ルールが変更されているが、型番「70」が示しているのはアッパーミドルグレード。CU数だけみれば前世代の準ハイエンドであるRadeon RX 7800 XTおよびその下位モデルであるRX 7800 GREのほうが上。しかし、レイトレーシングやAI分野での性能向上、CUそのものの効率アップ、メディアエンジンの強化がそれぞれ図られている。

 一方で、VRAMはあえて世代交代せずにGDDR6を引き続き採用。容量はアッパーミドルGPUとしては大容量の16GBとすると同時に、第3世代となったInfinity Cacheの効果でメモリ帯域を補う。これらの進化ポイントを総合することで、全体の性能としては前世代のハイエンドモデルを上回ってきており、ゲームはもちろん、GPU性能を求められるシーンが一層増えてきたクリエイティブ分野においても、その活躍が期待される。

RDNA 4/5世代Radeonの主なスペック

Ryzen 9 9950X3D+Radeon RX 9070 XTの“クリエイティブ性能”をチェック

 それでは、実際に行ったベンチマークテストうち、クリエイティブ性能にフォーカスして結果を振り返っていく。テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 9950X3D、Ryzen 9 9950X、
Ryzen 7 9800X3D
マザーボードASRock X870E Taichi
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
ビデオカードASRock AMD Radeon RX 9070 XT Taichi 16GB OC
ストレージM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
+M.2 NVMe SSD 4TB(PCI Express 4.0 x4)
電源ユニット1,300W(80PLUS Titanium)
OSMicrosoft Windows 11 Pro(24H2)

 テスト結果の傾向はベンチマークソフトにより違いがあるが、特にコア数の多さが性能に結び付きやすい項目については9950X3Dが9800X3Dよりもスコアを伸ばしている。

UL Procyon Photo Editing Benchmarkの計測結果
Cinebench 2024の計測結果
HandBrake(エンコード時間)の計測結果

 たとえば、UL ProcyonのPhoto EditingはAdobe Photoshop/Lightroom Classicを用いたテストだが、これらのアプリはCPUコア数が一定数を超えると、性能の向上は鈍化する傾向にあるため、各システム間で大きな性能差は生まれていない。一方で、3DCGのレンダリングエンジンを使ったベンチのCinebench 2024や、動画エンコーダーのHandBrakeによるテストでは、ブーストクロックの高さやコア数の多さが効果を発揮し、9950X3Dのテスト結果が9800X3Dを大きく上回っている。

 また、今後クリエイティブ用途でのより一層の活用が考えられるAI分野のテストに置いても、9950X3Dは優れた結果を見せる。

UL Procyon v2.10.1663 AI Computer Vision Benchmarkの計測結果(テストにはCPUのみを使用)

 機械学習による画像認識モデルを利用してAI性能をテストするUL ProcyonのAI Computer Vision Benchmarkにおいては、9950X3Dや9800X3Dから10%以上の性能向上を果たしている。なお、サブスコアを見てみたところ、モバイルデバイスも考慮したコンパクトで軽量なモデルを使ったテストより、複雑で高度なモデルを利用した重いテストのほうが9950X3Dのスコアが高くなる傾向にあったのはおもしろい。

 ゲームに結果も二つほど紹介しておく。いずれもCPUの性能を比較するためGPU負荷は最低レベルにまで落とした場合のテスト結果だ。

オーバーウォッチ2(グラフ左)およびCities: Skylines II(グラフ右)の計測結果。テストはいずれも画質を最低設定まで落としてGPUボトルネックを配し、CPU性能の差のみにフォーカスしている

 オーバーウォッチ2では大差、Cities: Skylines IIでは僅差で9950Xを9800X3Dが大きく上回る結果となっていたが、9950X3Dは“ゲーム最強”と言われた9800X3Dを超えてきている。

 以上のように、今回のテストの振り返りを通じて、“ゲーム最強”の3D V-Cashe搭載の9800X3Dと“クリエイティブ用途に強い”多コア&高クロックの9950X、という両方の特徴を同時に手にした9950X3Dである、ということが改めて見えてきた。

 さらに、Radeon RX 9070 XT/9070に着目して別のテスト結果を見てみよう。テスト環境は以下のとおり。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D
マザーASRock X870E Taichi
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
ビデオカードASRock AMD Radeon RX 9070 XT Taichi 16GB OC、
ASRock AMD Radeon RX 9070 Steel Legend 16GB OC、
AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスカード、
ASRock AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC
ストレージM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
+M.2 NVMe SSD 4TB(PCI Express 4.0 x4)
電源ユニット1,300W(80PLUS Titanium)
OSMicrosoft Windows 11 Pro(24H2)

 最新のRyzenと組み合わせるべきGPUとして見るときに、“1世代前のハイエンド~準ハイエンドモデル”がよいのか、“位置付け的にはアッパーモデル層の最新モデル”がよいのかは悩みどころ。映像編集用途のテスト結果を見てみると、CU数で上回る前世代の準ハイエンド級であるRX 7900 GREを上回る、というテスト結果となっている。

UL Procyon Video Editing Benchmark(Premiere ProによるGPU処理)の計測結果

 さらに、AI性能の面では前世代から大きく進化。AI画像生成を用いたテストでは、RX 9070 XTについては、RX 7900 GREを2.3倍強、RX 7900 XTを1.6倍強上回る結果となった。

UL Procyon AI Image Generation Benchmarkの計測結果(Stable Diffusion XLによるGPU処理)

 現在のGPUは、クリエイティブ用途においてはAIを活用するために性能を求められるようになりつつある。ゲーム性能の向上が話題のRDNA 4世代のRyzenだが、大幅に向上したAI性能はクリエイターも注目すべきポイントだろう。

汎用性やAI分野での性能向上によりクリエイティブ用途での活躍に期待

 現在の高性能PCに対しては、1台で複数の用途に使いたいというニーズも多い。たとえば、クリエイティブな作業をメインに行うマシンで、時にはゲームも楽しみたい、AIを活用した処理を行いたい、という具合だ。そう考えると、Ryzen 9 9950X3Dはクリエイティブワークの効率的な処理に直結する高いマルチスレッド性能と、ゲーミング最強とうたわれる9800X3Dに匹敵するゲーミング性能を兼ね備えた“高い総合力”を備えたCPUと言える。

 また、Radeon RX 9070 XTは、GPUの単純性能だけでなくAI分野での性能も大幅な強化が進んでいる。位置付け的にはアッパーミドルグレードということで、コスト的にもある程度抑制されているところも好感。近年のクリエイティブ用途では、GPUが活用されるシーンはますます増えているため、Ryzen 9 9950X3Dと組み合わせることで、クリエイター向けPCに向いたバランスのよい構成となるはずだ。