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最速の外付けSSDをThunderbolt 5対応ケースで作成、速度を引き出すためのポイントもチェック
高速ストレージの性能を引き出すにはFastCopyが必須? text by 坂本はじめ
- 提供:
- Samsung
2025年7月12日 00:00
最新インターフェイスのThunderbolt 5を採用するACASIS製の外付けSSDケース「TB501Pro」が登場した。最大速度は80Gbpsで、これはUSB4/Thunderbolt 4(最大40Gbps)の2倍に達している
今回はTB501ProにSamsungのPCIe 4.0 SSD「990 PRO」を搭載し、最速クラスの外付けストレージを作成。これから普及が見込まれるThunderbolt 5だが、現時点でどれほどの速度が発揮できるのかテストしてみた。
最大80GbpsのThunderbolt 5対応外付けSSDケース「TB501Pro」使いこなしの注意点も確認
ACASISのTB501Proはインターフェイスに最大80Gbps対応のThunderbolt 5を採用した外付けSSDケース。内蔵可能なSSDはM.2型のNVMe SSDで、対応フォームファクターは2230/2242/2260/2280。なお、内蔵SSDのインターフェイスはPCIe 4.0 x4までのサポートで、PCIe 5.0接続のSSDは非対応とされている(PCIe 5.0対応SSD使用時の挙動については後述)。
本体は放熱性に優れたアルミニウム合金製で、コントローラチップを冷却するための冷却ファンを装備。コントローラチップには、IntelのThunderbolt 5コントローラ「JHL9480」と、USB 3.2 Gen 2対応コントローラ「RTL9210」を搭載している。このデュアルチップ構成は、JHL9480が対応していないUSB 3.2との互換性をRTL9210によって補完するもののようだ。
今回、TB501Proに組み込むのはSamsungのPCIe 4.0 SSDである990 PROの4TBモデル。
最大でリード7,450MB/s、ライト6,900MB/sを実現する最速級のPCIe 4.0 SSDであり、PCIe 5.0 SSD非対応のTB501Proに搭載できるSSDの中でも最上級の性能が期待できる1枚だ。

注意点1 SSDが冷えない場合はサーマルパッドの調整を
本体に冷却ファンを内蔵するTB501Proだが、そのファンはコントローラチップの冷却に用いられており、内蔵したSSDの冷却はサーマルパッドで接続された底面パネルが担っている。80Gbps対応のThunderbolt 5接続で利用する場合、内蔵したSSDの発熱も相応に大きくなることが予想される。
使用するSSDのモデルや、個体差などによる部分もあるが、SSDの冷却がうまくいっていないと思われる場合は、サーマルパッドを別途用意して調整したほうがよいだろう。
今回使用した個体の環境では、SSDコントローラとサーマルパッドの厚さが若干合っておらず、熱伝導率7W/mKの1mm厚サーマルパッドを2枚用意し、重ねることで2mm厚にして利用した。これにより、標準のサーマルパッドよりCrystalDiskMark実行時の最大温度をNANDで13℃、コントローラでは30℃も低くすることができた。

注意点2 PCIe 5.0対応SSDはThunderbolt接続時に認識されなくなるので注意
TB501ProはPCIe 5.0 SSDに非対応とされているが、全く動作しないのかも確認してみた。PCIe 5.0対応SSDの9100 PRO(4TB)を搭載してThunderbolt 5ポートに接続すると、「TPS DMC Family」というデバイスとしてPCに認識される。Thunderbolt 4ポートに接続しても同じ状態になる。SSD非搭載の状態でTB501ProをPCに接続してもこの状態になるので、搭載したSSDがうまく認識されない状態となっているようだ。
大は小を兼ねる感覚でPCIe 5.0対応SSDを使うことはできないので、購入時は注意してほしい。
なお、9100 PRO(4TB)をTB501Proに搭載した状態でUSB 3.2ポートに接続して挙動を確かめてみたが、USB 3.2ポート接続時は搭載した9100 PROが認識され、USB 3.2 Gen2対応外付けSSDとして使用できた。USB接続時はTB501ProとPCとの接続チップがRealtekのUSB対応コントローラ「RTL9210」に切り替わり、こちらのチップは正常にPCIe 5.0 SSDを認識できるようだ。
今回テストに使用しているデスクトップPC環境とノートPC環境両方でベンチマーク速度も確認してみたが、両環境ともリード/ライトともに1GB/sの速度が発揮され、USB 3.2 Gen2接続SSDらしい速度を発揮した。また、デスクトップPC環境のUSB 3.2 Gen2x2ポートにも接続してベンチマークを実行してみたが、速度はUSB 3.2 Gen2ポート接続時と変わらなかったので、規格としてはUSB 3.2 Gen2までの対応となっているようだ。
6GB/s越えの最速ストレージらしい速度を発揮Thunderbolt 5対応マザーボード接続時のパフォーマンス
それでは、TB501Proと990 PROを組み合わせたThunderbolt 5外付けSSDの性能を確かめていく。
テストに使用するのは、Thunderbolt 5ポートを備えるASUSのIntel Z890マザーボード「ProArt Z890-CREATOR WIFI」で構築したPCで、外付けSSDとデータのやり取りに利用するSSDにはSamsungのPCIe 5.0 SSDである9100 PROを用意した。

Thunderbolt 5外付けSSDをPCに接続したら、まず実行するべきなのが書き込みキャッシュの設定だ。
Thunderbolt 5外付けSSDが本来の性能を発揮するためには、デバイスマネージャーのディスク一覧から外付けSSDのプロパティを開き、ポリシーの設定を「高パフォーマンス」と「ディスクの書き込みキャッシュ有効にする」にチェックが入った状態に変更する必要がある。使用して速度がうまく出ない際は設定を確認してほしい。
Windows側の設定などを済ませてThunderbolt 5外付けSSDでCrystalDiskMark 9.0.0を実行した結果が以下の画像だ。
Thunderbolt 5外付けSSDの最大速度はリード6,239MB/s、ライト5,953MB/sに達しており、最大でも4,000MB/s程度にとどまるUSB4/Thunderbolt 4対応の外付けSSDを大きく上回る速度を実現してみせた。
ファイル転送はエクスプローラーでは速度が発揮されないので注意FastCopyならファイル転送も激速!
ベンチマーク結果は新世代インターフェイスらしい結果となったが、外付けSSDとPC内蔵SSDの間で実際にファイル転送を行った場合のパフォーマンスも確認してみよう。
今回用意したのは容量約123GiB(132,439,352,801バイト)の大容量なRAW動画ファイルで、外付けSSDからPC内蔵SSDへデータを転送した際のパフォーマンスと、PC内蔵SSDから外付けSSDにデータを転送した際のパフォーマンスを計測してみた。
また、今回のデータ転送テストでは、Windowsがエクスプローラーの機能として提供しているコピー&ペースト機能だけでなく、ファイルコピー&バックアップツールの「FastCopy」を利用した場合のパフォーマンスも計測する。
Windowsのエクスプローラーは超高速ストレージなどで使用した場合に速度が出し切れないことを以前のインタビュー記事で紹介しているが、Thunderbolt 5対応ストレージでどれだけ差が出るのかも確認してもらいたい。
なお、FastCopyを用いたファイル転送時では、大容量のバッファや非同期I/Oを活用することでNVMe SSDの性能をより引き出すことができる。今回のテストでは、キュー数やバッファサイズはFastCopy標準設定を採用しつつ、右上の特権ボタンを押下した管理者モードと、標準の通常モードでテストを実行した。管理者モードはアプリを「管理者として実行」した時と同じ状態になり、データ転送時の条件によっては速度が向上する場合がある。
実際にThunderbolt 5外付けSSDとPC内蔵SSDの間でファイル転送を行った結果が以下のグラフだ。
Windowsのエクスプローラーを使ったファイル転送では、外付けSSDからPCへデータを転送した際の時間は55.9秒、PCから外付けSSDにデータを転送した際の時間は60.9秒となった。FastCopyを利用した際は、外付けSSDからPCへデータを転送した際は21.2~21.4秒、PCから外付けSSDにデータを転送した際は22.3~34.5秒と明らかに短時間でファイル転送を完了した。

データ転送時の時間を転送速度に換算したものが以下のグラフだ。FastCopyの管理者モードは双方向のデータ転送で6GB/s前後の速度を発揮しており、エクスプローラーとは別格の速度となっている。また、FastCopyでPCから外付けSSDにデータを転送する際は管理者モード/通常モードで差はほぼなかったが、PCから外付けSSDにデータを転送する際は2GB/sほど差があり、動作モードによる速度差が生じている。
エクスプローラーを使ったファイル転送で速度が出ない現象は、Windowsの保守的なファイルコピーの仕様によるものであり、USB4/Thunderbolt 4外付けSSDや内蔵SSD同士のファイル転送でも発生する。高速なSSD同士で大容量のファイル転送を行うのであれば、SSD性能をより引き出せるFastCopyの利用がおすすめだ。

なお、今回テストに使用しているファイルのサイズを123GiB(132,439,352,801バイト)と2進接頭辞の「GiB(ギビバイト)」で記載したのは、接頭語の解釈によって生じる速度計算の誤差を避けるためだ。
本来、M(メガ)やG(ギガ)といった接頭語は国際単位系(SI)によって10の累乗倍と定義されているのだが、2進数を基本とするPCのデータ容量を扱う場合、B(バイト)の1,024倍(2の10乗)をKB(キロバイト)、KBの1,024倍をMB(メガバイト)として数えることが慣例化しており、単位が上がるごとに本来のSI接頭語とのズレが拡大していく問題が存在する。後にMiB(メビバイト)やGiB(ギビバイト)と言った2進接頭辞が国際電気標準会議により定義されたが、Windowsは慣例に倣った容量表記を継続している。
データ転送速度で使用される接頭語は10の累乗倍として定義されている本来のSI接頭語であるため、Windowsの接頭語と混同して計算するとMBで約4.86%、GBでは約7.37%ものズレが生じてしまう。このような混乱を避けるべく、今回はデータ容量をGiBと表記し、実際の計算ではファイルのプロパティで表示される接頭語無しのデータサイズ(132,439,352,801バイト)を使用している。

注意点3 速度を引き出すならファイルシステムに注意
今回、SSDのファイルシステムはNTFSの状態でテストしているが、ファイルシステムの違いで性能に差が出ることもある。SDカードやUSBメモリなどの外付けストレージで使用されることの多いexFATと、Windowsの内蔵ストレージで標準的に使用されるNTFSの速度を比較してみた。
まずはCrystalDiskMark結果だが、ベンチマークの値で見るとNTFSとexFATでほぼ同じ速度となった。
大きな差が出たのはFastCopyでファイルを転送したときで、exFATでフォーマットした環境では管理者モードでも速度を引き出しきれない状態となった。なお、テストには13.64GiB=13,974MiB(14,653,778,228バイト)の動画ファイルを使用し、PCから外付けSSDへデータと転送して速度を確認している。
Macやスマートフォンなどと外付けSSDを共有する場合、exFATでフォーマットした方が利便性は上がるが、Windows環境ではファイルシステムによって性能に差が出るケースもあることは知っておいた方が良いだろう。
Thunderbolt 5搭載ノートPCでも速度は出るのか?
Thunderbolt 5を搭載するマザーボード「ProArt Z890-CREATOR WIFI」で構築したデスクトップ環境では、Thunderbolt 5外付けSSDが次世代インターフェイスならではの素晴らしいパフォーマンスを発揮してみせたが、ノートPC環境でも同様の結果は得られるのだろうか。
Thunderbolt 5ポートを備えるMSIのゲーミングノート「Vector 17 HX AI A2XWHG」を使い、デスクトップ環境同様のテストを行ってみることにした。

MSI Vector 17 HX AI A2XWHG環境でCrystalDiskMarkを実行した結果は以下の通り。外付けSSDの最大速度はリード6,225MB/s、ライト5,843MB/sとなっており、デスクトップPCに接続した場合と遜色ないパフォーマンスが得られている。
ファイル転送テストでは、FastCopyを管理者モードで使用してもデスクトップ環境での計測結果より速度が出ていない様子がみられる。
大きな要因であると考えられるのがノートPCの内蔵SSDだ。例えば、外付けSSDからPCへのデータ転送で記録された最速の5,547MB/sという数字は、内蔵SSDのライト性能がボトルネックとなって転送速度が頭打ちになったものだ。また、外付けSSDからPCへの転送でFastCopyの管理者モードと通常モードで差がついた理由についても、PC側のSSDがOS入りのシステムストレージであることが影響しているものと思われる。
速度に影響する要素は内蔵SSDだけでは無いが、Thunderbolt 5外付けSSDの性能を最大限に生かしたファイル転送を行うためには内蔵SSD側の性能も重要になるということは把握しておこう。


Thunderbolt 5外付けSSD同士でのファイル転送をテスト
今回テストしたマザーボードとノートPCは、いずれもThunderbolt 5ポートを2基搭載している。つまり、2基のThunderbolt 5外付けSSDを接続できるということだ。
Thunderbolt 5は双方向で80Gbpsの転送速度を実現しているわけだが、2基のThunderbolt 5外付けSSDを接続し、その外付けSSD間でファイル転送を行った場合、どの程度の速度で動作するのだろうか。今回、TB501Proと990 PRO(4TB)を2セット用意することができたので実測してみよう。
テストでは、単体で実施したものと同じく123GiB(132,439,352,801バイト)の大容量ファイルを転送し、データ転送時間と転送速度を計測した。


Thunderbolt 5外付けSSD同士でファイル転送を行った結果、FastCopy利用時の転送速度はデスクトップPCでは最大5,822MB/s、ノートPCでは最大4,562MB/sを記録した。
デスクトップPC、ノートPCどちらの環境も内蔵SSDから外付けSSDへデータを転送した際より遅くなる傾向が見られ、FastCopyの通常モードでは特に落ち込みが顕著となった。内蔵SSDからのデータ転送よりは速度が落ちるとはいえ、FastCopyの管理者モードであれば外付けSSDから外付けSSDへのデータ転送もだいぶ高速に行えるので、実用性のある性能は発揮できる。
Thunderbolt 5黎明期ゆえの互換性問題には注意環境によってはうまく動作しないことも
TB501Proと990 PROで構築したThunderbolt 5外付けSSDは、Thunderbolt 5ポートを備えるデスクトップPCとノートPCの両方で80Gbps接続ならではの高速性を発揮して見せたわけだが、まだ普及が始まったばかりの規格だけあって互換性に関する課題も存在する。
先にも触れたが、TB501Proが搭載するIntelのThunderbolt 5コントローラ「JHL9480」はUSB 3.2以前のUSB規格をサポートしていない。TB501ProではRealtekのUSB 3.2 Gen 2コントローラ「RTL9210」を搭載することでUSB規格との下位互換を実現してはいるのだが、代理店のITGマーケティングが独自に調査したところ、一部のPCが備えるUSB4/Thunderbolt 4ポートにTB501Proを接続した場合、外付けSSDが認識されない環境があるとのことだ。
このあたりはファームウェアの作り込みや採用するエンクロージャーチップなどにもよって挙動が変わってくるので、導入前にはレビュー記事や購入したユーザーの口コミなどを確認するのがよいだろう。
最先端を体験したいチャレンジャー向けのThunderbolt 5外付けSSD
TB501Proと990 PROで構築したThunderbolt 5外付けSSDは、USB4の2倍に達する80Gbps接続ならではの高速性を発揮してみせた。
Windowsの設定を変更しなければ書き込みの速度が出なかったり、ファイル転送で性能を発揮するにはFastCopyなどのファイル転送ソフトを利用する必要があったり、外付けケース側がPCIe 5.0 SSD非対応であったり、接続インターフェイスの下位互換性に懸念を抱えていたりと、使いこなすにはユーザー側に配慮が求められる面はあるが、TB501Proは最先端のインターフェイスの性能を体験するにはもってこいのアイテムといえる。
今のところ上級者向けの製品ではあるが、最速という言葉に魅力を感じるチャレンジャー気質なユーザーにはぜひThunderbolt 5外付けSSDの自作にチャレンジしてみてもらいたい。