トピック

取り付けが凄く楽に、水冷クーラー「MSI MAG CORELIQUID I360」はハイエンドCPUも冷やせて高コスパ

ファン取り付け/配線済みでケーブルも少ない「EZ DIY」設計 text by 坂本はじめ

 MSIの「MAG CORELIQUID Iシリーズ」は、水冷ヘッドにインフィニティーミラーデザインを採用するMSIのオールインワン水冷クーラー。取り付けが簡単になったり、ケーブルを目立たせない工夫が取り入れられたりと、扱いやすさの面でも改良されている。

 今回は、同シリーズの360mmラジエーター採用モデル「MAG CORELIQUID I360」をRyzen 9 9950X環境でテスト。MSIが
推進しているユーザーフレンドリーな「EZ DIY」設計の特徴や冷却性能、特徴的なインフィニティーミラーデザインを活かしたイルミネーション機能などをチェックしてみた。

取り付けも簡単になったMAG CORELIQUID Iシリーズ黒/白の2色展開、360mm/240mmモデルをラインアップ

 MSIのMAG CORELIQUID I360は、MAG CORELIQUID Iシリーズのラジエーターサイズ360mmモデル。120mmファン3基を標準搭載した大型のオールインワン水冷クーラーだ。対応CPUソケットはAMDのSocket AM5/AM4、およびIntelのLGA1851/1700/1200/115xで、カラーバリエーションは白と黒の2色。実売価格は2万円前後。

 MAG CORELIQUID Iシリーズは240mmラジエーター/120mmファン2基のMAG CORELIQUID I240も用意されており、こちらの実売価格1万7千円前後となっている。

MAG CORELIQUID I360
120mmファンを3基標準搭載する360mmサイズのラジエーター
標準で3基のARGB LED内蔵120mmファンを搭載
ARGB LEDとインフィニティーミラーデザインを採用した水冷ヘッド
CPUと接触するベース面は銅製で、若干の凸形状に仕上げられている
MAG CORELIQUID I360には白と黒、2色のカラーバリエーションが用意されている。今回は黒モデルで検証を行う
白モデルも3基のARGB LED内蔵120mmファンを搭載
黒モデルと同じく、水冷ヘッドにはインフィニティーミラーデザインが取り入れられている

ファンはラジエーターに取り付け済みで接続も最小、ケーブルを見えなくするカバーも付属

 MAG CORELIQUID I360では、近年MSIが「EZ DIY」をキーワードに推進しているユーザーフレンドリーな設計が取り入れられている。冷却ファンは初めからラジエーターに組み込み済みで、専用のケーブルで配線を集約した状態になっている。

冷却ファンは工場出荷時点でラジエーターに組み込み済みで、冷却ファン3基のケーブルを集約する配線まで完了している

 通常、ARGB搭載のファン3基をラジエーターに搭載する際、ファンケーブル3本とRGB制御用のケーブル3本の計6本の配線に加え、12か所のネジ止め作業が必要になる。だが、MAG CORELIQUID I360はファン組み込み済みの状態で販売されているので、この手間が一切かからない。こうした設計は作業を大幅に簡略化するものであり、手軽さは段違い。PCを組み立てる側からすると本当にありがたい仕様だ。

 また、ファン3基は専用ケーブルでまとめられており、ARGB用1本とファン用1本の計2本にまとめられている。ARGB用のケーブルはヘッド側のケーブルと連結可能で、PCにはポンプ用電源ケーブル、ARGB用ケーブル、ファン用ケーブルの3本を接続すれば使用可能な構造になっている。

冷却ファンの取り付け作業を省き、ファン3基の配線が4ピンファンコネクタとARGBコネクタ各1つで完了する
水冷ヘッドから伸びる2本のケーブル。内蔵ポンプを稼働させるための4ピンファンコネクタと、ARGBコネクタがあり、ファンのARGBケーブルが接続可能な分岐が設けられている。
こちらはファン側のケーブル。3基分がまとめられ、ファン用ケーブルが1本、ARGB用ケーブルが1本の構成となっている

 より見た目をスマートにするためのケーブルカバーが付属しており、冷却ファンの側面に取り付けることでケーブルを見えなくできるほか、3基のファンも完全一体型風の外観にできる。使い勝手だけでなく、見た目の面にもこだわった設計が取り入れられている。

冷却ファンの側面を覆い隠すケーブルカバー
こちらはケーブルカバー無しの状態
ケーブルカバーを使用することでファンの側面と配線を覆い隠し、よりスマートなビジュアルを実現する

実はこんなところも便利、部品は見やすく取り出しやすいトレイに梱包

 水冷クーラーは固定具やネジなど細かいパーツが多いジャンルの製品で、通常パーツ類はビニールの小袋などに小分けされた状態で付属している製品が多いが、MAG CORELIQUID I360はこうした部分にも工夫がみられる。付属品はトレイに分かりやすく分類・収納した状態となっており、使用する部品が分かりやすく迷うことも少ない。こうした部分もユーザーフレンドリーを掲げるMSIの「EZ DIY」の思想の一つと言えるだろう。

 また、MAG CORELIQUID I360にはユニークな付属品として、LGA1851 OFFSET KITが同梱されている。水冷ヘッドに標準搭載されているブラケットを置き換えるもので、LGA1851対応CPUのホットスポットに対してベース面を最適に設置させることで、冷却性能の向上を図るパーツだ。今回はRyzen環境で試用したため効果の検証は行わなかったが、MSIによればCPU温度を3%低減する効果があるという。

アクセサリーパック。付属品がしっかり分類されて収納されているため、使用する部品を迷うことなく選択できる
LGA1851 OFFSET KIT。標準のブラケットと交換することで、LGA1851対応CPUのホットスポットに対して最適な取り付けを実現。MSIはこのブラケットの使用によってCPU温度が3%低減するとしている

ARGB LEDが映えるインフィニティミラーデザインLEDイルミネーションやファンはマザーボード側で制御可能

 MAG CORELIQUID I360の水冷ヘッドは、トップとサイドの2面にインフィニティーミラーデザインを採用しており、内蔵したARGB LEDのイルミネーションが良く映えるビジュアルに仕上がっている。

 また、ラジエーターに組み込まれている3基の冷却ファンもARGB LEDを内蔵しており、軸部分のLEDの光を半透明のファンブレードが拡散することで、美しいイルミネーションを実現している。

トップとサイドにインフィニティーミラーデザインを採用した水冷ヘッド。内蔵するARGB LEDが良く映えるビジュアルだ
インフィニティーミラーとは、光の透過と反射を利用して奥行き感を生じさせるもの。ARGB LEDで表現された三角形のライティングが奥へ連なっているように見える
ラジエーターに搭載されている冷却ファンもARGB LEDを内蔵しており、水冷ヘッドと冷却ファンの組み合わせによるLEDイルミネーションが楽しめる
ARGB LEDの制御は3ピンARGBコネクタ経由で行う。高度な制御に対応しているマザーボードに接続すれば、同期した発光だけでなく水冷ヘッドとファンのLEDを個別に制御できる

 MAG CORELIQUID I360は、LEDの制御を3ピンARGBコネクタ、ファンやポンプの制御を4ピンファンコネクタで行うシンプルな構造を採用しており、基本的にはマザーボードに接続して制御を行うことになる。

 接続先がMSI製のマザーボードであれば、LEDやファンの制御はユーティリティーツールの「MSI Center」に統合されており、Windows上で各種設定を行うことが可能だ。

水冷ヘッドや冷却ファンをMSI製マザーボードの3ピンARGBヘッダーに接続すると、MSI Centerの「Mystic Light」でLEDの制御が可能になる
MSI Centerは冷却ファンを制御する機能「Cooling Wizard」が用意されており、MSI製マザーボード上のファン用ヘッダーを介してMAG CORELIQUID I360の冷却ファンやポンプの動作をコントロールできる

ハイエンドCPUのRyzen 9 9950Xもしっかり冷える夏場も安心して使えるMAG CORELIQUID I360の冷却性能

 ここからは、MSIのX870Eマザーボード「MAG X870E TOMAHAWK WIFI」にRyzen 9 9950Xを搭載したテスト環境を使用して、MAG CORELIQUID I360の冷却性能をテストする。

MAG CORELIQUID I360でRyzen 9 9950Xの冷却にチャレンジ

 今回のテストでは、最大で200Wの電力消費を許容するRyzen 9 9950Xに対し、MAG CORELIQUID I360のファンとポンプを最大限に稼働させる「ファン設定 PWM制御=100%」と、MSI Centerでファンとポンプの速度を50%に設定した「ファン設定 PWM制御=50%」で冷却を行ってみた。

 テスト時の室温は約26℃で、負荷テストにはCinebench 2024の「CPU (Multi Core)」を使用する。その他の条件などは以下の表の通り。

 今回のテストにおいてMAG CORELIQUID I360は、Cinebench実行中のRyzen 9 9950Xを「ファン設定 PWM制御=100%」で平均77.7℃(最大79.4℃)、「ファン設定 PWM制御=50%」でも平均83.3℃(最大85.6℃)という、温度リミット(TjMax)の95℃より大幅に低い温度に保つことが可能だった。

 冷却ファンとポンプが高速で動作する「ファン設定 PWM制御=100%」の冷却性能は素晴らしいものだが、冷却ファンが平均1,406rpm、ポンプが平均2,256rpmでかなり静粛性の高い動作となる「ファン設定 PWM制御=50%」も200Wの電力を消費するRyzen 9 9950Xをしっかり冷やせているのは好印象だ。

CPU温度
ファン速度とポンプ速度
ベンチマークスコア│Cinebench 2024
モニタリングデータの推移グラフ
ファン速度=100%時
ファン速度=50%時

使いやすくよく冷える、インフィニティーミラーデザインが魅力の水冷クーラー

 水冷ヘッドのインフィニティーミラーデザインが特徴的なMAG CORELIQUID I360は、デスクトップ向けのハイエンドCPUを余裕で冷やせる高い冷却性能を備えつつ、ファン組み込み済みで配線の手間を省略した使いやすいオールインワン水冷クーラーだ。

 自作PC初心者にも勧めやすい洗練された水冷クーラーであり、なおかつ実売価格も税込みで2万円前後。インフィニティーミラーデザインに魅力を感じるのであれば、高い満足度を得ることができる選択肢となるはずだ。