トピック
CPU性能をさらに1段階引き出すOCメモリ「Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kit」
Intel XMP/AMD EXPO両対応、Intel 200S Boostにも好適 text by 坂本はじめ
- 提供:
- Crucial
2025年12月16日 00:00
Crucialが今年10月末に発売した「Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kit」は、DDR5-6400/CL32動作を実現する16GBメモリモジュール2枚組セット。製品ページでは「OC Gaming Memory」というコピーも付いており、ゲーミングPCでの利用を意識したXMP/EXPO両対応のオーバークロックメモリだ。
今回はこのメモリをIntelのCore Ultra 7 265Kと組み合わせ、Intel 200S Boostの動作テストを実行。CPUの性能をより引き出すことができるのか、標準的なDDR5-5600メモリと比較を行ってみた。また、16GB×2枚のキットを2セット用意して4枚挿しでも高速動作が可能なのかを確認してみた。
迷彩デザインのヒートスプレッダを新採用Crucial Pro Overclocking シリーズのDDR5-6400メモリ
Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitは、DDR5-6400/CL32動作が可能な16GBメモリモジュール2枚をセットにした32GBメモリキットで、CrucialのPro Overclocking シリーズに属するオーバークロックメモリの新製品だ。
迷彩パターンをあしらった新デザインのヒートスプレッダを搭載しており、白と黒のカラーバリエーションが用意されている。
オーバークロックメモリであるCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitの動作設定値は、メモリスピードがDDR5-6400で、メモリタイミングは32-40-40-103、動作電圧は1.35V。オーバークロックメモリに対応したCPU/マザーボード側でメモリモジュールに記憶しているメモリプロファイルを読み込むことで設定値での動作が可能だ。
Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitのメモリプロファイルは、Intel XMP 3.0およびAMD EXPOに対応しているので、IntelとAMD両社のCPUでそれぞれ最適なメモリプロファイルを利用できる。
Intel 200S Boostにも好適、Core Ultra 7 265K環境でDDR5-5600メモリと比較
今回、Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitをテストするにあたり、Intelの20コアCPU「Core Ultra 7 265K」とMSIのIntel Z890マザーボード「Z890 TOMAHAWK WIFI」を組み合わせたPCを用意した。
Core Ultra 7 265KとIntel Z890チップセットはメモリオーバークロックをサポートしており、XMPを読み込むことでCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitの動作設定を行うことが可能なのだが、今回はCore Ultra 200SシリーズのKモデルとIntel Z890チップセット向けに提供されている「Intel 200S Boost」という機能でメモリの設定を行うことにした。
Intel 200S Boostとは、Core Ultra 200S シリーズのKモデル向けに提供されているIntel公式オーバークロックプロファイルだ。搭載しているメモリモジュールが1チャネルあたり1枚(1DPC/1 Dimm per Channel)でXMPに対応している場合、DDR5-8000以下かつ動作電圧1.4V以下という制限の範囲内でXMPに基づくメモリオーバークロックが有効化され、CPU内部のインターコネクトも高速化される。
一般的に、このようなオーバークロックを行うとCPUの製品保証は無効となるのだが、Intel 200S Boostの適用によるオーバークロックに関しては製品保証が維持される。製品仕様が制限の範囲内であるCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitなら、製品保証を失うことなくメモリオーバークロックが可能なIntel 200S Boostを使わない手は無いと言える。
テストに使用するマザーボードのMSI Z890 TOMAHAWK WIFIでは、要件を満たすCPUとメモリを搭載することでBIOSメニューにIntel 200S Boostが追加され、これを有効にするとCPUとメモリのオーバークロック設定が適用される。
実際にCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitを搭載してIntel 200S Boostを有効化したところ、特に問題なくDDR5-6400動作設定が適用された。
今回はIntel 200S Boostによって実現したDDR5-6400/CL32動作の恩恵がどの程度のものなのか確かめるべく、CrucialのDDR5-5600対応スタンダードメモリ「CP2K16G56C46U5」との比較を行う。
なお、Crucial CP2K16G56C46U5はJEDECの標準仕様に準拠したスタンダードメモリだが、XMP/EXPOに準拠したメモリプロファイルを備えているためIntel 200S Boostが利用できる。これにより、メモリとそれに連動するメモリコントローラ以外の動作は同等だ。

AIDA64でメモリ性能の違いをチェック
まずは、AIDA64のCache & Memory Benchmarkで、メモリ帯域幅とメモリレイテンシを計測した結果から紹介する。

DDR5-6400のメモリ帯域幅は88.0~98.1GB/sとなっており、DDR5-5600の77.2~85.1GB/sを13~16%ほど上回った。メモリスピードが向上した分だけ、メモリ帯域幅もしっかり増加しているようだ。

メモリレイテンシについては、DDR5-6400/CL32が83.9ナノ秒で、DDR5-5600/CL46の97.4ナノ秒より16%ほど短くなっている。
スペック上のCASレイテンシ(CL)を比較すると、DDR5-5600のCL46が約16.4ナノ秒であるのに対し、DDR5-6400のCL32は約10.0ナノ秒であり、メモリ側でのレイテンシがかなり削減された結果であることがうかがえる。
Cinebench 2024
CPUの3DCGレンダリング性能を計測するCinebench 2024で、CPUのマルチコア性能(Multi Core)とシングルコア性能(Single Core)を計測した結果が以下のグラフだ。計測は標準の最低実行時間=10分で行っている。


DDR5-6400は、マルチコアで約4%、シングルコアでも約3%、DDR5-5600が記録したスコアを上回った。
従来のCinebenchより複雑なシーンをレンダリングするCinebench 2024は、かなりメモリ負荷の高いベンチマークテストとなっており、スコアにもメモリ性能の違いが現れた格好だ。
HandBrakeで動画エンコード性能を比較
動画エンコードソフトのHandBrakeでは、約60秒の4K/2160p動画をH.264、H.265、AV1の各形式にCPUを使って変換した場合の速度を計測した。


DDR5-6400のエンコード速度は、H.264で約7.0%、H.265で約5.3%、AV1で約10.7%、いずれもDDR5-5600を上回った。CPUを用いた動画エンコードはメモリ性能が反映されやすい処理のひとつではあるが、それにしても大きな差がついた印象だ。
サイバーパンク2077
オープンワールドRPGゲームのサイバーパンク2077では、画面解像度をフルHD/1080p(1,920×1,080ドット)に設定し、グラフィックプリセット「ウルトラ」と「レイトレーシング:オーバードライブ」をテストした。
なお、ウルトラでは超解像をオフ、レイトレーシング:オーバードライブでは超解像をDLSS(クオリティ)に設定している。

DDR5-6400が記録した平均フレームレートは、ウルトラで約6.2%、レイトレーシング:オーバードライブで約2.3%、それぞれDDR5-5600が記録した平均フレームレートを上回った。また、最小フレームレートに関してもウルトラで約8.3%、レイトレーシング:オーバードライブで約2.4%上回っている。
ゲームにおいて、メモリ性能向上の恩恵はGPU以外の要素によってフレームレートが頭打ちになっている時間が長いほど大きくなる。実際、今回のテストでもGPU負荷の高いレイトレーシング:オーバードライブよりウルトラの方がメモリ性能向上の恩恵が大きい様子が見て取れる。
VALORANT
FPSゲームのVALORANTでは、フルHD/1080p解像度でグラフィック品質を可能な限り高く設定し、射撃場の高CPU負荷エリアで平均フレームレートと1% Low(フレームレート下位1%の平均値)の計測を行った。

DDR5-6400で計測されたフレームレートは平均が275.3fpsで、1% Lowは214.6fpsだった。DDR5-5600の平均は253.9fps、1% Lowは192.8fpsであり、DDR5-6400は平均で約8.4%、1% Lowで約11.3%、それぞれDDR5-5600のフレームレートを上回った。
4枚挿しでもDDR5-6400動作は可能なのか試してみた
今回はCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitのホワイトとブラックが各1セットずつ手元にある。せっかくなので、4枚挿しでの動作も検証してみよう。
DDR5メモリについては、1チャネルに2枚のメモリを搭載(2DPC)する4枚挿しは避けるべきであるとされている。これは、DDR5メモリが2DPCでの高クロック動作が難しいことや、メモリモジュールの電力管理を行うPMICの相性などに由来するものだ。
Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitの製品仕様であるDDR5-6400/CL32動作についても、あくまで2枚組のキットで保証されている製品仕様であり、同一型番であっても複数のキットを同時使用した場合の「動作保証」はない。
ただし、Crucialによれば、製品仕様を超える設定を適用しなければ4枚挿しで使用しても「制限付き永久保証(Limited Lifetime Warranty)」は無効にならないとのことなので、Crucialのメモリに関しては4枚挿しにチャレンジしやすい。
一方、今回利用したIntel 200S Boostは4枚挿し(2DPC)をサポートしておらず、2組のCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitを搭載した場合、MSI Z890 TOMAHAWK WIFIのBIOSメニューにIntel 200S Boostは表示されなかった。
XMPを読み込むことでDDR5-6400/CL32動作を適用することは可能だが、通常のメモリオーバークロックと同様にCPUとマザーボードの製品保証が無効になる点は理解しておきたい。
Crucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitを2セット搭載した4枚挿し状態でXMPを読み込んだ結果、特に問題なくDDR5-6400/CL32動作を実現することができた。
4枚挿しでのメモリ性能を計測した結果は、2枚挿しでIntel 200S Boostを適用した際のパフォーマンスと遜色ないものであり、枚数が増えたことでメモリのランク数やバンク数が増えるため帯域幅に関しては若干増加している様子もみられた。


ちなみに、Intelは同じメモリチャネル内に異なる仕様のメモリモジュールを搭載することを非推奨としている。同一型番のメモリキットでも実装部品の仕様が異なる可能性があるので、2枚組のメモリキットを2セット使用して4枚挿しを行う場合、同じメモリキットが同じメモリチャネルに接続されるよう取り付けることが推奨される。
今回は互い違いに挿した場合でもDDR5-6400/CL32動作を実現できたが、動作が安定しない場合はメモリを挿し込むスロットを見直してみると良いだろう。
PCのパフォーマンスを底上げするオーバークロックメモリ
メモリの速度はCPUやGPUほどパフォーマンスに影響しないと考えられがちだが、DDR5-6400/CL32動作を実現するCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitは、DDR5-5600動作のスタンダードメモリとの比較でも性能差をしっかり確認することができた。
DDR5-6400/CL32というスペックは、IntelとAMDのメインストリームCPUで動かしやすいものであり、特にIntel 200S Boostでの利用に好適だ。最新CPUのパフォーマンスをより引き出したいというこだわり派の自作PCユーザーにとって、大手メモリメーカーが手がけるCrucial Pro DDR5-6400 CL32 32GB Kitは、安心して選べるオーバークロックメモリの一つだ。
Micronからは、Crucialブランドの製品は2026年2月末が最終出荷になると公表されている。2月末以降も店頭在庫分に関しては販売が継続され、販売終了後も製品保証期間内のサポートはしっかり受けられるとのことなので、その点は安心してもらいたい。なお、メモリは既にかなりの品薄となっている。手に入れたいユーザーは見かけたタイミングで購入することをおすすめしたい。

























