トピック

小型サイズだけど何でもできる“ハイパワー”デスクトップPCが登場!ZOTAC「MAGNUS ONE EU27507TC」を試す

デスクトップ版のRTX 5070 Tiを搭載する9リットル切りの小型PC text by 竹内 亮介

 ビジネス向けPCからゲーミングPCまで、近年はノートPCが多くの用途に用いられている。スペックのバリエーションの豊富さ、デスクトップPCより優れた携帯性・可搬性など、ノートPCには多くのメリットがあり、広く支持を集めるポイントとなっている。

 その一方で、ヘビーな作業が中心の制作現場、超高画質でも快適なゲーミング性能、高負荷時の静音性などでの面ではデスクトップPCがまだまだ強い。とはいえ、サイズ感やデザイン、設置の自由度や移設・移動のしにくさなどはトレードオフとなる場合もある。

 そこで改めて注目したいのが、ノートPCよりもパワフルで、一般的なデスクトップPCよりもグッとコンパクトな、双方のメリットを押さえつつ“ちょうどよい落としどころ”を探って設計された、いわゆる“ミニPC”という存在だ。

 一言でミニPCと言ってもサイズはさまざまあるのだが、今回ご紹介するZOTAC「MAGNUS ONE」シリーズは、デスクトップPCとしてはかなりコンパクトな筐体を採用しながらも、パワフルなCPUにフルスペックの最新GPUを搭載する、一般的なデスクトップPCとなんら遜色のない性能を備えた製品だ。

 基本性能が高いだけでなく、外観デザインもシンプルで美しく、もちろんコンパクトなので置き場所を選ばず利用できる。そんな強力な小型デスクトップPCの魅力をさまざまな面から検証してみよう。

2025年のCOMPUTEXで実機を展示

約8.5リットルのサイズに強力なCPUや汎用的なビデオカードを搭載

 「ZBOX」にはさまざまなバリエーションの製品がラインナップされており、「ZBOX M」はマルチメディア向け、「ZBOX C」はファンレス、「ZBOX P」は超小型、といったように、それぞれに異なった特徴・コンセプトを有する。MAGNUS ONEシリーズは、ハイエンドに位置付けられている「ZBOX E」に属する。サイズは幅12.6cm、奥行き27.05cm、高さ24.9cmで、容積は約8.48リットルとかなり小さい。オフィス機器で言えば4ベイのNAS、家庭用機器で言えば一昔前のコンシューマーゲーム機のようなサイズ感だ。つや消しブラックを基調としたカラーリングもあり、精悍さとコンパクトさを両立したデザインを採用している。

筐体は全体につや消しブラック仕上げで、高級感のある落ち着いたデザインだ

 最新モデルでは、CPUにIntelのCore Ultra 7 265を採用。汎用的な拡張カードタイプのビデオカードを搭載し、NVIDIAのGeForce RTX 5060 Ti/5070/5070 Ti搭載カードを装備するモデルが用意されている。一般的に小型PCでは、冷却面からやや性能が低いノートPC向けのCPUや外部GPUを搭載するモデルが多い。しかし本機では、デスクトップPC向けのCPUやビデオカードを搭載しており、小型PCながらも正真正銘デスクトップPC並みの性能を期待できる。

 今回試用したのは、ビデオカードにGeForce RTX 5070 Tiを搭載したハイエンドモデルの「MAGNUS ONE EU27507TC」だ。メモリとストレージを搭載しないベアボーンモデルで、検証機には16GBのDDR5メモリが2基、1TBのM.2 SSDが組み込まれていた。

【MAGNUS ONE EU27507TCの基本スペック】
CPU(コア/スレッド数)Intel Core Ultra 7 265(20コア20スレッド)
GPU(ビデオカード)NVIDIA GeForce RTX 5070 Ti(ビデオメモリ 16GB)
メモリスロットDDR5 SO-DIMM×2(PC5-51200、最大96GB)
ストレージM.2 SSD(PCI Express 5.0 x4)×1、
M.2 SSD(PCI Express 4.0 x4)×1、
2.5インチシャドーベイ(Serial ATA)×1
無線通信IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax/be、Bluetooth v5.4
主なインターフェース5GbE×1、GbE×1、
DisplayPort×3、HDMI×2、
Thunderbolt 4×1、USB 10Gbps×4、5Gbps×4
本体サイズ(W×D×H)126×270.5×249mm
※メモリ/ストレージ容量、OSは販売形態、モデルにより異なる
天板と側板を外すと、右側面にデスクトップPC用のビデオカードを装備していることが分かる
左側面にはトップフロータイプのCPUクーラーを装備しており、その下にデスクトップPC向けのCore Ultra 7 265が組み込まれている

 筐体は、デスクトップPCとして考えるとかなり小さく、置き場所を選ばない。高性能なパーツを組み込む小型PCでは発熱も気になるところだが、金属製のフレームにはハニカム形状の通気口が多数設けられており、通気性に優れる。天板に搭載する2基の排気用ケースファンにより両側板から外気をたっぷりと取り込んで、CPUやビデオカードを冷却できるエアフローを構築している。

金属製の両側板はメッシュ構造になっており、通気性に優れる
この状態では見えないが、天板には2基のケースファンが組み込まれている

 背面を見ると、自作PCユーザーならおなじみの拡張カードが搭載されていることが分かる。つまり本機では、GeForce RTX 5070 Tiのビデオカードそのものを搭載している。もちろんサイズや構造、消費電力やファン制御などの問題もあり、ビデオカードを換装したり、メーカーがGPU換装を公式にサポートしていたりするわけではない。しかし、“ミニPCでビデオカードを搭載する構造”自体がそもそも珍しく、将来的なアップデートの余地を連想させる。そうした“先々の期待感”も、このモデルの魅力と言えそうだ。

限られたスペースに組み込まれているビデオカードは、市販モデルにはないデュアルファン仕様のRTX 5070 Ti搭載モデルだ

 ディスプレイ出力端子は、このビデオカードが搭載する3基のDisplayPortと1基のHDMI、CPU内蔵GPUから出力される1基のThunderbolt 4とHDMIで合計で6基ものモニターを接続できる。多くのユーザーにとっては2〜3画面出力でも十分実用的だが、本機はさらに余裕があり、用途に応じて出力先を増やせるのが強みだ。出力できる数が単に多いだけでなく、配線や接続の選択肢が広いということもポイント。電源供給は別途必要になる場合もあるが、拡張・選択の余地があるのは歓迎したい。

 また前面には、UHS-II対応のSDメモリーカードリーダーを備える。同じくUHS-IIに対応するSDメモリーカードを利用すれば、最大で312MB/sという速度でPCにデータを取り込める。4K対応デジタルビデオカメラの撮影データや、デジタル一眼レフカメラで撮影したRAWデータなど、容量の大きなファイルを素早く取り込んで作業に移れるのはなかなか便利だ。

 このほかにもフロントにはUSB 5Gbps対応のType-Cコネクターやヘッドセット端子も搭載しており、さまざまな周辺機器を自由に利用できる。

前面にはType-CコネクターとUSB 5Gbpsポート、UHS-II対応のSDメモリーカードリーダーなどを備える。上部から覗いているのは2本の無線アンテナ(右の背面写真では一時的に取り外している)
背面には、ビデオカードに搭載された各種映像出力ポートに加え、マザーボードに装備されたUSB 10Gbps/5GbpsポートやHDMI、5GbE(5Gbps)およびGbE(1Gbps)の有線LANポートなどを備える。電源ユニットを本体に内蔵しているため、大きなACアダプターの置き場所に悩むこともない

Core Ultra 7 265とGeForce RTX 5070 Tiのパワーを100%引き出す

 MAGNUS ONE EU27507TCは、デスクトップ向けのCore Ultra 7 265とGeForce RTX 5070 Tiを小型筐体に収めた“ミニサイズ”のデスクトップPCだ。注目すべきは、単にスペックが高いというだけではなく、9リットルを切るこのサイズでも、一般的なデスクトップPCと同等の性能を安定して発揮できるかという点だ。使用感のチェックやベンチマークテストを通じて詳しくチェックしていこう。

 CPUやビデオカードの性能が高いこともあって、本機の使用感は文句の付けようがないレベルだ。Windows 11や各種アプリはサクサクと動作し、ウィンドウの操作などで遅延することもない。またアイドル時や軽作業時は、ケースファンの音が軽く聞こえてくる程度でかなり静かだった。

 軽作業を中心としたPCの基本性能を計測できる「PCMark 10 Extended」の総合Scoreは14,176。MicrosoftのOffice 365に含まれる各種アプリの操作感を検証できる「PCMark 10 Applications」の総合Scoreも16,777とかなり高く、ビジネス作業に対する適性は当然だが非常に高い。

【PCMark 10】
PCMark 10 Extended (Score)
総合14,176
Essentials10,995
Productivity13,309
Digital Contents Creation18,559
Gaming40,184
PCMark 10 Applications (Score)
総合16,777
Word9,270
Excel30,859
PowerPoint15,677
Edge17,688

 ビデオカードは、GPUとしてGeForce RTX 5070 Tiを採用し、ビデオメモリも16GB搭載していることを考えると、コンパクトなローカルAIマシンとして使ってみたいと考えるユーザーも多いだろう。そこで「UL Procyon」の「AI Image Generation Benchmark - Stable Diffusion 1.5」と「AI Text Generation Benchmark」を実行した結果が下の表だ。

 GeForce RTX 5070 Ti搭載ビデオカードを組み込んだ自作PCと遜色のないScoreであり、コンパクトながらも生成AIPCとして普通に利用できることが分かる。

【UL Procyon】
AI Image Generation Benchmark - Stable Diffusion 1.5
全体Score3,969
1枚あたりの総合的な画像生成速度 (秒)1.574
AI Text Generation Benchmark (Score)
PHI 3.54,622
MISTRAL 7B4,792
LLAMA 3.14,276
LLAMA 24,493

 最後に3DMarkや実際のPCゲームに含まれるベンチマークテストで、3Dグラフィックスの描画性能を検証した。3DMarkのScoreはやはりGeForce RTX 5070 Ti搭載ビデオカードを組み込んだ自作PCとほぼ同等であり、ゲーミングPCとしてもかなり適性が高いことが分かる。

【3DMark (Score)】
Time Spy (DX12)24,241
Time Spy Extreme (DX12)12,396
Steel Nomad (DX12)6,705
Speed Way (DX12、RT)7,200

 PCゲームのテストは、高いグラフィックス性能を要求される「サイバーパンク2077」と「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」で行った。サイバーパンク2077のグラフィックス設定は[レイトレーシング:ウルトラ]、モンスターハンターワイルズ ベンチマークのグラフィックス設定は[ウルトラ]でレイトレーシングも[オン]にした。

 解像度をフルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)、4K(3,840×2,160ドット)の3通りに設定し、それぞれフレーム生成機能の有効/無効でフレームレートなどを比較したのが下のグラフだ。

サイバーパンク2077 ベンチマークの計測結果
モンスターハンターワイルズ ベンチマークの計測結果

 傾向としては3DMarkと同じで、同じGPUのビデオカードを搭載したミドルタワーケースの自作PCと遜色のないFPSを叩き出している。またどちらのゲームでも4K時の平均FPSが60を超えること、そしてフレーム生成機能によってFPSが大きく向上することを考えると、強力なゲームPCとしても利用できることが分かる。

メンテナンスはしやすく、冷却性能も十分

 テスト機はフルセットアップ状態だったが、販売モデルはベアボーンPCが基本となる(バリエーションモデルとして、メモリ、SSD、OSが組み込まれた仕様も展開)。ベアボーンPCの場合は、自力でメモリやSSDの組み込みといった作業を行う必要があるため、内部へのアクセスや作業のしやすさは気になるところだ。

 MAGNUS ONE EU27507TCでは、非常に簡単な作業で内部にアクセスできる。まずは背面から天板を固定する2本の手回しネジを外し、天板の固定を解除しよう。この状態で天板を背面方向に引き抜き、さらに両側板を上に引き抜くだけでよい。

背面から天板を固定しているこの2本の手回しネジを外す。無線のアンテナは事前に取り外しておく
すると天板を背面側に引き抜くように外せる
天板を外したところ。両側板は上に引き抜けば簡単に外れる

 SO-DIMMメモリとM.2 SSDは、左側面のマザーボード表面に装着する。M.2 SSDスロットは2基装備しており、システム用のM.2 SSD、データ用のM.2 SSDといった使い分けも可能だ。また同じく左側面には2.5インチSSDを挿すだけでよい2.5インチシャドーベイもあり、SSDの自由度が高い。

左側面の様子。メモリやSSDはこちら側から組み込む。2.5インチシャドーベイも装備している
右側面にはビデオカードが組み込まれている。基本的にユーザーが右側面で作業する必要はない。
CPUの横には2.5インチドライブ用のシャドーベイが取り付けられている。電源およびSerial ATAのコネクターは基板に直付けされている
マザーボードにはストレージ用のM.2スロットが2基用意されている(テスト機では空き×1基)。2230タイプのWi-Fi/Bluetoothカードの右側に見える接点が、天板に取り付けられているファンに電源を供給するもの

 天板には2基のファンが排気方向で取り付けられている。ただ一般的な電源ケーブルではなく、内部フレームと接触することで電源供給する方式を採用しているため、うっかり強く天板を引き抜いたとしてもケーブルにダメージを与えたり、断線する心配がない。パーツの組み込みやメンテナンスも含め、よく考えられた構造だ。

 またこの天板ファンのおかげで、左右側面のCPUクーラーやビデオカードに外気を取り込みやすい構造になっていることにも注目したい。実際の冷却性能は下のグラフのとおりで、PC起動後10分間の平均的な温度を「アイドル時」、モンスターハンターワイルズ ベンチマークを30分ループ実行したときの最高温度を「モンスターハンターワイルズ時」、Cinebench R23実行中の最高温度を「Cinebench時」としている。

各部の温度

 CPUに連続的な負荷をかけるCinebench時のCPU温度は82℃、CPUとGPUの両方に高い負荷がかかるMH時は89℃だった。小型PCなのでちょっと高めではあるが、問題が発生する温度ではない。一方でGPU温度は、長時間のPCゲームプレイを想定したMH時でも75℃と、かなり低い。前述したようにしっかりと外気を取り込み、ビデオカードを冷却できているからだろう。コンパクトな筐体ながら、冷却性能は十分高い。

さまざまなニーズに対応する“万能型”の小型PC

 ビデオカードの性能や筐体のコンパクトさを活かすなら、リビングの大画面テレビと組み合わせて、ゲーミングPCとして使うのがオススメだ。日進月歩の生成AIツールを活用するAIマシンとしても、縦横無尽の活躍を見せてくれるだろう。

 また、GPU活用が進むクリエイティブ作業や、充実したインターフェースを活かしてクリエイター用途でも、外部モニターに加えて液晶タブレットを組み合わせ、作業領域を広く確保したい、といったケースにも向く。普段は2、3画面での運用を基本にしつつ、必要に応じて表示環境を拡張できる柔軟性の高さも魅力となるはずだ。CPUやGPUの性能が高いため、負荷の高いアプリに利用したり、複数の情報を同時に処理・表示したりしても、かなり快適に働いてくれる。

 また、AIにも強い高いGPU性能を備えていることから、業務に利用する“コンパクトなローカルAI PC”としてもハイレベルな実力を持って対応できるという点にも注目したい。クライアントPCで最高レベルのAI性能を求めるならGeForce RTX 5090を採用した環境が理想ではあるが、そこまでのPCを業務に携わる多数のスタッフに割り当てるのは現実的ではない。ある程度数を揃えたいときのコスト感、物理的なサイズを考えると、本機のスペックと実性能、約8.5リットルのコンパクトさは“ちょうどよい”ラインなのではないだろうか。

 このようにMAGNUS ONE EU27507TCは、さまざまな状況に対応し、さまざまなニーズに応えうる万能型の小型PCと言ってよいだろう。