2020年8月3日 00:01
中古PCを購入する際、価格を優先すると必ずメモリ容量が少ないモデルが候補に挙がってくる。ここ数年に発売されたPCの場合、オンボードメモリのためメモリ交換が出来ない事が多いが、少し古いPCの場合は、メモリスロットを備え、(自己責任となるが)メモリの増設が可能なモデルもある。
一般的に、ゲームやクリエイティブ用途のアプリケーションでは動作要件に、ある程度のメモリ容量が必須とされていることが多い。そのため、負荷の大きい作業向けにPCを導入する場合は、メモリ容量が多いモデルを選択するのが一般的だ。
しかし、Windows 10(64bit版)の最低動作要件のメモリ容量はたったの2GB。PC初心者の中には、仕事やWebブラウズに使うだけならメモリが少なくても問題ないのでは?わざわざ分解してまでメモリを増やす意味が本当にあるのか?という疑問を持つ人もいるだろう。
そこで今回は、メモリ増設の効果を確認するために、メモリ容量4GBの安価な中古ノートPCに、メモリを増設して動作がどう変わるのかを検証していく。
Haswell世代のモバイルノートで検証
検証のために用意したのは、2014年発売の東芝製13.3型モバイルノート「dynabook R734/K」。13.3型1,366×768ドット液晶ディスプレイ、第4世代のCore i5-4300M vPro(2コア/4スレッド)、4GBメモリ、128GB SSDを搭載しているモデルだ。
入手した個体は、購入した店舗によってOSがWindows 10 Homeにアップグレードされていたほか、SSDが256GBとなっていた。
最近のPCでは見かけなくなったが、dynabook R734は本体裏面にメンテナンスパネルを備えており、最低限の分解でメモリスロットとストレージベイにアクセスできる。なんともメモリ増設にフレンドリーな設計だ。
増設用メモリとして用意したのは、DDR3L-1600 8GB SO-DIMM×2。合計で元メモリの4倍の容量だが、イマドキのノートPCでは当たり前に見かけるようになった容量だ。2020年8月時点で8GB SO-DIMM×2枚の価格は税込7,000~8,000円前後。今回はメモリの増設効果を確認するため、合計16GBに大容量化しているが、コストを重視するなら、8GB SO-DIMM×1枚という選択肢もあるだろう。
注意点として、メモリスロットがあるPCでも、増設できるメモリの最大容量には違いがあるため、事前にメーカーサイトの仕様を確認した上で換装用のメモリを用意してもらいたい。
ここで改めて、以降の作業ではPCの分解を伴うため自己責任のもと行なうようにお伝えしておく。
パネルを外してメモリを換装、4GBから8GB×2枚に増設
早速交換作業に入っていこう。
まずは安全のため、バッテリーを外す。バッテリーが着脱できないものも多いが、そういった場合には万が一にも感電しないよう特に気をつけて作業しよう。
続いて、元のメモリを取り外していく。
最後に交換するメモリを装着して作業は完了だ。
ストレージの交換も快適度アップの鍵
余談となるが、今回用意した中古マシンは前オーナーがストレージの換装を行なっていたようで、Lexar製の256GB SSDが搭載されていた。
そのため、ストレージの換装は実施しなかったのだが、現在は大容量のSSDも比較的安価に入手できるため、1TB SSDなどへ換装し、ストレージ容量を拡張するというのも選択肢としてアリだ。
データの移行方法など、具体的な手順については過去記事などを参考にしてほしい。
メモリ容量を4倍に増やして動作を検証
さて、ここまでのメモリの交換で容量は4倍に増加した。と同時に、実はメモリの転送速度も大きく向上している。
Haswell世代の中古PCともなると2GBのモジュールは減っており、メモリが4GBのみの場合、本機のようにモジュールが1枚でシングルチャネル接続となっている場合が多い。今回は8GBモジュールを2枚用意し、換装に伴い2スロットを使うデュアルチャネル構成としたため、容量のみならず速度も向上しているというわけだ。
異なるのはメモリの容量とチャネル数だけで、クロックやレイテンシは共通だ。CPU-Zを見てもらえば分かるとおり、容量以外は共通で、動作クロックが1,333MHz、レイテンシもCL11-11-11-28で同じだ。
無事に16GBが認識されていることを確認したところで、Windowsのタスクマネージャーを見ていこう。
早速の違いとして、Windows起動直後の使用量に大きな差がある。Windows 10では、OS関連だけで2GB近くを消費しており、4GB環境では半分しか空きがないが、16GB環境では86%の空き(13.7GB)がある状態だ。
デュアルチャネルで帯域は2倍!ベンチマークソフトでチェック
総合ベンチマークソフトウェア「SiSoftware Sandra 2020R8」のメモリベンチマークテストで、パフォーマンスを比較した。
結果はご覧のとおりで、デュアルチャネルとなったことで帯域が2倍に増えていることが分かる。レンテンシは変わらないものの、実利用では帯域の向上でアプリケーションのレスポンス改善などが期待できる。
メモリ構成 | DDR3L-1600 4GB | DDR3L-1600 8GB×2 |
---|---|---|
総合メモリパフォーマンス | 9.32GB/s | 18.73GB/s |
整数メモリー帯域 | 9.32GB/s | 18.66GB/s |
浮動小数点メモリー帯域 | 9.32GB/s | 18.8GB/s |
レイテンシ(ランダムページアクセス) | 38.9ns | 36.5ns |
キャッシュ/メモリー帯域 (FMA/256) | 38.357GB/s | 51GB/s |
チップセット/メモリ消費電力 | 16.41W | 28.17W |
4GBメモリでもGoogle Chromeで100タブを開いてまともに動く?
転送速度の違いが分かったところで、容量増加の効果のほどを見てみよう。
今回は利用者の多いWebブラウザ「Google Chrome」で100個の異なるページをタブで開き、その時のメモリ使用量を見ると同時に、ページのロードにかかった時間を計測してみた。
検証の様子はHDMIキャプチャを使い動画でも記録している。
すべてのタブをロードするのにかかった時間は、4GB環境で4分35秒だったが、16GB環境では2分47秒でロードが完了した。
キャプチャ動画を見てもらうと分かるとおり、4GB環境ではメモリの空き容量が早々に尽きてしまい、SSDの仮想メモリへの読み書きが多数発生している。メモリ帯域が半分であることや、仮想メモリなどが原因で時間がかかっているようだ。
一方の16GB環境では、4GB環境と比べて4割高速にロードが完了した。さらに、全ページをロード後も物理メモリ上の使用率は半分に収まり、別アプリケーションを起動してもメモリ不足の警告を受ける心配はない。
ロード時間では大きな差が付いた検証だが、ロード中のブラウズ動作(スクロールのカクつきやカーソルが止まるなど)そのものはそれほど体感差が無かったというのは意外だった。仮想メモリ領域がSSDであるということも当然ながら、Windowsのメモリ管理の改善や、Google Chrome自体のマルチスレッド化といった目に見える“重さ”を軽減するために積み重ねられてきた努力のたまものと言えるだろう。
とはいえ、4GB環境ではブラウザだけでこの状態であり、経過を見ると60タブ程度を開いた時点で仮想メモリへのアクセスが発生している。100タブ開くことは稀だとしても、数十タブを開くことは別段珍しくもない。ブラウザ以外にOfficeアプリとSNSアプリなど、実際のPC利用のように多数のアプリケーションを同時に使いたいというニーズにはとても応えられないと考えたほうが良いだろう。
とくに、先に述べたように今回はストレージがSSDだったが、仮に4GBメモリ環境かつストレージがHDDだった場合、仮想メモリの読み書きにはさらに時間を要していたと考えられる。
4GBの中古PCにメモリを増設すべきか否かという視点では、やはり「増やすべき」という結論は変わらない。