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“高品質な中古PC”はこうして生まれる!実際の作業を見れば中古PCの不安は解消、横河レンタ・リース「Qualit」の再生工場を見学してきた

大規模拠点で効率化、徹底した品質管理でクオリティを担保 text by 石川 ひさよし

 世の中に「中古」として流通する商品は多いが、自動車にせよ宝石にせよPCにせよ、そうした中古商品の購入では「信頼」が重要。信頼の目安となるのが企業自体の歴史や実績、実際に購入した人の口コミなどなど。そして、それらを支える根幹が、中古商品を取り扱う拠点・現場での取り組みだ。実際に、中古PCの流通・販売を手掛ける企業はどのような取り組みを行なっているのだろうか。

 そこで今回は、中古市場でも有数の取り扱い規模で、品質の高い品物を多く取りそろえる中古PC販売サイト「Qualit」を展開する横河レンタ・リースの中古PCリファービッシュ拠点を訪問、現場の様子をレポートする。同社の取り組みについては1年ほど前にインタビューを行なっているので、こちらも併せてご覧いただきたい。

「Qualit」“高品質”中古PC再生工場を動画レポート!厳しい選別と徹底クリーニング、神業のランク分けを見よ!!

「Qualit」の中古PC再生工場に動画班が潜入。規模感、大量に自動処理されるPC達、一台一台職人が行う徹底したクリーニングなど、見どころたくさんの内容です!

【「Qualit」中古PC再生工場レポート!自動&手動選別と徹底クリーニングで生まれる高品質中古PC】

レンタル大手のリファービッシュPC拠点は巨大倉庫の一画その規模は日本最大クラス!?

 横河レンタ・リースは北海道から沖縄まで日本全国に拠点を持つPCや計測器/測定器、各種ITシステムのレンタル/リース企業の大手の一つで、今回訪れたのは神奈川県相模原市にある同社「橋本第2テック」だ。

横河レンタ・リースのPCリファービッシュ拠点「橋本第2テック」。国道16号に隣接する大型物流倉庫内にある

 相模原市は神奈川県北西部にある政令指定都市で、橋本第2テックのあるエリアは、電車では新宿から1時間ほど。首都圏を環状に走る国道16号、中央道/圏央道/東名高速といった高速道路へのアクセスもよく物流が盛んな土地柄でもある。

倉庫の端から撮影したがこの写真の範囲で1区画の1/4ほど。隣にはもう一区画分の商品保管庫がある

 橋本第2テックも国道16号沿いのいくつもの企業が入居する大規模物流倉庫の中にある。この手の大規模倉庫は、中がいくつもの“区画”に仕切られているが、横河レンタ・リースの橋本第2テックは、物流倉庫内に複数区画からなる拠点を展開。過去に中古PC業者の拠点の取材に赴いたことがある取材スタッフからは、同社拠点のスケールの大きさに驚く声が上がっていたほどだ。

 リファービッシュ作業の流れとは順序が異なるが、最初に通されたのは再生作業が終わり出荷を待つ商品の保管庫だ。

横河レンタ・リースの林 主税氏、西村 幹雄氏、関 隆夫氏に拠点内を案内いただきながらお話を伺った

――この橋本第2テックとはどのような施設なのでしょうか。

【横河レンタ・リース】横河レンタ・リースではさまざまなIT機器のレンタルを行なっていますが、レンタル契約が満了(レンタルアップ)した商品がまずこちらの橋本第2テックに集まります。

 レンタルアップした商品は、再びレンタルに回るものもあれば、「Qualit」で販売する商品をはじめとして、再生PCとしてリセールに回るものもあります。いずれにしてもまずは一旦こちらに集まり、データ消去やクリーニングといった作業が行なわれます。

保管庫の一部。実際にはこの4倍近くだろうか。ずらりと並ぶラックにはずらりとPCが詰め込まれている

 保管庫には人間の身長よりも高いラックがズラリと並び、すべてのラックにPCやIT機器が詰まっていた。ノートPCやデスクトップPC、ディスプレイやプリンタなどの周辺機器などもあればワークステーションやブレードサーバーまで。Qualitの商品ラインナップからも前回のインタビューからも分かるとおり、横河グループと関わりの深いHP製PCはもちろん、DELL、Lenovo、NEC……とあらゆるメーカーのPCがある。

――大量のラックに大量のPCが収められていますが、ここには何台くらいのPCが保管されていますか。

【横河レンタ・リース】この橋本第2テックの保管能力としては25,000台です。現在はその7、8割が埋まっている状況でしょうか。橋本第2テックはリセール商品用の施設ですが、この近くにはレンタル商品用の橋本テックもありそちらは75,000台ほどの保管能力があります。レンタルとリセール合わせた全体の規模としては約10万台の保管能力を有しています。

データ消去作業はセキュリティ完備の専用ルームで

 次に通されたのは保管庫の隣の区画、冒頭の写真で奥にある壁で区切られた「データ消去」の看板の設置された作業室だ。この部屋は入退室管理が行われており、許可された一部のスタッフしか入ることができない。ほかの区画に比べるとセキュリティがワンランク上だ。

――厳重に守られた区画ですがここではどのような作業が行なわれているのでしょうか。

【横河レンタ・リース】レンタルアップ品として返却されてきた商品は、最初に間違いなく弊社の資産であることを確認、そして付属品の有無をチェックします。その次の工程がここで行なわれるデータ消去です。

 レンタル契約では「返却時にお客様がデータを消去する」ことになっていますが、万が一(消えていない・消し忘れている)ということも否定できません。すべての商品を対象にまずここでデータ消去を行ないます。情報漏洩は大きな問題になりますので、(誤って残ってしまった情報にアクセスできてしまう可能性がある)このエリアについては、入ることができるのは専門の作業員のみに制限することで、情報漏洩防止対策を担保しています。

 データ消去室の出入り口外にもあったが、拠点の各所ではノートPCを8台ほどおさめた大量のキャスター付きの作業用台車が目に入る。倉庫内では一つ作業を終えたら次の作業へとこの作業用台車によって運ばれていく。

――どの工程にもこの台車がありますね。

【横河レンタ・リース】各工程を台車で移動し、作業時は作業台に載せ換えるというのが一般的かもしれませんが、そのつど載せ換えをしなければならないのは作業性がよくありません。作業性や効率を考え、モノも運べて作業もできる台車というものを使っています。よく見てください。この台車には普通の台車にはない、電源タップやネットワークハブなども備え付けています。

 確かにノートPCとノートPCの間にはタップがあり、ノートPCのイーサネット端子にはLANケーブルが接続されている。そして台車の上部を見ると、そこには天井からタップとLANケーブルが降りてきており、これが各台車に接続されていた。つまり、移動してきた台車は、作業台に載せ替えることなく、各作業場所の電源とネットワークに接続、即座に作業を開始できる、というわけである。

 そのPC上ではデータ消去やリカバリーといった作業が行なわれていた。ツールの詳細はお見せできないが、「グローバルな規制・条例に準拠したデータ消去ソフトウェア」とのことだ。写真でもぼんやりと緑の画面、赤の画面が確認できると思われるが、なんらかの問題があった場合には赤い警告画面が表示される。

 なお、タブレットPCも同様に専用台車上で作業を行なっていたが、ディスプレイやキーボード、マウスを接続する必要のあるデスクトップPCは別途ラックに収めた状態で作業をしていた。こちらのラックもPC 1台につき1台のディスプレイ、そして電源やネットワークが用意されていた。

――デスクトップPCの作業で、ディスプレイは備わっているとしてキーボードやマウスなどは別途用意しているのですか。

【横河レンタ・リース】デスクトップPCではキーボード、マウスが付属するものも多くあります。作業用のキーボードやマウスを使い回せば作業性はよいのですが、付属品のキーボード、マウスの動作確認をする必要もあるため、ここでの作業は必ず製品付属のものを使って行ないます。ここがノートPCとは異なるところですね。

Qualit商品の最終チェックはチョー厳しい!

 最後に案内いただいたのがクリーニング部門。この巨大な倉庫、取り扱う商品数にしては比較的小さな一画にも見えたが、こここそがQualit向けの商品を“クオリティの高さ”を決定付けるセクション。商品の外観チェック、クリーニング作業、そしてランク付けを行なっている。今回はこのセクションを担当するベテランスタッフの大塚さんにお話を聞いた。前回のインタビュー時に耳にしていた“凄腕社員さん”ご本人だ。

クリーニング部門の大塚 眞由美氏

――ここではどのような作業をされているのでしょうか。

【大塚氏】ここではいわゆるリファービッシュ作業を行なっています。最初にするのは書類とシール、本体と箱が合っていること、付属品に欠品がないかといったことを確認をします。

 次にバッテリの検査を行ないます。Qualitで販売する商品として、バッテリ容量が新品時の80%以上あるものを基準としています。80%以下の商品はQualitとしては販売しません(注:外観判定などの一部作業を行わないかわりに安価で販売される“Vランク”を除く)

 バッテリの基準を満たしたものが外観チェックに進みます。割れ、ヒビ、破損、キーの欠損、キーの刻印の薄れなどを確認してランクを付けます。最後に清掃を行なって商品撮影、出荷といった流れです。

――1日に何台くらい作業されるのでしょうか。

【大塚氏】二人で40台ほどです。

――外観チェックはどのように?

【大塚氏】あらかじめ決められたチェックポイントがあります。私の場合はPC本体の右から順に見ていきます。もう慣れていますから、わずかな傷も短時間で見付けられます。

――Qualitの商品になる基準にはどのようなものがあるのでしょうか。

【大塚氏】文書化されている基準としては、何もキズがないものが“Sランク”、“Aランク”はちょっとキズがあるもの、“Bランク”は小さいキズ~中くらいのキズ、“Cランク”はキズがあるけど機能的には問題なく使えるというものです。

 問題なく使えるというのは、たとえば画面にキズがあっても画面の中心にあれば目立つのでダメですが下のほうにあるキズだとほとんど目立たないでしょう。そのような場合、Cランクとしています。

【横河レンタ・リース】でもこの文書化された基準に沿った大塚さんのチェックが入るんです。大塚さんの経験と実績で……このチェックが厳しいんですよ(笑)

【大塚氏】「このくらいならいいんじゃないの?」ってよく言われるんですけど、Qualit商品は、それではダメです、って押し返すんですよ(笑)。

――外観チェックにかける時間はどのくらいでしょうか。

【大塚氏】だいたい普通の人なら10分くらい。私は3~5分。キズの形もいろいろあるのでよく見ないと判断できないもので5分くらいかしら。

――どこにキズが多いとかあるんでしょうか。

【大塚氏】まず天板は多いですね。そして手を置くパームレストは塗装が薄れやすいですね。それに側面はポートの抜き挿しでラフに扱われたりするとキズが入りやすいです。

――軽度のキズなら、たとえばリペアされることはありますか。

【大塚氏】キズはキズなので、キズがあった時点でランクは決定します。クリーニングのみです。

「これは小キズありでAランクですね」と見せてくれた例。ロゴの鏡面部分に小さなキズがあるというが……この写真で見ても分からない! 筆者が現場で目視しても角度を何度も変えながらしっかり見てようやく分かるレベルだった。大塚さんがこのレベルのキズを一瞬で見つけてしまうことに取材スタッフも驚愕。Qualitの品質基準の厳しさがうかがえる

――続いてクリーニングのお話を聞かせてください。やはりここに来る前とクリーニング後では見違えるくらい違いますか。

【大塚氏】ここ(Qualit向けのクリーニング部門)に来る前にも清掃されているんですよ。でもQualitとしては、もう一段上のものにしたいのです。そのため、ここでもう一段丁寧な清掃を行います。

――クリーニング専用の洗剤などを使われていますか。

【大塚氏】いえ、ご家庭にもある一般的なものです。ここではアルコールを中心としたクリーニングを行なっています。実はご家庭にあるようなウエットティッシュで拭くだけでも表面の汚れは結構キレイになります。

取材の際も、近隣の作業台ではスタッフが作業中。作業机の上には歯ブラシやヘラ、竹串のようなものまでさまざまな道具があり、1台1台それらを駆使。ゴム足までしっかり拭き、段差や溝は歯ブラシなどを使い、素早く、かつ丁寧に作業を行なっていた

【大塚氏】画面はもちろんですけど、打鍵をするとキーキャップの側面がよく汚れたりします。だからそこはしっかりと。あとノートPCだとキーボードのキーの裏とかに汚れがたまりやすいので、掃除機をかけたりブラシで掻き出したり、と対応します。

――1台のクリーニングにかかる時間はどのくらいでしょうか。

【大塚氏】急いで10分、汚れによって変わりますが、じっくりやって20分弱くらいですね。

清掃が完了した商品は付属品ごとパッキングする。外箱はきれいなうちはもともとのもの、汚れたものや破損しているものはPC用の汎用箱に変更する
橋本第2テックからほど近いところにあるもうひとつの拠点「橋本テック」。検品やクリーニング、パッキングが完了した商品は橋本テックから出荷されていく

まさに厳選中古という言い方がふさわしい大手ならではの品質管理のレベルの高さ

 今回、横河レンタ・リースの橋本第2テックを訪問して、まずは規模と取扱台数に圧倒されたが、内部は効率化が追求されていた。従業員規模も大きいが、データ消去にせよ、リカバリーにせよ、バッテリ健康度の確認にせよ、クリーニングにせよ、どれも一つ一つは一般的には時間のかかる作業。それを、各部門間の移動と作業を専用台車で行ない、作業の導線を最適化して保管庫も整然と商品を並べるなど、“効率化”や“整理整頓”という言葉がふさわしい体制で運営されている。そして、中古PCの購入者には直接は見えてこない部分だが、データ消去も厳密なセキュリティ管理のもとで行なわれていた。ここまでがまず横河レンタ・リースという大手レンタル企業だからこそのきめ細かさと言えるだろう。

 そして購入者の立場から見て安心感を得たのがクリーニング作業だ。まず外観チェックとランク付けの高い基準。クリーニング部門では実際の作業も拝見した。ピンセットの先よりも小さな、光の角度を変えて見なければ分からないようなキズさえ、最後の品質管理の目が見逃さない。QualitのSランクがまさにキズ一つない美品であること、それどころかAランクでも目を凝らさなければキズに気が付かないくらいの高い基準だ。

 そうは言っても、やはり見知らぬ人が一度手にしたものというところを気にされる方は多いだろうが、さまざまな掃除道具を駆使して隅々までていねいに清掃されているのを見ればそうした不安も払拭されるだろう。中古PCと言っても、市場には新品同様のものからジャンク品に近いものまでさまざまな状態の品物が混在している。その中で“Qualit”ブランドを冠した商品は確かなクオリティを約束されているのである。