【 2007年1月20日号 】
Vista開発サポセン週報
第4回:サブディスプレイ「SideShow」の仕組みと開発

 Windows Vistaのソフト・ハード開発者をサポートする開発者向けサポート拠点「Developer Support Center」(LAOX THE COMPUTER館(3F))の出来事を毎週ダイジェストでお伝えするこのコーナー、今週の話題は19日(金)に行われたセミナー「SideShowが開くWindows Vistaの未来」だ。講師はマイクロソフト Windows本部 パートナーマーケティング部の中里倫明氏。

 レポート:鈴木光太郎

●そもそもSideShowとは?
Developer Support Center
Developer Support Center

 「SideShow」と聞いてもピンと来ない人も多そうだが、SideShowとは、Windows Vistaで新たに対応したオプション扱いの補助ディスプレイだ。フル機能を持ったディスプレイではなく、ちょっとした補助情報を表示するためのもので、例えば一昨年に発売された液晶ディスプレイ付きキーボード「G15 Gaming Keyboard」のような機能をOS側が標準サポートするもの、と言えばわかりやすいかもしれない。

 「G15」のディスプレイはキーボード上部に設置され、CPUの負荷メーターやゲーム内の弾丸残数などが表示される、というものだったが、OS標準サポートとなるSideShowでは「ノートPCの背面」「TVなどのリモコン」「キーボード」「5インチベイ」「写真立て状の単独デバイス」などに表示部が設けられ、メール着信の確認やTV視聴中の他チャンネル情報の表示、プレゼンテーションの進行操作用、あるいは単なる画像表示用(=写真立て)として利用されるという。

 こうした機能は従来製品でも実現できるものだが、OS標準サポートとなったことで、ハード/ソフトの互換性が高まり、表示内容と表示デバイスの組み合わせが自由になったことが大きな特徴といえる。また、複数のサブディスプレイを1台のPCに接続し、それらを個別に制御する、といったことも行えるという。


●SideShowが表示されるまで
Developer Support Center
Developer Support Center

 そんなSideShowだが、セミナーでは上記のような概要説明の後、動作の内幕が解説された。

 まず説明されたのは、「SideShowの基本処理はPC側が行なっている」という点。

 デバイス側では「表示するべき画面のデータを受取り、それを表示し、(場合によっては)ユーザーの選択操作を待つ」という処理だけを行なっており、選択内容に応じた処理や、選択結果に応じた新しい画面表示データの作成も全てPC側で行なわれる。なお、この「画面表示データ」はビットマップではなく、SCF(Simple Content Format)と呼ばれるXMLベースのページ記述言語でやりとりされる仕組みとのこと。サブディスプレイ側にはSCFを解釈するCPUとメモリが必要になるが、「サブディスプレイ側で動作するプログラム」といったインテリジェントなものは(SideShowの機能としては)想定されていないようだ。

 また、こうした構造のため、SideShow利用時は「SideShowガジェット」と呼ばれるPC側で動く常駐ソフトが必要となる。これは機能別に用意され、例えば「Windows Media Playerの曲名表示用」「画像表示用」「メール着信確認用」「PowerPoint表示用」といったもの。コントロールパネルにはそのための管理画面も用意されており、どのSideShowデバイスでどのSideShowガジェットを使いたいか、といった設定が行えるとのこと。また、コントロールパネルを利用することで「PCスリープ時に時折(こっそりと)復帰し、SideShowを更新してから再びスリープする」という設定も可能という。


●開発環境は?
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 次に説明されたのが、SideShowに関わる開発環境だ。

 まず、表示ソフトであるSideShowガジェットの主力開発言語はC++で、必須環境はWindows SDKであることが説明された。JavaScriptからのインターフェイスも用意されるため、スクリプト言語で書かれたサイドバーガジェットからも制御できるが「動作に制約がある」(中里氏)とのこと。また、Windows SDKにはPC上で動作するSideShowエミュレータが付属するという。

 一方のSideShowデバイス側は、デバイスドライバ開発キットであるWindos DDKとC++などを併用する環境。ただし、SideShowデバイスには内部構造の異なる「Enhanced」と「Basic」の2種類があり、「Enhanced」対応のハードウェアを利用する場合はマイクロソフト製のドライバやファームウェアが利用できるとのこと。「Basic」の場合は、SCF解釈用エンジンや表示用ファームウェアを自作する必要がある。

 開発キットであるWindows SDKやWindows DDKはコンパイラ込みで無償配布されているが、開発言語がC++となることもあり、スクリプト言語で開発できるサイドバーガジェットなどよりも敷居が高いと言えそうだ。


●次回は「発売秒読み開始!! Windows Vista時代始まる」
Developer Support Center

 以上がセミナーの主な内容。

 解説にはASUSのSideShowデバイス付きノートPCが利用されたほか、会場ではFreescale製の開発キットや、その開発キットの製品資料も配付された。また、質疑応答のコーナーでは「Pocket PCをSideShowデバイスとして使えないか?」という質問に対し、「公開時期は未定だが、開発はしている」という回答もあった。

 ちなみに、このSideShowガジェットはマイクロソフトやインプレスジャパンが共催するの募集部門の一つとされているが、中里氏曰く「ハードウェアが関連するものなので、たぶん応募は少ないんじゃないかな?」とのこと。応募締め切りは22日(月)と目前だが、部門賞(賞金50万円)を狙うなら他部門よりも競争率は低いのかもしれない。

 さて、最終回となる次回のセミナーは1月26日(金)17時から。タイトルは「発売秒読み開始!! Windows Vista時代始まる」で、Windows Vista関連開発ツールの最新情報と、Windows Vistaの発売直前情報が解説される予定。


□Windows Vistaソフトウェアコンテスト(インプレスジャパン)

□Windows Vista特集サイト
http://www.watch.impress.co.jp/headline/vista/
□関連記事
【2006年12月9日】Vistaの開発者向けサポート拠点がザコンにオープン
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20061209/etc_msdev.html

 (Microsoft Windows Vista)

[撮影協力:LAOX THE COMPUTER館]


※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。
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