友人から久しぶりに電話がかかってきたのは、世間はちょうど夏休みに入ろうかという日の夜中である(社会人には関係のない話ではあるが)。
友人 「最近マシンが重くてさぁ、ちょっとパワーアップしたいと思ってんだけど」
筆者 「そのマシン作ったのいつだっけ」
友人 「3、4年くらい前?」
この友人のマシンを組む際は買い物に付き合ったのだが、思い出してみればちょうど4年前の夏頃だ。そのときはFF(Final Fantasy XI for Windows)をやるためにとにかく快適な環境を、というような感じで、かなり奮発してハイエンドクラスのパーツを揃えていた。実際、当時友人はかなり満足していたのを覚えている。「このゲームのためなら、お金に糸目は付けない」、そんなキラータイトルに出会えると、自作PCユーザーは幸せなのかもしれない。
筆者 「最近はゲーム何やってんの?」
友人 「モンハン(モンスターハンター フロンティア オンライン)と、ロスト プラネット(ロスト プラネット エクストリーム コンディション)……を買ってきたんだけど、起動もできなかった。うちのマシンで起動すらしないってどうよ?」
筆者 「いや、今じゃハイエンドでも何でもないマシンだし……。ロスト プラネットはいろいろスゴイらしいからねぇ(ちなみに筆者は最近PCゲームはほとんどやっておらず、多少MMORPGは遊んでも、FPS系はほとんどプレイしたことがない)。」
<ゲーム紹介>
●モンスターハンター フロンティア オンライン(カプコン)
モンスターを狩りまくって、アイテムを集め、装備を充実させていくMMORPG。コンシューマゲーム機でもおなじみの人気ゲームのPC版だ。意外に低スペックのマシンでも動くのがうれしいが、高解像度モードにするとかなり重くなる。DirectX 8.1以上対応。[レビュー記事]
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●ロスト プラネット エクストリーム コンディション(カプコン)
FPS(First Person Shooting)ではなく、正確にはTPS(Third Person Shooting:三人称視点のシューティングゲーム)。猛吹雪の中で超大型モンスターが迫り来るというシーンもあり、何かとマシンスペック泣かせの美麗グラフィックが楽しめる。DirectX 9以上に対応。DirectX 10対応ゲームとして、最新のPCスペックをフルに活用できるゲームとしても注目されている。オンライン対戦だけでなく、シングルプレイのストーリーモードも熱い。対応OSはWindows XP/Vista。[レビュー記事]
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●現在の友人のマシンスペック
CPU Intel Pentium 4 3GHz(Socket478)
マザーボード AOpen AX4SPE MaxII(Intel 865PE)
メモリ ノーブランド PC-2700 DDR SDRAM 256MB×2
ビデオカード Albatron FX5900XTV(GeForce FX 5900 XT、128MB、AGP)
HDD1 日立GST Deskstar 7K250 HDS722512VLAT80(Ultra ATA、7,200rpm、120GB)
HDD2 Maxtor DiamondMax Plus 9 6Y160L0 (160GB)(Ultra ATA、7,200rpm、160GB)
光学ドライブ NEC ND-2500A
OS Windows XP Home Edition
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秋葉原では深夜販売まであった、Intel Core 2シリーズの新モデル発売&値下げ。シングルコアどころか、クアッドコアのCore 2 Quadも手が届くところまで値下がりしてきた。そろそろデュアルコアくらいにはしとかないとダメ?みたいな雰囲気に。 |
なるほど。まぁ、Core 2 Duoもちょうど値下がりしたところだし、メモリも少し値上がりしたとは言え、去年から見ればまだまだ十分安い。買い換える(組み直す)ならちょうどいい時期だろう。Pentium 4 3GHzからだとマザーボードごと交換になってしまうが、今ならその投資も惜しくはないので勧めやすい。今は自作PCにおいて、「もうちょっと待ったほうが……」といったアドバイスをしなくていいという、とてもめずらしい時期なのではなかろうか。自作PCにおける格言として「作りたいときが買いどき」という言葉もあるのは確かだが。
筆者 「おー、んじゃあ予算は今回いくらで?」
友人 「う~ん、2万円くらい?」
筆者 「Σ(゚Д゚)なめとんのか~~!!!!」
友人の考えとしては、モンハンはわりと問題ないので、ロスト プラネットをとにかく動かしてみたいということのようだ。ついでに言うと、今回友人としてはマシンよりも新しいディスプレイにお金をかけたいとのこと。
そう言われると、それも今のPC環境パワーアップとしては正論。ということで、ここに予算2万円の低予算ロスト プラネット快適パワーアップ作戦が開始されたのである。まず動くのかどうかというレベルの話だが、重い重いと言われるこのゲーム、はたしてどれほどのものなのか筆者も興味が湧いてきた。いっちょやってみますか!
ロスト プラネットはプレイ中でも、処理が追い付かなくなる状況に遭遇すると、パフォーマンス不足が警告される。大型モンスターが出現すると同時にこれが来たりすると悲しい……
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さて、予算は2万円である。
ゲーム環境におけるパワーアップとしてまず考えられるのは、CPUとビデオカードであるが、前者はシングルコアとは言え、Pentium 4 3GHzというそれなりのものが搭載されている。しかも現行のLGA775ではなくSocket478ということで、、現状でアップグレードするには中古CPUでも探す必要があるだろう。
また、CPUをCore 2 Duoに交換するとなると、まずマザーボードの交換が必要になり、それに伴なってメモリ(DDR SDRAMからDDR2 SDRAMへ)とビデオカード(AGPからPCI Express x16へ)も新たに購入する必要が出てしまう。どう考えても2万円で済むわけがないのだ。
となると、予算内でできるのはビデオカードの換装ということになる。現在はすっかりPCI Express x16タイプが主流になっているが、AGPタイプもまだまだ製品は出ているので、アップグレードパスに困ることはないだろう。数ある製品から選ぶのは難しいところだが、なるべくベストなものが欲しいのは当然。今回は、僚誌DOS/V POWER REPORT編集部の力もお借りし、よさそうなビデオカードを試してみることとなった(要するに本稿はいろいろと便乗企画なのだ!)。
●SAPPHIRE RADEON X1650 Pro
実売価格:15,000円前後
問い合わせ先:03-5215-5650(アスク)
URL:http://www.sapphiretech.com/jn/
Direct X9世代のRADEONシリーズとしてはミドルクラスのビデオカード。ATI(現AMD)のグラフィックスチップを搭載したAGPビデオカードとしては最上位クラスの性能を備えている。SAPPHIREのビデオカードは、事実上ATIのリファレンス品と同等と考えてよい。
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●ASUSTeK N7600GS SILENT/HTD/256M
実売価格:12,000円前後
問い合わせ先:news@unitycorp.co.jp (ユニティ コーポレーション)
URL:http://www.asus.co.jp/
こちらはグラフィックスチップにGeForce 7600 GSを採用したファンレス静音モデル。価格も下がっているので、AGPスロットでアップグレードを狙う人は早めにゲットしたい。なお、現在市場にはより上位のGeForce 7900 GSなどを搭載したAGPビデオカードも存在するが、そちらはまだ2万円オーバー。しかし、予算が許すならそちらもお勧めだ。
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■換装手順
本誌の読者ならビデオカードの換装はとくに難しいことではないだろうが、この企画は他誌との連動企画でもある。
おさらいも含めて手順を紹介しておこう。
1:
ケース背面側の固定金具(ネジ止めされているのが一般的)を外し、ビデオカードを引き抜く。スロットの端にストッパーが付いていることが多いので、ムリに引き抜かず、よく確認しよう。なお、作業の際は、PCの電源ケーブルを抜いておくことをお勧めする。
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2:
新しいビデオカードを挿し込む。スロットに対してまっすぐ平行に、しっかりと奥まで押し込もう。しっかり挿したつもりでも、ほんのわずかに浮いているだけで、PCが起動しないことがある。
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3:
ビデオカードをしっかりと固定したら、ビデオカード用の電源ケーブルも挿し込むのを忘れずに(必要のないものも多い)。コネクタの形状はさまざまだが、電源側が備えていないものでも、ビデオカードには変換コネクタが付いていることがほとんどなので問題はないだろう。
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■果たしてその効果は?
ロスト プラネット エクストリーム コンディションにはDirectX 9/10の両バージョンが用意されているが、DirectX 10でプレイするにはビデオカードの対応はもちろん、Windows Vistaでなくてはならない。AGPのビデオカードとしては、DirectX 10対応のRADEON HDシリーズを採用したものも登場してきているようだが、今回はWindows XPということもあり、DirectX 9版でのみのテストとしている。また、設定は基本的にデフォルトのままで、ゲームの表示解像度は1,024×576ドットである(使用した液晶ディスプレイは19型の1,280×1,080ドット表示)。
○Albatron FX5900XTV
DirectX 9、Pixel Shader 3.0以上に対応していないビデオカードでは起動すらできないロスト プラネット。ちょうどGeForce FXとGeForce 6世代がその境目にあたるが、4年前はハイエンドだったカードで起動すらできないというのは悲しい。そろそろ買い換え時と覚悟を決める? それとも動かないゲームと諦める?
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○SAPPHIRE RADEON X1650 Pro
デフォルト設定のままで問題なくプレイ……ができると思われたが、プレイ途中でいきなり画質設定を下げるように警告が出てしまった。仕方なくエフェクトの解像度を“高”から“低”に下げると、以降プレイが止まるようなことはなくなった。しかし、それでもモンスターが大量に出現するようなシーンでは、フレームレートがガタ落ちする。
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○ASUSTeK N7600GS SILENT/HTD/256M
Mission01のラストではモンスターの巣に潜入するが、RADEON X1650 Proでフレームレートが10fps以下に落ちてしまうところも、こちらは30fps前後をキープ。明らかな違いを体感できた。GeForce 7600 GSはRADEON X1650 Proと同クラスとされるものだが、ロスト プラネットの開発にNVIDIAが協力していることもあり、より最適化されているようだ。ただし、こちらでも重いシーンはやっぱり重い。
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※各シーンでのフレームレートはスクリーンショットの左上を参照。 |
<ベンチ結果>
ロスト プラネット エクストリーム コンディション無料体験版 DirectX 9
| Snow | Cave |
Albatron FX5900XTV | N/A | N/A |
SAPPHIRE RADEON X1650 Pro | 23 | 15 |
ASUSTeK N7600GS SILENT/HTD/256M | 29 | 18 |
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3DMark06 Build 1.1.0 (単位:Score)
Albatron FX5900XTV | 296 |
SAPPHIRE RADEON X1650 Pro | 1,763 |
ASUSTeK N7600GS SILENT/HTD/256M | 1,989 |
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■とりあえず遊べる環境に
このスペックのマシンでのMission01ボスの攻略方法は、とにかく回転攻撃をさせないこと(手榴弾で止められる)。回転攻撃が始まると落石が誘発され、プレイヤーが動かせないほどゲームが重くなってしまうのだ……
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ひとまずビデオカードを交換することで、RADEON X1650 Pro、GeForce 7600 GSともに、ロスト プラネットを遊ぶことは可能となった。
デフォルト設定での話ではあるが、それでもこのゲームのグラフィックの美しさは十分堪能できる。ただ、やはりGeForce系のほうがこのゲームには強いというのは間違いないだろう。筆者はATIの表示カラーが好きで、昔からどちらかというとATI派なのだが、ここまで明確にプレイに差が出るようだと考えてしまう。また、このゲームはマルチCPUにしっかりと対応しているため、同クラスのビデオカードでもデュアルコアのCore 2 DuoやAthlon 64 X2ならば、大幅なパフォーマンスアップが望める。まぁ、今回のアップグレードとしては価格分の価値は十分あるのではないだろうか。
なお、無料体験版として配布されているものでは、ベンチマークテストだけでなく、ゲーム本編のMission01を丸ごと遊べてしまうが、開発途中のものと断りが出るとおり、製品版よりも動作はやや重いようだ。その辺を把握しつつ、一度プレイしてみてはいかがだろうか(しっかりとしたプレイには「Xbox 360 コントローラー for Windows」を推奨)。TPSというよりはアクションゲームとしてしっかり作り込まれているので、操作に慣れてくるとかなり中毒性の高いゲームである。
□ロスト プラネット エクストリーム コンディション無料体験版ダウンロードサイト
http://jp.slizone.com/object/lostplanet_jp.html
PC3200のDDR SDRAM 512MB×2。3年くらい前からすると半額以下になっているので、増設しておかない手はない。ただし、マザーボードに空きスロットは要確認。
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テストの結果、ビデオカードはGeForce 7600 GSに決定したが、予算にはまだ余裕がある。せっかくなので何かしたいところだ。見てみるとメインメモリは512MB。Windows XPなのでこれでも問題ないのだろうが、Windows VistaならばWindows Aeroすら起動できない。メモリの価格も数年前に比べれば大幅に下がっているので、これを増設することにしよう。
予算の残りは約8千円だが、ノーブランドのPC3200 DDR SDRAMは512MBモジュール1枚で、現在約3千円といったところ。デュアルチャンネル動作のために2枚セット(=1GB)で購入しても6千円程度で、予算にもピッタリ収まる。これでメインメモリは512MBから一気に1.5GBにパワーアップだ。
結果として、それほどロスト プラネットのプレイが体感的に改善された部分はなかったが、バックグラウンドでWebブラウザを立ち上げて、ゲーム中に画面を切り換えたりするような場合には、その差歴然。モタつきがほとんどなくなった。これはゲーム以外でも効果的なので、数年前からメモリ容量がそのまま、という人はぜひ増設を考えてみてもらいたい。重いPCが蘇ることもあるだろう。
■メモリ増設手順
メモリの増設はビデオカードよりも簡単かもしれないが、ここでも手順を説明しておこう。ポイントはスロット左右のハッチをしっかり開くことと、向きの確認をしっかりすることくらいだ。
1:
このマザーボードにはまだメモリスロットが二つ残っている。挿し込むスロットの左右にある白いハッチをしっかりと外に開いておく。
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2:
メモリの端子部分にある切り欠きの位置を確認し、スロットに合わせてまっすぐ挿し込む。左右のハッチがカチッと閉じればOKだ。
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3:
4枚のメモリ装着が完了。マザーボードによっては2スロットしかないものもあるので、対応メモリのチェックと同時にこちらも確認しておきたい。
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結局、GeForce 7600 GSビデオカード+メモリ1GB増設で2万円アップグレード、ということになったわけだが、よくよく考えると本当に安くなったものである。それこそ3年も前なら、メモリだけで1万5千円くらいはしているだろう(ブランド物のメモリなら2万オーバーは確実)。
実際、こうしたスペックのPCを使っている人は多いと思われるが、アップグレードを考えるにはとてもオイシイ時期なのではないだろうか。もちろん、最新のCore 2シリーズのパフォーマンスは非常に高く、予算が許すのならマザーボードを含めた買い換えのほうがお勧めではあるが、こうしたアップグレードでもうひと頑張りしてもらうのもよいだろう。そもそも、このロスト プラネットというゲームの存在がまだ特殊なわけで、焦る必要はないはずだ(こうした市場を牽引するゲームが増えるのは歓迎すべきことではある)。
さて、このお話はこれで終わりではない。そう、友人がパワーアップ予算をケチった分、新しい液晶ディスプレイに奮発したからだ。今回は基本的にデフォルト設定(解像度は1,024×573ドット)のまま話を進めたが、新しいディスプレイにふさわしいクオリティでプレイしてみたいというもの。今回の環境でも厳しいのに、それは無謀という気もするが、後編ではもう少しこのマシンのアップグレード限界を見極めてみたい。
※記事内の価格は、2007年7月末現在のものです。実際にこの価格で販売されていることを保証するものではありません。
PC「ロストプラネット」:
Character Wayne by (c)Lee Byung Hun/BH Entertainment CO., LTD,
(c)CAPCOM CO., LTD. 2006, 2007 ALL RIGHTS RESERVED.
PC「モンスターハンターフロンティア」:
(c)CAPCOM CO., LTD. 2007 ALL RIGHTS RESERVED.
□ロスト プラネット エクストリーム コンディション(カプコン)
http://www.capcom.co.jp/lostplanet/
□モンスターハンター フロンティア オンライン(カプコン)
http://www.mh-frontier.jp/
□PC GAME Hotline!
http://www.watch.impress.co.jp/headline/gamepc/
□ロスト プラネット エクストリーム コンディション関連記事一覧
http://www.watch.impress.co.jp/headline/gamepc/game/lp.htm
□モンスターハンター フロンティア オンライン関連記事一覧
http://www.watch.impress.co.jp/headline/gamepc/game/monster.htm
| (カプコン ロスト プラネット エクストリーム コンディション/モンスターハンター フロンティア オンライン) |