【 2011年3月12日号 】
[不定期連載]PCパーツ最前線:
プレクスターに聞く“SSD投入の本気度”
 昨年末、プレクスターがSSDに参入するというニュースが舞い込んだ。プレクスターといえばCD/DVDライターでの書き込み品質で高い評価を受けているブランドで、自作ユーザーの反応も大きかった。

 さて、2011年1月に「M2S」シリーズが発売されて約1ヶ月、今回は同社SSDの代理店であるリンクスインターナショナルのご好意により、プレクスターの担当者Lily Hu氏にメールでのインタビューを行った。


聞き手:久保勇、鈴木 光太郎
協力:プレクスター、リンクスインターナショナル
実施日:2011年2月17日


 
信頼性を軸に本格参入

−−プレクスターがSSDを、それもプレクスターブランドとして投入した理由をお聞かせください。

[Lily Hu氏]プレクスターはPC市場のなかで開発の先駆者でありたいと思っています。SSDはストレージ市場で人気のパーツです。そして、従来からの弊社ストレージ製品と併せてトータルソリューションを提供できることから参入致しました。

 SSD市場でも狙うのは信頼性です。長期使用しても実用レベルで常に高速転送を実現し、安定したパフォーマンスを実現する製品を提供したいと考えました。もちろん本格参入の決意です。そして次期モデルも進行しております。


 
シーケンシャルリードに特化したチューニング


M2Sが搭載するコントローラ「88SS9174-BKK2」
−−では製品に関する質問に移りたいと思います。今回のM2SシリーズではICコントローラにMarvellの「88SS9174-BKK2」を採用していますが、その理由をお聞かせください。

[Lily Hu氏]プレクスターでは第1弾製品でMarvellのコントローラを採用しておりまして、良い関係を築くことができました。そして88SS9174-BKK2はSATA 3に対応するなど弊社の求める性能・機能を備えるものです。

−−Marvellでは88SS9174-BKK2をサーバーグレードの製品としており、コンシューマー向けには88SS9174-BJP2という別製品を提供しています。あえて88SS9174-BKK2を選んだのはなぜでしょう。

[Lily Hu氏]88SS9174-BKK2と同BJP2は同じIC設計を基礎としていますが、今回採用した88SS9174-BKK2は弊社向けにカスタマイズされた製品になります。詳細な違いは機密事項のため公開できませんが、88SS9174-BKK2が我々の要求に合致する製品である、ということです。


東芝製のMLC NANDフラッシュを搭載する
−−東芝製NANDフラッシュメモリを採用した理由はいかがでしょう?

[Lily Hu氏]東芝製チップを採用したいちばんの理由はパフォーマンスです。とくに東芝とSamsungのチップが搭載している「TOGGLEモード」という機能が、SATA 3において速度を出しやすい、というのが決め手になっています。

−−SSD全体として、プレクスター独自の特別なチューニングは施されているのでしょうか?

[Lily Hu氏] 弊社独自の機能としては、劣化防止機能のInstant Restoreを、独自のチューニングとしては安定性、長寿命、そしてシーケンシャル速度を重視したものになっています。とくに、長期に渡って利用していただければ本製品の本来の良さがご体験いただけると思います。  また、基本的な特徴としては、SATA 3インタフェースを採用するとともに128MBのDDR3キャッシュメモリを搭載しています。また、NCQやダイナミック・ウェア・レベリングやTrimコマンド等、現在必要とされる機能にフル対応しています。

 
パフォーマンスを引き出すコツとは?

−−ユーザーが気にするメーカー公称値ですが、実際に試してみるとプレクスターの公称値を上回ります。どのような基準で決定されたのでしょうか?

[Lily Hu氏]公称値として公表している値は開発当初のものになります。しかし、その後の開発でファームウェアが改善、パフォーマンスが公称値を上回ってしまった、というのが実際のところです。現在、適正なスペックでの数値の修正とプロモーションの準備を進めております。


M2S

RealSSD C300
▼シーケンシャル重視のセッティング
RealSSD C300(右)と比較すると、シーケンシャル性能は大きく上回り、4Kランダムアクセス性能は劣る傾向が見られる。
−−(同系列のコントローラを搭載する)Crucial RealSSD C300と比べランダム性能が劣る傾向にありますが、それはシーケンシャル性能に特化したためでしょうか?

[Lily Hu氏]確かにシーケンシャル性能にフォーカスしています。開発コンセプトとしてクリーンな状態、使用して汚れた状態のどちらでもパフォーマンスが出せるバランスに注力した結果でもあります。



Windows 7の標準オフセット

Windows XPの標準オフセット
▼アライメントのオフセット値による速度の違い
Advanced Format対応製品は、Windows XPデフォルトのオフセット値(63セクタ)でフォーマットすると速度が大きく低下するケースがある。左はWindows 7デフォルトのオフセット値(2,048セクタ)、右はWindows XPデフォルトのオフセット値(63セクタ)でM2Sの速度を計測したもの。オフセット値63セクタでフォーマットした際は若干の速度低下は見られるものの、オフセット値の影響は比較的小さい。
−−4Kセクタには対応しているのでしょうか?

[Lily Hu氏]対応しております。また、パーティションアライメントにも左右されず、オフセット値が63などでもパフォーマンスの低下は見られません。そのためWindows XPでもパフォーマンスを発揮することが可能です。

−−マザーボードのなかにはMarvell製SATA 3コントローラを追加搭載しているものもありますが、これと組み合わせた場合のパフォーマンスが伸びないようです。これは何処に原因があるのでしょうか?

[Lily Hu氏]マザーボードに追加搭載されるチップは、多くがPCI Express x1で接続されています。パフォーマンスが伸びないのは、これによる5Gbps接続の限界とお考えください。接続バス側がボトルネックとなってしまうとパフォーマンスは引き出せません。

 また、それ以外の原因としてはケーブルの品質も考えられます。3Gbpsまでしか対応していないケーブルでは6Gbpsの性能を引き出すことができません。SATA 3、6Gbpsに対応したケーブルで、より良い品質のものを組み合わせてお使いください。

 
OSやRAIDに左右されないTrim的機能
「Instant Restore」


Trim有効(新品に近い状態)

Trim有効(使用後)

Trim無効(使用後)
▼Trimの効果
効果の見えにくいTrimだが、SSDの劣化を防ぐ効果は大きいようだ。画像は上から新品に近い状態で「Trim有効」、「データを書き込んだ状態でTrim有効」、「データを書き込んだ状態でTrim無効」と状況を変えたもの。Trimが有効であればデータを書き込んでも新品に近い状態が維持されるが、Trimを無効にした際は書き込み性能が大きく劣化していくようだ。
−−Instant Restoreは高速なシーケンシャル性能とともにM2Sシリーズの目玉機能と思います。このInstant Restore機能とはどのようなことを行っているのでしょうか?

[Lily Hu氏]Instant Restoreは、簡単に言えば自動で劣化防止を行う機能です。SSDを使い続けていく中でパフォーマンスが低下するという問題を解消できます。Windows 7で対応したTrimと同等の機能ですが、Instant RestoreはOSを選ばずご利用いただけます。また、Windows 7ではTrimと併用が可能であるとともに、Trimが利用できないRAID環境下でも利用できます。

 なお、もうひとつの劣化防止ツールとして「リフレッシングツール」も、将来、提供を検討しています。これは、ファームウェアのアップデートというかたちになる見込みです。

−−リフレッシングツールはどのような仕組みなのでしょうか?例えばデータを消去するタイプのものなのか、起動ディスクにも適用できるものなのかなど、教えてください。

[Lily Hu氏]データに影響を及ぼさない形のものを予定していますが、データを残ったままお使いの際は、あらかじめバックアップされることをお勧めします。また、プライマリドライブはファームウェアアップデートされないことをお勧めします。


 
SATA 3の理論値6Gbpsを目指す

−−サポートに関してご質問させてください。ファームウェアの更新でリフレッシングツールが提供されるとのことですが、どのような形で展開されるご予定でしょうか?

[Lily Hu氏]現在はユーザーご自身によるファームウェアアップデート方法は提供しておりません。しかし、バグ修正等のファームウェアは逐次行なっており、現在出荷されている製品は全て最新のファームウェアを搭載しています。当初Macでのトラブルがありましたが、これも修正されています。ユーザーご自身によるファームウェアアップデートに関しては準備が整い次第ご案内できると思います。

−−ファームウェアの開発はどちらでなさっているのでしょうか?

[Lily Hu氏]プレクスター独自で行っています。Marvellではありません。

−−ファームウェア開発や検証などはどのような環境で行っているのでしょうか?

[Lily Hu氏]テスト環境としましては、Intel P67チップセット(SandyBridge)にて行っています。Intel環境で検証していますが、マイクロソフトのオリジナルドライバなども組み合わせてテストしています。また、実際にはAMDの環境でも良いパフォーマンスを示しています。

−−先ほどファームウェアの更新で速度が向上したとありますが、今後も速度が向上するのでしょうか?

[Lily Hu氏]M2Sシリーズの優位性はシーケンシャル性能にあります。ファームウェアのアップデートでパフォーマンスのさらなる向上を目指しています。

※読者プレゼントのお知らせ

 リンクスインターナショナルよりご提供いただいたM2S (256GBモデル)を各1名の方にプレゼントいたします。
 ご希望の方は以下のフォームより必要事項をお送りください。

 なお、このSSDはテストのため分解/使用されています。その旨、予めご了承ください。

応募期限:2011年3月23日(水) 20:00
プレゼントの受付は終了しました

−−今後さらに高速なモデルの投入予定はあるのでしょうか?

[Lily Hu氏]現在ラボではシーケンシャルリードで480MB/secまで到達しています。500MB/secを超えるのも間もなくでしょう。我々は最高のブランドとしての地位を獲得するため、SATA 3の理論値に迫る速度を目指しています。ファームウェアでの提供となるか新製品として投入するかは、現段階ではお答えできませんが、今後の弊社SSDにご期待下さい。

−−ありがとうございました。


□M2S(Plextor)
http://www.goplextor.com/Asia/index.php/ssd/m2s

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