|  | 【 2012年3月27日号 】 | 
| [不定期連載]PCパーツ最前線: Zalmanに聞く「ビデオカード&SSD参入のワケ」 独自クーラー搭載カードも間もなく登場、そして今後の目標は? Text by 石川ひさよし | 
 Zalman Tech(以下、Zalman)と言えば、クーリング関連製品で人気のブランドだ。 
 Zalmanと言えばCPUクーラー(上段右)メーカーというイメージだが、昨年は仮想光学ドライブ機能付きポータブルHDDケース「VE-300」をリリース。2012年には写真下にあるビデオカード、そして上段中央のSSDなど、取り扱い製品を拡大している- ところが最近、そのZalmanに変化が起きている。ZalmanからビデオカードやSSDがリリースされたのだ。 - 確かにZalmanは、これまでにも電源やケース、さらにはディスプレイやマウス、スピーカーなど、様々なジャンルの周辺機器をリリース、徐々に製品ジャンルを広げてきた。しかし、ビデオカードやSSDはちょっと想像外、自作PCユーザーのなかにも「なぜ?」という疑問が浮かんだ人も多いだろう。 - そんな折、ZalmanからManaging Director/Strategic Planning Dept.のGunn Ihn氏、General Manager/Overseas Marketing Dept.のYoungcho Yoo氏が来日、お話を聞く機会を設けていただいた。 - Zalmanは何を求め、何を目指すのか、気になるところをじっくり聞いてみた。 聞き手:石川ひさよし
 協力:Zalman Tech
 実施日:2012年2月23日- Zalmanは今「2回目の創業の時」 
 第一弾を足がかりに自社開発を目指す- [Ihn氏]まず、昨年9月からZalmanは経営陣が変わりまして、いわば「2回目の創業の時」とも言える状況にあります。 - Zalmanがクーリング製品の会社であることに変わりはありませんが、クーリングのみならず、PC関連製品をトータル的に提供する会社として生まれ変わることを目標に掲げています。そこでビデオカードとSSDといった新たなラインアップを追加しました。 - −−なぜビデオカードやSSDといった分野だったのでしょうか - [Ihn氏]社内外からの要望に応えたものです。社外からですと、例えばSSDは米国のお客さんからの要望です。 - ただし、参入するにしても、PCからかけ離れた商品ではなく、PC関連機器からラインアップを拡充していきます。とくにビデオカードに関しては、VGAクーラー開発というベースとなるノウハウがありますから、比較的参入しやすかったという側面もあります。 - −−Zalmanのビデオカードで現在販売されているのは、リファレンスデザインの製品のみですが、今後はオリジナルクーラーモデルが主力となるのでしょうか - [Ihn氏]諸事情により、最初にリリースした製品に関してはリファレンスデザインカードとなりました。しかし、間もなくオリジナルクーラー搭載モデルの「ZALMAN HD7950-Z」をリリース致します。 - これはVGAクーラーとして展開している「VF3000」シリーズをベースに、Radeon HD 7950用に改良したクーラーを搭載したモデルになります。こちらの製品は韓国で先行リリースされており、評判も上々で順調な立ち上がりとなっております。 - −−基板に関しても自社製造なのでしょうか - [Ihn氏]残念ながら今現在、基板に関しては、パートナーメーカーから提供を受けております。 - ビデオカードの世界では、Radeon HDにせよGeForceにせよ、メーカーごとにGPUの割り当てというのがあります。ビデオカードに参入したばかりの我々がいくら欲しいといっても叶うものではありません。パートナーとの話し合いにより、インターフェース部分など小さな変更の提案は可能と思いますが、まずはシェアをとることが先と考えています。 - まだ肩身の狭い状況ですが、我々に今何ができるかと考えると、それはクーラーです。ユーザーがZalmanに求めているのは、発熱の高いGPUをいかに冷やせるのかにあるのではないでしょうか。 - まずは我々のクーラーを用いた製品で、ユーザーにZalmanのビデオカードを知ってもらい、今後、いつになるかはまだ分からないですが、ゆくゆくはボードの開発まで手がけていきたいと考えております。 - −−GeForceという言葉が出ましたが、GeForce搭載カードに参入するお考えはあるのでしょうか - [Ihn氏]GPUのシェアは、Radeon HDよりもGeForceの方が大きく、我々も当然ここを攻めなければいけないと考えております。既にパートナーと話を進めてはおりますが、ここでハッキリと申し上げることはできません。 - −−ビデオカードでは、クーラーの差別化とともに、オーバークロック(以下OC)による差別化もあります。OCモデルを投入することは検討されているのでしょうか - [Ihn氏]バリエーションモデルとしてのOCモデルは、当然考えております。 - −−次にSSDについてお聞きします。SSD参入はお客さんの要望とのことでしたが、具体的にどのような要望があったのでしょうか - [Ihn氏]きっかけとなったのは、米国ユーザーからの「PCをZalmanブランドで統一したい」という言葉でした。 - −−そのユーザーというのはハイエンドユーザーでしょうか。Zalmanの顧客層というと、やはりハイエンドユーザーが中心という印象ですね。 - [Ihn氏]確かにハイエンドユーザーからの要望です。我々の武器は高品質と仕上げの丁寧さにあります。どうしても高価格帯になりがちですが、品質を維持しつつコストパフォーマンスも高めるため、日々努力しております。ハイエンドユーザーのみならず、幅広いユーザーに触れていただくよう努めて参ります。 - −−SSDに関しては自社製造されているのでしょうか - [Ihn氏]SSDは現在のところ、他社の製品をリ・ブランディングするかたちでリリースしています。将来的に自社開発もしたいと考えておりますが、まだ決まってはいません。現在勉強しているところになります。 - SSDは価格的に厳しい市場ですが、Zalmanのトータルソリューションにおける一角を担うものと期待しています。今はまだZalmanの技術・機能が入ったものではないので、今後、クーリングメーカーとしての工夫、ソフトウェアでの工夫、他がやっていない機能を載せようとか、そうした工夫でSSD事業の方向性を決めていきたいと思っています。 - −−SSDはリ・ブランディングとのことですが、他にもポータブルHDDケースや電源、ディスプレイ等幅広く手がけていますね。それらは自社製造なのでしょうか - [Ihn氏]ポータブルHDDケースの「ZM-VE300」は、ユニークな製品を作っている会社があるということを聞きつけ、それをリ・ブランディングして提供しています。電源も製造に関しては台湾。PCケースなども製造は台湾だったり中国だったりしますが、デザインや機能の企画・検証はZalmanで行なっています。 - また、冷却にヒートパイプを用いた電源などはZalmanならではの製品です。ほか、クーリング関連製品は、当然自社製造になっています。 - 単純に製造という面で言えば、Zalmanの自社製造製品は全製品の7割、残り3割はOEMといったところでしょうか。ただし「まったく我社の手が入っていない] という製品はほとんどありません。デザインや機能、どこかしらZalmanで手を加えています。 - −−ところで、単体のVGAクーラー製品に関しては今後どのような扱いになるのでしょうか - [Ihn氏]VGAクーラーに関しては、そもそもあまり市場が大きいわけではありませんでした。さらに現在、カードベンダーは自社設計クーラーを搭載するようになってきており、これをさらに手間をかけて交換するというニーズも少なくなってきました。需要がそこまで大きくないならば、我々も自社のクーラーを自社のビデオカードと組み合わせて、勝負をかけようということになりました。今回、HD7950-ZでVF3000をRadeon HD 7950に対応させていますが、このクーラーを単品販売する予定は立っておりません。 - −−すると、今後Zalmanの最新VGAクーラーが手に入るのは、Zalmanのビデオカードだけ……となるのでしょうか - [Ihn氏]そういうことになります。 - Zalman独特のデザインは社員の力が結実したもの  
 Zalmanでは全社員がアイデアを出し合い、議論し製品を生み出している 
 製品開発はどれも苦労するもの。しかしCNPS-9500シリーズの8の字ヒートパイプは他社が真似できない 
 CNPS6500A-Cu(2002年発売) 
 CNPS7000-AlCu(2003年発売) 
 CNPS9500 LED(2005年発売) 
 TNN 500A(2003年発売)- −−Zalmanは、デザインブランドという側面もあると思います。CPUクーラーに見られるような奇抜だけど、機能的にも優れているあのデザインはどのようにして生まれるのでしょうか - [Ihn氏]製品パッケージにもあるとおり、我々は「COOL INNOVATION」というスローガンを掲げています。革新的なものに対する文化が強いですね。そして、全社員が様々なアイデアを出し合い、それを集約してひとつの製品としてリリースすることが上手い、そうしたところがZalmanの製品開発の特徴です。 - そうして生まれたアイデアからサンプルが生まれ、さらに仕上げや品質に関しても、議論したり機能を実現したり改善したり……そうしたことを繰り返して商品を生み出しています。一般的な企業であれば、まず研究開発側からプランが提示されたり、あるいは市場のリサーチからアイデアが上がってきたりするのではないでしょうか。 - こうしたプロセスを徹底的に行いますので、コストが高くなりがちな点は我々も認識しています。いくら良い物でも高すぎでは商品として失敗してしまいますから、コストと品質のバランスを追求しつつも、Zalmanらしさは失わないように最終的な製品を作り上げています。 - また、Zalmanは新製品のリリースサイクルは他社と比べて長い傾向にあります。これは弱点でもありますが、一方で品質を守るための武器でもあります。 - −−ひと言で言えば、「Zalmanらしさ」とは何でしょうか - [Ihn氏]Zalmanらしさとは、いろいろあると思いますが、やはり「クーリング」です。クーリングはまず一番に我々がこだわっているところです。この分野で成長するメーカーは、機能とデザインで勝負しなければなりません。機能とは、冷えることと静音の両面で、もちろん使いやすいことも重要ですね。実用的ではない差別化は要らないと思います。奇抜なデザインで注目されても、ユーザーに認められなければ意味がありません。 - −−開発に苦労された製品や心に残る製品などはありますか - [Ihn氏]我々の認知度が一気に高まったのは、やはり扇形クーラーの「CNPS3000」や「CNPS6000」シリーズでしょうか。ちょっと変わったデザインに性能、静音の3つを求めた誕生した製品です。 - それから2度目のヒット作となったのが、「Flowerデザイン」と呼んでおります「CNPS7000」シリーズ。OEMでもよく採用いただきまして、Zalmanの技術力をアピールできたと思います。そして「CNPS9500」シリーズ。Flowerデザインが縦になった製品です。ヒートパイプが8の字を描いておりまして、やはりこれが一番苦労しましたね。曲がったヒートパイプをフィンに入れ込むことは、普通ではできないことです。本来の予定よりも6ヶ月ほどオーバーして誕生した製品になります。CNPS7000シリーズでは他社に真似されることもありましたが、こちらはまだ真似できないようです。 - CPUクーラー以外では、ファンレスPCケースの「TNN」シリーズが苦労しましたね。これはZalmanのクーリング技術の全てを集約したフラッグシップ製品でした。やっぱり物を生産する以上、どんな製品も苦労するものですが、特に苦労した製品といえばこうした製品たちだと思います。 - −−今後、取り扱い製品をさらに広げることはあるのでしょうか? - [Ihn氏]既存のカテゴリのなかでさらに広げることも考えておりますし、あまり拡大すしすぎては集中力を失うことも考えられます。この問題には正解が無いと思います。「Zalmanらしさ」というものも守りながら、「PC関連のトータルソリューションを提供する」会社として生まれ変わりたいです。 - −−最後に日本のユーザーにメッセージをいただけますか - [Ihn氏]日頃よりZalman製品をご愛顧いただき有り難うございます。今後もご期待に添える、新しい製品、より良い品質の製品を、価格の面でも満足いただける製品を出せるよう、努力して参ります。ご期待ください。 
 □Zalman Tech
 http://www.zalman.com/jpn/main.asp- □関連記事 
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