週刊3Dプリンタニュース

キヤノンが3Dプリンタの取り扱い強化、企業向けのソリューション事業

~「Shade」のイーフロンティアが3Dプリンタ体験イベントを開催~

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、キヤノンマーケティングジャパンが3Dプリンタを含めた3Dソリューション事業を展開するというニュースと、イーフロンティアが3Dプリンタ体験イベントを実施するという話題をお届けしよう。

キヤノンマーケティングジャパンが3D Systems製3Dプリンタの取り扱いを強化「CGのバイクに触る」ことも可能に

東京品川のSタワー内ショールームに新設された3Dプリンタコーナー
3D SystemsのProJet 3500 HDMax。光造形方式による高精度な造形が可能
左側の白や半透明のパーツがProJet 3500 HDMaxの出力例

 4月10日、キヤノンマーケティングジャパン株式会社が、3D Systems社製3Dプリンタの取り扱いを強化し、3DソフトやMR(複合現実感)システムを組み合わせた3Dソリューション事業を展開することを発表した。

 キヤノンマーケティングジャパン(以下キヤノンMJ)は、昨年11月から3D Systems社のプロダクション3Dプリンタの販売を開始しているが、この度、取り扱い製品ラインアップを拡充し、200万~3000万円程度のプロフェッショナル3Dプリンタと50万~200万円程度のパーソナル3Dプリンタも販売することになった。

 具体的には、プロフェッショナル3Dプリンタとして「ProJet 5500X」、「ProJet 3500/5000」、「ProJet 4500」、「ProJet x60シリーズ」、パーソナル3Dプリンタとして「ProJet 1000/1500」、「CubeX」の各機種を販売する。また、Sタワー内ショールームに3Dプリンタコーナーを新設し、商品の紹介やデータの造形コスト算出などを行う。

3D SystemsのProJet 660Pro。石膏粉末方式でフルカラー出力が可能だ
ProJet 660Proの出力例。非常にカラフルだ
こちらもProJet 660Proの出力例。このようにフルカラーのモックアップを出力できる
3Dスキャナの展示も行われている
3Dスキャナで金属パーツをスキャンした結果
スキャン結果を基にCADデータを作成する

仮想空間のバイクに触れる!
 3Dプリンタと「MR」(複合現実感)技術の融合

MREALで利用するヘッドマウントディスプレイ
MREALを使って、台所の流しの高さを確認中。彼にはこの部屋に台所の流しがあるように見えている。
このようにCGのバイクが部屋の中にあるように見える……だけでなく、3Dプリンタと組み合わせることで、例えば「バイクのハンドルを実際に握る」といったことも可能
3Dプリンタで作ったバイクのハンドル。MR空間に描かれた「バイクの場所」に置かれているため、CGで描かれたバイクに本当に触れる(ただしハンドルだけ)

 また、関連会社であるキヤノンITソリューションズ株式会社は、「SolidWorks」や「NEX]などの3D CADソフトや、MR(複合現実感)システムである「MREAL」を製造業向けに販売してきたが、3Dプリンタと3D CAD、MRシステムを組み合わせた3Dソリューション事業を本格的に展開する。

 MRとは、現実世界とCGをリアルタイムに融合させる技術であり、AR(拡張現実感)もMRの一種である。キヤノンのMREALは、ユーザーの任意の視点から、原寸大のCG映像を体感できることが特徴であり、現実世界とCGをシームレスに繋ぐことで、CGがあたかも目の前で現実世界に存在しているかのような臨場感を提供できる。

 キヤノンMJでは、3Dソリューション販売を40名体制でスタートし、キーパーソンを全国に配置する。全国にサポート拠点を置いて販売を行うため、販売力は大きく強化される。同社は、日本における2016年の法人向け3Dプリンタ市場規模(装置・材料・保守)を260億円と想定しており、そのうち20%のシェアを獲得することが目標とのことだ。3Dプリンタ事業で50億円、3Dエンジニアリング事業などを加えると、2016年の売上目標は100億円以上と、目標はかなり大きい。

 なお、キヤノンは、2014年3月10日に開催された2014年経営方針説明会において、今年の重点課題である新規事業のテーマの一つに3Dプリンタを挙げ、キヤノンらしい方式とスペックの製品を開発中だとしたが、今回のキヤノンMJの発表はこれとは全く別の話であり、直接関係があるわけではない。しかし、キヤノンは、将来3Dプリンタ事業を大きな柱の一つにしたいと表明している。これらを含め、今後の展開に期待したい。

無料3Dプリンタ体験イベントが新宿で開催「Shade」のイーフロンティアがiPadで

オフィス24スタジオ

 株式会社イーフロンティアは、iOS向け無料3Dモデル作成アプリ「Sunny 3D」を用いた3Dプリンタ体験イベント「iPadに指で描いてつくれる!3Dプリンター体験イベント」を4月26日に開催する。このイベントは、株式会社オフィス24が運営する「オフィス24スタジオ」にて、同社と共同で行われるものだ。

 オフィス24スタジオは、東京都新宿区にあるオフィスコンビニ・3Dプリント店であり、以前にも本ニュースでレポートしているが、3D Systemsの業務用3Dプリンタ「ProJet 3500 HDMax」「ProJet 660Pro」、パーソナル3Dプリンタの「Cube X」などが設置されており、3Dプリントフルサービスと3Dプリントセルフサービスを利用できることが魅力だ。

 3Dプリンタの最大の利点は、自分でデザインした3Dモデルを、一つ一つ実際の造形物として出力できるということだが、3D CADや3D CGソフトのスキルがない初心者が自由に3Dモデルを作ることはなかなか難しい。イーフロンティアのSunny 3Dは、iPadに指で描くだけで3Dモデルを作ることができるので、専門スキルがない初心者も気軽に3Dモデルを作成できることが特徴だ。

 本イベントは4月26日13時からの約3時間の予定で、3Dの基本についての解説とSunny 3Dでオリジナル3Dモデル作成の実習の後、3Dデータのハイエンド3Dプリンタでの出力実演、出力後のオリジナル3D造形物の受け取りという流れになる。造形物は当日持ち帰りも可能だが、その場合は20時以降の受け渡しとなる(後日受け取りを選択した場合は、指定住所に配送される)。

 対象は中学生上で、参加費は無料。事前に参加申し込みをWebサイトで行い、iPadシリーズまたはiPad miniシリーズ(iOS 4.3以降)を持参する必要がある。また、iOS向けのSunny 3Dは無料アプリケーションだが、本イベントに参加する場合は、有料(800円)の追加機能「形状出力機能」を購入する必要がある(アプリ内購入対応)。

 イベントの申し込みは先着10名までなので、3Dプリンタを使ったものづくりに興味があるという人は、是非参加してみてはいかがだろうか。

(石井 英男)