週刊3Dプリンタニュース

3Dプリンタ企画展「3Dプリンティングの世界にようこそ!」レポート

~3Dプリンタの基礎から法的問題まで~

 今回の週刊3Dプリンタニュースは、印刷博物館で実施中の企画展「3Dプリンティングの世界にようこそ!」のレポートと、ムトーエンジニアリングによる国産パーソナル3Dプリンタの第2弾について紹介する。

出力物に手で触れる「3Dプリンティングの世界にようこそ!」レポート

印刷博物館の入り口にあるオブジェ。印刷博物館は凸版印刷が運営しており、同社ビルの一部を利用している
3Dプリンティングの世界にようこそ!の展示の様子。ゆったり展示されているので見やすい
最初に3Dプリンタの仕組みが解説されており、パーソナル3Dプリンタの実機も展示されている
ここに並んでいるのは、すべて3Dプリンタで造形されたものの実物である。ABS樹脂やゴムライク樹脂、アクリル、チタニウム、ナイロン、デジタルマテリアルなど、さまざまな素材で出力された造形物を手で触ることができる
パーソナル3Dスキャナの展示も行われている
アーティストが3Dプリンタを活用して作り上げた作品も展示されている

 東京都文京区にある印刷博物館では、6月1日まで「3Dプリンティングの世界にようこそ!」と題した企画展を開催中である。この企画展は、3D-GANやFab Lab Shibuyaなどの協力で行われているもので、歴史から最新の活用シーンまで3Dプリンティングに関するものが一挙に展示されている。3Dプリンティングをテーマとした企画展はおそらく初めてだと思われるので、その様子をレポートしたい。

 企画展「3Dプリンティングの世界にようこそ!」は、印刷博物館の1FにあるP&Pギャラリーで行われており、入場は無料だ(地下の印刷博物館本館展示場に入場する際は入場料が必要)。休館日は毎週月曜日(ただし5月5日は開館、5月7日は休館)で、開館時間は午前10時から午後6時までとなっている。

 3Dプリンティングの世界にようこそ!では、「3Dプリンティングって?」、「3Dプリンティングのある暮らし」、「ものづくりだけじゃない!? 3Dプリンティングの活用」、「3Dプリンティングの今後」という4つのコーナーに分けて展示が行われている。

 「3Dプリンティングって?」コーナーでは、基礎知識として3Dプリンタとは何か、どんなことができるのかということが、パーソナル3Dプリンタの実機展示や業務用を含む各種3Dプリンタで造形された出力物の展示などでわかりやすく解説されている。このコーナーでは、各種樹脂や金属、石膏など、さまざまな素材で造形された出力物を実際に触ることができる。デジタルマテリアルなどの最新素材に触れる機会は貴重だ。

 「3Dプリンティングのある暮らし」コーナーでは、3Dプリンタを使って作成されたインテリアや雑貨などが展示されており、3Dプリンティングがより身近になった時代の新しい生活スタイルを創造できる。

 「ものづくりだけじゃない!? 3Dプリンティングの活用」コーナーでは、医療分野など、ものづくり分野以外の3Dプリンティングの活用事例が展示されている。先日、本連載でもお知らせした「地理院地図3D」を利用した立体地図の出力例も展示されており、3Dプリンティングがさまざまな場面で役立つことがわかる。

 最後の「3Dプリンティングの今後」コーナーでは、「フィギュアのコピーは違法?」、「何かあった時の製造責任は?」といった、3Dプリンティングの進歩に伴って出てくる新たな課題や3Dプリンティングのあり方などを、専門家の意見も交えながら解説されている。3Dプリンティングを活用して何か新たな事業を展開したいという人にも参考になるだろう。

 展示は一室のみだが、3Dプリンティング関連のさまざまな事柄がうまくまとめられており、3Dプリンティングの現状を知るにはまたとない展示会といえるだろう。前述したように、この企画展のみの入場は無料なので、3Dプリンティングに興味のある人は行ってみてはいかがだろうか。

ムトーエンジニアリング製パーソナル3Dプリンタの第2弾が登場デュアルヘッド化、造形サイズも大型に

MF-2000の外観

 株式会社ムトーエンジニアリングは、パーソナル3Dプリンタ「MF-2000」の販売を5月に開始する。価格は450,000円。MF-2000は、今年1月に発売された「MF-1000」に続く、同社が自社で開発・製造したパーソナル3Dプリンタ第2弾となる製品だ。

 MF-2000は、MF-1000で培われた高剛性技術をさらに改良し、300×300×300mm(幅×奥行き×高さ)というパーソナル3Dプリンタとしては最大クラスの造形サイズを実現していることが魅力だ。MF-1000の最大造形サイズも200×200×170mm(幅×奥行き×高さ)とかなり大きかったが、MF-2000では体積比で約4倍と大幅に拡大されている。ただし、本体のサイズは、680×750×700mm(幅×奥行き×高さ)と大きく、重量も39kgと重い。

 MF-2000もMF-1000と同じく、FDM方式の3Dプリンタであるが、MF-1000はシングルヘッドだったのに対し、MF-2000ではデュアルヘッドになり、2色での造形やサポート専用材料の利用などが可能になった。積層ピッチは0.1~0.5mmで、フィラメントの直径は1.75mmである(ヘッド交換で3mm径フィラメントも利用可能)。ヒーテッドベットを採用しており、ABS樹脂またはPLA樹脂の利用が可能だ。樹脂はそれぞれ9色が用意されるほか、サポート専用材料としてPVAも利用できるようになる見込みだ。また、デュアルヘッド搭載機では、積層中に造形物にもう片方のヘッドがぶつかってしまうという問題が生じやすいが、MF-2000では、未使用側のヘッドを上下に移動させる機構の搭載により、そうした問題は解決されている。

 スライスソフトとしてはオープンソースの「Slic3r」を、プリンタ制御ソフトとしては同じくオープンソースの「Pronterface」を利用する。どちらも日本語化されているので、英語が苦手な人にもお勧めだ。パーソナル3Dプリンタとしてはサイズも大きく、価格も高いので、学校やSOHOなどに向いた製品といえるだおる。

(石井 英男)