2017年3月7日 08:05
忍者増田氏が名作レトロゲームを紐解き、その作品にまつわるエピソードや、今改めてプレイしてみての感想を語る連載「忍者増田のレトロゲーム忍法帖」。
第五弾は増田氏が今でもこよなく愛するダンジョンRPGの名作『ウィザードリィ』。他のゲームにも多大な影響を及ぼした金字塔的な作品で、今でも色あせないその魅力を語り尽くす。
趣味でも仕事でも長い付き合いのスーパーロングセラーRPG『ウィザードリィ』
今回のお題は、拙者が昔から大好きで、趣味でも仕事でもずっとお付き合いを続けているゲーム、『ウィザードリィ』です。いやあ、このゲームに関しては、拙者、今までどれぐらいの文字量の原稿を書いたことでござろうか。
『ウィザードリィ』は、今から30年以上も前にアメリカで生まれたダンジョンRPGの古典的名作。日本でも様々なプラットフォームで発売され、日本オリジナルのシナリオも多数誕生しているスーパーロングセラーRPG……って、今さら説明するまでもないかな。
拙者はかつてPCゲーム誌ログインで、「WIZでござるよ」という、『ウィザードリィ』を題材としたコーナーをずっと担当しておりました。そういった関係で、フリーになってからも『ウィザードリィ』の記事の執筆依頼をいただく機会が多かったのでござるが、当連載でもついにこのゲームが回ってきたというわけです。
でも『ウィザードリィ』の原稿を書く場合、前述したように付き合いが長すぎるので、過去にどっかで書いたことと内容が被らないようにするのがとても大変です。てか、どこで何を書いたかもきちんと把握できていません。もう30年近い付き合いでござるからな。もし「それ前にも似たようなこと聞いたなー」とか思っても、どうか大目に見ていただけると幸いです。『ろくでなしBLUES』の前田太尊風に言い変えれば、ビッグアイにルッキングでお願いするでござるよ。うーん、このネタも前にどっかで書いたかもなあ。
そんじょそこらのRPGでは味わえないシビアな緊張感を楽しめる戦闘パート
「『ウィザードリィ』の魅力は?」と聞かれると、拙者は昔から、「シビアな戦闘」、「キャラクター育成」、「アイテム収集」、「想像力がかき立てられる設定」の4つだと答えています。これからこの4つの魅力について、今回と次回の2回に分けて語っていきましょう。
『ウィザードリィ』の魅力その1、シビアな戦闘! 本作での戦闘の緊張感は、当時のRPGの中でも群を抜いていました。
とにかく、出現するモンスターの強さがえげつなく、攻撃の付加効果も凶悪。ただ大ダメージを与えてくるだけじゃないんです。「エナジードレイン」とかぬかして、キャラクターを4レベルもダウンさせやがる敵がいたり、「クリティカルヒット」とかぬかして、どれだけHPが高いキャラクターでも一撃で死に至らしめやがる敵がいたりします。どこまでキャラクターを育て上げても、絶対安心ということがないゲームなのでござる。
さらに戦闘で死んだキャラクターの蘇生に失敗すると、「ロスト」とかぬかして、そいつが消滅しちゃうことすらあるのです。何カ月も手塩にかけて育てた愛しいキャラクターが、一瞬にしてパーでっせ。アンビリーバボー!
このように、『ウィザードリィ』の戦闘では、そんじょそこらのRPGでは味わえないシビアな緊張感を楽しむことができるのです。逆に、このシビアさを楽しめない人は本作に手を出してはいけません。このあたりが、『ウィザードリィ』好きはMが多いと言われる所以です。ちなみに拙者もまごうかたなきM……あ、要らない情報でしたか?
キャラクター育成の醍醐味「転職」でより強力なキャラが育つ
『ウィザードリィ』の魅力その2、キャラクター育成! 『ウィザードリィ』には「転職」という要素があります。この転職のシステムを利用してキャラクターをいじくり、より強力なキャラクターを育成することが可能なのであります。
高レベルの魔法使いを盗賊に転職させれば、攻撃呪文を使える盗賊のできあがり。時間をかければ、魔法使いと僧侶の全呪文をマスターした忍者なんかも作れちゃいます。転職でマルチな能力を持つキャラクターを育成できるのも、『ウィザードリィ』の醍醐味のひとつなのでござる。
今となっては転職できるRPGなんて珍しくないでござるが、当時は画期的だったし、RPGの転職システムの基礎は『ウィザードリィ』にあると言っても過言ではないでしょう。『ファイナルファンタジー』シリーズがジョブチェンジと言っている遥か前に、『ウィザードリィ』は転職システムを採り入れていたわけです。
ちなみに本作には、キャラ育成のための経験値稼ぎの手段として、「グレーターデーモンの養殖」ってやつがありましたね。これは、グレーターデーモンの仲間を呼ぶ習性を利用した秘技で、拙者も当時挑戦したことがあります。しかし、養殖の途中でうっかり「逃げる」コマンドを実行してしまい、数時間の労力が無駄になった苦ーーーい思い出があります。ニンともカンとも。
『ウィザードリィ』の魅力は「シビアな戦闘」、「キャラクター育成」、「アイテム収集」、「想像力がかき立てられる設定」の4つと語る増田氏。増田氏同様に戦闘での緊張感や育成の楽しさにハマった人も多いのでは?
次回は残り2つの魅力である「アイテム収集」と「想像力がかき立てられる設定」について熱く語って頂きます。
※次回掲載は3月14日(火)を予定しています。また、同日に忍者増田氏出演の生放送「忍者増田のレトロゲーム忍法 帳:生動画絵巻」を放送予定。
当連載の書籍化が決定! 今回から掲載している「ウィザードリィ」に加え、さらに書き下ろしタイトルを収録! レトロゲームに関する内容を全128ページに詰め込みました! 書籍の詳細については別記事で紹介中。
なお、正式発売日は3月17日(金)ですが、BEEP 秋葉原店で3月11日(土)に先行販売しちゃいます!
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『ウィザードリィ』は今このプラットフォームで遊べる
初代『ウィザードリィ』を今遊ぶには?(参考価格/価格は税込表記) | |
ファミコン版(中古品/付属品無し) | 2,100円前後 |
ゲームボーイカラー版(中古品) | 15,000円~ |
PC-8801mkIISR版 | 3,300円前後 |
MSX2版 | 12,000円前後 |
ウィザードリィ・コレクション(Windows版) | 35,000円~ |
※2017年2月調べ |
注釈
- ダンジョン
ファンタジーの世界などでは「お城の地下」を指すことが多い。そこに宝が隠されていたり、とんでもない怪物がいたり……など。現代のRPGでダンジョンといえば「地下迷宮」がシックリくるのではないだろうか。ちなみにファミコン版『ウィザードリィ』のダンジョンは地下10階、広さは縦横20マスである。 - WIZでござるよ
今はなきPCゲーム誌ログインで増田氏が担当していた人気コーナー。新作の紹介、攻略、おふざけ企画、ウンチク、読者のお便りなど、『ウィザードリィ』に関係するネタならなんでも採り上げていた。増田氏がフリーライターになってからも様々な媒体で再開し、なんと21年も続いたスーパー長寿コーナー。今でも「再開の依頼、いつでもお待ちしています」とのこと。 - ろくでなしBLUES
1988年から1997年まで週刊少年ジャンプに連載された、森田まさのり氏による漫画作品。東京都の吉祥寺を舞台とした不良達の学園生活が描かれっちゃれら~! ボクシングの要素を採り入れたシリアスな喧嘩シーンと、センスあふれるギャグの応酬が痛快。増田氏はこの漫画のファンだったそうで、「『ROOKIES』よりこっち」とのこと。 - エナジードレイン
主にアンデッドモンスターが使用してくる攻撃法で、これが効くと、せっかく育てたキャラクターのレベルが下げられてしまう。敵によっては4レベルも下げてくることがあり、ある意味「死」より怖い陰湿な攻撃。 - クリティカルヒット
主に忍者が得意とする技で、どんなにHPが高くても一撃で殺されてしまう。「チーン」という特別な効果音がするのが特徴で、逆にこちらの忍者のクリティカルヒットが敵に命中すると非常に気持ちがいい。前述の「エナジードレイン」といい、実はゲーム内では使われていない表現だったりする。 - ロスト
冒険で死んだキャラクターの蘇生に失敗すると、まず「灰」という状態になる。そして「灰」からの蘇生に失敗すると、そのキャラクターは「ロスト」してしまう。カートリッジやディスク上からデータが消えてしまうということであり、もうどうあがいても復活できません。ひどい。 - 転職
職業を変えること。『ウィザードリィ』における転職は訓練場で行うことができる。基本的にはパラメータの数値によって就ける職業が決まってくるのだが、条件の厳しい忍者などは「盗賊の短刀」の力を使うことで転職できたりもする(ただし「盗賊の短刀」は壊れてなくなってしまう)。 - ファイナルファンタジー
1987年12月にスクウェア(現在のスクウェア・エニックス)から発売されたファミコン用ソフト。通称は『FF』や『ファイファン』。日本における国民的RPGのひとつ。 - グレーターデーモン
『ウィザードリィ』の名物モンスター、青い悪魔。呪文の無効化率が非常に高く、迷宮内で遭遇したときの怖さは、ある意味、ラスボスのワードナ以上。大勢のグレーターデーモンに遭遇してしまったら、ワードナをようやく倒せる程度のパーティーならば逃げたほうが安全。
増田厚(ペンネーム:忍者増田)
茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。