ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

次世代88へと華々しくステップアップしたが伸び悩んだ「NEC PC-88VA」

従来のPC-8800シリーズと比較して、本体容積がかなり増えています。それまでは横並びだったFDDも縦に2つ搭載され、PC-9800シリーズを思わせるようなフォルムになっています。キーボードの外見は、PC-8801FH/MHなどと同じです。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、NECが満を持して市場へと送り込んだパソコン「PC-88VA」を取り上げます。発売は1987年。

 1985年に発売したPC-8801mkIISRが大ヒットし、それまでの8ビットパソコン市場の団子状態から抜けだしたNECですが、その後にリリースしたPC-8801FH/MHにてCPUのクロックアップを行ったものの、8ビットパソコンとしては性能が頭打ちになった感は否めませんでした。

 そこでNECが採った手が、CPUの16ビット化とグラフィックの強化を図り、さらに従来のPC-8800シリーズとの互換性も持たせた新機種、PC-88VAの誕生というものでした。

正面から見ると、PC-9800シリーズと同じく縦に配置されたドライブと、V1モード/V2モード/V3モードのランプが見えます。中央下部の蓋を開けると、V1/V2を変更するシステムモード切り替えスイッチとスピード切換スイッチ、ディップスイッチがあります。電源スイッチの隣には、ボリュームつまみとイヤホン端子も用意されています。

 PC-88VAは、CPUに「新開発16ビットカスタムマイクロプロセッサμPD9002(V30/μPD70008AC命令コンパチブル・8MHz)」(広告より)を採用。メインメモリは、PC-8800シリーズの64Kbytesの8倍となる512kbytesを実装しています。また、640×200ドットで65536色表示が可能なほか、640×400ドットでは256色が同時表示できました。さらに、シューティングゲームなどには欠かせないスプライト機能も搭載。マウスも標準搭載され、298,000円という価格で市場に登場します。

広告には、「PC-8800シリーズすべての機能が今、新たな次元へ進化した」とアピールされています。

 PC-88VAは、PC-8801mkIISRシリーズが内蔵していたV1モードとV2モードにくわえ、新たにV3モードを搭載しました。付属のPC-Engineシステムディスクから起動すれば自動的にV3モードへと切り替わり、さらに「BASIC」とタイプすればN88-日本語BASIC V3.0もスタートします。PC-88VA専用ソフトも、NECから「R-TYPE」が、日本テレネットからは「神羅万象」、そして日本ファルコムからは「ソーサリアン」など、数々のタイトルが発売されました。

PC-88VAが発売された後に掲載されたゲームソフトの広告ですが、対応しているタイトルもあれば対応一覧に書かれていないパターン、さらには「PC-88VAはお問い合わせください」などと書かれているものがあるなど、かなりカオスな様相でした。

 それなりのインパクトを持って登場したPC-88VAでしたが、目立ったキラーソフトがなかったことや、前年に発表されていたX68000の印象が強かったこと、さらにはPC-8800シリーズと比べて価格が高かったことなどがあり、伸び悩むことになります。また、この時期に発売済みだったPC-98XAやPC-98XL、PC-98LTなど“PC-9801XX”ではなく“PC-98XX”という型番が付けられた機種は、PC-9800シリーズとの互換性が高くなかったのですが、それと同じ気配をPC-88VAから嗅ぎ取っていたという人もいたそうです。

背面は左から、アナログRGB端子、マウス端子、オーディオ出力端子、ビデオ出力端子、拡張端子、プリンタポート、デジタルRGB端子、イメージスキャナ端子、RS-232Cコネクタで、その上に拡張スロットが4つ並んでいます。なお一番下の拡張スロットは、別売りのビデオボードを挿し込むための専用スロットです。

 ちなみに、この時期に発売されていた他機種を並べてみると、PC-8801MHが208,000円、PC-8801FH model 30が168,000円。シャープはX1turboZが218,000円で、富士通がFM77AV40で228,000円でした。

 X1turboZは、200ライン時は4096色同時表示が、400ライン時には4096色中8色表示が可能で、音源は8重和音のステレオFM音源を搭載し、マウスも標準装備です。FM77AV40は、320×200ドットで26万色の表示ができたものの、音源はPC-88VAと同じでした。さらに、1986年10月に発表され、1987年3月に発売されたX68000は369,000円です。

 どの機種を選ぶかでは、ソフトの多さでPC-8800シリーズか、頭一つ飛び抜けたスペックを備えつつ価格の安いX1turboZにするか、それとも未知なる巨人X68000か、という感じだったと思います。そこへPC-88VAが割って入るのですから、苦戦するのもしょうがなかった感じではないでしょうか。