ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

SHARPのパーソナルワークステーション「X68000」シリーズと、1980年代後半のソフトハウス「エニックス」編

~永久保存版 80年代マイコン大百科~

永久保存版 80年代マイコン大百科

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 80年代マイコン大百科」(著:佐々木 潤)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、懐かしのマイコンたち!!編からSHARP「X68000シリーズ」編と、ボクたちを虜にしたソフトハウス編から1980年代後半の「エニックス」。

 なお、書籍版では画像はモノクロ(電子書籍 Kindle版はカラー)だが、本記事ではカラーの写真を掲載している。


- 懐かしのマイコンたち!! -SHARP「X68000シリーズ」- -


 1987年という、80年代の終わりも見えてきた頃に登場した“パーソナルワークステーション”X68000は、まさに“夢”が詰まった機種だった。

 それまでのパソコンが非力ながらも頑張ってアーケードゲームの移植作品を動かしていた中、それをX68000はスイスイとやってのけたのだから(もちろん開発者の血の滲むような努力があったが)当然だろう。それまで普及していた8ビットパソコンと比べるとオバケのようなスペックで、夢を実現させられるハードとして欲しがった人も多いはずだ。

 また、“マンハッタンシェイプ”と呼ばれたツインタワーのスタイリッシュな外観デザインも、それまでのパソコンにはない輝きを放っていた。

初代X68000は、1987年に登場。店頭デモで付属ソフトの『グラディウス』が、アーケード並みのクオリティで動作していたのを目撃した人もいるだろう。趣味用途としてのパソコンと考えると高いが、16ビットPCとしては同時期のPC-9801VX2と比べると安く、369,000円と何とか手が届く値段。1987年当時のマイクロコンピュータショウやビジネスショウでも展示されていた。

 ソフトラインアップも充実しており、マイコンソフトやシャープ、SPSなどがアーケードからの移植度が非常に高いタイトルを出していた。また、その強力なハードスペックを活かし、CG制作機としても使われていた側面も持つ。

X68000 ACE/ACE-HDは、X68000発売から1年後に登場した機種。価格が安くなり買いやすくなったACEと、20MBのハードディスクを搭載したACE-HDがラインアップされた。とはいえ、ハードディスクを搭載したモデルは399,800円と、なかなかのお値段だった。

 日本メーカーによる、最初で最後の68000系コンシューマ向けパソコンはこの後、さらなる機種を発売していくことになる。

ACEの1年後に登場したX68000 EXPERT/EXPERT-HDは、これまで1MBだった搭載メモリを2MBに増強し、さらにハードディスク搭載モデルは、その容量が20MBから40MBへと倍増した。EXPERTは価格319,800円と、初代機と比べると50,000円ほど安くなっている。X68000 PRO/PRO-HDは、X68000シリーズで初の横置き筐体を採用。拡張スロット4基にくわえ専用のマウスとキーボードを備えるなど、異色の機種だった。値段も30万円を切る設定がなされており、廉価版という意味合いもあったと思われる。しかし、回路設計が従来機種とやや異なるため、一部ソフトには対応ハード部分に“※PROシリーズを除く”と書かれたことも。

- ボクたちを虜にしたソフトハウス・80年代後半編 -エニックス- -


多種多様なラインアップから次第にビックタイトルへ集中

 プログラムコンテストを開催し、ユーザからのゲームを募っていたエニックスだが、広告では徐々にその影を薄めていく。

 85年から86年にかけては、コンテスト作品以外に多種類のゲームが発売されている。『ポートピア連続殺人事件』が好評だった堀井雄二氏の、それに続くアドベンチャー第2弾『軽井沢誘拐案内』や、人工知能シミュレーションゲームと銘打った『TOKYO ナンパストリート』、アドベンチャーゲーム『エルドラド伝奇』など、ちょっとHな方面に展開したタイトルも存在感があった。

アドベンチャーゲームにアニメーションが取り入れられた『セイバー』。静止画しか載せられない紙媒体の広告には、連続写真などを掲載していた。当該シーンを初めて見たときには、あまりの早さに驚いたものだ。
アニメ原作のゲームや、アニメ調の絵を使ったタイトルが多かった80年代後半。MSXシリーズ向けに『ドラゴンクエスト』が発売されていたこともあり、その広告も同時に掲載されていた。また、『TOKYO ナンパストリート』の広告に可愛らしいイラストが付いたのも特徴だろう。

 その後は流行に合わせるかのように、アニメーションやマンガを原作とした「ウイングマン」シリーズ、『北斗の拳』などのソフトを発売。

 また、『地球戦士ライーザ』『ジーザス』『アンジェラス』『セイバー』のように、アニメっぽいキャラたちが活躍するゲームも数多く占めるようになる。

この当時、アニメや漫画で人気を博していた『ウイングマン』シリーズをアドベンチャーゲームとして発売していたエニックス。ゲームも大ヒットし、1作目の『ウイングマン』だけでなく、『ウイングマン2 キータクラーの復活』『ウイングマンスペシャル』の計3タイトルが発売された。
「アンジェラス」は、音楽に『ドラゴンクエスト』シリーズでお馴染みのすぎやまこういち氏を、キャラクターデザインにはアニメ『うる星やつら』などの作画監督として知られる土器手司氏を起用。ゲームシステムはコマンド選択式のアドベンチャーで、続編も予定されていが残念ながら発売されることはなかった。

 しかし、この頃ファミコンで「ドラゴンクエスト」シリーズを大ヒットさせていたエニックスは、程なくしてパソコンゲーム市場から撤退していくことに。

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