個人のための!Windows 10 Proのツボ

安定最優先、新機能の追加を後回しにする方法

text by 阿久津 良和

DSP版Windows。Homeのほうが5,000~7,000円ほど安いが、後からProにしようとすると税込13,000円以上かかる。

 Windows 10はコンシューマー向けに「Home」「Pro」と2つのエディションがある。

 この2つは対応ハードウェア(*1)や様々な機能が異なるが、「家で使うならHomeで十分」と言われることも多い。それは間違いではないし、Homeの方が若干安価なため「家で使う=Home」と考えてHomeを導入する人もいるだろう。しかし、個人利用でも「かゆいところに手が届く」便利さがあるのがProエディション。

 そこで、Homeで十分か、またはProにするべきかを検討できるよう、「Proを個人で使う」ことにフォーカスした集中連載を掲載したい。年末年始、PCを新調する人も多いと思うが、Windows 10のエディションを選ぶ際、参考にして貰えれば幸いだ。

*1 利用できる物理メモリ容量の違い(64bit版Homeは128GBで同Proは2TB、32bit版はどちらも4GB)や、最大CPUソケット数(Homeは1、Proは2)など。

ツボその1安定最優先、新機能の追加を後回しにする方法

 Windows 10は、リリース以来、大型アップデートで多数の機能が追加されてきた。具体的には、音声でも指示できるアシスタント機能「コルタナ」の追加や、セキュリティ機能「Windows Hello」の強化などだが、新機能の追加は嬉しい反面、ソフトの互換性に問題が出る可能性があったり、ユーザーインターフェイスの変更に戸惑う声が出たりなど、必ずしも歓迎100%にならないのもまた事実。

 こうしたニーズはビジネスシーンで特に強いため、Windows 10 Proでは<機能の更新を延期する>という機能が用意されている。この機能を使うと、「大型アップデートによる機能追加を数か月延期しつつ、その間のセキュリティアップデートはそのまま適用する」ということができる。つまり、新機能追加直後に起きるかもしれない混乱を予め回避し、ソフト側の対応や利用者からのフィードバックがあった後の“安定版”だけを使う、といったことが安全にできるようになる。

 これはアップデートの流れを分岐させることで実現されており、常に更新される通常の最新版「CB(Current Branch)」に加えて、機能追加をせずにセキュリティだけ更新する複数の「CBB(Current Branch for Business)」が追加されている。この「CBB」を選択できるのはProエディション以上であり、HomeエディションはCBのみとなる。

 具体的には下図をご覧頂きたい。いずれも日本マイクロソフトが作成したスライドだが、例えば2016年8月にリリースしたAnniversary Update(バージョン1607)は、2016年11月29日にCBB向けとして確定。8月初旬から11月末までの約4カ月間にフィードバックを受けた数多くのバグを修正しているため、ビジネスユーザーも安心してWindows 10バージョン1607への移行環境が整ったこととなる。

「Windows as a Service(WaaS)」と名付けられたWindows 10の各ブランチ
Windows 10の更新サイクル。この濃く青い部分がCBBとなり、CBよりも後にリリースされる

 このロジックは日本マイクロソフトの資料を合わせてご覧になると分かりやすいが、<詳細オプション><機能の更新を延期する>にチェックを入れておくことで、我々が普段使用するWindows 10 Proが「CB」から「CBB」へ変化する。ちなみに本設定は、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\WindowsUpdate\UX\SettingsキーのDWORD値「DeferUpgrade」と連動し、チェックオフ時のデータは「0」、チェックオン時はデータが「1」に変化する仕組みだ。なお、表にあるLTSB(Long Term Servicing Branch)は設定などで選択するブランチではなく、ボリュームライセンスでパートナー企業からサブスクリプション購入する形のため、利用する場面はない。

 なお、先述した通り、この機能を利用しても、"月例アップデート"と呼ばれる毎月のセキュリティ更新プログラムは適用されるため、セキュリティ上のリスクが増えることはない。まさに、「確実に安定したWindows 10だけを使いたい」という人のための選択肢といえるだろう。

「設定」の<更新とセキュリティ/Windows Update>に並ぶ<詳細オプション>をクリックして開き、<機能の更新を延期する>にチェックを入れる
こちらは「Process Monitor」でレジストリエントリーの変化を確認した状態。<機能の更新を延期する>にチェックを入ると、DWORD値「DeferUpgrade」のデータが「1」に変化する

【Windows Updateによる再起動を調整したいなら】

 CB/CBBの違いとは関係ないが、Windows Updateについては「PCを使いたいときに再起動してしまうのをなんとかしたい」という人もいるだろう。せっかくなので、その手法についても解説しておきたい。これはHomeでも利用可能だ。

●「再起動してほしくない時間」を設定する

 再起動を抑制する時間を決めるのが「アクティブ時間」の設定。これはPCを利用する時間帯「アクティブ時間」を指定し、更新プログラムを適用しても自動的に再起動することを抑止できる機能。「設定」の<更新とセキュリティ/Windows Update>に並ぶ<アクティブ時間の変更>をクリックし、既定設定の8時~17時から使用スタイルに合わせて変更すればよい。

●再起動を一時的に延期する

 合わせて利用したいのが「再起動のオプション」である。更新プログラム提供後は再起動を求められるが、それを指定した時間に実行するのが本機能だ。例えば出先でPCを利用している際に更新プログラムが適用されたとしよう。だが、会社や自宅に戻るまでは再起動を避けたい場合、大まかな時刻や日時を選択すればよい。ただし、本機能は更新プログラムが適用された状態でないと利用できない(スイッチがグレーアウトする)ので、いざという時の救済策として覚えておこう。

[制作協力:菱洋エレクトロ]